Tuesday, December 15th 2015
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シーズン2はメンバーひとりずつにじっくり答えてもらいます!
※この連載は、全国のHMV・ローソン店頭で配布しているフリーペーパー『月刊HMV』(毎月15日刊行)に記事前半を、ローチケHMVに後半を掲載しています。
【第24回】 自分のルーツ/影響を受けたもの
今回答えてくれたのは… 小野武正(g/cho)「ブワッて泣けたり、ゾクッとしたりと、こちらの感情を動かす何かが込められたマンガってあると思うんですけど、『SLAM DUNK』はやっぱり何度読んでもすごいなと思って。『SLAM DUNK』のようなライブがしたいですね!」
――『SLAM DUNK』のようなライブ?(笑)
「観てる人たちをブワーッ!とか、ゾクッ!とか、させるような。そういうのってライブでもギタープレイでも絶対あると思うんですよね。魂を揺さぶられるものが好きというのは、音楽でもそうなんです。実体験はもちろん、“誰かが提供してくれた作品”でそういう体験をするのってけっこう大事だなって思っていて。そういうこともあって、マンガを読んでるところもあります。物語を自分に置き換えて読んでますね」
――自分に置き換えて、ですか?
「『SLAM DUNK』のようなサクセスストーリーがすごい好きなんですけど、言ってみれば僕らも何もないところから武道館ワンマンやるとこまできて、さらにもっと先に向かって……という、サクセスストーリーをやってるわけで。マンガとかで描かれたサクセスストーリーを知っていると、いろいろな事柄が今の自分に置き換えられて、困難に立ち向かうとか選択を迫られたときなどに、自分はどうすればいいかという、そういう感覚が研ぎ澄まされていくようなところがあって」
――なるほど。ちなみに『SLAM DUNK』を最初に読んだのはいつごろでしたか?
「僕は遅くて、中学生のころでしたね。小学生のときに読んでたら、たぶんバスケ部に入ってバスケの選手になってました。影響されやすいんで(笑)。今回は本当に悩みましたけどね〜。なんのマンガにするか。正直、音楽よりマンガ選ぶほうが悩みましたからね(笑)」
――(笑)。
「マンガについては、日常系のマンガとかもすごく好きですけどね。『黄昏流星群』とか。高年齢の方々の恋愛を描いたマンガなんですけど……」
――サクセスストーリーじゃないものも好きなんですね。
「ま、ある意味、サクセスストーリーですよね。年を取ってからもこんなふうに恋愛できるんだっていう」
――(笑)。
「あと金貸しのマンガとかも好きですね〜。『闇金ウシジマくん』とか『ナニワ金融道』とか『ミナミの帝王』とか。ああいうのも、けっこう参考になるというか……」
――参考にって……(笑)
「はい、参考にしてます(笑)。なんかパワーもらえるんですよね」
――マンガ以外の本は読みますか?
「星 新一のショートショートがすごく好きです。僕は、音楽でも3分以内に収まっている曲が好きなんですね。BEATLESとかも短い曲が多いですけど、3分程度の楽曲にいろいろと入り組んだポップワークがあったりするとすごいなって思うんです。星 新一のショートショートはそこに通じるものがあると思うんですよね。すごく短い物語なのに、独自の世界観があって、読後に何かを心に残してくれるという。長編小説も読みますけど、短編を選ぶほうが多いです。あと星 新一や楳図かずおのSFがすごく好きですね。“人間こんなことやってたら将来こうなっちゃうでしょ”というある程度予測可能な範囲内の未来と、絶対あり得ないような未来をつなげてくる感じがたまらないです」
――小野さん、忙しいのに、本もマンガも音楽も本当にたくさん読んだり聴いたりしてますよね。
「そうですね〜。それが趣味なんですよね。ギターもライブも好きでやってるから、忙しいって感覚があまりないし、趣味との境目もあまりないんですけどね(笑)」
――しかも小野さんは、そうして聴いたり読んだりするものを、ただ「好き」とか「いい」とかだけではなく、すごく分析してますよね。先ほどの音楽関連のルーツのお話を伺っているときにもそう感じたのですが。
「そうですね。高校生のころにバンアパを聴いたときには、あんな具体的な言葉にはできていなかったかもしれないですけど、やっぱり異質感というか、ただ単に好きなだけではない、惹かれるものをすごく感じていました。自分もこんなふうにやりたい!と思いましたし。バンアパだけじゃなく、例えばもう少し激しいサウンドのWRONG SCALEとか、ホーンセクションとかも入れているalaとか。それをもっとポップでキャッチーな感じにしたASPHALT FRUSTRATIONとかRiddim Saunterとか……。パワーコードだけじゃなくてコード感で攻めていくという音楽を開拓したパイオニアたちだと思うんですね。今まで聴いてきた音楽とは違うなと思ったし、僕もそういうところから、ジャズとかファンクに興味を覚えていきましたし」
――そういうジャンルの音楽を聴く、入り口になったということですよね。
「そうですね。いきなりそういうジャンルの音楽を聴かされても、例えばボサノヴァだったら『なんかカフェで流れてそうなオシャレな音楽だな〜』くらいで終わってたかもしれないなと。でも、例えばバンアパの『fool proof』というボサノヴァとパンクをミックスした楽曲があるんですが、その曲展開に感銘を受けることによって、『ボサノヴァってどういうジャンルの音楽なんだろう』と興味を持って入っていけたりとか。そういう、架け橋になってくれるバンドというのは素晴らしいなと思うんですよね」
――今のKEYTALKにもそういう要素がありますよね。
「そうですね。そうありたいと思っているし、僕自身もいろいろなジャンルの音楽を聴いてリスペクトしているから、自然とそうなっている部分も多いんだと思います」
――ちなみに、バンアパなどに出会う前はどんな音楽を聴いていましたか? もっと子どもの頃とか……。
「いちばん最初に自分でCDを買ったのはポルノグラフィティでしたね。テレビで『サウダージ』が流れていたのが、たぶん小6くらいのときだったと思うんですけど、すごく耳に残るなと思っていて。中学生のころに『アゲハ蝶』がはやって、そのときにCDを買いました」
――家族の影響とかは?
「僕、一人っ子なんですよ。母親はミーハーな感じなので、テレビのヒットチャートを聴いてる感じでしたね。ユーミンとか野猿とか(笑)。そのころは一緒に聴いてましたけど、自分でCD買ったりしはじめたのは中学生になってからで、ポルノグラフィティとかゆずとかが好きでしたね。そうそう、はじめは“アコギと歌”というのが大好きでしたね。その後、カウンターみたいなのがきたんですよね。ディストーションギターと速いビートのほうがかっこいい!みたいな」
――モンゴル800とか?
「もろ世代ですね。中3のころはロードオブメジャーがすごい好きで、コピーもしてました。中3、高1のころは、とにかく速さと重厚感を求めてましたね。The Offspringとか、Bad Religionとかは今でも大好きです」
初めて買ったギターと一緒に武道館へ
――小野さんがギターを実際に弾きはじめたのはいつごろですか?
「まず、クラシックギターを中2のときに習ってたんですね。それで中3のときにアコギを弾きはじめて、そのあとエレキギターを買って……」
――あ、はじめはクラシックギターだったんですね。それは、いずれバンドでギターをやりたいと思って始めたんですか?
「そうだと思うんですけど、あんまり覚えてないんですよね(笑)。なんかギターやりたかったからとりあえず……だったのかも」
――ちなみに今はSGを使ってらっしゃいますが、初めて買ったエレキギターは?
「初めて買ったエレキギターはフォトジェニックという比較的安いギターを出しているメーカーがあって、そこで1万円くらいでレスポールを買いました」
――初めて買ったのはレスポールだったんですか。
「そうなんです。その後すぐに『やっぱりギブソンが欲しい』と思って、でも『高い!』と(笑)。高1のときに親に頼み込んで、自分でお年玉をためてた貯金をはたいて、残りはお父さんに足してもらって、ギブソンのレスポール買うことにしたんですね。それで楽器屋に行ったら、なぜか分からないけど『SGのほうがかっこいいな』と思って急にSG買ったんです。で、いまだにそれを使ってるんです」
――え! 今使ってる、今日の撮影にも持ってきてもらったSGがそれですか?!
「そうです」
――高1のときからずっと?!
「そうなんですよ。このギターと、まさか武道館まで一緒に行くことになるとは……。すでに2回くらいネックも折れて修理してるんですけどね。なんとか武道館に連れて行けました」
――うわ! それ、すごくいい話じゃないですか!
「あ、そうですか? そうですよねー! いい話にしようと思って、ほかのギターにしないでずーっとキープしてきたんですよ!(笑)」
――(笑)。好きなギタープレーヤーがSGを使っているとか、なにかSGにするきっかけはあったんですか?
「そういうのはまったくないですね。僕のプレイスタイル的に『アンガス・ヤング好きでしょ?』とかよく言われるんですけど……」
――そうかもしれないですよね。
「よく言われるから、それで、聴いてみた感じですね。アンガス・ヤングを。あれ、なんか俺に似てるなって思って。キャラ的にちょっとかぶってんなって(笑)。逆にね!(笑)」
――(笑)。
「そういう、プレーヤーからの影響とかはないんですけど、なぜかフェンダーよりギブソンのほうが欲しいっていうのが頭にあったんですよね。まずはギブソンで、そのうちバイトしながらエピフォンの高いのとか、エドワーズのいいやつ欲しいと思っていた時期もありましたけど。高校生のころとかは、どんどん高いギターが欲しくなっていったんですけど、いつの間にか楽器じゃないなと思いはじめて……。エフェクターとかも高1から変えてないんですよ。今となっては機材はそこまでこだわってないですね。それよりもプレイのほうにこだわるようになりました」
――それもすごいですね。高校の頃から足元変わってないなんて、逆に高校生でどんなバンドをやってたんだ?って思いますけど(笑)。
「いや、そもそもすごいシンプルなんですよ。ディレイとリバーブと歪(ひず)みしかないんで。あとチューナーと」
――じゃあギターはもうこれ一本ですか?
「僕のギターはこれ1本ですね。あとは先輩にSGを借りてます。実はそっちのほうが高いものなんですけど(笑)。『スターリングスター』はそれでレコーディングしています」
――あ、そういうこともあるんですね。
「そうなんです。そのときは僕のSGがちょっと調子悪かったこともあるんですけど。その先輩から借りてるギターは生まれた年が僕と一緒なんですよ。そういうのもちょっといいなと思って、お借りしてるんですけど」
インプットしたものはすべてKEYTALKにつながっている
――小野さんは高校時代に軽音部でバンドをやっていて、八木さんとはその当時から一緒に演奏してらっしゃるんですよね。それで大学も音大に進学して……。プロのミュージシャンになろうというのはいつ頃から意識していたんですか?
「いつ頃ですかね……。音大に進学を決めたのは、ずっと音楽関係に携わっていたいというのがあったからなんですけど、それはギタリストとか、プレーヤーじゃなくてもいいという気持ちでしたね。だから高校のときは、もちろんギタリストとしてやれたらいいなというのはあったと思うけど、『絶対にそれでやってくんだ』という強い気持ちはあんまりなかったんですね、今思えば」
――KEYTALKの前身ともいえるrealというバンドでは、小野さんがボーカルだった時期もあるんですよね?
「realでは3代目のボーカルでしたね。最初は軽音時代から続けていたボーカルがいて、そのあと募集して来てもらった二人目のボーカルになって。その二人目が抜けて巨匠(※KEYTALKの寺中さん)が入るまでの間を僕が歌ってたんです」
――ずっとボーカルをやろうとは思わなかったんですか?
「いや、僕としては今でもメインボーカルの座を狙ってるんですけどね!(笑)」
――(笑)。寺中さんを誘うことになったきっかけは?
「巨匠とは音大が一緒だったんです。大学でアンサンブルというみんなが演奏したり歌ったりする授業があって、そこで巨匠がスティービー・ワンダーの『isn't she lovely』を歌っているのを聴いて『超、歌うまいな!』と思って。ちょうどバンアパの影響を受けていた時期だったので、英語で歌えて、しかもそんなに声質が高くなくて歌い上げられるボーカリストがいたらいいなと思っていたから、もう本当にぴったりだなと」
――運命の出会いですね。
「ほんと、そうですよね。今、思えば(笑)」
――今回は“自分のルーツ/影響を受けたもの”として象徴的な2曲を紹介してもらいましたが、例えば、プロになると意識してからほかに影響を受けた曲とかありますか?
「いっぱいありますね。僕は“この一曲”というのは特になくて、だから今回もすごく悩んだんですけど(笑)。要所要所で影響を受けているアーティストや作品はたくさんあります」
――ギタリストとして影響を受けた曲というのは?
「うーん……。ギタリストとしてというのは、実はあんまりないんですよね。逆に『こういう曲にギターが入ってればいいのにな』とか『この曲のここでギターがフューチャーされてたらもっといいのに』というのはけっこうあります。例えばスカのThe Specialsを聴いて、このホーンセクションのところでギターがもっと目立ったらいいのにと思ったり。ピアノとかサックスとかの演奏部分を、僕だったらそういうフレーズを取り入れてこう弾いてみるのになって考えたりとか。さっきマンガを自分に置き換えて読むって話をしましたけど、音楽もいつもそんな感じで聴いてますね。ポール・チェンバースというジャズのベーシストがいるんですけど、彼が、ウッドベースを弓みたいのを使ってギーギーと音を出す奏法をするんですね。ある意味、前に出つつも土台を支えるという。そういうのはギターに通じるところもあるなと思って、じゃあ、パワーコードを弾きながらオクターブ奏法で色付けをしたらどうなるかな……と考えてみたり。メロコアを演奏するにも、ジャズの奏法を取り入れて考えたら、誰もやっていないことができるかもな、とか。常にそんなことを考えて、新しいアプローチを探してます」
――なるほど。
「エルビス・コステロもすごく好きなんですけど、彼はアドリブでレコーディングしているような曲もあって。そういうのも影響受けましたね。ポップスでもフレーズを決めてレコーディングしなくてもいいんだって考えを得たり。……僕、こういう話をしだすときりがないですね(笑)」
――そうですね(笑)。本当に、常にそうやって、自分のギターに変換しながら聴いているんですね。
「もともと自分で曲を作るのも『自分で聴きたい曲を作りたい』というのがあるんですよね。いろいろな曲を聴いても『これだ!』とドンピシャでハマるということが少なくて『ここはかっこいいんだけどな〜』ってなっちゃうから。若いときは、音楽が耳に入るたびに『違う! 違う!! 違う!!!』って思ってましたからね(笑)。それはそれでハングリー精神があってよかったと思ってるんですけど、最近は僕も大人になったのか『これはこれでいいんだろうな』と思える曲が増えてますけどね」
――ちなみに小野さんはプレイスタイルにも特徴がありますよね。ワイヤレスでステージを縦横無尽に駆け巡り……。あのプレイスタイルは昔から?
「そうですね。意識してそうしてるんですけど。極端な話、あれこれ考えて細かいところでギタープレイにこだわっても、ギターマニアじゃない大半の人にはそんなこと全然分からないですからね(笑)。そういう人たちに伝えるには、まず、派手なアクションかなと。そういうのを、エンタテインメント性として大事にしたいというのが僕のなかであって。まずは楽しんでくれて、音楽を好きになってくれて、注目してもらって。もちろん、分かる人にはギタープレイのこだわりも分かってほしいし、僕がそうだったように、若いリスナーで最初は細かい演奏のことは分からなかったけど好きなバンドの影響でだんだんと分かるようになっていくという人がKEYTALKを通じて増えてくれたら本当にうれしいし。もちろん、自分がステージで楽しみたい、楽しませたいという想いで自然に出ている動きでもあったりしますけど(笑)」
――先ほど小野さんがおっしゃっていた『SLAM DUNK』のようなステージをしたいというところにつながってきますね。
「そうですね。KEYTALKはライブをすごく大事にしてるんですけど、僕の場合はすべてのことがそこにアウトプットされるという感じがあって。音楽を聴いたりマンガを読んだりして自分が感じることも、すべてがそこにつながっています」
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