TOP > Music CD・DVD > News > Classical > バイエルン放送交響楽団 in Japan 来日記念特別提携マガジン第2号

バイエルン放送交響楽団 in Japan 来日記念特別提携マガジン第2号

Sunday, November 23rd 2014


 バイエルン放送響がHMV ONLINEでオンライン・マガジンを展開


11月後半のツアーを機会に全3号掲載。多彩な情報をお届けします!
 11月21日から27日まで、マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団が日本公演を行います。クリスティアン・ツィメルマンをソリストに、東京、川崎、京都、西宮の4都市で開催されますが、楽団ではこの機会に、HMV ONLINE上で日本のファンのためのオンライン・マガジンを展開します。11月14日から12月11日の期間、全3号にわたり、バイエルン放送響に関する様々なニュース、ツアー・レポート、自主レーベルBR Klassik関連の話題などを発信。バイエルン放送響をより多面的に楽しむサイトとして、ぜひご利用ください。
 また11月から12月にかけてHMV ONLINEでは、BR Klassikレーベルのマリス・ヤンソンス旧譜を、セール価格でご奉仕します。この機会に、BR Klassikの名録音の数々をお楽しみください(写真:©Ackermann)。

日本ツアー中に、ツイッターで日本語による最新情報を発信!
 バイエルン放送響では、11月中旬よりツアーの終了まで、ツイッターで日本語による最新情報をお届けしています。舞台裏や団員のプライベートの様子、コンサートの写真などを、リアルタイムでキャッチしませんか。演奏会当日は、現地から時間刻みで最新画像を配信します!
 アクセスは、www.twitter.com/BR__SO/から。リツイート大歓迎です!

バイエルン放送響ツアー・ツイッター(日本語)

 11月21日初日川崎公演速報!本邦初公開、ヤンソンスとツィメルマンのブラームス

バイエルン放送協会編集員による演奏会レビュー
 バイエルン放送交響楽団の2014年来日公演が、ミューザ川崎コンサートホールの公演でスタートした。この演奏会の話題は、何と言ってもクリスティアン・ツィメルマンとマリス・ヤンソンスの日本における初共演である。曲目も、ブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」と、ドイツ・ロマン派の代表作。バイエルン放送響との組み合わせは、まさに極めつけと呼べるに違いない。
 プログラム冊子によれば、ツィメルマンが日本で最後にコンチェルトを弾いたのは、5年前のパーヴォ・ヤルヴィ&シンシナティ響来日公演だったという(ガーシュイン「ラプソディー・イン・ブルー」)。しかしそれ以前となると、80年代にまでに遡るらしい。こんなところにも、この演奏会が特別であることが伺えた。ツィメルマンのブラームスは、何よりも打鍵の深さが際立つ。力強いのだが、同時に明晰で輪郭がはっきりしており、音が内面から充実しているのである。緻密なフォルムのなかに、作品のダイナミズムが宿る、と言ったところ。日本公演の幕開けにふさわしい演奏である。
 後半のムソルグスキー《展覧会の絵》は、ヤンソンスならではの「物語性」を感じさせる解釈である。冒頭のプロムナードからして、ブラスのコラールはひなびたメランコリーに満ち、トランペットによる葬送音楽を連想させる。そう考えた時、聴き手はこの曲が、死んだ友人(画家)のために書かれたことを思い起こすのである。各曲の性格付けも、この基調のもとに積み上げられており、作品が個々のナンバーの羅列ではないことを強く感じさせた。
 アンコールは、ヨハン・シュトラウスの「ピツィカート・ポルカ」とドヴォルザーク「スラヴ舞曲第15番」。2曲演奏とは大判振舞いだが、どちらもドライヴとウィットに満ちた快演。ヤンソンスも極めて満足気な表情を浮かべていた(アンネカトリン・シュヌアー/バイエルン放送協会編集員)。

バイエルン放送響ツアー・ツィッター(日本語)



 ツアー・ダイアリー

ミュンヘンでの最終公演〜韓国公演〜日本到着までを、詳細レポート!

11月14日(金)
 今年の日本ツアーは、韓国と台湾も含むアジア・ツアーの中核を成すものです。プログラムは、ドヴォルザーク「交響曲第9番《新世界より》」、ムソルグスキー《展覧会の絵》、R・シュトラウス《ドン・ファン》&《ばらの騎士》組曲、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」(独奏:クリスティアン・ツィメルマン)、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」(韓国のみ)。こうしたプログラムを演奏するためには、事前にミュンヘンで演奏会が行われ、「試運転」されます。今回も、ブラームスとショスタコーヴィチがまず11月5日の慈善演奏会で取り上げられました。その直後の11月7日には、リガの客演演奏会でドヴォルザークとショスタコーヴィチ「交響曲第5番」を演奏。ミュンヘンでの最後のコンサート(11月13・14日)では、ドヴォルザークとムソルグスキーが上演され、「準備万端」となります(R・シュトラウスは先シーズン中に演奏)。
 コンサート後の夜10時からは、楽器のトラックへの搬入が開始します。なぜなら、明日にはもう出発だからです。しかし荷造りが必要なのは、団員も同じ。今回は2週間以上の長旅ですが、トランクが詰め終わったのは何時?

11月15日(土)
 昼過ぎにミュンヘン市内から、バスでミュンヘン国際空港に向かい、搭乗手続きします。フランクフルト経由で、最初の公演地ソウルに飛びました。フランクフルト空港で、お土産を物色。日本の友人には、やっぱりバイエルン特産の白ソーセージ、ビールの詰め合わせでしょうか?

11月16日(日)
 約10時間のフライトを経て、ソウル仁川国際空港に到着しました。ミュンヘンとの時差は8時間。到着すると、何と掲示板にドイツ語で「韓国にようこそ!」の文字が。これは我々だけの特別待遇なのか、それともスタンダードなのか?入港手続きの後、ソウル市内に向かいます。招聘元の女性たちが、笑顔で出迎えてくれました。
 この日は、ホテルで休むだけ。公式なアポイントはありません。リラックスして、旅の疲れを取ります。少し街に出て、ソウルの雰囲気を楽しみました。色とりどりの商店街、屋台が並んでいますが、こんなに都心なのに、なんだか懐かしい雰囲気ですね。

11月17日(月)
 この日は完全に休日です。「着いてすぐに休みなの?」と驚くかもしれませんが、メンバーにとって、ヨーロッパからアジアに着いて翌日に弾くのは、相当に大変なこと。ですので、まず休みを取って、最高の演奏ができるようにします。
 ブラスのメンバーが、ソウル名物の提灯祭りに出掛けました。人間の形の提灯は、韓国の伝統的な文学・伝承の場面を表現しているようです。なかなか雰囲気のある、幻想的な祭りで、団員たちは、地元の空気を呼吸した気分です(ビデオをご覧ください)。

11月18日(火)
 韓国での最初のコンサート。会場は、ソウル芸術センターで、ちょっとサントリー・ホールを思わせるモダンなホールです。プログラムはドヴォルザーク《新世界より》と、ムソルグスキー《展覧会の絵》。ひと晩で聴くにはちょっとヘビーなプログラムですが、もちろん大歓迎でしょう。
 18時にホール入りして、期待と緊張感のなか、音出し(アンシュピールプローベ)が行われます。コンサートは、ヨーロッパ風に20時開始ですが、聴衆にとっても、オケにとっても一瞬のように最後まで到達。大喝采の後、アンコールで演奏されたのは…秘密です。

11月19日(水)
 韓国での2回目のコンサート。プログラムはR・シュトラウス《ドン・ファン》&《ばらの騎士》組曲、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」です。この日もホールは盛況で、会場は大いに沸きました。日本でショスタコーヴィチが演奏されないのは残念。ヤンソンスはこの作曲家のスペシャリストでもあるので、なおさらです。
 ソウル芸術センターには、手が冷たくならないようにピアニスト(あるいは他の音楽家)が手を温めるためのヒーターがありました。う〜ん、なるほど!これは名案です。終演後は、お客さんが立て看板の前で記念撮影。

11月20日(木)
ソウルから、昼過ぎの飛行機に搭乗。約2時間のフライトを経て、羽田空港に到着しました。ついに日本ツアーが始まります。空港では、日本の招聘元ジャパン・アーツのスタッフがピックアップしてくれました。当楽団のOBである水島愛子さん(ヴァイオリン)の姿も。再会の喜びに話が弾みます。
一行はホテルへ直行。すでに時差も取れ、オケ内部の雰囲気は上々です。ホテル・ロビーでは、皆が「今夜はどこに何を食べに行こうか」と目を輝かせていました。
 日本公演の模様は、バイエルン放送響の公式ツイッター・アカウントでつぶさにキャッチできます。演奏会当日は、始まりから終わりまで、リアルタイムで画像等を発信してゆきますので、フォローしてください!

バイエルン放送響ツアー・ツィッター(日本語)








 BR Klassikが創立5周年!レーベル・マネージャー インタビュー

シュテファン・ピーンドル(BR Klassikレーベル・マネージャー)
 バイエルン放送協会が運営する レーベルBR Klassikは、2009年にスタート。今年で5周年を迎えます。バイエルン放送響のほか、バイエルン放送協会傘下のバイエルン放送合唱団、バイエルン放送管弦楽団のCD、DVD等をリリースしているのは、ご存知の通り。既に70を越えるタイトルを誇り、近年スタートした自主運営レーベルのなかでも、最大規模を誇るものと言えるでしょう。
 今回は、その運営に携わるレーベル・マネージャー、シュテファン・ピーンドル氏にお話を聞きました。ピーンドル氏は、ドイツのEMI、BMGで制作に携わり、EMIのチェリビダッケ・エディションを実現させた人物。2007年から独立し、CD関連のコンサルティング会社「Arion Arts」を設立し、その立場でBR Klassikレーベルの運営を担当しています。

――BR Klassikが面白いのは、バイエルン放送協会全体のクラシック・レーベルだという点です。

シュテファン・ピーンドル「ドイツの地方公共放送局は、多くの場合複数の交響楽団や合唱団を抱えています。バイエルン放送協会がレーベルを発案した時、バイエルン放送響だけでなく、放送合唱団や放送管を抱き込むことは論理的帰結でした。大規模で国際的名声を誇る放送響、エンターテイメント性も備えた放送管、合唱団の個々の特色を出すことで、レパートリー上も幅が出るため、これはよい決断だったと思います」

――BR Klassikというのは、単なるレーベル名ではなく、バイエルン放送協会のクラシック部門全体、つまりラジオやテレビ放送を含めての総称だそうですね。

「そうです。バイエルン放送には、Bayern 1、Bayern 2、Bayern 3、というようなチャンネルがあるのですが、そのひとつがBR Klassikであり、れっきとしたチャンネルの名称です。放送局のブランドが、そのままレーベルのブランドになっているわけです」

――バイエルン放送協会は、バイロイト音楽祭の中継など、“いい音の放送局”という印象があります。レコード業界への進出も、自然な流れといったところでしょうか。

「バイエルン放送交響楽団は、文字通り“放送オケ”であり、すべての定期演奏会がバイエルン州内およびネット上で中継されます。その際、編集作業も毎回行われ、極めて完成度の放送音源が作られています。つまり、レーベルを立ち上げる前段階で、CDとして出せるレベルの放送音源が存在したわけです。局は、世界最高のトーンマイスター(例えばヴィルヘルム・マイスター氏。写真)を抱えていますし、すぐにでもCDを出せる条件が揃っていました。加えてマリス・ヤンソンスは、ロイヤル・コンセルトヘボウ管でも自主レーベルの経験を持っており、こうしたアイディアの積極的でした。レーベルをスタートするには、まさにピッタリだったのです」

――どの定期演奏会もCDになり得る、ということでしょうか。

「極端な言い方をすれば、そうです。我々は基本的に、“素晴しい演奏になったらリリースする”という姿勢を取っています。もちろんシーズンの始まる前に予定を見て、“これはぜひ発売したい”というような目標は立てます。しかし、実際の演奏会がその期待に応えるものでなかった場合、ボツにすることもできるわけです。これは特別な状況だと思います。普通CD制作の現場では、演奏が決して良い出来にならなくてもリリースせざるを得ません。そのために特別に録音したものですし、レーベルは出来に関わらずオケに報酬を払わなければなりません。しかし我々の場合は、良い出来になった場合、つまりヤンソンスとトーンマイスターが自信を持ってOKを出した場合にしか、出さなくてよいのです」

――つまりリリースされたものについては、すべてがお墨付き、ということですね。

「我々が出したものは、すべてが高い質にあると断言できます。ただ、苦労がないわけではありません。例えば、我々マネージメントにとって素晴しい出来であっても、ヤンソンスやトーンマイスターが納得できず、お蔵入りになる、ということもあるのです。例えば、ロシアものの声楽曲で、外国人歌手のロシア語にヤンソンスが満足できず、NGなった、ということがありました。これなど、ロシア人にしか分からない問題なので、ちょっと残念だったな、と思いますね(苦笑)」

――現在の「リリース候補」を教えていただけますか。

「この9月に行われたハイティングのミサ・ソレムニスは、決まっています。ヤンソンスの《英雄の生涯》&《ドン・ファン》は、日本がツアー先行発売で、ヨーロッパでは少し遅れて出します。確定しているのは、それだけですが、ハーディングのマーラー交響曲第6番にOKが出れば、それも出せるでしょう。今、様々な関係者の間で許諾を取っているところです。この10月にヤンソンスが指揮した《スペードの女王》も、できれば出したいですね。ちなみに今回は、ソリストはすべてロシア人なので、言葉の点では大丈夫だと思いますが(苦笑)。ちなみに、ツアーの時に融通が効く、というのも自主レーベルの強みです。前回の来日公演の時は、ベートーヴェン交響曲全集を来日ぎりぎりに制作してリリースしましたが、そういうことは、普通のレーベルとの間では到底できません。局内にマネージメントがあり、トーンマイスターも居て、アーティストと直接話ができるから、フレキシブルなリリースが可能なのです」

――バイエルン放送協会には、素晴しいアーカイブも眠っていると思うのですが…。

「日本の音楽ファンは、歴史的録音が大好きで、バイエルン放送協会のアーカイブにも高い関心を寄せている、ということは理解しています。我々の方でも、できるだけそのような録音を出してゆきたいと考えています。ただ、過去のものというのは意外に難しく、マテリアルがリリースに耐える状態であるか、編集が行えるか(そのための素材が充分あるか)、というような問題、また録音当時に楽譜の権利がクリアされていたか、という問題があります。楽譜使用料というのは結構バカにならないもので、すぐに数千ユーロになってしまうのです。加えて、OrfeoやAuditeがバイエルン放送協会の音源をかなり出していて、これは、というものはすでに出尽くしている、という側面もあります。すみません、問題山積のように聞こえますね(笑)。でも、実際には古いものも発掘してゆく姿勢ですので、ご心配なく!」

――興味深いお話を、どうもありがとうございました。

バイエルン放送響ツアー・ツィッター(日本語)

 BR Klassik最新タイトル・レビュー

BR Klassikにおけるバイエルン放送響の最新タイトルを国内の音楽評論家の方々にレビューしていただくコーナーです。今回は独特の文体と個性的な論点が人気の鈴木淳史さんにご登場いただきます。ヤンソンス指揮のヴェルディ「レクイエム」と、ハイティンク指揮のハイドン《天地創造》の2題。この大規模な声楽曲を、両巨匠がどう料理しているでしょうか?

ヴェルディ「レクイエム」
マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団&合唱団
クラッシミラ・ストヤノヴァ(S)、マリーナ・プルデンスカヤ(Ms)、サイミール・ピルグ(T)、オルリン・アナスタソフ(Bs)
録音:2013年10月10・11日、ミュンヘン・ガスタイク・フィルハーモニー(ライヴ)
[BR Klassik (D) 900126] (2枚組)

 「宗教曲にしてはオペラ的すぎる」と言われがちなこの作品。確かに、独唱や重唱に染み渡るヴェルディ節を耳にすれば、この作曲家持ち前の卓抜な劇性に貫かれぬ聴き手はいないはずだ。ヤンソンス指揮バイエルン放送響の演奏からも、悔悛と浄化の合間に「怒りの日」の苦難が顔を出す、ヴェルディならではの劇的緊張感が伝わってくる。ただし、むやみに高揚と法悦を煽る代わりに、高密度かつ高解像度のアンサンブルで、恐ろしく丁寧な手付きでそのディテールを描く。かつてカラヤンがプッチーニを振ったときのように、透き通った抒情性を煌めかせつつ。
 独唱陣のうち、女声パートはヤンソンスが以前ベルリン・フィルでこの曲を演奏したときのメンバー。男声パートも実力派揃いで、なんといっても重唱がキー・ポイントになるこの作品で、驚くべきほどアンサンブルの整っていること。そして、言うまでもなく、バイエルン放送響の明るく、透明感のある響きは絶品だ。「書き記されし書物は」での「怒りの日」が再現するまでの流れの作り方、「奉納唱」最後の弦トレモロのゾクゾクするような美しさなど、ヤンソンスはこのオーケストラの美質を十二分に引き出す。
 ヤンソンスは、歌劇場で重要なポストに就いた経験がない。おそらく、その完璧主義な姿勢が劇場には不向きなのだろう。しかし、彼の音楽作りにはオペラ的な要素が強いのではないかとかねてから思っていた。ドッシリ構えたバランスや、構造優位の組立ではなく、流れに対して柔軟に、装飾的なものを極めて高いセンスで織り込んでゆく。このヴェルディの「オペラ的な宗教曲」でも、オペラというには洗練された響きながら、死へと向かう心理の推移を細やかに活写する。いや、こうも言い換えられよう。このレクイエムはオペラ的な宗教曲というより、そもそもすべてのヴェルディ作品には宗教的なエッセンスが備わっていて、ヤンソンスのこの演奏はそれをうまく燻し出しているのではないかと(鈴木淳史)。



ヴェルディ:レクィエム マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団、バイエルン放送合唱団(2013ミュンヘン・ライヴ)(2CD)

CD 輸入盤

ヴェルディ:レクィエム全曲 マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団、バイエルン放送合唱団(2013ミュンヘン・ライヴ)(2CD)

発売日: 2014年11月25日

カートに入れる


ハイドン《天地創造》
ベルナルド・ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団&合唱団
カミッラ・ティリング(S)、マーク・マドモア(T)、ハンノ・ミューラー=ブラッハマン(Bs)
録音:2013年12月19・20日、ミュンヘン・ヘラクレスザール(ライブ)
[BR Klassik(D)90012514](2枚組)
 《天地創造》はカオスから始まる。ハイティンクは、整理され尽くした響きで、クッキリ見通し良く聴かせる。たとえ混沌といえども、バロックやロマン派のものとは違い、来たるべき秩序までもそこに胚胎させるのがハイドンの流儀。そういう見通しの良さがあってこそ、ハイドンの優雅にして茶目っ気も交じった仕掛けも生きてくるというもの。
 ハイティンクのハイドンといえば、交響曲が何曲か録音されているが、オラトリオ演奏は珍しいのではないか。83歳を迎えた彼の最新録音は、なんといっても、それぞれの声部が細やかに層を成すことで得られる立体感がすばらしい。その立体感は、かつて彼が拠点にしていたオランダや英米よりも、ドイツのオーケストラを振ったときにさらに明確に表れるようだ。しかも、対抗配置のバイエルン放送響ならではの繊細さを究めた響きは格別。
 第6曲〈泡立つ波を轟かせ〉での弦楽のデリケートかつ表情豊かなフレージング、第25曲〈威厳と気高さを身につけ〉でのチェロの豊穣な歌謡性など、陽光の下、均整のとれた美しい世界が広がる。また、バリトンのレチタティーヴォ〈また神は鯨と〉は、まるでバッハの受難曲を彷彿とさせる異様なまでの低弦合奏の濃密さ。この箇所だけに立ち込める、イエスの決意を思わせる男くさいロマン。
 独唱は、バリトンのミューラー=ブラッハマンの威厳と表現力に満ちた歌唱が抜きんでいる。期待していたパドモアのテノールは、今回はたまたまコンディションが悪かったのか、声が下方に引きずられ気味なのが残念。
《天地創造》の唯一の弱点は、自然や動物を作り出す第2部までの創意溢れた音楽に比べ、第3部は演奏によってはアダムとイヴによる三流オペラになりがちな点だ。しかし、情念に引き寄せられず、淡々かつ堂々としたハイティンクの運びは、オラトリオとしての器の大きさを際立たせている。優秀録音(鈴木淳史)。



ハイドン:『天地創造』 ハイティンク&バイエルン放送交響楽団、バイエルン放送合唱団(2CD)

CD 輸入盤

ハイドン:オラトリオ『天地創造』全曲 ベルナルト・ハイティンク&バイエルン放送交響楽団、バイエルン放送合唱団(2CD)

発売日: 2014年9月23日

カートに入れる

 BR Klassik特別プレゼント:HMVでCDをご購入の方に超レア・アイテムを!

賞品は、ヤンソンスのサイン入りCDや非売品のショスタコーヴィチ「第5」CD等!
 本オンライン・マガジンでは、HMV OnlineでBR Klassikのタイトル(新譜・旧譜不問)をご購入された方に、特別プレゼントを実施します。
 賞品は、マリス・ヤンソンスのサイン入りのBR Klassik CD(3名様。タイトルはお任せください)、ヤンソンス指揮バイエルン放送響によるCDショスタコーヴィチ「交響曲第5番」、ベルク「ヴァイオリン協奏曲(ソロ:ギル・シャハム)」(定期会員用非売品ライブ盤。5名様※)、バイエルン放送響2014/15年シーズン・プログラム(約120ページ。5名様)。
ご住所・ご氏名、BR Klassikのタイトルをご購入された際の注文番号をご記入の上、2014年12月11日までに info@amadigi.com までお送りください(メールアドレスはこのキャンペーンだけに使用されるもので、他の目的では使われません。なお、必ず実名でご応募ください)。たくさんのご応募をお待ちしております。

※前号で、マーラー「交響曲第2番《復活》」でご案内させていただきましたが、在庫上の都合でショスタコーヴィチ&ベルクに変更させていただきました。ご了承ください。

プレゼント応募はこちらから

 マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団来日公演スケジュール

川崎公演/ミューザ川崎シンフォニー・ホール
2014年11月21日(金)19:00
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15 <ピアノ:クリスティアン・ツィメルマン>
ムソルグスキー(ラヴェル編):《展覧会の絵》

京都公演/京都コンサート・ホール
2014年11月22日(土)15:00
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95 《新世界より》
R・シュトラウス:交響詩 《ドン・ファン》 作品20
同:《ばらの騎士》組曲

東京公演/サントリー・ホール
2014年11月24日(月・休) 14:00
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15 <ピアノ:クリスティアン・ツィメルマン>
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95 《新世界より》

東京公演/サントリー・ホール
2014年11月25日(火) 19:00
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15 <ピアノ:クリスティアン・ツィメルマン>
R・シュトラウス:交響詩 《ドン・ファン》 作品20
同:《ばらの騎士》組曲

西宮公演/兵庫県立芸術文化センターKOBELC大ホール
2014年11月27日(木)19:00
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15 <ピアノ:クリスティアン・ツィメルマン>
ムソルグスキー(ラヴェル編):《展覧会の絵》

マリス・ヤンソンス(指揮)
バイエルン放送交響楽団

次号の「バイエルン放送交響楽団 in Japan来日記念特別提携マガジン」は、2012年12月3日(水)発行を予定しています。

実施協力:株式会社ジャパン・アーツ
©2014 Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks, all rights reserved.