【全曲解説】ALI PROJECT『若輩者』
2024年07月30日 (火) 20:00
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全曲解説テキスト by 宝野 アリカ(Vo) 片倉 三起也(Key)
1. 爆烈勇侠外伝
パチンコ曲は作ってから実際に機種に搭載されるまで1年は軽くかかるので、早くお知らせしたくてうずうずしていました。それくらい好きな曲なんです。歌のキーも高いGまであるのだけど、このメロディだと地声で歌えてしまう。そういう自分の声わりと好きなんです。裏声の高い綺麗な声より張った声の方が。それが生かされた楽曲ですね。歌詞も“勇み肌”とか“勝利の女神 抱き寄せて”とか我ながらイカしてるし、西条八十の昭和の名曲から拝借の“花も嵐も 踏み越えて”もドンピシャです。(宝野アリカ)
CD化したかった曲です。配信ではなくてやっぱりCDがいいな。アルバムですからジャケットを手に歌詞を見ながら曲順通りに聴いて欲しい願いの1曲目。若々しいですよね、この曲は。まるで若輩者が作り出す曲です。ウケ狙い曲をたくさん作って宝野さんが歌ってバンド名を変えて、年齢いつわって顔出ししないで、YouTubeにアップして、再デビューをマジ考えた曲です。(片倉三起也)
2. 若輩者
最初「亡國覚醒カタルシス」が後ろに聞こえてたんですけど(笑)、そこは聴き続けているうちに別の世界が見えるようになって、うまく「若輩者」の世界に収めることができました。最近思うことは、新しい世代の若者に合わせる、みたいなのってバカらしくねー?ってこと。ちょっとしたことでもパワハラ、セクハラにならないように部下に気を使わなきゃならない上の人の立場が気の毒で(笑)。甘っちょろい若造なんて張り倒せばいいじゃん!て。いや絶対ダメなんでしょうが(笑)。だから年なんて意識せず、いつまでも若輩者なまま、好きだと思える仲間と、これからも好きなことやっていこーぜ、という私流の応援歌のような歌になりました。(宝野アリカ)
「聖少女領域」や「亡國覚醒カタルシス」時代のプチ・ヒットした高揚感がほろ苦く甘く蘇る昨今です。音楽とは発明することと意気込んでいました。その頃を思い返して作りました。ゴシックな曲を書いてと言われたので、ズバリこの曲になりました。(片倉三起也)
3. BLACK ROSE
これはすごく歌いやすかったです。ゲーム用で、ゲームの世界のままを歌詞にしているのでファンタジックだし、そういう意味でもさらっと歌えるんだと思います。この声、ものすごく若々しくない?!伸びやかで気持ちよくて、かつ物語の世界も明確に伝わる。プロの歌だなぁ、私ってうまいなぁとつくづく思いました。好きな曲だったからアリプロでもずっとやりたかったから嬉しいです!(宝野アリカ)
この曲はゲーム用に提供した曲です。宝野さんが歌うとまるで王道アリプロです。委嘱作品は提供したらほとんど聴くこともないのですが、セルフカバーをやってみてドラマチックな仕上がりになりリピートしております。(片倉三起也)
4. 反國陰謀ディストピア
前々から「黒百合隠密カゲキダン」みたいな皮肉のこもった歌詞をと言っていたけれど、それ以上になりました。私はアルバムタイトルを「ディストピア」でやりたいくらいに思っているのですけどね。でもとりあえず1曲に纏めたからいいか。でもさらにいくらでも広げたいし、もっとダークファンタジーにも描きたい。でも今や絵空事ではなく本当のディストピアになりつつある世界。というかもうなってる国もある。戦争のことだけではありませんよ。日本は平和で豊かで賢い国だったのに、そうじゃなかったんだという絶望感がひたひたと……。移民とか入れてんじゃねーよ!バカな国とは国交断絶すべき!あー私の書いてきたヤマトソングこそ絵空事になっていくのでしょう。この歌詞で私が特に使いたかった言葉NO1は“家畜”です。どうやってこの言葉を巧みに品良く使うかに心を砕きました。あはっ。(宝野アリカ)
壮大なアリプロ・オーケストレーションです。生オケも考えましたが、PC(ソフトシンセ)で完結しました。この方がエッジもあってゴリゴリ感増します。当初イントロにバロック調ピアノ・ソロが入っていたのですがカットしました。いつものアレンジ手法ですとイントロのイントロがあったり構成が芳醇すぎて、でも最近飽きてきて、ロックならリフから始まって歌でしょ。なのでシンプルにリフから始まり、リフに歌が乗る、この方が歌が伝わる。(片倉三起也)
5. 聖少年遊戯
キーが合わないので歌録りは苦労しましたけど、原曲のキーを変えることなんて絶対しませんよ。これは「あんさんぶるスターズ!」旧Valkyrieに捧げた曲なのですもの!大切に歌わせていただきましたですわよ。同じメロディをオクターブ高いのと低いのとで歌ったり工夫しながら録りました。少年たちのめくるめく青き日々、のイメージを私の声で歌ったつもりです。「あんスタ」版とぜひ聴き比べてみてください。ふたつのめくるめく世界が味わえます。(宝野アリカ)
提供曲は歌割りがあって数人で歌唱しています。音域がかなり広いのですが分厚いハモリやオクターブ・ユニゾンで対応しました。ゴシック曲なので効果的でしたね。(片倉三起也)
6. 若気ノ至リ
若気の至り、っていい言葉よね!なんか瑞々しくも愚かで切なくてキラキラしている、というか。大人になるとそう感じるものでありますね。片倉さんが若い若いときに書いた曲のリメイクです。でもサビは現アリプロの詰め込みメロディですが。これ、どうしてもわかげげげげのいたり、というふうに歌いたかったんです。うまくメロディに嵌め込むことができて満足です。ちなみにふたつの文学作品がこの歌詞には出てきます。わかりますよね。「若きウェルテルの悩み」「胡蝶の夢」。(宝野アリカ)
この曲は宝野さんと出会うずっと前に作曲したものです。85年あたりかなぁ、もっと前かもですね。スリーピースバンドで僕が歌っていました。黒歴史です。元々はスカビートの曲ですが本曲はサビを変えております。(片倉三起也)
7. 誰ソ彼パピヨン回廊
「誰ソ彼ホテル Re:newal」の主題歌もやっとCD化されて嬉しいです。初の配信のシングル曲でしたが、やはりCDにしたかったわけです。もしこれのジャケット撮影があったら、もちろんそのまま誰ソ彼ホテルの部屋を作って撮ったことでしょうね。夢のような素敵なビジュアルになっただろうなぁ。歌詞の“赤い魂 青い記憶/生なる日々は紫”という箇所が気に入ってます。誰ソ彼ホテルの窓から見る黄昏のようで切ない。(宝野アリカ)
アプリゲーム「誰ソ彼ホテル Re:newal」の主題歌です。同ゲームシリーズ史上初となる主題歌を実装。「黄昏ホテル」は生死を彷徨う魂たちが集う場所、幻(ゆめ)と現(うつつ)を繋ぐ魔界にいる気分で目を瞑っての着想を積み上げて音符にしました。摩訶不思議で豪華絢爛かつノスタルジックな楽曲となりましたね。(片倉三起也)
8. 美しき獣たちの為の
「コードギアス」映画版の挿入歌。この歌詞はわりと一気にできたんだったと思います。ルルーシュとスザク、ふたりを美しい孤高の獣に喩えて書きました。曲もとても素敵で歌うのが気持ちいいのです。サントラCDに入ってますけど、アリプロCDに入れられて嬉しいです。(宝野アリカ)
アニメ映画「コードギアス 復活のルルーシュ」挿入歌委嘱作品です。美しいオーケストレーション曲ですよね、アリプロ得意ジャンルです。(片倉三起也)
9. 日本弥栄
弥栄という言葉、ますます栄えるという意味です。万歳、乾杯にも使う、縁起のいい言葉。ともかく明るく今を生き、栄える未来を思う歌です。現代には似合わないからこそ余計に楽しく華々しく感じるではありませんか!歌詞の“勝ち負けの結果より/遣り遂げた事を/讃えよう”という部分、これ歌ったあとに、小学校の運動会で勝ち負けを決めない方針、みたいな記事を見たのですが、どこのボケどもがそんなこと考えるんじゃーー!!って怒り心頭でしたが(笑)、勝ったり負けたりの悲喜こもごもの想いを通して子供は成長していくものではないでしょうか、そして親は何かを最後までやり遂げたことを褒めればいいのです。どうしてそんな当たり前に正しいことを、いちいちくだらない甘っちょろい方向に変えなくてはならないのでしょうかねぇ。というわけで「日本弥栄」みなさんご斉唱ください。(宝野アリカ)
テーマを持たずに無機質な感情というか流れのまま自然体で作曲しました。出たとこ勝負の曲です。ある意味正当な作曲方法かもです。アレンジには少し苦労しました。当初はハモンドB3オルガンやオーバーハイム、ローズエレピ、DX7シンセなどのアナログ系や懐古的音源とリズムはRoland TR-808でやってみたのですがチープなピコピコ・テクノミュージックなってしまいました。それではとロックギターサウンドを試みるも微妙なコードや繊細さが表現できない。結局のところオーケストラやピアノ、シンセ、ギターなどが入り込んだ常套アリプロなミクスチャー・アレンジに落ち着きました。斬新なアレンジにはなりませんでしたが、アレンジがテクノミュージックやロックギターサウンドならば日本弥栄の歌詞にはならなかったと思いますね。(片倉三起也)
10. 含羞草ねむりぐさ[instrumental]
本当に眠たくなってしまう。安眠効果抜群なので、お試しください。(宝野アリカ)
別名はオジギソウです。軽く触れるだけで、恥ずかしそうに葉を閉じますね。このアルバムを聴いているみなさんへの子守唄です。柔らかな眠りが訪れますように、と、そっと音符が頬をなぜるのです。「さあ、早く寝よね」(片倉三起也)
11. 幸福の王子
「狩猟令嬢ジビエ日誌」の歌詞違いですが、これは元の歌詞の歌を録り終わったあと、まだアルバムのレコーディング中に突然閃いて一気に書き上げた歌詞です。もうメロディもアレンジもすべて完璧に頭に入っている状態なので、すらすらと書いていきました。まあこんなテーマを歌うのはアリプロしかいないと思います。アリプロしかいない系は他にもありますけどね。自分の臓器が誰かの中で生き続けるってすごいことだと思うし、遺族の気持ちに想いを馳せてみても、自分なら耐えられるのかというところは想像もできないのだけれど。だから童話になぞってなら書けるかも、と思いました。現実はもっと壮絶な想いなのかもしれないけれど……。歌にしてはいけないテーマなのかもしれないけれど、慈愛の歌ですこれは。(宝野アリカ)
「狩猟令嬢ジビエ日誌」の歌詞違いによるリメイクです。音楽的にはベースの音色変更、エレピを足したくらいですね。もちろん新TDとリマスタリング音源です。歌ダビングのとき、涙が出てきました。ある意味これはsad songですが、でも死生観の中に本当の幸福を知るという、希望の歌でもありますね。宝野さんでなければ書けない歌詞です。(片倉三起也)
ALI PROJECT『若輩者』
GENRE:SYMPHONIC METAL
いつにも増して気高く神々しい宝野アリカ(Vo)様の鉄槌が今ここに下される――
ジャケ写も内容も衝撃的なニュー・アルバム
覚悟せよ。宝野アリカ(Vo)様の鉄槌が今ここに下されるのだ。凶悪打撃武器、釘バットを手にしたアリカ様の勇ましき御姿を拝むことができる、ジャケ写のインパクトがあまりにツヨツヨだとはいえ……今作は内容自体も大層衝撃的。ヤンキー漫画のタイトルと見紛う「爆烈勇侠外伝」では、“突き進め行け 荒くれ者よ”と発破を掛け、表題曲「若輩者」では、“どんな時代だろうと/わが道を貫こう”と鮮やかに歌い上げながら教えを説くアリカ様の存在感は、いつにも増して気高く神々しい。コンポーザー、片倉三起也(Key)の鬼才ぶりもますます盛んで、幻想的な「美しき獣たちの為の」で感じられる浮世離れぶり、大日本愛國唱歌かのような「日本弥栄」に漂うエキセントリックさも痛快至極。
杉江 由紀【ライター推薦】
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