激ロック×HMV&BOOKS online vol.120

GENRE：ELECTRONICORE, LOUDROCK
芸人 サンシャイン池崎との叫び／スクリーム対決も！
初のコラボ曲収録したミニ・アルバムがリリース！
アルバム『Rise into CHAOS』から1年ぶりとなるミニ・アルバムは、芸人 サンシャイン池崎との異色コラボ「Rising sun feat. サンシャイン池崎」で幕を開ける。雲林院カグラのスクリームと野月平イオのグロウル、攻撃的なギター・リフ＆ブラストビートで頭からフル・スロットルなこの曲で、池崎の決め台詞（？）でもある“Yeaaaaaah!!”が炸裂するこの叫び対決と、流鏑馬アヤメと七々扇ツバキの可憐なクリーンVoのメロディとのコントラストが楽しめる。またIsam（MAKE MY DAY）とアイガーゴイル（アイリフドーパ）をコラボで迎えた曲では、ヘヴィさを極めた4人のシャウトが跋扈する。シャウトとクリーン、それぞれの持ち味を振り切って、“メタル系スクリーミングアイドル”の看板を強く打ち出して、さらなる勝負に出た作品だ。
吉羽 さおり【ライター推薦】

GENRE：POST HARDCORE, ELECTRO
ロックに海外ポップス、EDMも織り混ぜた
ハイブリッド・バンド AS I AMの1stフル・アルバム
2021年に現メンバーとなり、今年になってよりポップ寄りの楽曲を制作し始め、半年で3曲の配信楽曲をリリース。YouTubeやサブスク、SNSも積極的に利用し、その名を一気に広めたAS I AMの1stフル・アルバム。冒頭のEDMを基調としたリード曲「FIRE」を聴いたときの感想は“新しい！”のひと言。そして、「Fight song」でアルバムを聴き終えたときの感想は“熱い！”のひと言だった。海外のトレンドも意識して、ロックにヒップホップにEDMにと様々な音楽ジャンルを織り混ぜ、シンセやサンプラーやオートチューンを使用した様々なサウンドを取り入れながら、バンド・サウンドの熱量をしっかり軸に持ち、最新型のポップスに落とし込む、AS I AMの音楽世界。彼らのアルバムに、令和の音楽シーンの最先端を見た。
フジジュン【ライター推薦】

GENRE：HARDCORE, LOUDROCK
魂込めたサウンドとメッセージが胸に刺さる、渾身の1stアルバム完成
今年3月に本格始動の狼煙を上げた「REBORN」で始まり、魂込めた渾身の楽曲たちが全12曲収録された、湾岸の羊の1stアルバム。一音一音にこだわり抜いた歌とサウンド、HIRØの嘘偽りのない言葉が胸に突き刺さる楽曲たち。十分なスキルとキャリアを持ったメンバーが本気でぶつかる命を削るような曲が並び、全編通して壮大な物語を紡ぐ今作を聴いて、“ロック・アルバムとは本来、こういうものであるべきだ”と思った。静と動を兼ね備えた、ハードコアな面もバンドの大きな魅力だが、5人の心を繋ぐアンセム的ナンバー「LAST BAD BOY」、楽曲世界の森の奥の奥まで誘う「都会の森」から、HIRØの熱い想いを込めた「Sincerely」で締めくくる終盤の流れに、湾岸の羊の真骨頂を見た気がした。
フジジュン【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK, POP ROCK
“MUSIC THEME PARK”を標榜するBabyKingdom
“警察と怪盗”モチーフの2大表題曲が主軸の新アトラクション
騙されることなかれ。ポップでファニーでエンタメ性抜群。だが、BabyKingdomのインパクトある見た目やキャラクター性は、つまるところ撒き餌に近い。ひとたび食いついてみれば、彼らがいかにクセモノな音楽集団であるかはすぐにわかるはずだ。コンセプトに沿った歌詞世界、練られたメロディ、テーマ性を巧妙に反映させたサウンドメイクはどの曲においても徹底されており、今作では“警察と怪盗”をモチーフにした2大表題曲が主軸となっている次第。個人的には、カップリング「ちょうだい！君の心臓」（※D typeのみ収録）の粋な仕上がりにも痺れることしきりで、結果的に今作を聴き終わる頃には名作アニメ“ルパン三世 カリオストロの城”で言うところの“ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です”的な事態が十分に起こりうる。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE： LOUDROCK
刺激的なサウンド、今っぽさをふんだんに含んだ歌詞、きらびやかなヴィジュアル――
理想を追求しながら偏見や誤解を打破していくグラビティの13thシングル
あざといは正義。通常、あざといというのはあまりいい意味では使われないことが多いものの、考えようによっては嫉妬してしまいたくなるくらいに魅力的なものに対して、人はあざといなどと揶揄しがちなのではなかろうか。バンドとしての音楽に対する実直さを持つ一方、彼ら自身の言葉を借りれば“メン地下”と混同されることもあるくらいにキラキラしたヴィジュアルも重要な武器となっているグラビティは、要するにいい意味でとてもあざといバンドなのだと思われる。そして、ひとたびグラビティ沼にはまってしまったとしたら……あとは野となれ山となれ。今作を聴いてライヴへ足を運ぶも良し。あるいは、全曲にインストゥルメンタルが付随しているあたりからも窺える、彼らの音に対するこだわりをじっくり解析するのも良し。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE：SYMPHONIC DEATH METAL
インターネットの海へ哀愁メロディを発信し続ける孤高のアーティスト Zemeth
自身の初期作を全曲リメイクした2枚組アルバム！
激しさと耽美性を併せ持つ哀愁歌謡ノスタルジック・メロディック・デス・メタルで、国内外のクサメロ・マニアを虜にするZemethが、1st＆2ndアルバムを全曲再録しセルフリメイクした2枚組のアルバムを制作。もともとサウンドメイキングの面で納得のいかない部分があったという初期作だが、今作では音質面では一聴して違いが感じられるほどグレードアップし、また演奏面でも曲ごとに合わせたこだわりがしっかりと盛り込まれ、無駄を省いてメリハリの効いたアレンジでも聴きやすさがアップした印象だ。理想のメロディを追求して作られた作品が、技術的にも環境的にも整ったことで完全体として生まれ変わり、より多くのリスナーに届く作品となった。もう普通のメタルじゃ物足りないという方、ぜひ聴くべし。
山本 真由【ライター推薦】

GENRE： LOUDROCK, HIP-HOP
虚ろな心を満たしていくものは何か
ヒップホップ、ロック、エモからJ-POPをクロスオーバーしたサウンドと、独自に構築したエモーショナルで尖ったフロウ、さらにファッションやメイクでも異端な（それでいてキャッチーな）存在感を放ってきた(sic)boyのメジャー1stアルバム。ジャンルを自由に横断するトラックや、Only U、JUBEE、Daichi Yamamoto、JESSE（RIZE／The BONEZ）、SEVENTEENのVernonなど幅広い客演で楽しませる1枚となったのは間違いない。が、さらに反骨心と渇きでヒリヒリとした、彼のパンク・マインドが、単にウェルメイドなアルバムでない、様々な刃を潜ませた作品になっている。じっとりと重い社会の空気をもサウンドや言葉に滲ませ、そして悩み、吐き捨てていく。内省的な咆哮が時に優しく、時にシビアに心を打つ。
吉羽 さおり【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
三千大千世界へと向けた、RASからの攻撃的な音像による狼煙
憂うべき円安や、失われし30年の枷を負う日本の現状はシビアだが、まだインバウンド需要の活用とサブカルチャーの輸出という武器が残されている。“BanG Dream!（バンドリ！）”も海外人気のあるコンテンツで、中でもRASは高い演奏技術を誇る。“唯一無二のキラーワード／覚えたか？　名は “RAISE A SUILEN”と”、“打ち立てるのさ／金字塔を”といった所信表明的な詞がアタック感の強い音と響き合う表題曲は彼女たちの未来的ヴィジョンを描いた書き下ろし作で、Raychell（レイヤ／Ba/Vo）の歌う主旋律と紡木吏佐（チュチュ／DJ）のラップが派手に重なり合う。c/wの代表曲「EXPOSE ‘Burn out!!!’」と「Takin’ my Heart」の英語詞Ver.も含め、これらはつまり世界をロックオンしたRASによる狼煙なのだろう。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
聴く者を呑み込む、全編にわたって織りなされる殺伐とした音、行き詰まったコトバの数々
憤懣。懊悩。怨嗟。慨嘆。積もりに積もったネガティヴな感情たちが、轟音と共に濁流となって押し寄せる様からは相当に逼迫した状況が窺い知れる。勝手な憶測ではあるが、彼らは今ここで帝王切開をすることでしか自らの内側で肥大化していく野心や創作の在り方を救うことができなかったのかもしれない。それだけに、全編にわたって織りなされる殺伐とした音、行き詰まったコトバたちの数々は、漏れなく聴く者を呑み込むはず。ハヤト（Vo）の作る楽曲はどれも緻密にして綿密であり、ゆめ（Gt）の研ぎ澄まされたギター・ワーク、meN-meN（Ba）が生み出すグルーヴを超えた脳髄直撃系の波動、チャム（Dr）のタフな鉄壁リズムはすべてが従来以上にマシマシ。マイナス×マイナスでプラスの結果が導き出されるような、謎の説得力に唸らせられる。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
ティンカーベル初野率いるネタ企画系90s V系リヴァイヴァル・バンド、色々な十字架
嘘から出たまことのごとき名盤
堪らん……。過ぎ去りし90年代の美しき日々は、奇術的手法を伴って今ここに甦ったようだ。異才を放つクリエイターであり、ベーシストとしてのキャリアも持つうえ、実は“でか美ちゃん”の命名者でもあるティンカーベル初野がヴォーカリスト tinkとして率いるこのバンドは、当初エイプリルフール用に仕込まれたネタ企画系90s V系リヴァイヴァル・バンドであったそう。しかし、その楽曲クオリティの高さが方々で絶賛されたことを受け活動続行となり、初フル・アルバム発表へと至った。今作も珠玉の逸品揃いだが、筆者の激推し曲は「花言葉がうまれる会」と「TAMAKIN」。耽美な音と不条理な詞が交錯して生まれるヤバいトンチキ感は中毒性つよつよ。嘘から出たまことのごとき名盤を“聴きしし者†”になるがいい。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE：MELODIC DEATH METAL
日本発メロデス・バンド、the Art of Mankind
バンド・サウンド全体にエッジが効いた4年半ぶりのフル・アルバム
日本発メロデス・バンドが放つ4年半ぶりのフル・アルバム。先行シングル「Sword of Obsidian」をはじめ、超速ブラストビートに悲哀を湛えたギター・ワークが縦横無尽に駆け巡るスタイルを全編で貫きつつ、3拍子で構成した同先行シングル「Chaosbringers」、変拍子だらけの「Omen」など多彩な楽曲を内包した圧巻の楽曲群は、前シングル『Blood Ocean』のサウンドのまとまり方と比べるといい意味でパート同士がぶつかり合い、バンド・サウンド全体にエッジが効いた仕上がりになった。その中でも埋もれない強靭なヴォーカルがいっそう際立ち、バンドの良さが存分に生かされた今作を武器に、シーンに下剋上と混沌をもたらす存在足り得るのか。今後の彼らの活躍に期待したい。
米沢 彰【ライター推薦】

GENRE：HEAVY ROCK
結成25周年記念ツアーZepp Haneda(TOKYO)2デイズで繰り広げられた
百戦錬磨のDIR EN GREYだからこそなし得るベスト・パフォーマンスの連続
変われば変わるものだ。その昔、Dir en grey時代の彼らが東京に初遠征して来たライヴを目黒鹿鳴館でレポ取材したときの衝撃は今でも忘れられない。正直、あの頃の彼らは演奏というよりもただ楽器を鳴らしているだけ、ただ声を発しているだけの状態で、どんな曲が表現されているのかさえほぼ掴めないようなステージングに終始していたのである（※個人の感想です）。あの日から幾年月……。本映像作品は彼らが昨年開催した結成25周年記念ツアーにおけるZepp Haneda(TOKYO)2デイズの模様を収めたものとなるが、繰り広げられてゆくライヴは百戦錬磨のDIR EN GREYだからこそなし得るベスト・パフォーマンスの連続。新旧の楽曲を交えた粋な構成も秀逸。彼らはもはやどのバンドも決して到達できない絶対的超領域にいる。
杉江 由紀【ライター推薦】

GENRE：ROCK
“楽器を捨てたロック・バンド”秘密結社ニルヴァージュ∀
模範的アニソンのたたずまいの表題曲と貪欲さダダ漏れのc/w
楽器を捨てたロック・バンドの異名を持ち、ファンからは“ひみじゅ”とも呼ばれている彼らにとって、今作の表題曲は初アニメ・タイアップ曲として“異世界召喚は二度目です”のOPに起用されたもの。アヤァ＝オブ＝ザワールドが小鳥遊 綾の名義で書いた歌詞は他曲と比べると毒気がほぼ感じられず、意図的にアニソンとしての整合性を重視した仕上がりを目指したものと思われ、曲調や全体的な雰囲気も模範的アニソンのたたずまいだ。とはいえ、c/wの「猫」で聴けるヒステリックな刺々しさや、「証」でのストレートなロック・チューンぶり、「Beautiful Beautiful」のライヴ映えしそうな空気感、そして「轟音舞」での祭り風味なEDM系ロックを具現化したアプローチなどからは、いずれも貪欲さがダダ漏れ。
杉江 由紀【ライター推薦】