二つの世界のアマデウス、神童コルンゴルトの栄光と苦悩
Thursday, March 27th 2003
ウィーンの儚い夢二つの世界のアマデウス、神童コルンゴルトの栄光と苦悩
旧い世界と新世界、ヨーロッパとアメリカ、ウィーンとハリウッド、音楽の都と映画の都・・・・併記する言葉の尽きない、ことごとく対照的な二つの世界がありました。月や星ほども離れているこの両世界双方で寵児として持てはやされた人がいれば、誰もが皆掛け値なしの天才だと心から褒め称えることでしょう。そのような、芸術の歴史上稀に見る本当の「天才」が実在していました。彼の名前は、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト。神に遣わされたとしか言い様のない正真正銘の神童、生まれながらの天才音楽家でした。
このDVD<コルンゴルト:神童の冒険>は二部構成となっています。音と映像による伝記「二つの世界の狭間で」の部分とコンサート映像の部分は完全に分かれていますので、最初のメニュー画面で選択してください。Korngold:A Portraitを選択すれば伝記のメニューが表示され、Korngold:Concertを選べばコンサートのメニューが呼び出されます。
「二つの世界の狭間で」では、ウィーン及び欧州各地またハリウッドとロスアンジェルスの美しい風景映像が走馬灯のように次々と映し出されます。幼少時から晩年に至る貴重なポートレート写真もふんだんに紹介され、彼が後半生を過ごしたハリウッドで制作された往年の映画の貴重な名場面も鏤められています。彼の伝記を書いたキャロルや義理の娘ヘレン、現在コルンゴルト作品の演奏に情熱を注いでいる指揮者ヒュー・ウルフなど、何らかの縁で彼と関り、深く魅了された人々のインタビューも差し挟まれます。直接彼の指揮する音楽を聴いたという画家や友人、関係者が皆一様に目を輝かせて美しい思い出を語ります。本物の天才を目の当たりにすることが出来た感動を終生宝物として持ち続けていることがうかがえ、神の寵児コルンゴルトの周囲にたちこめていた香気を如実に表しています。もちろん、全編至るところで彼の艶美な楽音が嫋嫋と奏でられ、とびきり美しい響きと画が一杯に詰まった素晴らしい映像番組です。
ウィーン楽壇で畏怖されていた「新自由新聞」音楽欄の主筆、高名な音楽評論家ユリウス・コルンゴルトの子供として1897年ブルノに生を受けたエーリヒは、モーツァルトにあやかってヴォルフガングという洗礼名を付けられますが、まさにこの名前に恥じない音楽の天才でした。10歳で完全に整った形式と豊かな内容を持つピアノ作品を発表し、耳の肥えたウィーン子を感嘆させます。11歳の作品、バレエ「雪人形」はウィーン宮廷歌劇場で大評判を取りました。画面上で演奏される14歳時の作品「劇的序曲」は、4巻編成の壮大華麗な管弦楽曲で、その完成度の高さには驚かされます。音楽の都に集う世界的な音楽家も無視するわけにはいきません。マーラーやR.シュトラウスは年端も行かぬ子供に自分達のような音楽が書けることに唖然とし、クライスラー、シュナーベル、ワルター達は天才少年の作品を愛児のように愛しみ、好んで演奏したといいます。
代表的な舞台作品とされる歌劇「死の都」は、初演後大評判となり、欧州各主要都市で再演されますが、男が死別した妻を忘れられず、愛妻の幻影を求めて狂気じみた幻想の中に沈んでゆくという筋を持つこの傑作を作曲したとき、コルンゴルトは弱冠二十歳過ぎでした。当時の聴衆がいかに驚嘆したか、現代人の想像を絶するものがあったことでしょう。このDVDでは、欧州時代のコルンゴルトの作品が代わる代わる抄出紹介されます。マーラーやR.シュトラウス、プッチーニなどの美しい上澄みだけを掬い出したような耽美的な音楽は、深刻な迫力には欠けるものの、まさに春の夜のおぼろな夢といった甘美な雰囲気に満たされています。J.シュトラウスの「ヴェニスの一夜」の復活上演にあたっても、作品を改訂、再構成し、彼の手によってこの作品が再び傑作として世に認められることになります。
しかし、この後のオペラ「ヘリアーネの奇蹟」は大成功を収めることはできず、傷心を抱いたコルンゴルトはオペレッタの作曲に向かいます。この分野でも天与の才を遺憾なく発揮しますが、さらに、交友関係のあった高名な演出家兼俳優のマックス・ラインハルトの手引きで映画の世界に足を踏み入れることとなります。メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の映画化に協力することが嚆矢となりました。
コルンゴルトはクラシックで名を成した作曲家とはとても思えないほど、器用に映画音楽特有の語法や制約を理解し、注文主の要求通りの音譜を生み出すことができたのです。ウィーンからやって来たオペラ作家に、映画音楽を巧みに仕立てるという他に得がたい貴重な才能も備わっていることが、瞬く間にハリウッド中に知れ渡りました。
その後、ユダヤ系という理由もあり、紆余曲折を経てコルンゴルトはハリウッドに居を移し、ワーナー・ブラザーズ映画会社と非常に有利な契約を結んで映画音楽の作曲に勤しむ日々を送ることになります。いわゆる黄金時代のハリウッド・サウンドが、後期ロマン派の重厚華麗なクラシック音楽の申し子であることは改めて記すまでもありませんが、こうした基本路線を引いた中心にはコルンゴルトがいたのです。欧州に散在していた二流の音楽家ではなく、ウィーンの保守本流の嫡子を掴まえたことはハリウッドにとってこの上なく幸運な出来事でした。ハリウッドもこの功労者に最大級の返礼で応えます。コルンゴルトはオスカーの栄誉に二度も輝くことになります。
こうして夢の都ハリウッドでも大成功を収め、おとぎ話の中のような生活を享受していたコルンゴルトですが、クラシックの大作曲家として世に認められたいという願望が時折ふつふつと湧き立ち、忘れ去ることはできませんでした。長生した厳格な父ユリウスも、息子がモーツァルトやベートーヴェンと肩を並べる存在になることを強く望んでいました。
コルンゴルトは決然と映画音楽の筆を折ることに意を定めます。1949年にウィーンに帰還し、再びクラシック音楽の世界で名声を獲得しようとします。(DVDでは触れられていませんが、かのフルトヴェングラーまで指揮棒を取ったりしました)
しかし、戦後の欧州はアヴァンギャルドな芸術への志向が強まり、旧きよき時代への追憶と郷愁に満ちたコルンゴルトの唯美的な音楽が受け入れられる余地は残されていませんでした。「通俗的な映画音楽作曲家」の烙印を押されてしまい、音楽の都からの冷ややかな歓迎を甘受しかねた失意のコルンゴルトは、不変の名士として遇してくれるハリウッドに戻ることになります。代表作となることを目論んだ交響曲も酷評され、第二交響曲を完成させようとしますが、彼にはもう時間は残されていませんでした。
1957年、ウィーンとクラシック音楽への望郷の念が胸裏から去ることのないまま、コルンゴルトはハリウッドで60年の生涯を閉じます。このDVDソフトでは、第二交響曲のスケッチがピアノで奏でられ、コルンゴルト晩年の沈潜した心情が重ね合わさり深い情趣を感じさせます。フォン・オッターが「死の都」のこぼれるように美しいアリアを歌う映像が流れる中、この映像伝記は静かに消え入るように終結を迎えます。栄誉栄華の夢の後といった名状しがたい寂寥感が漂う秀逸な番組構成です。
第二部のコンサート映像は、2001年にヘッセン放送スタジオで収録されました。コルンゴルトの忠実な使徒、ヒュー・ウルフがフランクフルト交響楽団を指揮した精緻で俊敏な管弦楽演奏は聴きものです。
最初に、1946年作曲のチェロ協奏曲が収録され、クイリン・フィアセンがチェロを弾いています。伝記番組でも紹介されている通り、音楽家が主役を演じる映画のために書き下ろしで作られた作品です。この映画「愛憎の曲」はコルンゴルトが音楽を提供した最後の作品となりました。以後、彼はクラシックの世界に舞い戻ろうと苦闘することになりますが、この協奏曲の小粋でモダンな音楽を耳にすると、当時の楽壇での低評価は不当なものとしか思えません。
10歳で作曲し、すでに完成された美しさをたたえているピアノ曲集「ドン・キホーテ」の第1曲とその数年後の「7曲のおとぎ話の絵」からの2曲は、ピアニスト・アレクサンダー・フライが演奏しています。ハプスブルク大帝国の首都として世界に輝くウィーンの光輝に満ちた気分が巧緻にピアノで表現された珠玉の小品であり、まさに神童のあかしです。
最後に、1946年作曲のヴァイオリン協奏曲が、レオニダス・カヴァコスの独奏で全曲収録されています。共感のこもった演奏で、コルンゴルトが万感を込めて打ち込んだこの曲の真価を明らかにしています。この作品は彼の代表作の一つであり、過去に作曲した映画音楽の中から綺麗な旋律を選りすぐって抽出し、巧みに紡ぎ合わせた逸品です。あらゆる作曲技巧が惜しげも無くつぎ込まれ、作曲家コルンゴルトのすべてがここにあるということができるでしょう。ひたすら美しい音が耳に注がれる半時間を体験した人は、ヴァイオリン協奏曲の歴史に残るべき傑作だと確信するのではないでしょうか。
伝記部分の音声はドルビー・デジタル2.0、コンサートの方はPCMステレオで収録されています。最新収録の高品位な映像と一体化され、質の高い映像ソフトに仕上がっています。映画の抜粋部分を除いて、ナレーション、インタビューさらに声楽曲の歌詞に至るまで日本語字幕も完備されています。コルンゴルトの尽きることのない魅力を再認識できると共に、音楽を中心とした20世紀の文化史を駆け足で見通すこともできる充実した内容のDVDです。
なお、同じARTHAUSからは、「死の都」の舞台上演(2001年ライン歌劇場)のライブ映像も発売されています。コルンゴルトの作品は、マルコポーロ、CPOを始めとする様々なレーベルからCD発売されています。特に、マルコポーロの映画音楽集とCPOの管弦楽曲、オペラ・シリーズは、他では入手できない貴重な作品を最新録音で楽しむことができるとても優れた企画です。「死の都」は、セーゲルスタム指揮の入手しやすいナクソス盤が筆頭に挙げられるものでしょう。
収録内容
ポートレート
イントロダクション
ウィーンの「神童」
初期の研鑽
歌劇「ヴィオランタ」
第一次世界大戦
室内楽曲
歌劇「死の都」
ルイゼ・フォン・ゾンネンタールとの結婚
歌劇「ヘリアーネの奇跡」
オペレッタ
ハリウッドへの移住
管弦楽譜作成におけるコルンゴルトのアプローチ
映画音楽「愛憎の曲」
チェロ協奏曲
ハリウッドでの生活
ヴァイオリン協奏曲
ヨーロッパへの帰還
交響曲の失敗
交響曲第2番
死後のカムバック
コンサート
チェロ協奏曲
6つの性格的小品「ドン・キホーテ」〜第1番「ドン・キホーテと英雄的行為へのあこがれ」
おとぎ話の絵 Op.3〜第4番「小びとたち」、第7番「エピローグ」
ヴァイオリン協奏曲
演奏・歌
ポートレート
レオニダス・カヴァコス、アンネ=ゾフィー・フォン・オッター、ベンクト・フォシュベリ、チェル・リュセル、ヒュー・ウルフ(指揮)フランクフルト放送交響楽団、サミュエル・ウェスト(語り)、他
コンサート
レオニタス・カヴァコス(ヴァイオリン)、クイリン・フィアセン(チェロ)、アレクサンダー・フライ(ピアノ)、ヒュー・ウルフ(指揮)フランクフルト放送交響楽団
収録場所 ポートレート:ウィーン&ロサンゼルス、ハリウッド コンサート:ドイツ、ヘッセン放送スタジオ
画面 アスペクト比 16:9
音声方式 ポートレート:ドルビー・デジタル2.0、コンサート:PCMステレオ
収録時間 144分(ポートレート:90分、 コンサート:54分 )
記録方式 NTSC 片面二層ディスク(DVD9)
字幕 英語・フランス語・スペイン語・日本語
for Bronze / Gold / Platinum Stage.
featured item
Import
The Adventures Of A Wunderkind-a Portrait And Concert
Korngold (1897-1957)
Price (tax incl.):
¥4,509
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(tax incl.):
¥3,653
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『死の都』DVD
Import
Die Tote Stadt: Latham-konig / Strasbourg.po
Korngold (1897-1957)
Price (tax incl.):
¥5,609
Multi Buy Price
(tax incl.):
¥4,600
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『死の都』CD
Erich Wolfgang Korngold : Die Tote Stadt
Korngold (1897-1957)
Price (tax incl.):
¥4,400
Member Price
(tax incl.):
¥4,048
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