THE OFFSPRINGのあの日、あの時 1
Wednesday, May 16th 2012

このTHE OFFSPRINGやGREEN DAY、BAD RELIGION、RANCID、そしてNOFXらが先頭に立ってグイグイ牽引した“パンク・ロック・リバイバル・ムーヴメント”、つまり日本で言うところの“メロコア・ブーム”は、今から20年ほど前の'93年あたりからグッと勢いづき始めた。本来そうした動きをいち早くキャッチし、進んで取り上げ、紹介していかなきゃいけない使命を持つハズの音楽専門誌はそれがまったくできてなくて、完全に後塵を拝していた。“メロコア”を扇動し、ブーム初期段階にまで持っていったのは結果的にストリート・ファッション誌であり、そういう服を扱うショップであり、クラブ・イベントのDJたちだった。ひとつの音楽トレンドが息を吹き、ある一定期間猛威を振う流れにおいて、そうしたプロセスで、というのは日本では当時非常に希なことであり、ほぼ初めてのことだった。そう、THE OFFSPRINGはかつて、そういう前例のない形で日本に上陸した。よって日本正式デビューも本国アメリカよりだいぶ遅かった。通算3枚目で、まさに一大出世作となった『SMASH』('94年)でそれが実現したのだけど、それも欧米発売から半年遅れてのことだった。そこには、THE OFFSPRINGが当時所属していたEpitaph Recordsの作品群の発売権が日本のどこのレコード会社にもなく、しばらくしてソニー・ミュージックジャパンインターナショナルが獲得したという裏事情もあったのだけど…。
ボクとTHE OFFSPRING
初めてTHE OFFSPRINGを聴いたのは確か中2か中3の頃。『SMASH』でした。こんなにも個性的で自由で、それでいてブッ太い芯のようなものも感じる...。こんな音楽に出会ったことがなかったボクは、とてつもなくドキドキわくわくし、興奮したのを今でも覚えています。そのときの感覚が、間違いなく今でもボクの心の真んなかで燃え続け、多くのエネルギーを与えてくれています。一生リスペクトです。 THE OFFSPRINGはハリウッドから車で南東に向かい1時間ほど走ったところに位置するハンティントン・ビーチの出身。ようは、“パンク・ロック/ハードコアのメッカ”と言われ、後に日本でもその手の音楽好きに浸透するオレンジ・カウンティだ。高校時代に熱を上げていたクロスカントリーチームでブライアン・“デクスター”・ホーランド(vo,g / 当時はドラマーだった)と、グレッグ・Kことグレッグ・クリーセル(b,vo)が出会い、意気投合。家のガレージでお遊びで音を出し始めたことが、そもそものきっかけだった。そんなある日、2人の大好きな“パンク・ロック界のドン”SOCIAL DISTORTIONのライヴがソールドアウトで観れなかったことに発奮し、バンド結成を決意した。'84年のことだ。デクスターはすぐにドラマーからギター兼ヴォーカルに転向、リード・ヴォーカルとしてダグ・トンプソン、当時は学校の用務員で、ほかのメンバーより年上だったケヴィン・“ヌードルズ”・ワッサーマン(g / 元CLOWNS OF DEATH)、今現在とは当然異なるドラマーが参加し、グレッグと5人組でMANIC SUBSIDALと名乗り、活動し出した。ヌードルズ参加の理由は、すでに成人していた彼が当時まだ未成年だったデクスターとグレッグに酒を買ってあげられるから、というエピソードが残っている。真偽のほどの確認はとれてないのだけど…。その後何度かメンバー・チェンジを重ね、デクスターが現任のリード・ヴォーカル兼ギターの座に就き、86年にはバンド名をTHE OFFSPRINGに改名した。そして同年、ビールの銘柄からとったとされる自主レーベル、Black Labelより2曲入り7インチ・シングル『I'LL BE WAITING / BLACKBALL』を1,000枚限定で発売し、念願の公式音源デビューをはたした。このときの布陣はデクスター、ヌードルズ、グレッグ、そしてジェイムズ・リリヤ(ds)の4人組だった。が、しかし、この布陣も固定せず、しばらくしてジェイムズが婦人科医を目指すため脱退、後任に当時まだ16歳だったロン・ウェトリー(ds)が迎えられた。活動キャリアにおいてこの4人での布陣が最長のもので、通算7枚目『SPLINTER』(2003年)まで続いた。'88年、再びデモ音源を制作した彼らは、それをもって同じくオレンジ・カウンティに居を構えていたインディー・レーベル、Nemesis Recordsと契約、翌'89年6月にファースト・アルバム『THE OFFSPRING』を発売した。
2002年に遅ればせながら日本盤化されたのはリイシュー・ヴァージョンの方で、オリジナル盤とはアートワークも収録曲も異なる。オリジナル盤のアートワーク(※右にあるのがそう※)は過激すぎるという理由でリイシュー・ヴァージョンのものに代わり、収録曲もオリジナル盤のクロージング・ナンバーだった“Kill The President”が削除された。オリジナル盤発売時は時代を物語るようにアナログLPレコードと、ミュージック・カセットでの発売。アナログLPレコードは当時少量ながら日本にも輸入されてきていて、知人に現物を見せてもらったことがある。その後、この作品は発売権がデクスター主宰のNitro Recordsに移ったことで日本盤発売が実現した。
ADOLESCENTS、DEAD KENNEDYSやTHE VANDALSほかとの仕事で知られるトム・ウィルソンによってプロデュースされた『THE OFFSPRING』は、うら若き頃の彼らが精一杯やっている、実に初々しい姿に満ちている。今なお聴ける最初期音源であり、まさしくこれが彼らの原点かつ大きく踏み出した第一歩でもある。やんわりとだけど、あの“オフスプ節”も形成されかけ始めているのもわかる。トータル・タイムも28分05秒と短い(笑)。ここ何年かの間に発売された近作群ももちろんだけど、この『THE OFFSPRING』も聴いておきたい作品だ。
THE OFFSPRING関連タイトル!
通算3枚目。“パンク・ロック・リバイバル・ムーヴメント”“メロコア・ブーム”の隆盛、拡散に、THE OFFSPRINGの『SMASH』とともに大貢献した、GREEN DAYにとって、またロック界にとっての“歴史的名盤”。LOOKOUT!Records時代の初期2作品『1,039/SMOOTHED OUT SLAPPY HOURS』('90年)、『KERPLANK』('92年)で純粋培養された、あの“GREEN DAY節”がロブ・キャヴァロのプロデュースの下、一気に大輪の華を咲かせた。歌よし、メロディよし、楽曲よし、作風よしの“三拍子”ならぬ“四拍子揃い踏み”の内容で、とにかくすべてがわかりやすく、入りやすく、覚えやすい。これはパンク・ロック、そしてロックに対して、大衆層の間に根強くあった“ハードルの高さ”を一気に下げる、という“大金星的役割”を果たした。「Burnout」「Champ」「Longview」「Welcome To Paradise」「Basket Case」「When I Come Around」などとフックが強く、耳を刺激し、心に訴えかけるナイス・チューンの、まさにオンパレードだ。
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■■■ 有島博志プロフィール ■■■
80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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同時連載中の「あの日、あの時」シリーズ & GrindHouse × HMV
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