【連載】 黒木渚の 「無限草子」 (6) 黒木渚の 「無限草子」へ戻る

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2013年4月9日 (火)

昨年末、會田茂一/根岸孝旨/田渕ひさ子(bloodthirsty butchers)/斉藤祐樹(髭)らと共に制作した、九州地区限定で発売されたシングル「あたしの心臓あげる」が話題に。年明け早々には全国発売となるなど、今最注目のバンド“黒木渚”が3月20日に全7曲入りの1stミニアルバム『黒キ渚』をリリース。 その発売を記念し、ヴォーカルの黒木渚による連載がスタート。毎回、アルバム収録曲になぞらえた小説を黒木渚自らが執筆。アルバムの世界観に新たな角度から彩を添える7篇をお楽しみください。



第6回 「赤紙」


全力で踊りきった私が楽屋に帰ると、そこにはいつも溢れんばかりの花束が届いている。お客さんや友人、どこぞの社長さんや、ブティックのオーナー。

こうして届く沢山の花を眺めながら、ゆっくり化粧を落とし、いつもの私へ戻るのが今では決まりごとのようになっている。差出人の名前が書かれたカードをひとつひとつ確認しては、その人の顔を思い出す。そこに父の名前は無い。

当然のことだ。彼は死んだのだから。

歌劇団への憧れは、幼いころから強く私のなかにあった。街に出ると、劇場の前には大きな看板が立っていて、舞踊界のスター達が華やかに描かれていた。きらびやかな衣装でライトの中に立ち、拍手喝さいを浴びる自分の姿を想像すると、いてもたっても居られなくなり、ラジオから流れる音楽に合わせてダンスの真似ごとなどをしていた。

父は厳格な人で、歌劇団に入りたいという幼い私の夢に、平手打ちで返事をした。女は家庭を守るもの。学問や夢や洒落っ気などは、不必要なものであると。母は反対こそしなかったが、家の中では父が絶対的な存在だったため、何も言わずに見ているしかなかった。

けれど、もともと気の強い私は諦めはしなかった。平手打ちをくらおうが、家を閉め出されようが、毎日ラジオから流れる流行りの歌謡曲に合わせて踊った。今に父も驚くほど有名な舞踊界のスターになって見返してやるのだ。理解してくれない父への反抗を続けながら、一心不乱に踊り続けた。

そしてある日、赤紙が届いた。

配達されたハガキを食卓に置いた父が最初に言った言葉は、「喜べ」だった。お国の為に、命を懸けて戦場へ出向くことはとても名誉なことだと彼は続けた。

一体何を喜べと言うのだ。

母は、食卓の横に真っ白な顔で立ちすくんでいた。見開いた目には、絶望の色しかない。喜べと言った父にすら、喜びの気配は皆無ではないか。

それから長くないうちに、小さな骨壷に入って帰ってきた父を、私は許せずにいた。私の夢も認めず、私が踊る姿も見ぬまま、家族を残して死んでしまった父を恨んだ。

家の向かいには大きなお屋敷があって、そこは若いお嫁さんをもらったばかりだった。とてもきれいな奥様で、まだ二人には子供もないというのに、赤紙はその家にも届いた。旦那様が居なくなった後、奥様は庭で家財道具を燃やしていた。舶来品だと自慢していた、嫁入り道具のタンスや化粧台だった。そして、家具のなくなったがらんどうのお屋敷で、朝から晩まで大正琴を弾いていた。その音色は痛々しく、聴いているこちらまで狂気に犯されるような悲しい音色だった。

ふと、我に返って顔をあげる。

化粧を半分落とした私の顔は、なんだか苦々しい。花束の中に父の名前が無いことなど、もうとっくに分かり切っていることなのに、私は今でも少し待っているのでは無いか。最後まで許し合えないまま死んでいったあの人に対して、少なからず罪悪感を抱えて生きているのではないか。ステージで軽やかに踊ることができるのも、彼が授けた手足のお陰なのだから。自分の力で夢を叶えたと思っている、この浅はかな小娘は今、小さな楽屋で父からの花束を待ちわびて泣いている。




黒木渚 『黒キ渚』 [2013年03月20日 発売]

2012年12月12日に九州限定でリリースした1st Single「あたしの心臓あげる」が全国のオリコンインディーズチャートで14位、有線インディーズチャートでは1位を獲得し話題となり、1月8日に同作品が全国発売となった黒木渚。注目度が高まる中、1stミニアルバム『黒キ渚』をリリース。 アイゴンこと會田茂一をサウンドプロデューサーに迎えた新作「骨」から、同じく髭のメンバーであるギタリスト斉藤祐樹を迎えた「クマリ」、根岸孝旨をサウンドプロデューサーに、田渕ひさ子をギタリストに迎えたライブ人気曲「カルデラ」、アマチュア時代の音源で廃盤となっていた「赤紙」、ギターボーカル渚が初めて人に書いた曲というピアノとボーカルだけで収録されている「砂金」など全7曲を収録。



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【応募方法】対象商品ご購入後(商品出荷時)に、メールにて応募フォームのURLをお知らせ致します。
【購入対象期間】〜2013年4月19日(金)まで ※以前にご予約いただいた方も対象となります。
【応募対象期間】2013年03月19日(火)〜2013年04月26日(金)

※HMV ONLINE本サイト及びHMV MOBILEサイト以外からのご購入、非会員でのご購入は特典対象外となります(HMV Yahoo!店、HMV 楽天市場ストアでのお買い上げは対象外です)。
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収録曲

  • 01. あたしの心臓あげる
  • 02. クマリ
  • 03. 骨
  • 04. 赤紙
  • 05. エスパー
  • 06. カルデラ
  • 07. 砂金


【黒木渚 プロフィール】


黒木渚
黒木渚という名のバンド。2010年12月福岡にて結成。
崇高と低俗、汚れとイノセント、甘美と狂気、相反するものを同じ絶対値で歌う歌詞世界。全てを征服してしまうような凛とした渚の歌声。その世界を最大限に引き出そうとするエッジの効いた変幻自在のバンドサウンド。一つの演劇を見ているかのような独特の雰囲気漂うライブ。
2012年12月12日に処女作となる1st single「あたしの心臓あげる」を九州限定でリリース。大きな反響を受け1月8日から全国発売となり、これが10週連続でオリコンインディーズチャートTOP20にランクインのロングセラーとなる。同月22日には福岡VIVRE HALLで黒木渚独演会「ゆりかごあやし」を開催し、SOLDOUTの超満員。
3月20日に1st mini album「黒キ渚」リリース決定。全国各地アルバムツアーも決定している。

[関連リンク]
  黒木渚 オフィシャルサイト
  黒木渚 facebook
  黒木渚 公式Twitter(STAFF)






Live 情報

黒木渚 1st mini album 『黒キ渚』 RELEASE TOUR 「複合人格」

4/12(金)【東京】下北沢ClubQue ロックの夜明け presents「INCIDENT 13.04」
4/23(火)【愛知】名古屋APOLLO THEATER「本格派vol.2」
4/27(土)【福岡】薬院BEAT STATION 黒木渚 福岡独演会「黒キ渚」〜x∩X≠Φ〜
5/02(木)【京都】MUSE
5/03(金)【大阪】阿倍野ROCKTOWN
5/10(金)【北海道】札幌Spiritual Lounge
6/01(土)【東京】下北沢ClubQue 黒木渚 東京独演会「黒キ渚」〜x∩X≠Φ〜
※神戸・仙台など後日追加公演発表!詳細は公式HPまで。

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発売日:2013年03月20日
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シングル

あたしの心臓あげる

CDシングル

あたしの心臓あげる

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発売日:2012年12月12日

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