無花果の顔

Tuesday, June 26th 2007

文学でも、音楽でも表現できないから、映画があるんだと思う

人は1人で生まれ、1人で死んでいく。
孤独を抱いて生きているから、心の指先を伸ばして、
誰かとつながりたいと思う。普通に見える家族の日々の中で、
父と母、母と娘、姉と弟　それぞれの心のつながりが見えた瞬間、
『無花果の顔』は、観る人の心とつながっている。

桃井かおりが、2006年、新たにチャレンジしたのは、映画監督。

『時刊MOMOIKAORI』に連載していた小説（『無花果の顔』）と、
4本の短編（『おんな隣り』『三連坂』『いちじくの木』
『サザンカ赤い花』）を元に、自ら原案と脚本を執筆。

演技と同様、誰にも真似できない独創的な映画を作り上げた。

『無花果の顔』の主人公は、庭に無花果の木が植えられた
古い日本家屋に住む、寺脇家。

ありふれた日常を生きているように見えながら、実は、
それぞれにドラマチックな人生を歩んでいく彼ら4人の家族の姿を、
不思議なファンタジーの余韻を漂わせながら、描きあげていく。

家出。死。引っ越し。再婚。出産。

思いがけなくやって来る人生の節目に、お互いの秘密を
知って驚き、さりげなく絆を意識することになる家族たち。

「人と人は何を頼りに結びあっているのだろう？」

と、問いかける桃井監督は、スナップ写真の中に、
瞬間的に切り取られ、お菓子の缶の中に無造作に
積み重ねられていく、家族たちの歴史の中にその答を求め、
血のつながりよりも確かな心のつながりを、観る人の感覚に訴える
<映画の言葉>を通じて、映像の中に刻みつけていく。

懐かしいけれど新しい、おかしいけれど切ない、
リアルだけどシュール。

アンビヴァレントな個性が際だつ語り口によって、
繊細に紡がれていく、家族の、人生の物語。

実が成らず、花も咲かなかった無花果の木が、
家族の思いに培われて白い花をつけるラストシーンには、
ふんわりとした、心地よい感動が広がる。

8月29日リリース。

STORY

私と母と父と弟、恋人と2度目の父。
生と死の香る無花果が見つめる庭で、誰かを信じたくなる物語。

2006　カラー　90分

詳細は、こちらより。

STAFF

原案・監督・脚本：桃井かおり

CAST

桃井かおり(母）、山田花子（娘）、石倉三郎（父）
高橋克美（新しい父親）、岩松了（男）、光石研（母の弟）
渡辺真紀子（隣の女）、HIROYUKI（弟）

momoi tree note

ある日、台所に居る母の腋の下に、男の髭のような毛が生えている事を知った。「大きくなると　女は誰だって　卵を1つ　腋の下に抱えて生きて行く事になるの･･･。だから　毛が生えるの」だと、母は小さかった私に教えたんだった。あれからずぅっと、母の卵が気になっていた。死ぬという事は、日常が突然TVのスイッチを切るように終わるんだと思う。なら、生きてるという事は、日常が在るという事だ。卵がゴロゴロしているという事だ。腋の下からカラフルな卵を1つ1つ取り出して、潔くこの映画に捧げてくれた戦友たちに、感謝、感謝。

4 桃井かおり
4 山田花子

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