GRAVE インタビュー!

2014年4月8日 (火)

GRAVE
GRAVE (2011)
< Ola Lindgren / GRAVE インタビュー >

2014年年明け早々、GraveWehrmachtPrimate という信じられないパッケージのライブが、ここ日本で実現した。何が信じられないって、Grave と Wehrmacht の来日ですよ。Wehrmacht についてはまた後日に譲るとして、スウェーデンのデスメタルバンド、Grave のライブがまさかここ日本で見られるとは!スウェーデンというのは、アメリカのフロリダと並んでデスメタルの聖地と目されるところ。だが、メロディックデスメタルを別とすれば、スウェーデンのデスメタルバンドというのはあまり来日していないのではないか。パっと思いつくところでは、EntombedDismemberあたり?ということで、ヴォーカル・ギターを担当するリーダー、というよりも Grave そのものと言っても過言ではない Ola Lindgren に話を聞いてみた。



--- Mirai Kawashima (以下、M): お疲れのようですが。


Ola Lindgren(以下、Ola) :そうなんだよ、二日酔いでね。

--- M : 日本は初めてですか?印象はどうですか。


Ola :初めてだ。ヨーロッパなどとは全然違うね。とても良いところだと思うよ。

--- M : 1984年に Rising Power としてバンドを始めたとのことですが、当初はどんなスタイルだったのでしょう。


Ola :そうだな、わりと普通のメタルというか、スラッシュメタルというか。その後 Corpse と名前を変えたんだ。

--- M : スウェーデンのデスメタルバンドの多くはハードコアパンクから影響を受けているようですが、何故なのでしょう。 あなたもハードコアからの影響はありましたか。


Ola :いや、俺の場合はまったくないね。パンクもハードコアも一切聞かないんだ。よくわからないけど、いわゆるスウェディッシュデスメタルのスタイルというのは、ハードコアパンクに似ている部分があるのかな。俺たちはパンクからの影響というのはないけれど、多くのスウェーデンのデスメタルバンドはハードコアから影響を受けているのは確かだよ。

--- M : では当時はどのようなバンドから影響を受けていたのですか?


Ola :最初はアメリカのスラッシュシーンだね。初期のSlayerTestamentExodusとか。あとはKreatorDestructionCeltic FrostBathory。80年代半ばにはこういうバンドを聞いていて、その後いわゆるデスメタルが爆発的人気になったんだ。

--- M : もちろん Bathory というのはスウェーデンのバンドに大きな影響を与えていると思うのですが、Quorthon や Bathory というのはスウェーデン本国でとても良く知られているのでしょうか。


Ola :いや、そんなことはないよ。Quorthon というのは謎に包まれているというのかな、俺は一度会ったことがあるのだけどとても良い人だった。ストックホルムのレコード屋でなんだけど。

--- M : サイン会か何かですか?


Ola :いや、ただレコード屋でレコードをチェックしている最中だったようだ。俺もまだ16-17歳の頃で、少し話をしたんだ。

--- M : それはいつ頃ですか?


Ola :87-88年頃じゃないかな。

--- M : デスメタルというスタイルを選んだ理由は何ですか?


Ola :Corpseを86-87年頃始めたのだけど、

--- M : Corpse のスタイルはもっとスラッシュ寄りでしたよね。


Ola :ああ、最初はスラッシュメタルっぽかった。やがてどんどんデスメタルにハマっていったんだ。なので自然とスタイルもデスメタル寄りになっていった。

--- M : なるほど、Grave の最初の2本のデモもスラッシュからの影響がはっきり出ていますよね。


Ola :その通りだね。

--- M : スウェーデンのデスメタルブームが起こり始めたのが80年代終わりでしたが、何か具体的なきっかけはあったのでしょうか。


Ola :どうだろう。主にストックホルムのバンド、俺たちは当時はストックホルムには住んでいなかったのだけど、ライブがあるとストックホルムに出かけて行ってね。そこで NihilistDismemberCarnage のメンバーと会ったりテープをトレードしたりね。彼らからの影響というのはとても大きかった。特に Nihilist は非常にオリジナリティがあり、曲作りにおいて特別なスタイルを持っていたので、大きな影響を受けたんだ。

--- M : デスメタルブームが起こる前というのは、私たちはスウェーデンというと、むしろメロディアスなバンドが主流というイメージがあったので、意外でした。スラッシュも盛んという印象は無かったですし、非常に突然に起こったムーブメントというか。


Ola :そうだな。確かにいきなりだった。Nihilist を始めとして、Merciless などもいたし、まあ彼らはスラッシュ寄りであったけど、確かにこういったバンド以前はエクストリームなバンドは殆どいなかったね。

--- M : スウェーデンのデスメタルのスタイルというのは、アメリカのバンドとは大きく違いますよね。これは何故なのでしょう。


Ola :どうだろう。よくわからないが、スウェーデンのバンドというのは基本的にスピードを追求していないよね。アメリカのバンドだと、例えば ImmolationMorbid Angel などはスウェーデンのバンドよりずっと速いだろ。何故かはわからないが、明らかにスタイルは違うね。

--- M : デビューアルバム "Into the Grave"は、おそらく Century Media からリリースされた作品としては最も激しいものだと思います。Century Media のような大きなレーベルからアルバムをリリースするというのはどうでした?


Ola :最初の頃はそれほどきちんとしたレーベルであったわけではないよ。彼らもまだ設立されたばかりだったし。89年くらいにレーベルを始めたのかな。俺たちがサインしたのが91年だからね。その後どんどん会社として成長していった。一旦彼らから離れたのだけど、今はまた Century Media 所属だし、長く知っているからやりやすいんだよね。お互いのことを良く知っているからさ。

--- M : "Into the Grave" は日本の音楽雑誌で100点中4点をつけられたのをご存じですか?


Ola :4点?

--- M : そうですよ。Wehrmacht の1stアルバムは9点でした。


(横にいたKevin Sharp):4点?マジかよ!

Ola:4点だってよ、クソアルバムということだな!

--- M : まあでもこれはデスメタルバンドとしては名誉なことですよ。60点なんかよりも4点というのは、それだけインパクトがあったということですからね。欧米での反応はどうでしたか?


Ola :とても反応は良かったよ。とてもよく売れたし、今でもあのアルバムは売れ続けている。

--- M : 最早クラシックですからね。


Ola :ああそうだね。

--- M : 現在ではデスメタルのスタイルも多種多様になり、メロディックデスメタルなど色々ありますが、Grave はずっと同じスタイルを保持していますよね。違ったスタイルをプレイしてみようと思ったことはないのですか。


Ola :いや、ないね。そもそも他のスタイルの曲を書けないよ。俺たちはミュージシャンとしては糞だしさ。そもそも他のスタイルをプレイするのなら、Grave の名前ではやらないよ。

--- M : 最近はスウェーデンやノルウェーのデスメタルバンドが70年代スタイルのHRをやることも多いですよね。


Ola :ああ。人気のためやもっとアルバムを売りたいなど、色々と理由はあるのだろうけど、コロコロとスタイルを変えるというのは正直あまり感心しないよ。

--- M : Grave の今後の予定を教えてください。


Ola :日本の次にオーストラリアに行く。その後メキシコに行く予定さ。

--- M : メキシコに行かれたことはありますか?


Ola :何度かあるよ。

--- M : メキシコのデスメタルファンは非常に熱心だと聞きますが。


Ola :ああ、彼らはクレイジーだよ。メキシコまではとても遠くてね、一回のショウのために行くのはとても大変なのだけど、メキシコでのライブはいつも素晴らしいものになるからさ。夏はヨーロッパでフェスに出る。その合間を縫って曲を書いて、できればレコーディングもしたいね。

--- M : 新作は今年中に出そうですか?


Ola :その予定だよ。

--- M : では最後に日本のファンへメッセージをお願いします。


Ola :長い間サポートしてくれて、本当にどうもありがとう。日本には昔からの文通友達がたくさんいるんだ。やっと日本でプレイできるので、とても興奮している。君たちのおかげでバンドの活動を続けられている。俺たちは自分のためではなくて、ファンのためにプレイしているのだからね。

--- M : どうもありがとうございました。

 当日の出演順は PrimateWehrmacht そしてトリが Grave であった。前に出た Wehrmacht はあらゆる意味で Graveと は正反対のタイプ。とにかく速くてバカ。ステージで大騒ぎをして大いにオーディエンスを盛り上げた。正直 Wehrmacht が終わった時点で、この後に出る Grave はキツいのではないかと思っていた。Grave の楽曲は決して派手ではない。インタビューでも触れられている通り、スピードに固執するタイプではない。大丈夫なのだろうか。ところがステージが始まると、私の杞憂などまったくの大間違いであることがすぐに明らかになった。ミドルテンポで淡々と進む楽曲が多いのだが、オーディエンスを引き込む力が半端ではない。同じく1月に来日した Rotting Christ を見たときも思ったのだが、エクストリームメタルのライヴにおいて、ミドルテンポの楽曲で魅せられるバンドというのは本当に実力がある。

 いわゆる一般的な音楽というのは、メロディ、ハーモニー、リズムという3つの要素をうまく絡めて作る。物凄く簡略化して言えば、ヴォーカルがメロディを担当し、伴奏がコード進行でハーモニーを提示する。もちろんリズムが重要な要素であるのは間違いないが、やはり多くの人の印象に残るのがメロディとハーモニーだろう。ところがエクストリームメタルにおいては、この比率が大幅に偏る。まずヴォーカルにメロディがない。ヴォーカルはメロディではなくリズムを担当するのだ。そしていわゆるリフが、メロディやハーモニーにあたる部分も担当するわけだが、概して明確なわかりやすいコード進行があるわけではない。つまり、エクストリームメタルというのは、一般的にイメージされる音楽に比べ、メロディ・ハーモニーを切り捨てた分、圧倒的にリズムが占める割合の大きい音楽なのだ。これは作曲という過程において、大きなハンディキャップである。何しろメロディとハーモニーという大きな武器を、積極的には使えないという制限を自ら課す訳なのだから。言うなれば飛車角落ちで戦うようなものだ。(将棋全然知りませんけど。)そこで、多くのエクストリームメタルバンドは、新たにスピードという武器を導入する。速さというのは、それだけで正義になりうる。スラッシュメタルが出てきた頃、「速ければそれでいいのか?」という批判が散見されたが、速ければそれで良いというのはある程度事実だ。スピードというのは、それだけで人間に興奮を与える。ジェットコースターが大好きな人に、「速ければいいの?」と聞く人間はいないだろう。スラッシュメタルファンに、「速ければそれで良いのか?」と尋ねるのは、そのくらい愚問なのである。Grave の前に出た Wehrmacht が良い例だ。80年代中盤、世界で最も速いバンドの一つと目された彼ら。極限までスピードを上げることにより、人々に興奮を与えたのである。ところが Grave のようなバンドは、その唯一の武器とも言えるスピードすら使わないのだ。あらゆるギミックを排除した上で、リフだけで勝負をし、それで魅せるステージを作る。本当に限られた素材の中で最高のものを提供する。ミドルテンポの曲で聞かせるためには、相当の演奏力も必要となる。速く演奏する方が難しいのでは、と思う方もいるかもしれないが、楽器をある程度やったことがあればわかるとおり、遅い=演奏が簡単ではない。むしろ速い演奏というのはごまかしが効くという部分すらある。そんな訳で Grave のようなバンドって、作曲面、演奏面ともに本当に才能に溢れているんだろうなと思った次第である。年明け早々、エクストリームメタルの本質に迫る素晴らしいステージであった。

 それにしてもレコード屋に言ったら偶然 Quorthon がいたなんて、あまりにうらやましすぎる体験ですね。


Mirai & Ola


川嶋未来/SIGH
https://twitter.com/sighmirai
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