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クセナキス『エリフソン』の世界初録音!

Sunday, November 21st 2004

クセナキス管弦楽作品全集 vol.W
伝説の秘曲『シナファイ』に続く快挙!
『エリフソン』の世界初録音!

 あの《シナファイ》から2年、このコンテンポラリー・ジャンルにおいて空前のヒットを記録したCDの続編。前作は週刊誌やテレビで話題になった日本はもとより、海外でも高く評価されました(仏ル・モンド・ドゥ・ラ・ミュジック誌 "CHOC" 2003年度現代音楽部門グランプリ、仏ディアパゾン誌“★★★★★”、英BBCミュージック・マガジン誌“★★★★★”、独フォノ・フォルム誌“★★★★”、西Music Espagne誌“★★★★★”など)。

 今回も《シナファイ》同様、技巧において空前の難易度で知られるピアノ協奏曲《エリフソン》が大いに注目されます。アテネ・オリンピックで世界が沸き、古代ギリシャの英雄アキレスを題材にした映画(ブラッド・ピット主演『トロイ』)がヒットした2004年は、ギリシャの作曲家クセナキスによる、アテネ王の名を冠したピアノ協奏曲で締めくくられることになるのです。

 《シナファイ》でも話題になったピアニストの肉体的生理を無視して展開する複雑なピアノ書法(10段16声部に及ぶ部分もある)を、コツコツと演奏用譜に直し、複雑な音塊を丹念にひろいあげた大井浩明と、コンテンポラリー・フィールドにおけるエキスパート、タマヨとのコンビは前作にも増して絶好調、今年6月にルクセンブルクでおこなわれたセッションも大変順調に運んだということです。

 今回の《エリフソン》は《樹形曲線(アルボレッサンス)》といわれる書法が用いられていますが、そのスコアへの忠誠度は、ひょっとするとクセナキスの想像以上かもしれません。

 《エリフソン(エリフソニオス、エリクトン、エリクトニオス)》(原義は「大地の力」、または「ちはやぶる大地」)とは、神話上のアテネ王の名前。アテーナー女神が武器を注文しにヘーパイトスを訪れた時、いきなり強姦されかかり、脚にふりかかったヘーパイトスの精液を女神が毛で拭き取り地に投げ捨てたところ、大地がみごもって生まれたのがエリフソニオス。アテーナーは神々に秘して箱の中でエリフソニオスを育てていたが、ケクロプス王の娘達が好奇心にかられて箱を覗き、蛇の姿をした赤子を見て発狂・投身。長じてエリフソニオスは、ケクロプスの後を襲ってアテネ王となり、水のニンフのプラークシテアーを娶った…という話*。ちなみにクセナキスの第3ピアノ協奏曲は《ケクロプス》と名付けられています。

 楽譜出版社サラベールが《エリフソン》の参考音源として頒布しているのは1974年5月21日にヴァンセンヌ植物園でミシェル・タバシュニク指揮ORTF管弦楽団、独奏クロード・エルフェで世界初演されたときのライヴ録音。
 大井浩明は10数年前、その音源を所有する藤田現代音楽資料館を訪れ、スコアを見ながら聴いてみたといいます。しかしながら演奏は「スコアの完成が遅れたとは言え、3ヶ月前には到着していた筈の冒頭ページからして完全に滅茶苦茶、ダグラス・マッジの《シナファイ》LPのほうが遥かに良心的と言えるくらいのレベル」でしかなく、その時点ではさっぱり興味が持てなかったとのこと*。
 ジェフリー・ダグラス・マッジはブゾーニのピアノ作品の体系的なシリーズ、ソラブジの大作《オーパス・クラヴィチェンバリスティクム》などのレコーディングを行っているイギリスのピアニスト。《シナファイ》もLP時代に録音していますが、よく言えば「自己流」、悪く言えば「アバウト」な演奏は批判の対象になることが多いとか。
 その後、大井浩明は第30回ガウデアムス国際現代音楽演奏コンクール(1996/ロッテルダム)、第1回メシアン国際ピアノコンクール(2000/パリ)、第3回朝日現代音楽賞(1993)、第11回アリオン賞奨励賞(1994)、第4回青山音楽賞(1995)、第9回村松賞(1996)、に入賞・受賞し、大きな注目を集めるピアニストとなります。
 そして、2001年2月にクセナキスが死去、そのわずか10日後に大井浩明はメシアン国際ピアノコンクールの審査員であった園田高弘の強い推薦により第11回出光音楽賞(2001)を受賞。授賞セレモニーで東京シティ・フィルと希望曲を演奏できると知らされた大井が、追悼演奏として取り上げたのが《エリフソン》。日本初演となったその模様はTV「題名のない音楽会」でも放映されていました。

 アルトゥーロ・タマヨの指揮によるシリーズの第4弾となる今回のアルバムでは、『エリフソン(エリクトン)』のほか、3曲の作品が収録されています。
 『アタ』は、89人の音楽家のための作品で1987年の作曲。大井浩明が超絶技巧を聴かせる『エリフソン』は、ピアノ独奏と88人の音楽家のために書かれた作品で、1974年の作曲。同じく大編成の『クリノイド』は71人の音楽家のための作品で1991年の作曲。『アクラタ』は16の木管楽器のために書かれたもので1965年に完成されています。以上、どの曲も11分から16分規模の聴きやすい長さなので、クセナキスが初めてという方にも比較的とっつきやすいものと思われます。(* 大井浩明チェンバロ・リサイタル・プログラムより引用)

ヤニス・クセナキス(1922−2001):
・アタ ata
・エリフソン erikhthon(ピアノ協奏曲第2番)※
・アクラタ akrata
・クリノイド kriniod

大井浩明(ピアノ)※
アルトゥーロ・タマヨ 指揮 ルクセンブルク・フィルハーモニー


クセナキスのプロフィール
1922年5月29日ルーマニアのブライラ生まれ。両親はギリシャ人。幼い頃からビザンティン音楽に興味を持ち、10歳のときに家族と共にギリシャに戻り、スペツァイでプライヴェート・スクールに通います。この頃のクセナキスはベートーヴェンやブラームスを熱心に学んでいたということです。

その後、数学と建築を学ぶためアテネ工科大学に進みますが、第2次世界大戦により中断を余儀なくされます。当時のクセナキスは共産主義の抵抗運動で英雄的な活躍ぶりをみせますが、1944年、銃撃戦により顔に重傷を負い左目を失明。その後も抵抗運動を続けた彼に対し、政府は欠席裁判で死刑まで宣告したため、クセナキスは偽造パスポートを使ってどうにかパリに亡命することとなります。

パリでは高名な建築家のル・コルビュジエに学び、後に彼の助手(1948〜1960)としてナントやマルセイユでの住宅供給計画、バグダッドの競技場、1958年ブリュッセルでのワールド・フェアーのフィリップ・パヴィリオンの建設などに従事していきます。

その一方、作曲への興味も失わずオネゲルやミヨー、メシアン、シェルヘンと出会って個人的に作曲を学んでいます。

 ジョン・ケージなど多くの作曲家が偶然性・不確定性、あるいは即興性を追求しはじめた1950年代の後半に、クセナキスの確立したミュジック・ストカスティック理論は、ジャック・ベルヌーイの法則によりながら、偶然の試行の反復から未知の、しかし全体としては完全に制御された複雑な音響の運動体を構成する数学的な方法でした。

テーマや音列、リズム・パターンのような音楽的な前提をまったくもたず、ポワソン分布などの確率過程をつかって音の高さ・長さ・密度(単位時間内の音数)・音色配分、さらに全曲の構成(マクロ・コンポジション)にいたるすべての局面を決定するこの手法は、21楽器のための『アコリプシス』(1958)にはじまり、やがてコンピュータ・プログラムによって『ST10』(62)など一連の器楽作品をつくりだすことになります

 一方、「完全な連続体には時間や空間の切れ目がない、それは存在であり、非存在でもある」という論理的な前提から、前後関係の鎖である空白のない時間と、密集した点の集合体の瞬間ごとの静止画像である空間(「時間外」関係)が生まれるといい、この静止画像の概念から、音高組織を群論や論理演算によって操作する「篩(ふるい)の理論」がつくられることとなります。これは、いままでの音階・旋法・和声学も含む、より一般的な音高組織論であるばかりか、リズム・パターンの生成と変化にも応用されています。

 このようにまったくランダムな状態(カオス)から厳密な論理と数学的手法によって秩序を構成しようとする態度は、コンピュータによる音響合成でも、いままでのように正弦波から出発し「有限回の操作を加えて無限の変化をつくりだそうとする」やりかたとは反対に、様々な確率関数によるランダムな音波にすこしずつ規則性をもたせていく方法(「ダイナミック・ストカスティック・シンセシス」)が模索され、この音響生成(ミクロ・コンポジション)から全曲構成までを重層的な確率過程によって組み立てるコンピュータ・プログラムがつくられているのです。

 このプログラムは、ジョルジュ・ポンピドゥー・センター前の双曲放物線のカーブをもつ赤いテントのなかでおこなわれた音と光のスペクタクル『ディアトープ』(78)のなかで、400の鏡に反射する4基のレーザー光線と1600個のフラッシュライトが描き出す複素数関数や確率関数による図形とともに演奏された7チャンネル・テープの音楽『エールの物語(La legende d'Er)』などに使用されましたが、複雑な計算過程は現在のコンピュータでリアルタイム処理できる限度をはるかに超えていて、結果を予見することは不可能に近いとも言われます。

 これとは別に、クセナキスがパリのフランス郵政省の建物内に設立したCEMAMu(数理的自動音楽研究センター)でつくられたUPIC(CEMAMu多種情報訓練ユニット)システムは、デジタル・ボードに描かれた線や図形を音に変換する装置で、これを使用した彼自身や他の作曲家の作品はすでに多数発表されています。作曲以外にも、こどもたちのための音楽教育ワークショップに利用されたり、音響学実験や音楽学的分析につかうこともできるようです。

 これらの方法やシステムをもたらした思想や音楽理論は、古代ギリシア哲学(特にピタゴラス、パルメニデス、プラトン、エピクロス)、古代ギリシアから中世ビザンチン音楽にいたる音程理論、確率論・群論などの現代数学にその源をたどることができますが、それによってつくられた音色群の激しい運動は、若いクセナキスの関わったギリシアの抵抗運動や、その後の内戦の記憶をとどめたものといえるでしょう...続く

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Orch.works Vol.4: Tamayo / Luxembourg.po, 大井浩明(P)

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Xenakis (1922-2001)

User Review :4 points (2 reviews) ★★★★☆

Price (tax incl.): ¥3,190
Member Price
(tax incl.): ¥2,775

Release Date:18/December/2004

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