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interview:鈴木慶一

Friday, March 23rd 2007

ムーンライダーズ

『マニアの受難』Collector's Edition 30th Anniversary Premium BOX

 
結成30周年を迎えて様々なリリースやイベントが続いたムーンライダーズ。それらのお祭りのひとつのピークともいえる、音楽ファン感涙のドキュメント映画「マニアの受難」。そしてこの映画を軸にした3枚組のボックスが3月21日にリリースされた。これをうけて、HMV.co.jpでは鈴木慶一氏にメールでインタビューする機会を得た。

鈴木氏らしい丁寧な回答を頂いたなかで、やはり「良いミュージシャンは同時に良いリスナーである」ということ、そしてムーンライダーズの30年が日本の音楽シーンにどれほど無数の種を撒いたか、という事実を実感。

30年経っても相変わらずフレッシュな感覚で我々を驚かせつづけるムーンライダーズ。その根底に脈々と流れるミュージシャンシップを今回のドキュメンタリー映画、野音映像でぜひ感じて頂きたい。

 

   
30th Anniversary Premium Box
30th Anniversary
Premium Box

発売中
HMVレビュー:昨年末公開されたムーンライダーズのドキュメンタリー映画『マニアの受難』が早くもDVD化。映画本編はもちろん、野音、新宿ロフトで行われた30周年記念ライブの模様から、本編ではカットされている演奏をフルヴァージョンで収録。ファンはもちろん、日本のロックを知るうえでも貴重なバンド・ドキュメンタリー。全ての音楽ファンに!!
   
30th Anniversary Premium Box
Moon Riders The Movie: Passion Maniacs マニアの受難

発売中
HMVレビュー: 日比谷野外音楽堂で豪華ゲストを迎えて行なわれたライブの模様を中心に、バンドの記録映画のサントラとしてリリース!あがた森魚、エンケン、高橋幸宏、曽我部恵一など超豪華なメンツが参加!
   
■Special Interview:鈴木慶一■
 

─BOXのdisc-1となる映画「マニアの受難」を制作していく中で、監督/スタッフの皆さんと特に話されていた事、意識されていた点などはありますか?

  『この30年続いてしまったバンドの過去を描く部分があっても、それは当然であろうとは思いますが、現在が最終的には、見えるようにと気をつかいました。現存するバンドなので。そして多くのメンバーが、過去に過剰な思いは無いので。』
           

─この映画はいわゆる"バンドのドキュメンタリー/ヒストリー映像"というものを超えて、バンドの有り様がそのまま音楽史の一つの流れを映すことができるという点でムーンライダーズだからこそ作り得た作品だと思いますが、本作によって当事者として逆に気づかされた事や再認識された点を教えていただけますか?

  『まず、メンバーとは音楽上での付き合いしか無いので、各人の考えが、今頃わかったりして面白かったです。それは、昔わかっていた事とはかなり変化したと言う訳です。それと、レコード会社、出版社、ミュージシャンの音楽シーンにおける、微妙な立場や行動形態の違いが感じられて面白かったです。みなさん、本音を言ってますんで。こういう風景はなかなか見れなかった事だと思います。このバンドだから引き出せたんでしょうね。』
           

─30周年記念ライブでは実に豪華なゲスト達が多数参加されていますが、どのような経緯でゲスト出演が実現したのでしょうか?バンドからアプローチをかけたのでしょうか?

  『ゲストの選択は難しかったです。6人のメンバーの関わる人たちすべてに及んだら、それは6時間のライヴになってしまったでしょうね。で、結局は外部の意見を重視して、私も含めて、あまりメンバーからのアプローチはありません。決まってからは、選曲の問題においてビル・グレアムのように私はなりましたが。』
           

─BOXのDisc-2は野音ライブからのベストテイクを収録されたという事ですが、中でもとくに印象深い場面・瞬間・エピソードを教えて下さい。

  『Disc-2は映画に使われた野音のシーンを、すべてフルサイズにしたものです。毎回観るたびに印象は変わるんですが、あがた氏の我々の紹介が、すべての歴史を物語ってると思います。プレイしている最中も感動的でした。』
           

─この4月30日の日比谷野音の前週に3つ、新宿ロフト〜新宿Faceにおいてムーンライダーズ内の別動隊も含めたライブを行われていますが、そのライブについても少し教えて頂けますか?

  『新宿Faceの2回のライヴは、バンド内のユニットやソロの歴史を表現する、20周年の野音の時のゲスト多数というジョークの(ゲストはメンバーのソロが中心でした)延長線上にあるライヴです。そして新宿ロフトのライヴは、ロフトも30周年なので、その企画にのっとったものです。我々がニュー・ウェーヴ的になった頃によく出演していたので、その頃に交流が始まった、シネマとポータブル・ロックにお願いして再結成してもらいました。一緒にやろうよって。で、私の髪型も当時のようになってます。』
           

─バンドを始めた当初から考えていて未だ実現していないことというのはありますか?

  『ヒットチャートを駆け上がって行く代表曲です。』
           

─この映画も含めムーンライダーズの30年の活動というものを振り返って、御自身のなかで一貫して変わらないと自覚されているものはありますか?

  『センス・オブ・ヒューモアと、いい聞き手であり続ける事です。自分の作品を、聞き手として客観性を持って聞くと言うこと、それが次の作品を生み出すのです。もっといいものを作ろうと。』
           

─ムーンライダースの30年間は日本のロックの30年。現在の日本の音楽シーンや音楽を取り巻く環境について、どのようにお考えでしょうか?(例えば、音楽配信、CDの売り上げ減少など...)

  『音楽配信の実験は、一番手にやった記憶があります。数々のCodecのテストもかねて。音楽好きなら、どんな形態で聞いてもかまわないと思いますが、我々の作ってる音楽の質感はスタジオでの環境において最大の効果を発揮するようになってます。そして1枚のCDとして聞かれる事が目的でもあります。音質のクォリティのダウンだけは、作っていて譲れない。ずっと録音技術との付き合いが30年。そこから先、どう聞くかは感知しません。お好きなようにと思ってます。CDの売り上げ減は、メジャーのレコード会社に打撃を与えます。それはミュージシャンにも当然及ぶでしょう。それは、会社として帳尻さえ合えば、どんな音楽も作ったり、発売したりしていいと言う事が減る訳です。結果、現在の自分たちのレーベルを持つと言う結論に至りました。』
           

─個人的な質問になってしまいますが、鈴木慶一さんが最近気に入っている、興味が湧いている音楽(洋・邦問わず)、映画、本、などハマっているものなどありましたらご紹介ください。

  『音楽においては、スフィアン・スティーヴンスがアメリカ全州のアルバムを出せるのかどうか。アンディ・パートリッジの娘は今後、どんな音楽をやるのか。映像ではスパイナル・タップは「みんなの歌」でフォーク・ミュージックに傾倒したが次は何なのか。』
           

─それでは最後に、HMVオンラインをご覧の皆様へ、メッセージをお願いします。

  『いろんなCDやDVDを購入してて、本当に感じますが、欲しいモノはリリースされた時にすぐ買っておけ、です。すぐ手に入らなくなって悔しい思いをする、心からそう思います。』
           

           
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