ラザロ・レクィエム

Monday, April 23rd 2012

パトリック・ホーズ：ラザロ・レクィエム
2007年にイギリスで書かれた美しいレクィエム

親しみやすい旋律の美しさでイギリスで人気の作曲家、パトリック・ホーズが、新約聖書の中のラザロに関する有名な話をレクィエムに仕立てた注目作品が登場します。

【パトリック・ホーズ】
1958年リンカンシャー生まれのパトリック・ホーズ（ホウズとも）は、ルネッサンスとバロックの音楽を研究し、さらにディーリアスやヴォーン・ウィリアムズの影響も受けた明快な作風と旋律創造の豊かな才能によって現在イギリスで人気の作曲家。

【ラザロ・レクィエム】
今回登場する『ラザロ・レクィエム』は、新約聖書に登場する聖人ラザロの話を題材に書かれた作品で、新約聖書の英語テキストと、「レクィエム」に関連するラテン語テキストが交互に配される構成となっています。
　ソリストによって歌われる役柄が３人登場するので、オラトリオ的なドラマ進行も持ち合わせた作品とも言えるでしょう。

【ラザロ復活と死者の鎮魂】
ラザロの死と復活のエピソードはよく知られたものですが、イエス役、マリア役、マルタ役の歌唱によって、その奇跡をストーリーとして浮かび上がらせ、さらに交互にあらわれる「死者のためのミサ曲」のテキストで死を悼みながら曲が進められるというスタイルは、なにか意味深なものも感じさせます。

【ラザロの復活の物語】
エルサレム郊外のベタニアに住むマルタ、マリア、ラザロの３人の姉弟は、イエスがその家を訪れたこともあるという知己の間柄でした。その信心深さゆえにイエスに愛された彼らですが、ある日、ラザロが重い病気に罹ってしまい、普通の人間には治せなくてもイエスならば治せると考えたマルタとマリアの姉妹は、イエスのもとに使いを送り、ラザロが危篤であることを知らせます。
　しかし、イエスは、知らせを受けてもその場をなかなか動こうとせず、ラザロが死んで４日が過ぎた日にベタニアを訪れ、ラザロの墓の前で涙を流し、石の蓋を外した人々の前で、「ラザロ、出てきなさい」と語りかけると、死んだはずのラザロが起き上がって出てきたというのがこの有名な話の概略です。

【もうひとりのラザロ】
聖書のラザロというと、イエスの喩え話「富める人とラザロ」の話も有名です。これはベタニアのラザロとは別人とされていますが、ベタニアのラザロのパロディであるという説もあります。
　「富める人とラザロ」といえば、イギリス音楽ファンには、素晴らしく美しい旋律を堪能できるヴォーン・ウィリアムズの名作『「富める人とラザロ」の５つの異版』がよく知られていますが、ヴォーン・ウィリアムズを信奉するパトリック・ホーズのこの作品にも、もしかしたら何か関わりがあるのかもしれません。（ＨＭＶ）

【収録情報】
・ホーズ：ラザロ・レクィエム
　1. Elegy for Lazarus
　2. Tableau 1
　3. Requiem Aeternam
　4. Tableau 2
　5. Kyrie
　6. Tableau 3
　7. O Domine Jesu Christe
　8. Tableau 4
　9. Sanctus
　10. Benedictus
　11. Tableau 5
　12. Agnus Dei
　13. Tableau 6
　14. Lux Aeterna

　イーリン・メナハン・トーマス（マリア：ソプラノ）
　トーマス・ウォーカー（イエス：テノール）
　レイチェル・ロイド（マルタ：メゾ・ソプラノ）
　エクセター大聖堂聖歌隊
　エクセター・フィルハーモニック合唱団
　ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
　パトリック・ホーズ（指揮）

　録音時期：2012年1月、2月
　録音場所：RSNOセンター＆エクセター大聖堂
　録音方式：デジタル（セッション）