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【インタビュー】渡辺貞夫 新作

Wednesday, May 15th 2013



 日本を代表するジャズ・アルト・サックス奏者である渡辺貞夫の新作『オウトラ・ヴェス〜ふたたび〜』はサンパウロ録音。昨年12月にリチャード・ボナとのツアーを終え、すぐにブラジルに飛んで現地ミュージシャンたちと録り上げたものです。この2月で80歳を迎えましたが、なんと意気軒昂なこと!彼の豊かな音楽キァリアの一側面を括るような新作について、ブラジル音楽との出会いも含めて、忌憚なく語っていただきました。



1965年当時はハード・バップを追い求めていて、ブラジル音楽なんか興味なかったんだけど、ゲイリー・マクファーランドにすっかり惚れ込んでしまい、それ以降、ボサノヴァは喰わず嫌いじゃなくなりましたね。


-- ボサノヴァやブラジル音楽の存在を知ったのはいつ頃なのでしょう?

Sadao:1965年ですね。留学していた時、その最後の年ですね。ゲイリー・マクファーランドという素晴らしいヴァイブ奏者/アレンジャーがいまして、彼の『ソフト・サンバ』というアルバムがヒットしたんです。それで、アメリカを10週間ほど回るツアーをすることになって、それにテナー・サックスとフルートで声をかけてもらったんですよ。当時ももちろんアルトを吹いていたんですが、テナーで声をかけてもらって、楽器を借りて加わりました。でも、ゲイリーのバンドに参加した時はブラジル音楽も知らないし、ぜんぜん興味もなかった。熱心にハード・バップを追い求めていましたから。だから、最初ボサノヴァをやったときはダルな音楽だなと思いましたね。でも、一緒にやっているうちに、ゲイリーの人柄と彼のミュージシャンシップにすっかり惚れ込んでしまい、それ以降、喰わず嫌いじゃなくなりましたね。とともに、サンフランシスコのクラブにゲイリーのバンドで出演しているときに、向かいのクラブにはセルジオ・メンデスがブラジル65で出演していて、お互いに演奏を聞き合ったりしたんです。そこでは、ワンダー・サーという可愛い女の子が歌っていたりして、親しくなった。それで、ブラジルの生の音を聞かせてもらって、そういうことも興味を持った強いきっかけになっていますね。


-- セルジオ・メンデスとも交流があったわけですか。

Sadao:ありました。それで、日本に戻ってきてから、日本の奏者は暗いので、少し明るくなってもらおうかなと、ボサノヴァもやったわけです。


-- 66、67年はボサノヴァっぽいアルバムを沢山出していますよね。

Sadao:レコード会社がそういうのを作ってくれ、と。ブラジルの名曲をピックアップしてやったりして、68年に初めてブラジルに行きました。2、3週間いたのかな。サンパウロで、小野リサのお父さんが「クラブ一番」というのをやっていたんです。毎晩、地元のミュージシャンとセッションして、そこらへんですっかりブラジルにはまりましたね。


-- やはり、ちゃんとブラジルでレコーディングしなきゃと思ったわけですか。

Sadao:いや、最初はアルバムを録る予定はなかった。当時のタクト・レコードから、せっかく行くのだったら一枚作ってきてくださいと、30万渡されたんです。それで、30万円で作ってきたんだよね(笑)。小野さんと一緒に4つぐらいバンドをチェックして、共演者を選びました。


-- 今からちょうど45年前になりますよね。当時のブラジルはどうでしたか?

Sadao:サンパウロは元気でした。音楽的にもね。ジャズ好きのミュージシャンが集ったジャズ・ソサエティというのがあって、彼らとセッションをしたりしました。そういえば、イリアーニ(・イリアス)の家に遊びに行ったりもした。彼女はまだ子供で、上手にピアノを弾く少女でしたね。


-- そのころ、ブラジル音楽のどんなところに魅力を感じていたのでしょう?

Sadao:やはりリズムには興味があったし、それからメロディですね。やはりブラジル独特の、よくサウダーヂと言いますが、それを感じさせる歌が多かった。それこそジョビンだカルロス・リラだと、それ以前から素晴らしい作曲家がいて、皆いい曲を書いていましたね 


-- 貞夫さんというと、ジャズの演奏家であるとともに、秀でた作曲家という印象も持ちます。そういう部分は、ブラジル音楽愛好から来ている部分もあるのでしょうか。

Sadao:それは、もの凄く大きいです。もちろんリズムの魅力もあったけど、歌の魅力、メロディの魅力にひかれ、憧れましたね。その頃、ジャズのシーンはかなり前衛的な時代に入っていて、そういうなかブラジル音楽というのは、言ってみればノスタルジックな、メロディの優しさがあった。とにかく、歌心があったというのが、僕にとって大きかったと思います。僕自身、曲を書くときは、器楽曲というよりは、口ずさめるような曲を書いていますから。


-- その後、1988年には『エリス』と『メイド・イン・コラソン』をリオやサンパウロで録音していますが、昨年暮れにサンパウロで録音した『オウトラ・ヴェス〜ふたたび〜』はそれ以来のブラジル録音作となるんですよね。

Sadao:ラジオの番組の録音で行ったりはしていましたけど、明確にアルバムを作ろうというのはそれ以来になりますね。


-- 今回一緒にやっているミュージシャンたちはどんな人たちなのでしょう?

Sadao:数年前にバーデン・パウエルの息子(マルセル・パウエル)とやったとき、ファビアーナ・コッツァが一緒に来て、僕は彼女の歌を気に入っちゃったんです。それで、彼女にグループを作ってもらい日本にまた来てもらったんですよ。それで、その時のセルソ(・ヂ・アルメイダ)というドラムとクレーベル(・アルメイダ)というパーカッションのリズムが気に入ったので、ファビアーナを通して、彼らにまたつき合ってもらいたいと連絡を取りました。ピアノのファビオ・トーレスも前に日本に来てもらったことがあった。それから、彼らの紹介で、ギターのスワミJr.が加わったんだけど、これがまたいいギタリストでしたね。



-- 演奏している曲はすべて貞夫さんのオリジナル曲ですよね。

Sadao:そうですね。例えば新曲「ペロウリーニョ」はブラジルのアフォシェというリズムがぴったり来るとなって、皆でやってみました。「シンパティコ」は前作『カム・トゥデイ』でもやっている曲だけど、僕が好きなメロディであるので、今度はブラジルのミュージシャンたちともう一度ブラジル色を出してやってみたいと思いました。そしたら、ファビアーナが選んだので、これはヴォーカル曲になりました。


-- ファビアーナは2曲で歌っていますが、何曲か歌ってほしいと依頼したのですか。

Sadao:ええ、僕は彼女の歌が好きなので。僕が送った曲から2曲好きなの選んでくださいとお願いしました。歌詞は彼女が友達に頼みました。


-- 「カヴォ・ベルディ・アモーレ」なんて曲もありますね。

Sadao:(同国出身歌手の)セザリア・エヴォラにすっかり惚れ込んでしまったことがあって、彼女からインスピレーションを得て書いた曲ですね。ずいぶん前にできていて、今回入れました。一方、「ソリチュード」は僕が書いた一番新しい曲です。サルヴァドゥールのオロドゥンのリズムを入れようかとも思いましたが、しっとりとバラードでやってみました。


-- やはりブラジルで録っている風のようなものはありますよね。

Sadao:日本に帰ってから、この中の2曲ほど日本のミュージシャンとやってみたんですが、どこか気分がでない。あ、やっぱり違うんだなと思いましたね。改めて聞くと、ミュージシャン達がそれぞれいいですよね。


-- ブラジルからミュージシャンを呼んでの、この新作をフォローするツアーをおやりになったりもするんでしょうか?

Sadao:やりたいし、楽しいものになると思います(7月上旬、レコーディング・メンバーたちと東名阪ツアーをする)。その前に、6月下旬にNYのブルーノートでやることになったので、そちらの後になりますが、カッコいいステージになると思います。




渡辺貞夫 『オウトラ・ヴェス〜ふたたび〜』

リズムの魅力はもちろん、ブラジル音楽の歌の魅力、メロディの優しさにも影響を受けた渡辺貞夫。サックスで演奏する器楽曲というよりは、口ずさめる優しいメロディが印象的なブラジル・レコーディングによる新作。1968年に初めてブラジルでレコーディングしてから45年。また、前回から25年ぶりに再びブラジルを訪れてのレコーディング。心あたたまる渡辺貞夫メロディをジャジーに奏でるブラジリアン・フレイヴァー溢れる会心作。

サポート・ミュージシャンとして、ブラジルの人気ヴォーカリスト、ルチアナ・スーザとの共演やキューバの至宝オマーラ・ポルトゥオンドの音楽監督としても知られるギタリスト、スワミ Jr.や、ホーザ・バッソスとの共演で知られ、日本で渡辺貞夫との共演経験もあるドラマー、セルソ・ヂ・アルメイダが参加。また同じく、渡辺貞夫との共演経験がある、パーカッショニスト、クレーベル・アルメイダとピアニスト、ファビオ・トーレスが中心となり、ゲスト・シンガーとして実力派ヴォーカリスト、ファビアーナ・コッツアを迎えた。

1962年ボストン、バークリー音楽院留学時に知り合った、ヴァイブラフォン奏者、ゲイリー・マクファーランドを通じボサノヴァの魅力を知り、1968年に初めてブラジルでレコーディングした「SADAO MEETS BRAZILIAN FRIENDS」を発表し、45年前に初めてブラジル音楽を日本のジャズ・シーンに紹介した。その後も何度かブラジルを訪れ、1988年にもブラジルで2枚のアルバムをレコーディングするほどのブラジル音楽との関わりが深い。また、今作のアートワークには写真家としても有名な渡辺貞夫が撮影したブラジルの美しい写真が多く使用されている。


収録曲

  • 01. オウトラ・ヴェス Outra Vez
  • 02. ペロウリーニョ Pelourinho
  • 03. レクイエム・フォー・ラヴ Requiem For Love
  • 04. カラー・オブ・スプリング Color of Spring
  • 05. ボン・ヂーア 80 Bon Dia 80
  • 06. カボ・ベルディ・アモール Cabo Verde Amor
  • 07. テーマ・パラ・イ・ノヴォ・ヴェント -緑の風- Tema Para É Novo Vento
  • 08. ナタカ・マジ Nataka Maji
  • 09. シンパティコ Simpatico
  • 10. ソリチュード Solitude
渡辺貞夫 (as)
ファビオ・トーレス (p)
スワミ Jr. (g)
パウロ・パウレッリ(b)
セルソ・ヂ・アルメイダ (ds)
クレーベル・アルメイダ (perc)
ファビアーナ・コッツア (vo)

  渡辺 貞夫 プロフィール

渡辺 貞夫
1933年宇都宮生まれ。18歳で上京後、秋吉敏子のコージー・カルテットをはじめ数々のバンドへの参加、バークリー音楽大学への留学等を経て、日本を代表するトップミュージシャンとして、ジャズの枠に留まらない独自のスタイルで世界を舞台に活躍。2005年“愛知万博”では世界中から集まった子供達400人と、国境や文化を越えた歌とリズムの共演という長年の夢を実現させ、それらの活動は海外へ広がる。2011年アルバム「COME TODAY」を発表し、音楽活動60周年を記念したコンサートは各地で好評を博す。国立音楽大学の招聘教授として次世代の育成にも力を注ぐ。現在も精力的に演奏活動を行う生涯現役プレイヤーのその姿は、世界中の老若男女に勇気と感動を与えている。


[関連リンク]
  渡辺貞夫 official web site



渡辺貞夫 今後のライヴ・スケジュール

「渡辺貞夫 オウトラ・ヴェス 〜ふたたび〜」ツアー

7月3日(水)−4日(目) ビルボードライブ大阪
7月6日(土)名古屋ブルーノート
7月8日(月)ポプリホール鶴川
7月9日(火)—10日(水)ブルーノート東京
* Point ratios listed below are the case
for Bronze / Gold / Platinum Stage.  

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