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【特集】 イスラエル・ジャズメンの傑作を追う

2012年10月26日 (金)


イスラエル・ジャズメン ディスガイド
ジャズの「今」を語るには欠かせない32枚のアルバムから
イスラエル・ジャズメンの群像を追う。

 現代ジャズ・シーンを焚き付け牽引する、イスラエル・ジャズメンたち。「イスラエル」と聞くと、どことなくアラビックな旋律に支配されたワールド・ミュージック然とするサウンドを想像してしまうかもしれませんが、ニューヨークに活動拠点を置く(または置いていた)彼らの音には、ジャズのメッカで身に付けた洗練された美しさや尖鋭さというものがしっかりと組み込まれているのも、その特徴のひとつと言えるでしょう。勿論、出自となるイスラエル、ジューイッシュ(ユダヤ)の哀愁を帯びたフレーズやメロディ、または近隣アラブ諸国〜北アフリカ地域の音楽的要素なども取り入れられており、結果生成された今までにないハイブリッドなジャズ・サウンドが世界中の音楽ファンを虜にしているのです。

 正直「イスラエル」というだけで聴かずギライをされている方もいらっしゃることでしょう。でも、彼らの作品は至って聴きやすいんです。美しいメロディにしても妖しげなメロディにしても実にアカデミック。色とりどりのリズム・パターンは、ダンス・ミュージックのそれにも劣らない。スウィング、ビバップ、ハードバップ、モード、ジャズロック、フュージョン、ファンク、ブルース、アフリカン、ブラジリアン・・・ジャズ100年の歴史とあらゆる音楽要素とをブレンドしながら、出自イスラエルのソウルを以て「現代を生きるジャズ」の本分を答えとして巷に叩きつける。まさしくリアルタイムな衝動をかき立てられずにはいられない作品ばかり。

 その中でも、「まずはこれ」な32枚をご用意しました。

小浜文晶 (ローソンHMVエンタテイメント)






Omer Avital
(オメル・アヴィタル)

 1971年、イスラエルのギヴァタイム生まれ。プロ・ジャズ・ミュージシャンの道を志したのちの1992年、アヴィシャイ・コーエン(b)、アモス・ホフマン(g)といった同志たちと共にニューヨークに移住。同地の名門ニュースクール大学に入学後、ブラッド・メルドー、アダム・クルーズ、ピーター・バーンスタイン、ロイ・ハーグローヴらと交流。また、ヴィレッジ・ゲイトなど各有名ジャズクラブにも頻繁に出入りしていた。2001年、初リーダー作『Think With Your Heart』を発表。その後一時故郷イスラエルに戻り、2005年再びニューヨークに移住。マンハッタンのSmalls ジャズクラブを拠点に、2006年には『Asking No Permission』、『The Ancient Art of Giving』、『Arrival』という3枚のアルバムをリリース。ほか、『Room To Grow』(2007年)、『Free Forever』(2011年)、『Live At Smalls』(2011年)、『Suite of The East』(2011年)といったリーダー作を残している。その重く分厚いサウンドと類稀なコンポジション・スキルで「ミンガスの再来」とも言われる現代ジャズ・シーン最高のベーシストとして”イスラエル・ジャズ”をレプリゼントしている。リーダーグループのほか、アヴィシャイ・コーエン(tp)らとのサード・ワールド・ラヴ、アーロン・ゴールドバーグ(p)、アリ・ジャクソン Jr.(ds)との通称”Yes!”トリオ、アーロン、マーク・ミラルタ(ds)とのOAMトリオ、ラビット・カハラーニ(vo)を中心としたイエメン・ブルース、モロッコ音楽の宗家ラビ・ハイム・ルーク率いるニュー・エルサレム・オーケストラといった様々な別働プロジェクトでも活動中。  


「Live At Smalls」

2010年4月5,6日ライヴ録音

Live At Smalls イスラエル・ジャズメンにとっての”第二のホーム”、ニューヨークはSmalls Jazz Clubでの白熱(そしてリラックスした)のライヴ・セッション。同胞アヴィシャイ・コーエン(tp)以下、ジョエル・フラーム(ts)、ジェイソン・リンドナー(p)、ジョナサン・ブレイク(ds)という気心知れた磐石のイスラエル=ニューヨーク・クインテットが空間を伸縮自在に跳ね回る。いきなりのゆるふわレゲエに泡食うも、激しくもドラマチックに展開する「Magic Carpet」にひれ伏し、ジョナサン・ブレイク暴れ太鼓の独壇場ジャズファンク「One」に悶悦と、ライヴならではの徐々にエンジンがかかってくる様も臨場感たっぷりに。超哀愁のスローブルースもあれば、高速4ビートもある。ラストはスピリチュアルな斉唱を伴って大団円。これら全曲オリジナルということで、アヴィシャイのコンポーズ力もまた見事。


「Arrival」

2006年7月20,21日録音

Arrival 『Live At Smalls』と同様のクインテットにアヴィ・レボヴィッチ(tb,vo)が加わったイスラエル=ニューヨーク”3×3”セクステットによるスタジオ録音(Fresh Sound World Jazz)。イントロから必殺のウードが響きわたる盟友アモス・ホフマンに捧げし『Song For Amos』は、ワールド・ミュージック然としたアクセントが加わりながらも、ベースはあくまでモーダルなジャズ。その優雅な重厚感を噛み締め、音の向くままに揺られたい。「Big Time」などでのテーマ作りの上手さをはじめ、オメルの類稀なコンポーズ〜アレンジ能力が満開になった記録とも言える本作。「Sea And Sand」、「Cypresses」、「Vincent」、「Lilian In The Big Blue」といったスケールの大きな楽曲では、多幸感と高揚感がミックスされながら、尚且つ全体がタイトに引き締まっていくという魔法のような時間にありつくことができる。2種類のソリッドなジャズファンクが聴き手を焚き付ける「Arrival」、「Faith」など、実にバラエティ豊かな楽曲が並んでいる。



Third World Love
「Songs And Portraits」

2009年4月録音

Songs And Portraits オメル、アヴィシャイ・コーエン(tp)、ヨナタン・アヴィシャイ(p)、ダニエル・フリードマン(ds)によるユニット=サード・ワールド・ラヴの5作目。イスラエルとニューヨークの両国間を行き来しながら活動する彼らにしか作り得ないものを明示した点からも、本ユニットは現代ジャズ・シーンにおいて極めて稀有な存在。ジャズと中近東音楽のエッセンスをミックスしてはいるが、そのハイブリッド性は「ユニークな」と評される”ありきたり”なそれとはやはり一線を画する。オフラ・ハザの歌唱で有名なイエメン民謡「Im Ninalu」、黄昏〜恍惚感たっぷりの「Song for Sankoum」、ヨナタン作の「A Night in Zebulon」など出自を覗かせる楽曲においても、ストイックなまでにジャズを追求したからこそのアンサンブルやアドリブの妙が随所に光る。それこそが彼らの音楽の肝であり、ニューストームたる所以。オメル作の「The Abutbuls」では、彼の地特有の哀愁〜男泣きの旋律がジャズのエキサイティングな即興性やN.Y. 主流派ならではの洗練された流儀と融合してゆく、そんな瞬間が幾度となく訪れる。



Aaron Goldberg / Omer Avital / Ali Jackson Jr.
「Yes!」

2009年12月録音

Yes! アーロン・ゴールドバーグ(p)、オメル・アヴィタル(b)、アリ・ジャクソンJr.(ds)というニューヨーク・シーン最前線の千両役者が顔を揃えた通称「YES!」トリオ。OAM トリオで活動を共にしているアーロンとオメルは15年来の盟友。また、アリにしてもオメル低音世界のよき理解者ということで、三者のシナジーが本作を独特のトリオイズムに満ちたものに押し上げている。リズムが目まぐるしく入れ替わる表題曲、アーロンのリーダー盤『Home』にも収録された「Homeland」といったオメルのオリジナル曲、または、パーカッシヴなリズムの上を清々しいメロディが流れる「Aziel Dance」、アンダルシアの青い海の如くどこまでも瑞々しく美しいバラード「El Soul」、2曲のアリ作品あたりがハイライトだろう。アブドゥーラ・イブラヒム「Maraba Blue」、モンク「Epistrophy」、エリントン「Way Way Back」、「The Shepherd」などでの解釈〜アップデート術もさすがの一言。グランドマスター・トリオの至芸極まれり一枚。








Avishai Cohen
(アヴィシャイ・コーエン)

 1970年イスラエル生まれ。渡米後にグリニッジ・ヴィレッジのジャズクラブやブロンクスでジャズを学ぶ。1992年にオメル・アヴィタルらと時を同じくしてニューヨークに渡る。1997年から2003年にかけてはチック・コリア&オリジンのベーシストとして活躍し、一躍全国区となった。1998年にはチックのStrechレコードから『Adama』でリーダー・デビュー。同レーベルからは、『Devotion』、『Colors』、インターナショナル・ヴァンプ・バンドを率いた『Unity』をリリースしている。2003年には自身のレーベル Razdaz Recordzを設立。第1弾アルバム『Lyla』は、ワールドワイドなジャズ・シーンにおいて最も才気溢れるジャズ・プレイヤーの登場として注目を集めた。その後にリリースした2008年の『Gently Disturbed』、2009年のBlue Note移籍第1作目『Aurora』、昨年リリースの『Seven Seas』はいずれも現代ジャズの最高峰アルバムとして高い評価を得ている。 アヴィシャイの音楽は、感情の奔流、構成力のある曲、親しみやすい構造、突然の驚き、予想外のスタイル、メロディアスで穏やかながら一触即発の危うさを秘めている、まさに奇跡の産物とも言えるかもしれない。最新リーダー作は、ピアニスト、ニタイ・ハーシュコヴィッツとのデュオ・アルバム『Duende』。現在は母国イスラエルに戻り、テル・アビブを拠点に活動中。  


「Duende」

2012年2〜3月録音

Duende イスラエル⇒ニューヨーク上京組のアイコンにして、今や押しも押されぬ現代ジャズ・オーソリティとして日夜世界中を飛び回るアヴィシャイ・コーエン、その2012年最新アルバム。まず目を惹くのは、ピアノとの「デュオ」という録音形態。そして、共演相手となるピアニストの存在。アヴィシャイに「彼のタッチにハートを盗まれた」 とまで言わしめたピアニスト、ニタイ・ハーシュコヴィッツは現在24歳。2009年あたりからダニエル・ザミールとの活動で頭角を現し、2011年からは、シャイ・マエストロの後任としてアヴィシャイ・トリオのレギュラー・ピアニストの座に就いている腕利き。母国イスラエルのジャズ・コミュニティを主な活動の場にしていることもあって、名前自体はまだ全国区にはなっていないが、アヴィシャイが見抜いたその天賦の才はここで明らかに。新鮮で柔らかなタッチ、また古典音楽に対する理解の深さ・解釈の上手さというものが、同郷大先輩とのガチンコデュオという”逃げ場のない”フォーマットにおいて十二分に発揮されている。


「Seven Seas」

2010年9〜10月録音

Seven Seas Blue Note移籍第一弾となる『Aurora』とほぼ同じメンバーで、スウェーデンのゴセンブルグ・スタジオで録音された本作。その『Aurora』の続編とも言うべきクレズマー的な歌モノ要素を含みつつ、主役ベースと腹心シャイ・マエストロのピアノが+@を伴いながら絡み合って回転していく様は、真に”末広がり”の音世界。何物にも近似しない陶酔のジャズというものが確かにここにある。一聴してそれと判る見事なまでの ”アヴィシャイ節” がコンポージングからアレンジ、フレージングに至る隅々にまで染み付いていることに安堵感を憶えるその一方で、ニューヨークの盟友ジミー・グリーン(ss,ts)、スウェーデンの名門ボーヒュスレーン・ビッグバンドに在籍するビョーン・サミュエルソン(tb)ら四管をフロントに揃えた「Ani Aff」などにフレッシュな要素もしっかりと見ることができる。完全なるピアノトリオ体制で臨んだ『Gently Disturbed』と前作『Aurora』からのイイトコドリのようなアルバム、とも言えるだろうか。



「Gently Disturbed」

2007年9月24〜28日録音

Gently Disturbed アヴィシャイの名を一躍全国区にしたであろう初の完全ピアノトリオ・アルバム。当時弱冠21歳、才気溢れるピアニスト、シャイ・マエストロとの出会いが純正ピアノトリオ・レコーディングの大きなトリガーになったことは間違いないはず。事実、サム・バーシュの後任としてアヴィシャイ・グループのレギュラー・ピアニストの座に就いたシャイのお手並み拝見といくにはこれ以上なく打ってつけの一枚だ。それまでおなじみだった所謂中近東色はすっかり薄らいでいるものの、アヴィシャイ持ち前の美メロ家ぶりというものがそれに反してかなり際立っている。さらに徹底したリズムコンシャスで育む変拍子の雨嵐が美しさに確かな彩りを添える。アヴィシャイ&マーク・ジュリアーナの律動とシャイの無垢で美麗なピアニズムとの調和そして拮抗。ピアノトリオの本分ここにあり。「Pinzin Kinzin」、「The Ever Evolving Etude」、「Variations In G Minor」はことのほか圧巻。



「Adama」

1998年録音

Adama チック・コリア&オリジンでの大活躍ですでにジャズ・ファンから一目置かれる存在となっていたアヴィシャイの記念すべき初リーダー・アルバム。親分チックのStretchレコーズが後ろ盾という頼もしさに加え、その門出を祝うかのように親分直々に共同プロデュース(「Gadu」にはエレピで参加)を名乗り出て、ジェフ・バラード(ds)、スティーヴ・ウィルソン(ss)、スティーヴ・デイヴィス(tb)らオリジン・メンバー、さらにはブラッド・メルドー&ホルヘ・ロッシィ(「Besame Mucho」)といったところもゲストに駆けつけている。ジェフ&ダニーロ・ペレス(p)とのトリオを基本に、アヴィ・レボヴィッチ(tb)、アモス・ホフマン(g)、ドン・アライアス(per)らが変則的に加わるという編成で、音色、楽想、テーマ、メロディの振り幅はおしなべて広い。オリジン直系の楽曲もあれば、チック、メルドー参加のストレートなラテンジャズ楽曲もあるが、のちの『At Home』でも再演された「Madrid」、変拍子や転調をこれでもかと駆使する「Dror」、妖艶なメロディにエキゾな興奮を憶える「Adama」など、いずれもアモスのウードが絶妙なスパイスになっているイスラエル慕情溢れた楽曲が秀逸。







Amos Hoffman
(アモス・ホフマン)

 1970年エルサレム生まれ。テルアビブを拠点に活動するギタリスト。中近東音楽に対する理解も深く、ウードやネイ(尺八風の縦笛)といった民族楽器も演奏する。90年代前半ニューヨークに移住後は、ベン・ウルフ、ジェイ・コリンズ、ジェイソン・リンドナー、デュアン・ユーバンクス、さらには時を同じくしてニューヨークにやって来た同郷人のアヴィシャイ・コーエン(b)、オメルらと共演を行なった。中でもアヴィシャイ作品への参加が数多く、『Adama』、『Devotion』、『Colors』、『Continuo』、『Sensitive Hours』、『Aurora』と、10年以上に渡ってアヴィシャイ独特の音世界、その屋台骨を支えていることになる。1998年のリーダー・デビュー作『The Dreamer』(Fresh Sound)、2006年の『Na'ama』(Magda)、2008年の『Evolution』(RazDaz)、最近作となる2010年の『Carving』(RazDaz)にはいずれもアヴィシャイがサイドメンとして、ベース、ピアノ、カラバッシュなどで参加。1999年からは故郷イスラエルに戻り、主にウード奏者として数々のセッションに参加している。  


「Evolution」

2007年録音

Evolution アヴィシャイ・コーエン(b)作品の”香り付け”に欠かせない存在とも言えるアモスの3枚目のリーダー・アルバム。全編自身のウードに、パーカッション、フルート、ベースというカルテットのみで奏でられるサウンドは、シンプルながらもバック・トゥ・ルーツな中近東〜北アフリカ音楽のエッセンスと現代ジャズの情緒との相性の良さを的確に示している。また、リズミックな展開を織り交ぜた「Hamsa」、ウードとフルートのユニゾン・フレーズ舞う「The Journey」などではアモスのコンポーザー/アレンジャーとしての確かな才能にも触れることができる。故郷の未来を想いながら、ベース(アルコ含)ほかピアノ、ヴォーカルで同志の作品に全面参加するアヴィシャイの恍惚も。



「The Dreamer」

1999年2月2日録音

The Dreamer 盟友アヴィシャイ(b)のリーダーデビューと時を同じくした1998年に吹き込まれた、アモスの記念すべき初リーダー作(ニュージャージー録音)。ウードとの両刀前夜、「ジプシー・スウィング系ギタリストのホープ」という触れ込みが付いて回っていた時期だけあり、今ではあまり聴くことができなくなったドライでメロディックなギタリズムを全編たっぷりと堪能できる。バックは、アヴィシャイ以下、ホルヘ・ロッシィ(ds)、デュアン・ユーバンクス(tp)といった当時気鋭の若手メンツが顔を揃え、イキのいい演奏を聴かせる。威勢のいいハードバップから、ブーガルー調のビート・チューン、折り目正しきスローバラード、白昼夢のようなメロウ・ミッドまで楽曲のタイプは様々。”ギタリスト:アモス・ホフマン” 若き日の華麗なる1ページ?







Oz Noy
(オズ・ノイ)

 1972年イスラエル生まれ。10歳からクラシック・ギターのレッスンを始め、翌年にはエレキに転向。13歳頃からセッション・ギタリストとしてのプロ活動を開始。早15歳のときにはイスラエルの主要アーティストとレコーディングを行なっていた。1996年に活動拠点をニューヨークに移し、様々なセッションに参加。2003年には、老舗ロック・クラブ「Bitter End」での4日間のギグを収録したライヴ盤『Oz Live』でデビューを果たす。変幻自在のペダルワークを駆使しながら、ジャズのみならずファンク、ブルース、ロック、ポップス、映画のサウンドトラックやコマーシャル・ソングまでもをマルチにこなすその演奏・作曲能力は、タレント揃い踏むイスラエル・ジャズ勢の中でもアタマひとつ抜きん出ている。リチャード・ボナ、クリス・ボッティ、マイク・マイニエリ、ハリー・ベラフォンテら数多くのミュージシャンのツアーやレコーディングに参加し、その才能は瞬く間にワールドワイドな広がりを見せている。最新作は『Twisted Blues Vol.1』。  


「Twisted Blues Vol.1」

2010年11月5日/12月12日録音

Twisted Blues Vol.1 オメル、アヴィシャイ、アモスと同じ「イスラエル・ジャズメン第一世代」にあたるが、彼らとハングアウトすることなく我が道を行くことでここまでキャリアを重ねてきたオズ・ノイは、ブルースロック、ファンクの素養を強く持つゆえの”異端ジャズ・ギタリスト”として、アモスらとはまた違う切り口からイスラエル・ジャズ・シーンをレプリゼントしてきた。敬愛してやまないスティーヴィー・レイ・ヴォーンのダブル・トラブルで活躍していたクリス・レイトン、リース・ワイナンズ、さらにレイ・ヴォーンの魂を継ぐエリック・ジョンソンを2ndギタリストに迎えた「オースティン・セッション」と、ヴィニー・カリウタ、アントン・フィグ、ウィル・リー、ジョン・メデスキー、アラン・トゥーサン、ラルフ・マクドナルドをスペシャル・ゲストに迎えた「ニューヨーク・セッション」との二ヶ所レコーディングからなる本作。ジャズのアプローチにファンクのグルーヴ、右手のガッツはブルースのそれ。と、まさしくイスラエルならではのハイブリッドなジャズ(あるいはブルース)を体現。他の追随を許さない名人芸の連続に息を呑む。


「Ha!」

2004年7月23,30,31日/8月1日録音

Ha! スコット・ヘンダーソンやジョン・スコフィールドなど、日本でもフュージョン〜ジャズファンク/ジャムバンド系アプローチのギタリスト好きからも支持を集め、瞬く間にその名を世界に轟かせた2ndアルバム。猪突猛進型のファットなファンク/ロック・サウンドが軸になっているが、随所で挟まれるトリッキーな小技や転調などの凝った仕掛けにはプログレ・ファンもびっくり。多彩なエフェクター使いにも注目されたし。バックを固めたウィル・リー(b)、ジェームス・ジナス(b)、キース・カーロック(ds)、アントン・フィグ(ds)ら贅沢すぎるツイン体制のリズム・セクションも暴れ馬の如き、と思いきや、主役の変幻自在のギタリズムを堅実にサポートするのみ、というまさかの展開。オズの独壇場。「Chillin'」、「Sit Tight」、「Hey You」など名曲目白押し。ニューヨーク上京後に師事していたマイク・スターン(g)が「Downside Up」にゲスト参加している。










Avishai Cohen
(アヴィシャイ・コーエン)

 1978年イスラエル生まれ。世界を股にかけて活躍する同姓同名のベーシストもいるが、こちらも今や現代ジャズ・シーンを代表するトランペッターとしてその名を馳せている。1997年にボストン移住。バークリー音楽院に籍を置き、同年「セロニアス・モンク・コンペティション」のトランペット部門3位に入賞を果たしている。2002年にFresh Soundからリリースされたリーダー・デビュー作『The Trumpet Player』は、バリバリの硬派路線でかっ飛ばす”ニュースターの誕生”として注目を浴びた。その後、どちらもオメルが参加している、西アフリカ音楽のグルーヴに根差したコンセプチュアルな『After The Big Rain』と『Flood』をリリース。”マルチ・カルチュアル”なジャズ・ミュージシャンとしての評価を決定的にした。今年秋には、2010年にリリースされ絶賛された『Introducing Triveni』の続編となる『TriveniU』をリリースした。また、兄でサックス奏者のユヴァル、姉でクラリネット/サックス奏者のアナットとの3コーエンズ、オメルとのサード・ワールド・ラヴ、ほかSFジャズ・コレクティヴ、ミンガス・ビッグバンドなどのメンバーとしても活躍している。  


「Triveni II」

2010年12月17,18日録音

Triveni II オメル・アヴィタル(b)、ナシート・ウェイツ(ds)との豪壮トリオで臨んだ、タイトルどおり前作『Triveni』の続編となる2012年最新アルバムは、冒頭2曲で早くも勝負アリ。ゴリゴリのハードバップながら、途端ギアを入れ替えファンクの形相にてコーナーに突っ込む「Safety Land」、アヴィシャイのよく歌う饒舌なトランペットが鋭く切り込み、太くしなやかなオメルのランニング・ベースが疾駆、とどめにナシートのドラム・ソロ一丁上がりからのテーマ着地に武者震いを隠せない「B.R. Story」、いずれも殊勲のオリジナル・コンポジションが ”Triveni” トリオの最高にスリリングな関係を白昼堂々曝す。ワウワウ〜ハーマンミュートを駆使した「Nov. 30th (Dedicated to My Mother)」、「Get Blue」が五臓六腑に染みわたり、オーネット・コールマン愛 丸出しの「Music News」、「Following The Sound」がロフト派の心を無邪気にくすぐる。「現代を生きるジャズ」にしか持つことのできない溢れんばかりのフレッシュネスやエナジー、さらには無限の可能性を感じずにはいられない。


「Triveni」

2009年12月17,18日録音

Triveni ルーツ回帰のアフリカン・コンセプチュアルな『After The Big Rain』、『Flood』でやや”消化不良”を起こしていたファンに再び歓喜をもたらした、アヴィシャイ・サウンドの真髄に触れる本丸盤。オメル、ナシートのリズムセクションが柔剛巧みに律動をリードし、歌心溢れるアヴィシャイのトランペットが天空に放たれる。ハイプ、ギミック一切ナシのジャズには芯の強さがあるということ。「You'd Be So Nice To Come Home To」、「Mood Indigo」といったおなじみの曲でさえも滋味深く聴かせる、これぞホンモノの証。オーネット・コールマンに捧げた「One Man's Idea」にしても、ドン・チェリー「Art Deco」にしても温かい。「新世代=アグレッシヴ」といった乱暴で紋切り型の見解に辟易していた方々はやおら万歳三唱だ。とはいえ、彼らのニュースクールなファンク感覚もまた最高。ラストは「October 25th」にじわじわと締め上げられて慶びの昇天。




「The Trumpet Player」

2002年11月録音

The Trumpet Player リリースされた当初、ベーシストのアヴィシャイと同姓同名だったために日本ではわずかな混乱を招き、そうした点からも注目を浴びたFresh Soundからのリーダー・デビュー・アルバム。巧さと豪快さを兼ね備える、まさに”ジャズの顔”トランペッターになるべくしてなった男アヴィシャイの荒ぶる魂が全編にほとばしる。ジョン・サリヴァン(b)、ジェフ・バラード(ds)とのピアノレス・トリオに、3曲でジョエル・フラーム(ts)が絡むというフォーメーションでぐんぐん突き進む、このヤクザな爽快感に皆しびれまくった。高速の「The Fast」や表題曲をはじめ、「Olympus」、「Idaho」、「Shablool」といった品種様々なオリジナル・コンポジションはいずれもグレードが高く、当時まだ24歳ながらその早熟した作曲の才にも熱い視線が向けられる。オーネット・コールマン「Giggin'」の胸すく暴走などトピックは色々あるが、何しろ主役ラッパの充実した心技体が輝きまくっているという点で、タイトル共々「これぞ正真正銘のトランペッター・アルバム」という思いを持って唸らざるを得ない。

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Third World Love
「Sketch Of Tel Aviv」

2005年7月24,25日録音

Sketch Of Tel Aviv オメル・アヴィタルの項でも紹介した、イスラエル=ニューヨーク・スクラムの鮮やかなる回転体 サード・ワールド・ラヴのSmallsからの3作目。クルト・ワイル・デディケート、ロック、ファンク、ラテンの素早い出し入れに目も眩むヨナタン作の表題組曲がとにかく圧巻なのだが、「Suite African #2」、「S'ai N'wai」、「Horizon(Kav Haofek)」、「Suzanna(a.k.a. Rock Ballad)」の4曲でペンを走らせているアヴィシャイのカラーが色濃く反映されているのも見逃せない。また、ややもすると多国籍の民族音楽に寄り切ってしまうところをジャズにしっかり引き戻しているのは、何を隠そうアヴィシャイのトランペットにおけるアプローチなのかもしれない。しかし一方で、「S'ai N'wai」ではエチオピークよろしくのズンドコにインプロヴァイズ、エフェクト・フルテンのラッパで粘り気たっぷりに迫るバラード「Suzanna」では、ハードロック・ギターのエモーショナルな嗚咽に追随と、ジャズから絶妙な距離も取る。嗚呼やはり彼らは一筋縄ではいかない。







Anat Cohen
(アナット・コーエン)

 テルアビブの音楽一家に生まれ育ったアナット。兄ユヴァルはサックス奏者、弟アヴィシャイはトランペット奏者としてワールドワイドに活躍し、三兄妹揃い踏む「3コーエンズ」としての活動でもおなじみ。テルアビブにあるヤッファ音楽学校に入学後、12歳のときにディキシーランド・ジャズ・バンドでクラリネットを吹き始める。テルマ・イエリン芸術高校に通い始めた16歳のときにテナーサックスを習得。1999年、バークリー音楽院卒業後にニューヨークに本格進出。Smallsクラブを拠点に、オメル・アヴィタル、ジェイソン・リンドナー、ダニエル・フリードマンらと親睦を深め、最前線のジャズを体感。その傍らでは、ドラム/パーカッション奏者シェリー・マリクル率いる女流ビッグバンド:ディーヴァ・ジャズ・オーケストラや、ブラジルのショーロ・アンサンブルなどに参加し腕を磨いた。2005年には自らのレーベル「ANZIC」を設立し、初リーダー・アルバム『Place & Time』をリリース。スウィンギンなトラッド・ジャズの芳しさに、ブラジルのサンバ、アルゼンチンのチャカレーラ、コロンビアのクンビアなどラテン・ミュージックのエッセンスが散りばめられた彼女の独特な音楽スタイルは、本場ニューヨークのジャズファンから「現代最高のクラシカル・ジャズ伝道者」と称賛され高い評価を得ている。2009年にはイスラエル人として初めてヴィレッジ・ヴァンガードへのヘッドライナー出演を果たし、この模様は『Clarinetwork: Live at the Village Vanguard』に収められている。最新作は今秋リリースされた『Claroscuro』。  


「Claroscuro」

2011年12月27,28日録音

Claroscuro 「クラリネット陰影法」というもじりタイトルが冠されたアナットの通算6作目となる最新リーダー・アルバム。彼女らしいトラッド&ドリーミンな世界はそのままに、ポストバップ、アフリカン、ブラジリアン〜サウダージ、ジューイッシュ、東洋的テクスチャ、おまけにロニー・スミス、アブドゥーラ・イブラヒム御大楽曲カヴァーがそこに首尾よく放り込まれるという極めて多彩な内容で、イスラエル勢のハイブリッドなフィーリングを知るにはもってこいのテキストかもしれない。ヒップホップ・ネタとしてすでに全国区の「Tudo Que Voce Podia Ser」が衒いなく飛び出すあたりには、クラブ・ミュージック精通型の非ジャズ・リスナー諸氏もきっとハッとするに違いない。バックは、ジェイソン・リンドナー(p)、ジョー・マーティン(b)、ダニエル・フリードマン(ds)らおなじみのニューヨーク強兵が務め、さらにスペシャルゲストとしてワイクリフ・ゴードン、パキート・デリヴェラの両雄も参加。クラリネットとトロンボーンが優雅に絡み合い、おまけにゴードンのサッチモ・ヴォーカルもたのしめる「La Vie En Rose」で至福のひとときを。


「Clarinetwork:Live At The Village Vanguard

2009年7月5日ライヴ録音

Clarinetwork: Live At The Village Vanguard テナーも操るアナットだが、やはり本職のクラリネットを吹いてこそが真骨頂。イスラエル出身のジャズ・ミュージシャンとしては初となる聖地ヴィレッジ・ヴァンガードへの殿出演。演目には「Sweet Georgia Brown」、「Lullaby of The Leaves」、「St. James Infirmary」、「St. Louis Blues」、「Body And Soul」と、ジャズにうるさいニューヨーカーなら誰もが一家言持つであろう不朽のスタンダードがずらり。せっかくの晴れ舞台、オリジナル楽曲を並べるのも手だとは思うが、彼女の音楽世界をぬかりなく表現するにはこうした素材を用いた方が趣味の良いものになるのだろう。また、ベニー・グリーン(p)、ピーター・ワシントン(b)、ルイス・ナッシュ(ds)ら手練れのリズムセクションとの共演がさらなる+@を生むという最高の流れ。懐古趣味に走ることも置きにいくこともなく、”古きよき温かき”をしっかりと現代風にアップデートしながら、その粋を伝播している。記録にも記憶にも残る「イスラエル・ジャズ ”ウーマン” が世界に誇り得る」至上のライヴ盤だ。



「Notes From The Village」

2008年5月14,15日録音

Notes From The Village ジェイソン&ダニエル旧知のニューヨーク組に、オメル・アヴィタル(b)と、3曲でギラッド・ヘクセルマン(g)が加わるカルテット〜クインテット作。注目すべきはアナットの本職クラリネットほか、バスクラ、テナー、ソプラノ各種を操る芸達者ぶりと、コンポージングにおける成長のほど。「Washington Square Park」、「Until You're In Love Again」、「Lullaby For The Naive Ones」、オリジナルの3曲にはいずれもギラッドが参加し、「イスラエル三世代」がきれいに揃い踏む。そのギラッドとアナットのソプラノ・サックスがユニゾン交えて疾走する「Washington 〜」は、ジェイソンのアナログシンセがウニウニと隙間に入り込み、さらに後半は爆発的なドラムソロからのリズムチェンジと、目まぐるしくも壮観な大曲仕様。ここにアナットの作曲家としての大飛躍を見たい。「Until 〜」にしても「Lullaby 〜」にしても楽曲自体のスケールがとにかくデカく、後者ではコルトレーン晩年のギャラクシーに放り出されているかのような崇高な精神性と境地めいたものを感じさせる。




3 Cohens 「Family」

2011年4月17,18日録音

Family 兄でサックス奏者のユヴァル、弟でトランペット奏者のアヴィシャイとのコーエン兄妹名義「3コーエンズ」での最新アルバム。「Family」とストレートに銘打つだけあり、三者が拮抗するというよりはアンサンブルを重視した作りになっているのが趣深く純粋に愉快だ。ファンキージャズによるオープナー「Shufla de Shufla」から三管ハードバップの粋が炸裂。ユヴァル作の「Blues For Dandi's Orange Bull Chasing An Orange Sack」、ミンガスに捧げた「With The Soul Of The Greatest Of Them All」、ニューオリンズ・テイストの「The Mooch」、「Do You Know What It Means To Miss New Orleans」、キレキレのビバップ「Rhapsody In Blake」、さらに「Tiger Rag」、ジョン・ヘンドリックスを迎えた「Roll 'Em Pete」といった古典曲など、いずれにおいても「古きよきアメリカのジャズ」的テーマの下、華やかな音色と兄妹コンボならではの完璧なハーモニーが舞い踊る。アーロン・ゴールドバーグ(p)以外は、前作『Braid』からガラリと布陣を変えて、マット・ペンマン(b)、グレッグ・ハッチンソン(ds)がバッキングを務めている。








Daniel Zamir
(ダニエル・ザミール)


 1980年テルアビブ近郊の都市ペタ・ティクバ生まれ。伝統的なジューイッシュ音楽、クレズマー、ハシディックなどの東欧音楽にジャズのエッセンスをまぶしたその独特の音世界は、ここで紹介しているイスラエル・ジャズメンらとは一線を画すものと言えるかもしれない。テルマ・イエリンでジャズ・サックスを学んだザミールは、90年代末にニューヨークに移住。同じユダヤの血を持つジョン・ゾーンに見初められる形でゾーン主宰の「Tzadik」レーベルと契約を交わす。2000年には自身のグループ「サトラー」を率いて、親方ゾーンも参加した初リーダー・アルバム『Satlah』をリリースした。その後はソプラノ・サックスをメインにしながら、より彼の地色が豊かな音色と旋律を吹き上げる。イスラエルに帰国後の2006年には、オメルほか、アヴィシャイ・コーエン(tp)、オムリ・モール(p)、ダニエル・フリードマン(ds)らがサイド参加した『Amen』が話題に。最新作は、シャイ・マエストロ(p)、現在注目度No.1の若手ベーシスト、ハガイ・コーエン・ミロ(b)を迎えた『Song For Comfort』。  


「Song For Comfort」

2011年録音(?)

Song For Comfort 言わずもがなのニュースター、シャイ・マエストロ(p)、アヴィシャイ・コーエン(b)トリオで活躍するマーク・ジュリアーナ(ds)、オメル・クライン(p)グループ在籍のハガイ・コーエン・ミロ(b)という注目の若手を擁したダニエル・ザミールの最新作。シャイのピアノソロのキレまくる高速パッセージにも体火照る「Thirteen Attributes of Mercy」、「Eleven Represents The Thrown」がとにかく絶品。吹きまくる鬼神のザミール、容赦のない百戦錬磨の気鋭リズム隊、リーダー作を吹き込んだばかりのテンションをそのまま持ち込んだかのようなイケイケのシャイ。まさに嵐を巻き起こすアップリフティングな絶演だ。ほか、「Noon」にザミール作品ではおなじみのニタイ・ハーシュコヴィッツ(p)が、また「Ya'ala」にはジューイッシュ・レゲエの雄マティスヤフなどがゲスト参加している。


「Amen」

2006年録音

Amen ダニエル・ザミールの名を日本のジャズ・ファンの間で浸透させた一枚と言えば本作をおいて他にはないだろう。オメル・アヴィタル(b)、オムリ・モール(p)、ダニエル・フリードマン(ds)、さらにゲストにアヴィシャイ・コーエン(tp)、すでにニューヨークを席巻していたイスラエル猛者たち(ダニエルのみ米国出身)ががっちりスクラムを組んでお送りする、別次元あるいは新種とも言える躍動と哀愁のジャズ絵巻。「Shesh Eysrei」など、変拍子を交えた運動性能の高いリズムに靡かれて、美しくも物悲しいメロディをはためかせる主役のソプラノ・サックス。舞踊のステップを踏む一方で胸が強く締めつけられる魅惑のアンチノミー・・・


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Eli Degibri
(エリ・デジブリ)

 1978年イスラエル生まれ。ブルガリア人とペルシャ人の血を引くサックス奏者エリ・デジブリは、早十代の頃からプロのジャズ・ミュージシャンとして活躍し大器の片鱗を見せていた。1997年、アヴィシャイ・コーエン(tp)と同じタイミングでボストンのバークリー音楽院に留学。1999年にはハービー・ハンコック「Sextet」のメンバーに抜擢され、アルバム『Gershwin's World』のレコーディングおよび世界ツアーに同行した。その後はアル・フォスター、ミンガス・ビックバンド、エリック・リード、ロン・カーター・カルテットなどに参加。2003年にはFresh Soundから『In The Beginning』でリーダー・デビュー。カート・ローゼンウィンケル(g)、アーロン・ゴールドバーグ(p)といったニューヨーク・ジャズ・シーンの名士たちがその門出をがっちりとバックアップしている。最新作は2010年の『Israeli Song』。ロン・カーター(b)、アル・フォスター(ds)、ブラッド・メルドー(b)と、こちらにも錚々たる面子が参加している。  


「Israeli Song」

2009年12月22日録音

Israeli Song ブラッド・メルドー(p)ほか、ロン・カーター(b)、アル・フォスター(ds)らハンコック・コネクションの巨匠メンター陣に囲まれ、ワンホーン・カルテットで吹き込んだデジブリの目下の最新アルバムにして出世作。冒頭メルドーの「Unrequited」で揺蕩う思慕のような音の一連。センシティヴでダンディズム溢れたサックス吹きということを直ぐさま了知する。とにかくその音色は柔らかく走りも機敏。一聴するにつけ大ベテランのいぶし銀プレイともおよそ区別がつかないほど、そのブロウには落ち着き払った貫禄や深みがたっぷり。だからして両巨匠の(黙々と刻み奏でる)海千山千リズムにも臆することなく呼応できマッチするわけだ。「Mr. R.C.」、「Judy The Dog」、「Manic Depressive」といったオリジナル曲では、悠々としてなおイマジネーション豊かなソロに聴き惚れる。全編を通してイスラエル出身ということをほとんど感じさせない音作りになっているが、唯一ラストの「Israeli Song」にはメルドーの好サポートもあって、その出自を想起せずにはいられない得も言われぬ風情がほんのりと漂白。



「In the Beginning」

2003年1月6〜8日録音

In the Beginning その強面の風体からは想像も付かない、繊細でいて優しく包み込むようなテナーを吹き上げる。それがエリ・デジブリの第一印象だ。Fresh Soundからのリーダー・デビューとなる本作がまさにそれで、鍛え上げられた肉体を誇示した(?)スキンヘッドの兄ちゃんがおもむろに立ち尽くすジャケットとはかけ離れたサウンドスケープが目の前に広がる。神々しいと言うべきか、白く美しい無数の光が天から降り注がれ、やがて闇を裂くように生命の朝が訪れる・・・そんな創世記にも似たストーリーをイメージしてしまいそうな表題曲の世界はあまりにも壮麗だ。ハンコックが肝煎りにするのもどこか頷ける。アーロン・ゴールドバーグ(p)、カート・ローゼンウィンケル(g)、ベン・ストリート(b)、ジェフ・バラード(ds)がシュアな脇固めに徹しながら慈愛に満ちたメロディにさらなる魔法をかける。「Painless」、「Song for Roni」、「With You」では、主役を含む彼らクインテットが各々に持ち寄った優しさと美的センスが結晶化されている。











Omer Klein
(オメル・クライン)

 1982年イスラエル生まれ。テルマ・イエリンでジャズ・ピアノを徹底的に学び、卒業後の2005年にボストンに移住。イスラエル文化省からの”お墨付き”で、アメリカ合衆国最古の音楽大学、ボストンにあるニューイングランド音楽院に奨学金制度で入学。ダニーロ・ペレスに師事した。その後ニューヨークに進出し、ブルーノートやカーネギーホールといった名だたるジャズ・ヴェニューに出演。2007年、Fresh Soundからリリースのハガイ・コーエン(b)との双頭盤『Duet』でリーダー・デビュー。オメルやジヴ・ラヴィッツ(ds)も参加したイスラエル色濃い2008年の『Introducing Omer Klein』でその名を全国区とした。ジョン・ゾーンのTzadikから2010年にリリースした『Rockets On The Balcony』が現時点での最新作となる。  


「Rockets On The Balcony」

2009年11月22,23日録音

Rockets On The Balcony イスラエル勢ではダニエル・ザミールのリリースでもおなじみ、ジョン・ゾーン主宰Tzadikの「Radical Jewish Culture」シリーズから、ハガイ・コーエン・ミロ(b)、ジヴ・ラヴィッツ(ds)、イスラエル・ジャズの未来を担う第三世代トリオでのレコーディングでさらなる飛躍を誓った4作目。前作『Heart Beats』(ソロピアノ)や『Introducing Omer Klein』でも 彼の地ならではの旋律を躊躇なく押し込んできたが、本作でもその”イスラエル魂を音に託す姿勢”は健在。いや、より強くなったと言っても大袈裟ではない。「Espana」、「Baghdad Blues」、「Heidad」、「Rockets On The Balcony」、「Shir Avoda」など全10曲クラインのオリジナルで、そのほとんどにおいて「ジャズ 4:6 中近東〜ラテン・フレイヴァ」という具合の配分が成されている。恐らく同郷ジャズ・ピアニストの中でも、自国の伝統的な民謡やアラブ諸国の民族音楽への造詣の深さや愛情には 1、2を争うものを持っているのだろう。ハガイ&ジヴが核となるリズムの躍動感も素晴らしい。


「Introducing Omer Klein」

2007年10月6,7,18日録音

Introducing Omer Klein Smallsからリリースされた純粋なリーダー・レコーディングとしては初となるアルバム。本作を知らずとも、寺島靖国氏選曲・監修のコンピ『Jazz Bar 2009』に収録され注目を集めた「Melody For Alon」を聴いたことのある諸氏は多いかもしれない。兄貴分のオメル・アヴィタル(b,oud)が参加しているということで全体のコーディネイトなどはオメルに委ねられているものの(実際「The Abutbul」はオメル作品)、翳りのあるピアニズム、コロコロとよく転がる明瞭なタッチ、ジャズにクラシックや民族音楽からのインスパイア要素をコンバインさせたコンポージング・センスなど、随所にクラインらしさが滲み出ている。また、「Oud Song」、「3/4 Mantra」、「Netanya」、「Kavana」といったイスラエル色が濃い目の楽曲では、アヴィシャイ・コーエン(b)のレコーディングやツアーにも参加していたイタマール・ドアリのパーカッションがマストなスパイス役に。自身がハミング・ヴォーカルをとる「Malchut」や「The Journey Home」に内在するちょっぴりポップなフィーリングにも魅了されてしまう。







Gilad Hekselman
(ギラッド・ヘクセルマン)

 1983年イスラエル生まれ。2005年の「ギブソン・モントルー・インターナショナル・ギター・コンペティション」で優勝したことをきっかけに注目を集め、早12歳にして地元イスラエルの子供向けテレビ番組のバックバンドでプロ・ギタリストとしての演奏を行なっていた。テルマ・イエリンで本格的にジャズを学んだ後の2004年にニューヨーク進出。ジョン・スコフィールド(g)らシーンの顔役たちと共演を行ないながら腕を磨き、2006年に初リーダー・ライヴ盤『Split Life』をSmallsからリリース。ニューヨークNo.1 テクニシャン・ドラマー、アリ・ホーニグとの絡みもあり、一気にその頭角を現した。2008年には本邦お披露目盤ともなる初スタジオ・アルバム『Words Unspoken』のリリース、さらにはそのレギュラー・ギタリストの座にも就いたホーニグのリーダー・コンボ『Bert's Playground』への参加で、小ぶりなハワード・ロバーツ・モデルのセミアコを弄る、持ち前のクリアでよく歌うメロディアスなサウンドを存分に鳴らし上げた。最新作は2011年リリースのトリオ録音『Hearts Wide Open』。今年はホーニグ・カルテットと「東京JAZZ2012」出演と、これまでにニ度の来日を果たしている。  


「Hearts Wide Open」

2010年3月28,29日録音

Hearts Wide Open 現代ジャズギターのトレンドリーダー、カート・ローゼンウィンケルやアダム・ロジャースに追い付け追い越せ。イスラエル=ニューヨーク勢の新世代ギタリスト急先鋒ギラッド・ヘクセルマン、マヌーシュ系の作品にも定評のあるフランス Le Chant de Monde レーベルからの3rdアルバム。通称「Hex Trio」と呼ばれているジョー・マーティン(b)、マーカス・ギルモア(ds)のリズム隊を擁したレギュラートリオに、4曲でニューヨークが誇る名士マーク・ターナー(ts)が参加というフォーマット。牧歌的な口笛に導かれてスタートする「Hazelnut Eyes」は、コロコロとよく転がるメロディアスなフレーズと緩急自在のアドリブを流麗に紡ぎながらテンポよくスペースを駆け巡る。歪みやディレイのバランスも申し分なし。スリリングなテーマにて疾駆する「One More Song」、スローブルースの「Brooze」、モーダル・バラード「Hearts Wide Open」など自前曲のクオリティも極めて高い。何よりそのクリアーで温かみのある音にはしっかりとまごころが詰まっていることを知る。


「Words Unspoken」

2007年録音

Words Unspoken 先輩のアモス、オズ・ノイ、同世代のナダヴ・レメズとも異なるギタリズム。ウェス・モンゴメリー、バーニー・ケッセル、ジム・ホール登場以降のモダンジャズ・ギターの伝統を受け継ぐイスラエル出身の若手正統派としてはギラッドがほぼ唯一と言っていいだろうか。本作は、Smallsの姉妹レーベル、LateSet Recordsからリリースされたリーダー2作目。ジョー・マーティン(b)と、ロイ・ヘインズの孫にあたるマーカス・ギルモア(ds)というリズムセクションに4曲でジョエル・フラーム(ts)が参加。正統派と言えど杓子定規なプレイに終始しないのがギラッドの凄いところで、とにかくアドリブ・フレーズの引き出しが多いことに驚かれた方も多いことだろう。齢24にしてテクも完璧ならば歌心も大横溢。「April In Paris」、「Someone to Watch Over Me」、「Time After Time」、コルトレーンの「Countdown」といったスタンダードやジャズメン・オリジナルのアレンジ・センスもさることながら、やはりオリジナル曲の仕上がりには目を見張るものがある。中でも「New York Angels」はピカイチ。クールなテーマ、ホットなソロでの饒舌で流麗なフレーズひとつひとつが心地良く、温度を上げ下げしながら終盤ファンクジャミンに突入する展開もとてつもなくかっこいい。







Shai Maestro
(シャイ・マエストロ)

 1987年イスラエル生まれ。5歳のときからクラシック・ピアノを学び、8歳のときに聴いたオスカー・ピーターソンの『Gershwin Songbook』でジャズに開眼。テルマ・イエリンではジャズとクラシックを両立して学び、またインド音楽をはじめとする民族音楽論の基礎もこの時期にマスター。結果的に優等学位を取得。成績優秀者のみが得ることができる奨学金制度にて、バークリー音楽院の「サマー・プログラム」にも2年連続で参加している。その後もエルサレム音楽アカデミーでジャズとクラシックのピアノ、さらにリアルタイム・コンポジションを学び、満を持して移住したニューヨークではジャズ・クラブのみならず、コンサート・ホールからクラシック・リサイタルまであらゆる舞台シチュエーションでの演奏をこなした。2006年からは、ベーシストのアヴィシャイ・コーエン・グループのレギュラー・ピアニストの座を射止め、『Gently Disturbed』、『Sensitive Hours』、『Aurora』、『Seven Seas』のレコーディングに参加し、その名を一躍知らしめた。2011年にアヴィシャイ・グループを離れ、今年ついに初のリーダー・アルバム『Shai Maestro』を仏のLaborieからリリースした。  


「Shai Maestro」

2011年録音(?)

Shai Maestro アヴィシャイ・コーエン(b)・グループをはじめ、ダニエル・ザミール、ユヴァル・コーエン、さらにはニューヨークNo.1 ファーストコール・ドラマー、アリ・ホーニグ・コンボなどでの活躍で、そのリーダー・デビューも待たれていたシャイ・マエストロ、満を持しての初アルバム。ホルヘ・ローダー(b)にジヴ・ラヴィッツ(ds)、一枚岩のトリオで渾身のオリジナル・コンポジションを世に放つ、若きマエストロの奥義。「Brave Ones」、「Silent Voice」、「The Flying Shepherd」では、アヴィシャイの『Gently Disturbed』で初めてシャイのピアニズムに触れたときの興奮も蘇る。リズム隊がフレキシブルに動き回りながら主役ピアノを煽れば、そこにジャレ合うかのようなライドで応戦。グルーヴの大波・小波を三位一体で見事に泳ぎ切るサマには溜息のひとつも毀れ出るというもの。「伝統死守」と「絶え間ない革新」。一見相反するかのような二つのテーマを小気味よく両立。2012年を代表するイスラエル・ジャズメンのアルバムだ。


Yuval Cohen 「Song Without Words」

2009年8月17,18日/11月5日録音

Song Without Words コーエン兄妹の長兄ユヴァルとシャイ・マエストロによるデュオ・アルバム。目の前に広がる原野、蒼い空、白い雲・・・イメージと音がつながり、やがていくつもの思想や詩情が花開く。リリカル・コンビによる「言葉なき歌」は、デリケート・ビューティなる世界を模索しているだけでなく、激しく生々しい、獰猛な息づかいさえにも肉薄している。決してしんみりしているわけではない。「Nehama」や「Nature Song」で発せられる”言葉なき究極の歌”には、生命焦がす赤子が泣きじゃくるような互いのほとばしりがあり、その熱に反応するかのように両者は惹かれ合い、音を交わす。ユヴァルのサックスもシャイのピアノも、出音のクリアーさとは相反して、美辞麗句に収まらない実に感情的で人間くさい言葉を発している。リアルな対話がここにある。







Omri Mor
(オムリ・モール)

 1983年イスラエル生まれ。エルサレム音楽アカデミーでクラシック・ピアノとジャズ・ピアノを学び、シャイ・マエストロ同様成績優秀者として、イスラエル-アメリカ音楽財団より5年連続で最高額の奨学金を付与された。その後先輩イスラエル・ジャズメンや海外の有名ジャズメンらと数多くの共演を果たし、またイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団との共演などクラシック・フィールドにも登場。さらには国内のロック・アーティストから民族音楽アクトまで、幅広くサイド参加や客演を行なっている、イスラエル・ジャズメン新世代を代表するピアニスト。現在のところリーダー作はないものの、オメルとマーロン・ブロウデン(ds)の双頭作『Omer Avital - Marlon Browden Project』、ダニエル・ザミール『Amen』、ドラマー/パーカッション奏者リア・バル・ネス『Remember&Forget』などでオムリのプレイを聴くことができる。  


Alon Farber Hagiga Sextet
「Optimistic View」

2006年9月録音

Optimistic View オムリ・モールの脇メン仕事として抑えておきたい一枚。イスラエル出身のマルチ・リード奏者アロン・ファーバーとドラマーのダニ・ベネディクトを中心として2001年に結成された”ハギガ”セクステットは、アヴィシャイ・コーエン(tp)も参加した2005年Fresh Soundからのデビュー盤『Exposure』で話題となったイスラエル・オールスターズ・コンボだ。こちらは2008年にリリースされた2作目で、ハードバップに中近東〜アフリカン・ブイヨンが前作以上に濃厚に溶け込んだハイブリッド且つキャッチーなサウンドを届ける。オムリのピアノとアモス・ホフマンのギターが滑らかに転がり、ファーバーの清々しいソロを呼び込む「Optimistic View」など耳あたりはおしなべて良し。彼の地フレイヴァ濃い目がお好きな方には、枯山水のウードがムードを高める「Zambura」を。 


Omer Avital / Marlon Browden
「The Omer Avital Marlon Browden Project」

2003年7月13日ライヴ録音

The Omer Avital Marlon Browden Project エルサレムのジャズクラブ「Yellow Submarine」で行なわれた、オメル・アヴィタル(b)と、グレッグ・オズビーらとの活動などで知られる黒人ドラマー、マーロン・ブロウデン(ds)との双頭リーダー・ライヴ。サイドには、アヴィシャイ・コーエン(tp)、そして当時まだ19歳だったオムリが参加している。ワウワウ電化トランペットとエレピ〜シンセが両主役の刻むロウでファットな16分の上で噛み付きあう「Browden's Thing」は、まるでマイルス ”アガパン”バンド、あるいはフェラ・クティ&ナイジェリア70のエンドレスなファンク地獄に浸っているかのような禍々しさにてクラウドを鼓舞する。00年代初頭のイスラエルでこんなにもファンキーなセッションが行なわれていたなんて・・・極東に棲む農耕民族には想像すら付かない。「Third World Love Story」での電界彷徨うトランペット・ソロもアブない!






まだまだありますイスラエル・ジャズ関連作品。こちらも併せてどうぞ!

Yaron Herman 『Alter Ego』 
イスラエル出身でパリ在住の人気ピアニスト、ヤロン・ヘルマン。ドイツの名門ACTレーベルからの第2弾となる2012年最新作。同郷のジヴ・ラヴィッツ(ds)を含むカルテットは、4ビートの頚木から解放された自由でイマジネーション豊かなフォームで、「現在」と「ルーツ」をパフォーム。


Itai Kriss 『Shark』 
イスラエル出身でN.Y. を拠点に活動をする若きフルート奏者イタイ・クリスの2011年録音の最新アルバム。オメル・アヴィタル(b)、アヴィシャイ・コーエン(tp)、アーロン・ゴールドバーグ(p)らが脇固めするクインテット〜セクステット作品。


Shimrit Shoshan 『Keep It Movin'』 
イスラエル勢ではめずらしい女流ジャズ・ピアニスト、シムリット・ショシャンの2011年ニューヨーク録音の初リーダー作。ジョン・ハバート(b)、エリック・マクファーソン(ds)らとのトリオにエイブラハム・バートン(ts)が加わるカルテット録音。おしなべてコンテンポラリーな質感だが、その中で鬼火のように揺らぐ熱情が堪らない。将来を有望視されるも、今年8月急性心不全のため29歳の若さでこの世を去った。

Shauli Einav 『Opus One』 
イスラエル出身の若手サックス奏者シャウリ・エイナーヴ。オメル・アヴィタル(b)、アーロン・ゴールドバーグ(p)らとの共演を経て2011年にリリースされた初リーダー作。シャイ・マエストロ(p)も参加する二管クインテットで、ニューヨーク仕込みの洗練された流儀と故郷の薫りとが親和性を持ちながらそこはとなく漂泊する。

Rafi Malkiel 『Water』 
イスラエル出身のトロンボーン奏者ラフィ・マルキエル、TZADIKからの2ndリーダー作。アヴィシャイ・コーエン(tp)、アナット・コーエン(cl)、イタイ・クリス(fl)ら同郷メンツに、おなじみダニエル・フリードマン(ds)、さらにはパーカッション部隊を含む総勢11名のビッグバンド編成で、ジューイッシュ、中近東、ラテン色濃いユニークなジャズ・サウンドを聴かせる。

Arik Strauss 『Mostly Ballads』 
イスラエル=N.Y. ジャズ好きにはおなじみのピアニスト、アリク・ストラウスの新作ピアノトリオ。バッハ、ショパン、エヴァンス、ジャック・レイリーなどから影響を受けた独特のピアニズムと、彼の地ジャズメンならではの米国モダンと中東慕情のエクレクティクを、絶品のオリジナル・バラード集にて。

Trio Shalva 『Riding Alone』 
リリカルなタッチでジューイッシュ〜東洋的な芳香を漂わすピアニスト、アサフ・グレイツナー、自身のリーダー作『Thinking Out Loud』も好評のドラマー、ナダヴ・スニル・ゼルニカー、ギターとベースを操るコビー・ヘイヨンから成る純正イスラエル三重奏、トリオ・シャルヴァのデビュー作。メンバーのアイデンティティが随所に息づく快作!

OAM Trio with Mark Turner 『Now And Here』 
オメル・アヴィタル(b)、アーロン・ゴールドバーグ(p)、マーク・ミラルタ(ds)という強力トリオに、現代テナー巨人マーク・ターナーがジョイントするOAM トリオの2作目。「Faith」をはじめ、オメルによる3曲のオリジナル・コンポジションが秀逸!


Daniel Freedman 『Trio』 
オメル・アヴィタル(b)をはじめ、Smalls周辺で活動するイスラエル勢作品には欠かすことのできないニューヨーク・ドラマー、ダニエル・フリードマンの2001年リーダー作。そのオメルほか、盟友ジェイソン・リンドナー(p)、マイロン・ウォルデン(ここではサックスで参加)ががっちりバックアップ。ダニエルお得意のパーカッシヴな律動術が、N.Y. ジャズとイスラエル・ジャズとの蜜月をさらに色濃いものに仕立て上げている。






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【インタビュー】 オメル・アヴィタル 
N.Y. シーンの最前線で大活躍するイスラエル・ジャズメン、彼らの群像を求めて。間もなく今年二度目の来日公演もスタートするオメル・アヴィタル、YES!トリオでの来日時に行なったロングインタビューをどうぞ。


こちらラッパ吹きのアヴィシャイです。 
オメル・アヴィタル(b)、ナシート・ウェイツ(ds)との究極トリオ! コーエン兄妹が誇る現代最高のトランペッター、アヴィシャイ・コーエンの最新作は、あの『Triveni』の続編だ!