Nicolay インタビュー

Thursday, July 27th 2006

『Here』発売記念インタビュー

Nicolay
… オランダ出身のトラックメイカー。インターネットを介して知り合ったLittle BrotherのMC=Phonteと知り合い、Foreign Exchangeとして活動を始め、2004年にはBBEよりアルバム『Connected』をリリース。 世界規模で一躍脚光を浴びることになる。


ソウルフルでありながらもモダンなテイストを感じさせるプロダクションは評判を呼び、インスト・アルバム『Connected Instrumental』までリリースされた。


その後もStrange Fruit ProjectHavanaなど数多くのアーティストに楽曲を提供し、いまやその人気は確固たるものとなっている。


Interview with Nicolay


長年住んでいた地元のオランダを離れたということですが、今はどちらを拠点に活動しているのすか ? 差し支えなければその理由と、活動の場を変えて何か変化があったか教えてください。

Nicolay(以下N):今年の5月からアメリカに移り住んでるよ。家族のもとを離れて新境地に身を置くことは、本当に大きなステップだったよ。でも自分が次のレベルにいくためにはそうすることが必要だと感じたんだ。"インターネットの向こう側にいる相手"では、限界があるんだよ。実際にアーティスト達と同じ時間、空間をシェアしながら曲を作るときが来たんだ。こっちに来てから暫く立つけど、これまでの習慣、価値観を大きく変えなくてはならないこともあったし、まだまだ"未知の世界"だよ (笑)。でも間違いなくいい時間を過しているよ。

これまでミックステープ・アルバム、インスト・アルバムと発表されて、今回の「Here」は全面的にヴォーカルをフィーチャーしたアルバムになりましたね。普段ヒップホップを聴かない人にも受け入れられる非常に素晴らしい作品となったと思いますが、ニューアルバムのコンセプトなどありましたら教えて下さい。タイトルの意味も。

N:自分にとってアルバムとは、その瞬間に自分がどのような存在であり、また何処にいるかのスナップ写真みたいなものなんだ。アーティスト的にも、そして個人的・私的にもね。今回もいまの自分のありのままを投影しただけ。ハードでエッジの効いたboom bapなヒップホップがあったり、ソウルフルでミッドテンポな楽曲だったり、そしてちょっとしたインストまでみんなが楽しめる内容だと思うよ。

このアルバムのタイトルには、いくつかの違った意味が込められているんだ。まず、アメリカの彼女がまだ自分がオランダに住んでいた頃に言ったこと、「私は”ここ”(HERE)にいて、あなたは”あっち”(THERE)。ちがいは"T"だけじゃない。」。その言葉に胸を打たれたよ。それで今回のジャケットのタイトルの"HERE"の前にぼんやりと"T"をデザインしてもらったんだ。"HERE"(こっち)と"THERE"(あっち)の違いは"T"だけなんだよ。それは住み慣れた母国を離れた自分にもあてはまったからね。

※ ジャケットと言えば ... : 実はジャケットに写っている男性はトライブ・コールド・クエストのアリなんだよ !!!! ジャケットを手掛けた"fawhamajam" (Little Brother『Listening』、Foreign Exchange『Connected』などのアートワークも手掛けたデザイナー) 談

参加しているヴォーカリストについて簡単にご紹介していただけますか ?

N:このアルバムには、Black Spade、Foreign ExchangeのDarien BrockingtonとYahzarah、Tribe Called QuestのAli主宰レーベル:ガーデン・シーカー・クルーからSy SmithとファウンデーションのKay、そしてピッツバーグ出身の若干18歳のMC、Wiz Khalifaが参加してる。

今回の「Here」ではヴォーカル部分の作曲やアレンジもされたのですか ? 歌もの、ラップもの、インストとトラックメイキングで違いはありますか?

N:リリックや歌詞を書いたりはしてないけど、作曲、レコーディング、ミックス、マスタリングと自分で出来ることは全てやったよ。歌モノとラップの違いに関してだけど、自分にとっては全く違いはない。音楽は音楽だから。テクニック的に厳密に言えば違うのかもしれないけど、でも結局一番大事なのはフィーリングなのかな。



*Nicolay/Here

【ディスク1】
01. Here (Intro)
02. I Love The Way You Love feat. Darien Brockington
03. I Am The Man feat. Black Spade
04. Give Her Everything
05. What It Used To Be feat. Wiz Khalifa
06. Good Days Are Gone feat. Black Spade
07. Let It Shine For Me
08. The End Is Near feat. Black Spade
09. Adore feat. Yahzarah
10. Here (Outro)
11. My Story feat. Kay & Sy Smith


【ディスク2】
01. Rock 'N' Roll feat. Kay and Liz Vaughn
02. I Love The Way You Love [Instrumental]
03. I Am The Man [Instrumental]
04. Hold Me Down (Remix) feat. Gridlock Fam
05. Give Her Everything [Instrumental]
06. What It Used To Be [Instrumental]
07. Recovery feat. Darien Brockington
08. Good Days Are Gone [Instrumental]
09. Adore [Instrumental]
10. Got U feat. Kay and Nicole Hurst
11. My Story [Instrumental]
12. The End Is Near (Remix) feat. Black Spade and Gridlock Fam

・8月19日発売
・2CD(日本国内独自仕様)




日本のHipHopファンの間でも貴方の存在はとても有名ですが、改めてそのきっかけとなったForeign Exchangeの経緯を教えていただいてもよろしいでしょうか ?

N:Roots主宰のオーケイ・プレイヤーのメッセージ・ボードを通じてPhonte(Little Brother)とは知り合ったんだ。実際話してみて好みの音楽だったり、音楽に対する考え方でお互いに共通することが多くて。その後、ビートをいくつか聴いたフォンテが一緒に何かできないかと言ってきたんだ。その後一年半くらいお互いレコーディングしたファイルをやりとりして、「あれっアルバム一枚できたんじゃない? って」。そんな感じかな。

Foreign Exchange以前はどのような活動をしていたのですか ? オランダではK-Ci&JojoやBoyz II Menのオープニング・アクトを務めたこともあると伺いましたが...。

N:その通りだよ。ライブをやめてプロダクションに専念しようと決めた数年前までいろんなR&Bやファンクバンドで演奏してた。

何か楽器は弾けますか?

N:もちろん、ギター、ベース、キーボード、ドラム、何でも弾けるよ。

幼い頃聴いていた音楽は何ですか?

N:母親がかけていた音楽を聴いてたかな。彼女はクラシックからNeil Young、そしてStevie Wonderまで何でも聴いたんだ。そのおかげで自分の音楽がこれまで幅広くなったんだろうね。それと80年代だったから、やっぱりPrinceにのめり込んだ。でもDuran Duranや、Tears For Fearsなんかもよく聴いたよ。いまでもその頃(80年代)の音楽は大好きだよ。

貴方のサウンドにはソウルフルでなんともいえぬ心地よさがありますが、そのルーツとなったプロデューサーかアーティストをジャンルを特定せずに教えていただけますか?

N: ありがとう。影響を受けたプロデューサーやアーティストと言ったら、やっぱりPrinceだね。あとはJay Dee、いまの自分があるのはこの2人の存在が大きい。天才としか言えない作詞・作曲のセンス、そしてそれを実際に音楽で表現するPrinceにはいつも驚かされるよ。実は昔、何もかも紫色のものを集めてたんだ(笑)。それとJay Deeのビートを始めて聴いたときも同じくらいヤラれたね。それからずっとゾッコンだよ。

現在好きなプロデューサー、気になるプロデューサーはいますか ?

N: やっぱりJay Deeかな。心から冥福を祈ってるよ。彼はいつでも最高だった、もちろんビートは言うまでもないね。あとDj PremierPete Rock、Organized Noise、DJ SpinnaDJ ScratchDa Beatminerz 、Ali、Ummahの大ファンだよ。あとは、Jay Deeのブルック、Strange Fruit ProjectのSymbolic One、Illmind、Black Spade辺りのビートはヤバいね。もちろん9th Wonderも忘れちゃいけない。たくさんいるね(笑)

フェイバリット・アルバム3枚挙げてください。

N:難しいなー。その時その時で変わるかも知れないけど、いまパッと思いつくのは、


左から:Prince『Sign Of The Times』(1987)、Tribe Called Quest『Low End Theory』(1991)、Beach Boys『Pet Sounds』(1966)

かな。ここで挙げなかった他の素晴らしいアルバムに申し訳ないな。

これまで手がけてきた多くの作品の中で、印象的だった仕事とエピソードがあったら教えてください。

N:それを語るにはレコーディングの裏側だったり"BEHIND THE SCENE"を全て記録しなくちゃならないな...。全部だよ。

将来、共演してみたいアーティストは?

N: まず誰よりもCommon。彼はフェイバリットMCだからね。そのほか ? 共演したいアーティストは山ほどいるよ (笑)。Prince! もしこれを呼んだら連絡くれ !

今後の活動は?Little Brotherのようにメジャーシーンでの活動に興味はありますか ?

N:いまは、アメリカ、カナダ、ヨーロッパで行われるアルバムのリリース・ツアーに備えて準備しているよ。それが終わったら、PhonteとForeign Exchangeのセカンド・アルバムに向けてレコーディングを始めるつもりさ。それとGridlock Famのデビューアルバムのプロダクションを全て手掛けることになってるし、Dutch Mastersの第二弾も控えてる。どちらもHard Boiled Recordsからドロップされるよ。チェックしてね。もちろんメジャーでの仕事には興味があるよ。でもそれはどちらにも有益であるようなコンディションじゃないといけない。実際、巨大な池に住んでいる小さな魚でい続けることに興味もないし、そうする必要もない。小さな池の大きな魚のほうがよっぽどいいってこともあるしね。わかる ?(笑)

日本のファンに一言!

N: 数年前に合気道を始めてからは、日本の文化と歴史には興味を持ってるよ。近いうちに日本に行けるといいな。

ありがとうございました!

協力:ULTRA-VYBE, INC.



*Nicolayディスコグラフィー


左から:『Dutch Masters Vol.1』(2005)、『City Lights Vol.1.5』(2005)、Foreign Exchange『Connected』(2004)、Foreign Exchange『Connected Instrumental』(2005)

*Nicolayワークス


左から:Strange Fruit Projec『Healing 』(2006)、Roy Ayers『Virgin Ubiquity Remixed 』(2006)、Supastition『Chain Letters』(2005)、Little Brother『Minstrel Show』(2005)、Proov『Battle Mode』(2005)、Sy Smith『Syberspace Social』(2005)、


左から:Cesar Comanche『Squirrel & The Aces』(2005)、Havana 『Life 』(2005)、Little Brother 『Chitlin Circuit』(2005)、Rapper Big Pooh『Sleepers』(2005)、Little Brother 『Okayplayer: True Notes Vol.1』(2004)

*Nicolayオフィシャルサイト
⇒ http://www.nicolaymusic.com/



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