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2012年4月23日 (月)
三宅洋平、Shing02。音楽のジャンルという括りで捉えると一見、別の場所に居る二人の様に映るかも知れないが、両名に共通したある種の匂いを感じている方も少なくないはずだ。両名とも社会に対する鋭い洞察と、その詩的才能を存分に発揮し言葉を生み出し、自らの声でそのメッセージを伝えている表現者である。 311以降、三宅洋平は沖縄に移り住むという大胆なアクションを起こし、ブログ、ツイッター、そして音楽を通し、多くのメッセージを発している。 一方、Shing02は、原発事故後すぐに、原子力の事を正しく“知る”ためのオンラインレポート「僕と核 2011」の執筆に集中し発表。さらに2012年に入って間もなく「僕と核 2012」を発表している。 そんな二人が出会ったら...そう考えただけでワクワクしている自分がいて、今回の対談を企画させて頂いた。話は、311以降のお互いの感じた様々な事を中心に、社会のシステムの事、日本人について、これからの事と尽きる事なく進む。きっとそれぞれの作る音楽と同様、この対談からも様々な事を感じてもらえる内容になっているはずだ。 その対談の内容を前編、後編の二回に分けて更新させて頂く。まずは前編からじっくりとどうぞ。 三宅洋平: こうやって話すのは初ですね。 Shing02: 犬式やってた時にセッションした事がある気がしますけど。milkとかで。 三宅洋平: そうだ!trial productionかな?ありましたね。 ---共通の知人は多いのでは? 三宅洋平: 国内でも国外でも、ある種のシーンがあって、311以降やたら繋がり始めた感じはありますね。ジャンルの壁とか音の好みとかを取っ払って「誰が本当の表現者か?」っていうスタンスがはっきりしたから。今まで、何となく会ってなかっただけって人同士が会ったり。そういう連鎖が加速してるよね。こういう対談もまさにそうなんだけど。 ---今会ったからこそ理解し合えることもあったり? 三宅洋平: そうだね。例えば「陰謀論」という言葉一つ使うのにも、何故か空気を読まされる雰囲気が311以前はあったんだよね。そういう話をわかってる人と話をする暇がなかったんだよ。わかってない人が多すぎて。だから、わかってない人に伝えていくっていう中で、シンゴ君は同じ事をしている人だなっていうイメージはあったね。伝えていく作業を。 それまでは、その作業を行う上で頓知を使わなければならかったんだけど、震災以降、ある程度剥き出しでやっていかないと、間に合わない。 そういう意味で、こっちも手段を選ばなくなったし、受け取れる人も増えた。 ---そうですよね。お二人の震災以前にリリースされた音源を聞き返して、改めて合点がいく事もありますし。 三宅洋平: 上関の原発にしても、関われば関わる程、シンゴ君の名前も出てくるし。「僕と核」はやっぱり読んだしね。「もうここにまとめてくれてた」と思って。 俺はもう少し泥臭い方だからさ。活動家みたいになっちゃって。 とにかく目の当たりにしたかったんだよね。いろんな事を。官僚ってやつが何なのか直接会ってみたり。 でも今は、みんなの聞く態度が変わったから可能性を感じてるよ。 ---シンゴさんはいかがですか? Shing02: そうですね。いろんなことが加速化してるって洋平君が言いましたけど、今ってインフォメーションエイジじゃないですか?情報の革命があって、インターネットがあって。それもただのツールと言えばツールなんですけど、革命的なことが毎年起きていると言っても過言じゃない。その事によって、良い事も悪い事もプロセスが早くなっているという意味で加速している。 インフォメーション、教育、エンタテインメントとかって日常の中で消費していくものですよね。アメリカだったら911、日本だったら311、生活を根底から揺るがすような事が起こると、その優先順位などを振り分けていかなければいけないわけですよ。自分の生活の範囲と社会っていう普段あまり密接に考えていないものを考えてみたり。頭の中で新しく地図をつくらなきゃいけないっていう状況ですよね。 いろんなシンボリックな事が起きてる中で、僕も表現するだけじゃなくて、肌で状況を見たり感じたりして、自分の立ち位置から発信していかなきゃいけない。実際に何をしたいっていう明確なゴールがなくてもその都度、これは俺がやった方がいいんじゃないかっていう事が出てくるわけですよ。 去年一年をとっても、ニューヨークに割と長く滞在した事もそうだし、そこでNYのオキュパイのムーブメントを直に見たり。革命直後のエジプトも行ったんですよね。そういう成果が、震災後の日本に対する思いに反映されてますし、結局は全部繋がってる。まぁ元々全部繋がってるのは当たり前で、じゃあ自分達はどことどこを繋げるのか?っていう。それって、ただウェブページで繋がってるというのではなくて、能動的なアクションじゃないですか?だから足で稼ぐのが大事なんだというのは痛感した一年でした。 ---実際行かなければ得られない事は多いですもんね。 Shing02: 行って何かを持って帰ってくる事で初めて価値が生まれるというか。これだけ情報が溢れている中、ただリンクするなんて誰でも出来る事で。 実際、人にものを伝えるって言う事は、元々大変な事じゃないですか?それが簡単になった部分と同時に、さらに大変になっている部分があって。繋がっている人には一瞬で伝わるけど、繋がってない人には入り込んで来る事が難しいわけですよ。 三宅洋平: 情報が増えてるからね。 今回起こった事ってカオスだよ。「山火事が起きたら逃げる」っていう動物の感性から言えば、今東京は人が居ていい場所だとは俺は思っていない。でもそういう不条理を抱えていくのが人間であり、社会だから。それで、どうしたらいいのか?っていう希望の方を見ていくはずだから。で、このカオスは何が引き起こしかと言えば、情報を市民が自分達の手にしていなかった事だっていうのがはっきりしたよね。だから情報、インフォメーションっていうのは一つキーワードだなと思ってて。 Shing02: 僕は、情けも報いもないのが情報だってよく言ってるんですけど、情報っていうのは結局はただの言葉であって、その裏に意図があるかどうかが大事だと思うんですね。陰謀ってあるのが当然じゃないですか?陰謀があるのは確実なのに、陰謀論となると怪しい。だってそれは論だから(笑) だから陰謀論って言う必要はないと思うんですよ。 三宅洋平: 陰謀論っていうのは、上手くハメられたなって言葉でね。 Shing02: そう、それ自体が陰謀(笑) 三宅洋平: 原発もそう。水の中に一回毒を混ぜてしまえば、人々は永遠にどっちが毒かを話しつづける。だから言っちまえばそれはやったもん勝ち。そういう事を良く研究して知ってる人が、二律背反する二つの意見を並べてしまえば、どちらがどんなに間違えてても、その二つの意見は永遠に並立しちゃうんだよね。論って付けた時点で。そもそも陰謀論なんて言葉は日本にしかないし。まぁ、陰謀ですらないよね。バレバレだから。 Shing02: そう。ただの企み。企みっていうのは誰しも持っているものですから、それを見つけて鬼の首をとったかのように騒ぐ時代すら終わったんですよ。タネを明かしたところで、トリックがどうだってことよりも、舞台だったり、構造自体、システムを考えなきゃいけない。そのシステムを使って得してる人を追求するよりも、そのシステム自体問題なんじゃないか?っていうのがテーマになってきているわけですよね。例えば陰謀論にしても、誰が金を使って人を操っているかって言うよりも、貨幣っていうシステムをもうちょっと考えてみようじゃないかとか。電気にしてもそう。どう変えるかっていうのと同時に、「自分達のオルタナティブな方法で、お金も電気も作れるじゃないか」っていう二極論を考えていくべきなんですよね。 今までって情報って知らせないのが味噌で、知る人が少数であるほど価値があったんですよ。だけどIT技術がこれだけ発達してこういうシステムがあるんだから、みんなが知って得する情報を広めましょうっていうのが転換だと思うんです。 三宅洋平: 何でもそうだよね。今までは独り占めゲーム、モノポリーだったから。そこにインターネットを介してフリーのものが出てきて、フリーっていうものの強さが発揮され始めたんだよね。それによって独占してる人たちの牙城が崩れ始めて。 Shing02: いつの間にかシステムが本来の姿からひっくり返されちゃった。例えば特許の話をすると、みんなにとって便利なアイデアを思いついた人が、その見返りを貰える。つまり本来は新しいアイデアをどんどん思いつく事を奨励するシステムなんですよ。それがいつの間にか、特許を持っている人がそれを独占したいがために、ちょっとでも食い込んできたら訴える。つまり新しいアイデアを出すことが危険という世界になっちゃってる。本当はそうあるべきじゃないんですよね。 三宅洋平: ここ20~30年だよね。金融経済がデジタル化して、グローバル経済っていう言葉がはびこり始めた。何十社とあったメディアが、だんだん数社に合併、統合されてM&Aなんて言葉が当たり前に横行しだして、とにかくお金の原理で「会社なんて買うものだ」と。 「思いで応援したい会社に投資して応援する」というのが、そもそもの根源的な株式制度だと思うんだけど、今はそうじゃなくて投機でしょ。売った買った切った貼ったでやってて。 Shing02: その利子というものを生んだシステムが近代文明の諸悪の根源だとも言えるけど、結局はそういうインスピレーションがあるからこそ、これだけ進化してきたって言うのも否めないわけであって。ただ色々なところで、度が過ぎてる部分があるんですよ。絶対。 四半期の決算が使命になっちゃったら、五年後の事を考える余裕もないじゃないですか。でも本当はそういう事を考えないといけない。地域経済や環境問題を考えればもっともっと長いスパンで見なきゃいけないですよね。
後編に続く 話題は“日本人の事”そして“これからの事”に
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