LINKIN PARKのあの日、あの時 6

2012年5月25日 (金)


『METEORA』発売時のさらなるストーリー!
文●有島博志(GrindHouse)

 決してノスタルジックになっているわけじゃない。だけど、今回は“古きよき時代”なる言葉を思い浮かべてしまうような話から始めよう(笑)。前回書いたとおり、LINKIN PARKの2枚目『METEORA』は2003年3月に世界同時発売された。本国USでは発売初週で80万枚以上、半年後には300万枚以上売れ、アッと言う間にトリプル・プラチナ・アルバムに認定される、という恐ろしいスピードで巨大な商業的実績を叩き出した作品だ。“音楽 & CD不況”と言われて久しい昨今では、とてもじゃないけどあり得ないスピード、実績のデカさだ。今改めてこのデータを見たとき、素直に「いい時代だったなぁ」と思わずにはいられない(笑)。

 『HYBRID THEORY』でのメジャー・デビュー以降、ここまでなんの不安材料も問題もなく、まさにトントン拍子できたバンドや、それを取り巻く環境について、当時マイク・シノダ(vo, g, key)はこんなふうに語っていた。

「オレたちはとても幸せさ。好きなことをやって食べていけているんだから。子供の頃から音楽をやってきたわけで、暇さえあれば友達とプレイしていた。その音楽で生計が立てられ、加えてその音楽で誰かを感動させることができるなんて最高だよ。それってオレたちには重要なことさ。オレたちにとって新作(『METEORA』)は、発売される前からすでに成功したも同じなんだ。なにしろやりたいことのすべてが詰まっている作品なんだからね」

 さらに、だ。チェスター・ベニントン(vo)とロブ・ボードン(ds)に同じ頃、皮肉を込めてこう質問をしたこともあった(笑)。連載第1回にも書いたけど、下積みのとき、つまりSUPER XERO〜XERO〜HYBRID THEORY時代、彼らはいくつものレコード会社の門を叩くも、どこにも認められなかった。「(短期間でここまでの大成功を収めるという)アナタたちの才能やセンスを見抜けなかったレコード会社の人たちに一言(笑)」と。まず、ロブがこう切り出した。

「オレたちはただ、誰かがオレたちの、ある意味での才能を認めてくれたことを嬉しく思うだけさ。当時デモを(各レコード会社に)送っただけじゃなく、ショウケースギグも何回かやったけど、そのたびにNoを出されていた。あまりにも断られ続けたもんだから“もうイイよ、誰も契約してくれないなら自分たちで宣伝し、インターネットを介してCDを売るから”とも思ったくらいさ(苦笑)。結果的にそのCDが目に止まり今に至るわけだけど、きっとオレたちにNoを突きつけた人たちはすごく悔しい想いをしているだろうね」

 そして、チェスターが続いた。

「そんなのオレたちの問題じゃないよね(笑)。ミュージシャンなるもの、常に自分のことを信じているものさ。自分のビジョンをほかの人たちに伝えるっていうのは難しいことだよ。誰かがリスクを負ってくれないからって、その人を責めるわけにはいかない。誰かがリスクを負ってくれたとき初めて、その人を賞賛することができる。“ほら見ろ、契約しなかったから今こうなったんだゾ!”って思うより、誰かが契約してくれたおかげでここまでこれたって感謝した方がイイじゃない。そのおかげでオレたちもキャリアを積むことができたわけだからさ」

ボクとLINKIN PARK

文●TAKUMA(vo,g) from 10-FEET
LINKIN PARKを初めて聴いたのは渋谷のCD屋さんで。で、視聴機の前で立ちつくしましたね。「こんな要素とこんな要素とこんな要素があるバンドがいたらいいのになぁ…」と思ってたら現れたLINKIN PARK。衝撃でした。今でもボクのヒーローです。

 『METEORA』発売直後の2003年4月よりツアーが再開された。彼ら主宰のパッケージ・ツアーとして知られるProjekt Revolutionがしょっぱなだった。前年より始まった同ツアー(CYPRESS HILLADEMAらが同行)の2回目で、このときはMUDVAYNEBLINDSIDE、ラッパーのXZIBIT(=エグジビット)が参戦した。実はこのとき興味深いことが起きている。METALLICA主宰のSummer Sanitarium Tourへの参加を打診された彼らは行程的に完全に被っていたものの、自己ツアーの日程を一部先送りにしてでも出演したということだ。もちろんMETALLICAがトリに据わり、ほか出演順にMUDVATNE、DEFTONES、LINKIN PARK、LIMP BIZKITというとても絢爛豪華な布陣だった。この出演順に関しては、当時DEFTONESのチノ・モレノ(vo,g)が「なんでオレたちの出番が2番目なんだよ!」と憤りをあらわにした、というエピソードが残っている。また、このツアーの南部テキサス州ヒューストンとアーヴィング2公演の模様が収録され、後の11月にライヴCD/DVD『LIVE IN TEXAS』として発売された。

「この作品の発売を決めたのは、Summer Sanitarium Tourで起きたさまざまな出来事に対しての、自分たちの高揚した気持ちが発端になっている。あのツアーはオレたちにとって特別な時間だった。だからその瞬間を収めておきたかった。まずジョー(・ハーン/dj, electronics)が映像スタッフを呼び、数日間の模様を映像に収めようって言ったんだ。で、その後スタジオで初めてライヴ音源/映像を見聴きしたとき本当に最高の気分になれた。とにかく思っていたよりいいツアーだった。だから自分たちも見たかったし、みんなにも見てほしかったから発売したいと思ったんだ。最初はちっちゃな思いつきから始まったけど、気づけばこういうものになっていたんだ。ハッピーだよ」

 この『LIVE IN TEXAS』が発売されるほぼ1ヵ月前の2003年10月、再来日公演が実現する。実はこの再来日は当初の予定ではもっと早い時期に、それも『HYBRID THEORY』発売に伴うツアー中に行われることになっていた。それが“幻”と化してしまったのはすべて、2001年9月11日に起きた対米同時多発テロによる影響が長引いたためだ。次回は、その再来日公演のときの話をお届けする。


LINKIN PARK 最新作ニュース


  • リンキン・パーク新作完成!
    リック・ルービンとマイク・シノダの共同プロデュースによるニュー・アルバム『リヴィング・シングス』のリリースが6月に決定!

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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Grindhouse Magazine Vol.71 の激押しタイトル! LACUNA COIL / 『DARK ADRENALINE』

 イタリアはミラノ産の、“ゴシック”をルーツに持つ6人組のメタル・バンドの6枚目の新作。USチャートに初登場18位で飛び込むなど、作品を重ねるたびに世界的人気を確かなものにしてきており、LOUD PARK 参戦での初来日も5年前に済ませている。“ゴシック”特有の要素のひとつである鬱積感などは完全に払拭し、もうひとつの要素であるメランコリックさを維持しながらより磨きをかけている。女性ヴォーカリスト、クリスティーナ・スカビアと、男性ヴォーカリスト、アンドレア・フェローによる男女デュアル・ヴォーカルが描き出すコントラストの妙、メロディのフックの強さ、楽曲のコンパクトさも際立っていて、非常に聴きやすく、印象度も高く、そこここに“洗練感”すら散りばめられている。ドン・ギルモアをプロデューサーに起用するという“ちっちゃな接点”はあるも、人によってはそれ以外は“ゴシック”だ、メタルだ、とLACUNA COILとLINKIN PARKの間には音楽的同類点、共通点はないように思えるだろう。だけど理屈でも、また音楽的スタイルでもないところで、あくまでも感覚的、テイスト的に、なのだけど両者はある部分で同一方向を向いてるように思うし、“近しさ”も感じられる。日本盤には8曲のボートラが追加収録されている
文●有島博志(GrindHouse)

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