【第3回】バイヤー寺町知秀のわくわくPOPSランド

洋楽の森からオススメ作品をピックアップ
あの番組、覚えてますか？
このコーナーでは、わくわくせずにはいられない海外の良質POPSをお届けします！

【第3回】あつ〜い夏は冷やしポップスに限るでしょ。

　みなさん、こんにちは。暑中お見舞い申し上げます。夏いいですね。

　さて、わくわくPOPSランド第3回目は、テスト・アイシクルズ〜ライトスピード・チャンピオンの活動や奇才プロデューサーとしても名高い、デヴ・ハインズのソロ・ユニット=ブラッド・オレンジ最新作『フリータウン・サウンド』にズームイン。ピッチフォークで8.8の高評価を獲得した他、各方面で軒並絶賛されていのですが、これが噂にたがわぬスバラシイ内容で…。

　2016年は、デヴィッド・ボウイとプリンスという2人の偉大なるポップスターが突然この世を去りましたが、その２つの巨星の意匠を受け継ぐのはデヴ・ハインズしかいないでしょう。

　デヴィッド・ボウイはロックとソウル/ファンクを、プリンスは逆にソウル/ファンクとロックを往復しましたが、デヴ・ハインズも80年代後半〜90年代初頭のいなたいポップス・フィーリングを身上にしつつ、大先輩顔負けの、とびっきりモダンでクロスオーバーなハイブリッド・ポップスを浮かび上げています。随所に女性ヴォーカルをフィーチャリングし、自身の歌声も中性的で、全篇を通してフェミニンな感触があるのも、どこか２人の大先輩をホウフツさせますね。

　今作はビースティ・ボーイズ『ポールズ・ブティック』にインスパイアされ制作したというだけあって、冒頭に配置されたハーレムの雑踏のようなサンプリングをはじめ、のっけからストリートの臨場感溢れるヴィブスを演出しています。また、このアルバムが持つひんやりしたセンチメンタリズムは、夏のチルアウト・タイムにもばっちり対応。とりわけ個人的なハイライトは、センシティヴ極まりない超甘美なメロウネスがこぼれ落ちてやまない、「But You」。稀代のメロディ・メイカーであるデヴ・ハインズの真骨頂で、ホント惚れ惚れするほど美しい珠玉の名曲。

　最良のサマー・チルネスを感じさせるもう1枚は、昨年、今年とアメージングなパフォーマンスでその場にいたほとんどの観客を虜にしたモッキーの来日公演でサポートを務め、ひときわ存在感を示したニア・アンドリューズの新作ミニ・アルバム。もうたまらなく、メロウでエレガント。ジャズ・ヴォーカルとソウルの中間の位置にある、ニーナ・シモンの系譜にありながら、もっとしなやかで柔和な歌声を聴かせてくれます。