二宮和也主演の映画『8番出口』の公開を記念して@Loppi・HMV限定マルチケース&アクリルストラップの販売が決定いたしました!
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2025年08月15日 (金) 12:00
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ゲームクリエイターKOTAKE CREATEがたったひとりで制作し、社会現象となった無限ループゲーム『8番出口』が主演に二宮和也を迎えて映画化。監督を務めるのは『百花』以来、3年ぶりの監督作となる川村元気。『8番出口』の映画化はどのように進んでいったかを聞いた。
(インタビュー・文/高畠正人 Photo/篠塚ようこ)
――映画プロデューサーとして『怪物』や『すずめの戸締まり』『告白』『悪人』『君の名は。』『怪物』などを世に送り出し、小説家としても『世界から猫が消えたなら』『四月になれば彼女は』を執筆されている発表してきた川村さんが、『8番出口』を映画化しようと思われた理由を教えてください。
川村 KOTAKE CREATEさんという20代の方がたったひとりで作ったゲームというのが最初の入り口でした。しかも、めちゃくちゃデザインがいいと思ったんです。白くて清潔で、空間ビジュアルが東京的だなと。一方で世界中どこの国にも地下道はあって、出口がわからず迷ってしまった体験をしている人は多い。デザインは凄く日本的なのに、体験としてはグローバルというのが面白いと思いました。
川村 その、物語がないところが良いと思いました。デザインがあって物語がないということは、小説家としての技術というか、そこに“物語”を作ることができるわけです。加えてアニメーション的なマジックリアリズムの表現を実写で持ち込んだら、アニメーションプロデューサーとしてのキャリアと、小説家としてのキャリア、そして“夢と現”が地続きに繋がるというディレクターとしての自分の表現を全部まとめて入れる装置になると思ったのです。
川村 ゲームをやったときに、これは能舞台だなと思ったんです。能には“見立て”(観ることによって無いものを出現させる)がありますがまさにそうだなと。
川村 それにループする空間ってなんだろうと考えると、ダンテの『神曲』における煉獄のような場所じゃないかと思い至りました。自分の罪を目の前に見せられている空間。そしてそこに入るのは、何らかの罪悪感を背負っている人であり、その人が背負っている罪悪感ってなんだろう? と考えていきました。もしくは、人間の体内だったら? 黄色い看板は神なのか? とか、マテリアルは少ないけども、そこに日本人的なセンスで見立てて物語を作っていきました。
川村 私のなかでは、ゲームの映画化というよりは、ゲームと映画の間にある曖昧な映像という認識です。通常の映画であれば、主人公の背景を説明すると思いますし、実際、私が書いた小説版にはちゃんと主人公の緻密な背景があります。ただ、(そういった主人公にそういった背景があることを)撮影現場では二宮さんに一切伝えませんでしたし、彼も何も聞いてきませんでした。そこはやっぱり彼の凄いところですね。
川村 ゲームって最初はまっさらで、やっていくうちにそのキャラクターのアクションやセリフでキャラクターに感情移入していくので、それでいいと思っていました。ただのモブ(無個性なキャラ)だったものが人間になっていくというプロセスがまさにゲーム体験に近いので、今回は映画を使った壮大な実験でもあります。
川村 あのMVはかなりリファレンスにしましたし、彼が地下鉄をテーマに撮ったシリーズもあって、ああいう90年代のビデオルック的な映像は狙っていました。私が『百花』でサン・セバスティアン国際映画祭で賞を頂いたときに一番褒められたのが、認知症の見ている世界をワンカットで撮った映像の部分だったので、今回は全編、その手法で撮ったら面白いんじゃないかと思ったんです。
川村 私は(『パラサイト 半地下の家族』、『グエムル−漢江の怪物−』、『ほえる犬は噛まない』)のポン・ジュノ監督を映画人として一番尊敬しているのですが、彼のやることはどこに行く予想ができないほど意味不明。刑事モノをやったあとに怪獣ものをやったかと思うと、母親の物語を撮ったりする。ああいうドキドキ感は大事にしたいんです。
川村 河内大和さんには能の俳優みたく幽霊みたいに歩いてくださいと伝えました。人間である河内さんに、人間じゃない動きをして貰いたかったんです。歩くときの上下運動がないように。あえてCGみたいに動くと、実写にしたときに凄く怖いんじゃないかと思いました。
川村 彼はシェイクスピア劇をずっとやってきた俳優でひたすら歩くってことをお芝居で鍛えられてきた人なので、今回の“歩く男”はお芝居の99%が歩くことなのであんなに適任な人はいない。そして、あんなに原作と似ている人はいないでしょう(笑)。
川村 この映画は日本で多くの人に観られたいのは勿論ですが、海外の方にも観て欲しい。その場合、海外では字幕になってしまうのでセリフは邪魔なんですよね。なので、冒頭でラヴェルの『ボレロ』を流すことで、“あ、この映画はループを観るのね”って伝える意図がありました。
川村 あの曲は究極のループミュージックなので、聴いた人は想像するわけです。他にも、壁に貼ってあるポスターにエッシャーの絵があることで、この空間は騙し絵で“メビウスの輪”なんだなと感覚的に伝わるわけです。音楽の棲み分けに関しては、網守くんには人間ドラマ的な部分、中田くんにはゲーム的な部分で音楽を作っていただきました。
川村 まさに観る前まで、「大丈夫?」「面白いの?」って空気感だったんですけど、終わったあとはなんか変なものを見たっていう熱狂が凄かったです。
川村 例えば『8番出口』を私がプロデューサーとして携わっていて、別の監督にあの映像手法を説明しても意味がわからないと思うんです。実際、脚本を渡したときのスタッフはめちゃくちゃ不安そうな顔をしてましたね(笑)。「これ、どう撮るんですか?」みたいな。
川村 ゲーム的な作り方をしようと思ったので、撮影と編集を同時にしていました。撮ったものを二宮くんと一緒に見て、「ここは感情が繋がっていないからもう一度やろう」ということになったら、脚本を書き直して、また撮って編集する。それの繰り返しを許してもらったのは良かったです。ただ、可能性が無限にあるので頭がどうにかなりそうでした。
川村 最初に「皆さん、不安だと思いますが僕もどういう映画になるかわからない」という宣言をしたんですけど、これまで40本以上映画を作ってきた自分にもどうなるかわからない映画だったら、観客の方も絶対に予想できないので、展開を読まれないだろうと。
川村 そうですね。連載マンガが面白いのは先が読めない面白さだと思うんです。それに付き合ってくれた二宮くんや小松さん、スタッフには感謝しかないです。
川村 小学生の子どもがループしているのが面白いって思ってもらうだけでもいいし、歩いているおじさん超怖い!って入ってくれるのも嬉しいです。一方で、“これはダンテの『神曲』だ”とか“人生の選択を描いている”という深読みをするのも楽しい見方だと思います。同じ映画館で色々な世代の観客が多様なレイヤーで“楽しんでいる”というのが一番リッチな映画体験だと思うので、そういうものを目指しました。
川村 映画館って凄くいいアトラクションだなと思っているんですよ。YouTubeやテレビは基本的に全てテロップで説明されます。でも映画館は外に出られないから、“なんだこれ?”と考える時間や、その先に“こうなるのか!”と驚く体験が可能となる。しかも『8番出口』は、映画館で体感することを考え抜いて作ったので、7.1チャンネルのサラウンドの音や大スクリーンに映る色、もっと言うと不安になっている時間すら楽しめると思います。自信を持って映画館で観ることをお勧めします。

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