【HMVインタビュー】二階堂和美『ジブリと私とかぐや姫』

2013年11月18日 (月)

11/23(祝)より全国で公開されるジブリ映画『かぐや姫の物語』
主題歌「いのちの記憶」を歌うのは、広島出身の歌手、作詞・作曲家、二階堂和美。以前より高畑勲監督が、その類まれな存在に目を留め、力強い中にもやさしさを携えた印象的な歌声に共感して主題歌制作を依頼したという。
これまで、二階堂和美のうたは一部の音楽ファンからとてもとても愛されてきた。今回映画への起用をきっかけに、彼女のうたは多くの人に聴かれる機会を得た。そのことは、これまで彼女の音楽を愛してきた人にとっても大変喜ばしい事だろう。
もし、あなたが映画『かぐや姫の物語』で初めて彼女の音楽に触れ、心を揺らされたならば、今回リリースされる映画の歌集アルバム『ジブリと私とかぐや姫』、そして彼女がこれまでリリースしてきた『にじみ』『二階堂和美のアルバム』といった作品を聴いてみて欲しい。そこにも心に深く沁みる歌と世界がたくさんつまっているので。
今回は、映画公開を前に注目の集まる二階堂和美さんにメールで伺いました。うたからもにじみ出る彼女の人柄を感じて頂ければと思います。

--- 今回は、スタジオジブリ・高畑勲監督作品「かぐや姫の物語」の主題歌という事で、映画をイメージして楽曲を作られたと思います。主題歌「いのちの記憶」は映画からどのようなインスピレーションを受けて作った楽曲でしょうか？

当初は主題歌のオファーではなくて、エンディング曲をということでお話をいただきました。その段階では映画はまだできていなかったので、脚本を頼りに映画を想像して、この物語の最後にどんな曲を聞きたいだろうか、と一観客の気持ちで欲しい音、歌を探りました。この世に生まれたら必ず終わりが来る、ということをテーマに、それをどう捉えるか、そこで自分は何ができるかに思いをはせて曲を書きました。

--- 高畑勲監督自身が二階堂さんの才能に惚れてのオファーだったそうですが、最初オファーが来たとき、どのように感じましたか？

おおー！って思いました。高畑監督やるなあ！みたいな。よくぞまあ私のこと見つけてくれたなーって、そのアンテナの張り方にも、また私に任せようと思ってくれた勇気にも、高畑さんチャレンジャーだなあって、尊敬しました。

--- 高畑勲監督の作品にはどのような印象をお持ちですか？

まやかしがない。すごく誠実で挑戦的。いろんなことへの問題意識の高さを感じます。

--- 歌集アルバム『ジブリと私とかぐや姫』には、オリジナル作品(新曲)と、これまでの高畑監督アニメ作品を彩った名曲カバーで構成されています。コンセプトがはっきりしたアルバムだったと思いますが、主題歌以外の新曲もジブリ作品を意識して作られたのでしょうか？

ジブリ作品を、ではなくて「かぐや姫の物語」をです。この映画のミュージカル音楽みたいなつもりで作りました。映画全体のイメージは「いのちの記憶」に集約しちゃったんで、他の新曲は各シーンにあててイメージしました。

--- 前作『にじみ』収録の楽曲「めざめの歌」のオーケストラ・バージョンも、とても印象的です。二階堂さんの中でも特別なうたになったのでは？

そうですね。この曲を収録したいというのが、今回のアルバムで私が最も主張したところでもあります。もちろん、「かぐや姫の物語」と繋がる歌だと思ったというのが一番ですが、もともと「めざめの歌」はもっと広く聴かれたいと思っていて、シングルで出す案も出ていたり、別のアウトプットの仕方を探っていました。今回、二階堂和美のことを初めて知ってくださる方に届くよい機会だと思ったし、オーケストラという大仰なものも、この企画盤の中だったら、浮くことなく聴いてもらえると思って。

--- 「君をのせて」（「天空の城ラピュタ」より）や「愛は花、君はその種子」（「おもひでぽろぽろ」より）など、高畑監督作品にまつわるカバー曲。楽曲はどのような基準で選びましたか？

監督と西村さん（「かぐや姫の物語」のプロデューサー）が「これらの曲を二階堂さんが歌うのを聴いてみたい」ということで選んでくださったんです。自分で選んでいたらもっと違うのを選んでいたと思います。ハイジの「おしえて」とか、赤毛のアンでも「さめない夢」をやっただろな！でも自分では選ばなかっただろう曲のほうが、やりがいがあってよかったです。

--- 楽曲をカバーするにあたって意識した事はありますか？

とにかく、言葉がはっきり聞き取れて、それをスッと受け取れるようにすることです。そのためにメロディや曲調を多少変えさせてもらうこともありますが、なるべく変えないように、一回大きく外れてから元に戻す。いつどんなカバーをするときも同じですが、まず曲の骨格を見るようにするんです。そこから服を着せていく。「私、カバー好きだわあ」って、今回また改めて思いました。カバーのアレンジを考えるのはとっても楽しい作業です。

--- これまで二階堂さんの独創性の高い音楽は、一部の音楽ファンに愛されてきましたが、今回ジブリ作品に楽曲が起用される事で、多くの人に聴かれる事になります。その事に関してどのように感じていますか？

独創性があるとは全然思っていないんですが･･･。広く聴いていただけるものを作りたいと思ってやってきたので、より多くの方の耳に届くのは嬉しいです。それがちゃんと心にも届くものであったらよいな、と思っています。特に今回の「いのちの記憶」は『にじみ』をさらに抽出、精製した一曲ができたような気がしていて、監督に、映画に、「この曲を作らせてもらった」という思いが強いので、客観的に自信を持って送り出せます。私が広く知られるんじゃなくて、この曲が一人歩きしてくれたら一番いいなと思っています。

--- 二階堂さんは、アーティスト/シンガーとしての顔と同時に、現役僧侶としての顔もお持ちです。僧侶としての生活は、アーティストとしての活動にどのように影響を与えていますか？

僧侶といっても、ほんとに普通に一庶民として生活しているので、家族と暮らす面倒くささとか、老いや死の身近さとか、負の感情が多いですよ。でもだからこそ、ささやかな喜びとか人間味とかを実感できるんです。それが歌を作らせているし、タフさに繋がっていると思います。

--- 二階堂さんの歌を聴くと（ライブは特に）、本当に歌う事が大好きな方なんだなと思います。ニカさんにとって歌うこととは？

うーん。自分の、かろうじてある、取り柄、かな。そう思わせてもらえるようになったのは、こんにち支持してくださる方があってこそです。

--- 最近はまっている事はありますか？

ないけど、暇ができたら裁縫したいです。

--- 今後どのような活動をしていきたいですか？

仏法を依りどころとして生きる、という姿が人にも伝わるような生き方をしたいです。もっと勉強したいし、場数も踏みたいです。まあ唯一の取り柄である歌を使わないではできそうにないですから、そのやり方を探っていきたいですね。でも毎日を丁寧に暮らすっていうのを一番したいです。とかく煩雑ですから･･･。

--- 最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします！

長々読んでくださってありがとうございました！もちろん、曲を聴いてくださった方々には常に感謝いっぱいです。ほんとに、ありがとう！！

≪映画情報≫

高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』
2013年11月23日（祝）全国ロードショー

姫の犯した罪と罰。スタジオジブリが描くかぐや姫
かぐや姫は数ある星の中から、なぜ地球を選んだのか。
この地で何を思い、なぜ月へ去らねばならなかったのか。
彼女が犯した罪とは、そして、罰とはいったい何だったのか――。
日本最古の物語文学「竹取物語」に隠された、ひとりの少女・かぐや姫の真実の物語。
巨匠・高畑勲、１４年ぶりの最新作。

映画『かぐや姫の物語』公式サイト

　二階堂和美　『ジブリと私とかぐや姫』[2013年11月20日発売]

映画公開に合わせ、高畑勲監督公認の歌集アルバムを発売！主題歌「いのちの記憶」を収録の他、二階堂自身のオリジナル楽曲「めざめの歌」の別バージョン、そして、「君をのせて」（「天空の城ラピュタ」より）や「愛は花、君はその種子」（「おもひでぽろぽろ」より）など、高畑監督作品にまつわるカバー曲も収録。高畑勲監督自身が惚れ込んだという二階堂和美の心に深く沁みる歌と世界を楽しめます。ジブリ映画のサウンドトラックと同様に人気のある「歌集シリーズ」は、ジブリ映画の魅力の１つである「歌」の世界と、僧侶とシンガーの２つの顔を持つ二階堂和美の「歌」の世界の両方を楽しめる１枚です。

『ジブリと私とかぐや姫』収録楽曲

01．あの山のむこう
02．私の宝
03．わらべ唄 (映画『かぐや姫の物語』より)
04．歩き回って走り回って
05．月の使い
06．歓喜
07．めざめの歌 [オーケストラ・バージョン] (アルバム『にじみ』より)
08．いのちの記憶 (映画『かぐや姫の物語』より)
09．君をのせて (映画『天空の城ラピュタ』より)
10．あしたはどんな日 (テレビアニメ『赤毛のアン』より)
11．愛は花、君はその種子 (映画『おもひでぽろぽろ』より)
12．バケツのおひさんつかまえた (テレビアニメ『じゃりン子チエ』より)
13．ケ・セラ・セラ (映画『ホーホケキョとなりの山田くん』より)
14．いのちの記憶 [オーケストラ・バージョン]
15．はにゅうの宿 (映画『火垂るの墓』より)

二階堂和美

97年よりギターと声を中心とした制作、ライブ活動をはじめる。これまでに9作品をリリース。他コラボレーションやゲスト参加作品も多数。優しくも力強い歌声と幅広い音楽性、絶妙なセンスと筋のある音楽スタンス。そして、明るく人懐っこい性格が日本全国、世界各国から愛されており、全国ツアーや、海外ツアーも行っている。最新作「にじみ」(2011)は二階堂のこれまでの人生を凝縮したような集大成ともいえ、各地で大絶賛を浴びている。近年はNHK「おかあさんといっしょ」や小泉今日子さんのアルバムへの楽曲提供、地元の学園歌を手がける等、活動の幅を更に広げている。

[関連リンク]

二階堂和美オフィシャルサイト