【インタビュー】ゆず (2)

2012年5月11日 (金)

4月に発売したベストアルバム『YUZU YOU [2006-2011]』に続いてリリースされる、ゆずのニューシングル「with you」。日本生命のCMソングでもあるタイトル曲に加え、「イエス」「虹[Symphonic Orchestra Version]」の3曲を収録。15周年を迎えた彼らにとって大きな意味合いを持つこのシングルに付いてお話を伺いました。


---  2曲目の「イエス」も深みのある素晴らしい曲ですね。未来へとまなざしが存在するという意味では「with you」との共通点もありそうですが、曲調はまったく違う。この組み合 わせも実にいい感じです。「イエス」はどんなきっかけから生まれたのですか?

岩沢: 「with you」のカップリングとして、どんな曲がいいのかなっていうことから作り始めてました。「with you」のデモ段階のものを聴いた時に、突き抜けたポップな曲になるん だろうなというイメージがあったので、最初はもうちょっとマニアックなマイナー寄りのものを作っていたんですが、「with you」が完成形に近づいていくにつれて、ただ突き抜けた だけのポップソングではなくなってきて、いい意味で憂いを背負っていって、味が出てきので、違う曲がいいなと思って、書き直しました。「with you」という曲が持ち始めた憂い みたいなものを若干ヒントにしつつ、「with you」と一緒に 1枚の作品としてまとまった時にいいだろうというイメージを追求して作っていきました。

---  一見、シンプルなんだけど、深い味わいのある世界が魅力的です。

岩沢:  変わったことをやってるだろうっていうことを出したくなかったんですよ。そこは気つけました。でも実はすごいことやってる、みたいな。料理でいうところの下処理はしっかり やりました。最初からシンプルにしようと思っていたわけではないんですが、やっていくうちにシンプルなアレンジが似合うんだろうなって思って、気持ちいい聞き心地を追求しまし た。アコギだけで録ったテイクの段階で情感があったので、素材を活かしつつ、足りないものをちょっとだけ足していくだけで十分味が出たのかなって。

---  歌詞も自然にすっと染みこんできます。

岩沢:  詞に関しては未来への希望みたいなことを言いたかったんですけど、言葉を選びたくなかったというか、出てくるものを素直に書ければいいなと思っていました。

---  北川さんは最初に「イエス」を聴いた時、どんな印象を持ちましたか?

北川:  シングルって、 1枚通してひとつの作品として完成すると思っているんですが、「with you」の作業に集中している時に、岩沢君からあがってきたものを聴いて、これはい いシングルになるなって思いました。最初に聴いた時から完成されていたし、歌詞で描かれていることもいろんな人に置き換えて解釈できるし、歌としてもすごくいいなと。

---  確かに様々な解釈が可能な普遍的な歌でもありますよね。

岩沢: 丘が出てきたり、風が出てきたりするんですけど、それぞれに想像するシーンって、きっと違うと思うんですよ。聴き手側の想像力に委ねて、それぞれが頭の中で場面転 換してくれたらいいなってことは考えていました。

---  タイトルにもなっている“イエス”はとてもシンプルな言葉ですけど、思いの詰まったフレーズとして響いてきました。この言葉はすぐに出てきたのですか?

岩沢: そうですね。去年の災害のことは頭の中から離れないこととして残っているんですが、そうした中でも、永久になくならない言葉って必ずあるなって思っていて、そのひとつ がこの時は“イエス”だったという。

---  柔らかかつ繊細な歌声が染みてきました。どんな意識で歌ったのですか?

岩沢:オケが薄くてシンプルな分だけ、息の量をできるだけ抑えることは心がけましたね。演奏と呼応した歌にしたかったんですよ。エンジニアさんにもギターを弾きながら歌って いるようにしてほしいって、オーダーしました。

---  寄り添うようなハーモニーもいい感じです。

北川: それぞれの作業が同時に進行していたので、セパレートだった部分も多くて、スタジオに行ったら、僕の歌う場所がすでに用意されていたんですよ。ただし岩沢君の持っ ている世界観は大事だけど、そこだけで終わっちゃいけないというか、自分の声が重なることでゆずになっていく過程も大事にしようと心がけました。

---  3曲目には「虹」のシンフォニックオーケストラ ver.が入っています。これは『YUZU YOU』収録の「栄光の架橋」(シンフォニックオーケストラ ver.)と同じ時期に北京で録っ たんですか?

北川: そうですね。同じ流れで録りました。

---  「虹」はオリジナルバージョンのアレンジも見事だったので、また違う形で入れるのはかなりハードルの高い作業だったのではないですか?

北川: 確かにハードルは高かったですね。もとの「虹」の完成度が高かったので、新たに作るのはちょっと怖かったんですけど、今回日本生命の CMを再びやるにあたって、「虹」 を使いたいという話があって、自分たちとしても新しいものにトライしたかったので、この形になりました。場面がいくつもある歌なので、きっとオーケストラが合うだろうなというこ とは思っていました。実を言うと、「栄光の架橋」よりも「虹」のほうが先にあったんですよ。ベスト盤の話が出てきた時にせっかくだから「栄光の架橋」もトライしようってことに なったという。

---  「虹」のオーケストラアレンジはどんなことをリクエストしたんですか?

北川: 今回アレンジをしてくれた方とデータでやりとりをしながらという作り方だったんですが、その方が「虹」という曲が好きで、すでに「虹」のテーマが頭の中にあるとのことだっ たので、ある程度お任せしつつ。とてもいいものが出来たと思ってます。

---  シンフォニックオーケストラ ver.は時間の進行までもが見えてくるような作品になっていますよね。雨が上がって、空に虹がかかっていく光景が浮かんできました。

北川: そうですね。特に冒頭の部分は、雨上がりに雲の切れ間から光がさして、虹が架かっていく光景が見えてくるようなものになりましたね。

---  岩沢さんはシンフォニックオーケストラ ver.については?

岩沢: この曲はツアーでも何度かアレンジを変えて、いろんな形にしてきた曲で、可能性があるのはわかっていたので、とても楽しみにしてました。実際にデモ段階で聴いた時に、 テンポがちょっと遅くなって、雰囲気がさらにオーケストラ寄りになったので、さらに期待が大きくなっていくという。ただ、キーの高い曲でもあるので、そういう曲のテンポを落とすと、 息が持つのかな、これは大変だぞって、本チャン録りはちょっとビビリましたけど (笑)。

---  中国国立交響楽団の演奏はどうでしたか?

岩沢: 仮歌を録って日本から持っていったんですよ。で、北京で本物のオーケストラの音を録って差し替えた時に、そのままでも悪くはなかったんですけど、やはり歌い直さなけ ればと思うぐらい、人間の出した音のうねりのすごさを実感しました。特に音が立ち上がる瞬間とか、鍵盤だったら、押せば音が鳴るんですけど、弦の場合は弓を引いた後に音 が来るみたいな生き物みたいな感じがした。なので、そのうねりを感じながら歌い直したんですが、多分、そのテイクはもう 1度やってくれと言っても出来ないですね。

---  北川さんは歌に関しては?

北川: 「栄光の架橋」の時もそうだったんですが、かなり歌い込んで自分の中に入っている曲なので、仮歌の段階からすんなりと出来ました。曲を作った当初はすごく難しいなと 感じていたんですが、歌い込むうちに結構歌えるようになっていて、知らず知らず少しは成長していたのかなって。

---  シングルのジャケットも斬新なデザインですね。

北川: 『YUZU YOU』のアルバムジャケットでリニューアルしたゆずマンを一緒に描いてくれたファンタジスタ歌麿呂君っていうアーチストの感性がすごく好きで、一緒にモノを作った ら楽しいなと思って、是非にとお願いしました。彼の作品の中に迷彩があったんですが、迷彩っていろんなアーティストがトライしているんですよ。「虹」という曲を作る時に、色 んな「虹」という曲があるから、ゆずなりの歌を作ろうって思ったのに近くて、みんなが作っているからこそ、個性が出るところがある。彼の作る迷彩が気に入っていたんですが、 じゃあさらにゆずオリジナルで歌麿呂君が作る迷彩って、どんなものになるんだろうって、曲を聴いた上で作ってもらいました。迷彩って、軍隊が使ったりするものだから、ピース じゃないイメージがあるんですが、逆にピースなものになって、不思議な感じのものになった。

---  依頼する時にはリクエストしたことは?

北川: 細かく指示はしてないんですけど、2.3回作り直してもらってますね。最初、トロピカルな感じだったんですけど、ゆずがトロピカル過ぎるのはどうかなって、進化していっ てこうなりました。

岩沢: こういうものって、作り手の感性がいかに発揮されるかが重要なので、もうお任せしますって。完成したものを見て、素晴らしいなと思いました。

北川: デジタルとアナログのミクスチャーの話とも共通するんですけど、アニメやコミックの吹き出しみたいなものがルーツになってるところもあって、様々な要素のミクスチャーの楽 しさという点ではリンクしてますね。

---  ジャケットからも挑戦、冒険の姿勢が見えてきますね。

北川:  いつもそうありたいと思ってます。ちょっと怖いですけどね。

---  ベストアルバム『YUZU YOU』、そしてシングル「with you」と、流れとしてもいい感じなのではないですか?

岩沢:  当初はベストアルバムとニューシングルを一緒に出そうということで進行していたんですが、新曲はもっと良くなるはずだと信じて、発売日をちょっと後にして、さらに磨き上 げる作業をやったんですが、それが結果的に良かったのかなと。ベストアルバムを出してすぐ、次のシングルを発表できるのは意義があることだと思います。

北川:  最初のベストを出した時には「GOING HOME」という新曲を作って、アルバムの最後に入れさせてもらったんですが、それがひとつの区切りのマルをつけるというニュアンスだっ たとすると、今回は次のスタートを切れているという実感があるので、それがとてもうれしいです。これも“みらいへ”っていう感じだなって。





new single


 ゆず 『with you』
5月23日発売

[収録楽曲]
01 with you (日本生命CMソング 第2弾)
02 イエス
03 虹〜シンフォニックオーケストラVer.〜

best album


 ゆず 『YUZU YOU [2006-2011]』
4月25日発売

[収録楽曲]
01 虹
02 桜会
03 逢いたい
04 シシカバブー
05 Yesterday and Tomorrow
06 いちご
07 明日天気になぁれ
08 ストーリー
09 from
10 慈愛への旅路
11 超特急
12 春風
13 陽はまた昇る
14 Hey和
15 栄光の架橋 [Symphonic Orchestra Version] (New Recording SPECIAL TRACK)
16 T.W.L [Y.Z ver.] (New Recording SPECIAL TRACK)

best album

Going [2001-2005]

2005年06月08日発売



Home [2001-2005]

2005年06月08日発売






リーダー:北川悠仁(きたがわゆうじん)
生年月日:1977年1月14日 山羊座
血液型:A型
出身地:横浜市

サブリーダー:岩沢厚治(いわさわこうじ)
生年月日:1976年10月14日 天秤座
血液型:O型
出身地:横浜市

ゆず official site