LINKIN PARKのあの日、あの時 2
2012年3月30日 (金)

2000年10月24日、本国アメリカでデビュー作『HYBRID THEORY』は発売された。ニューカマーとしては超異例のBillboardチャート初登場16位をマーク。急速にその名と音楽は知られ、広まり、一気に喧騒が起きた。
それとは裏腹に、当の本人たちは余裕しゃくしゃくっていうか、発売直前にメンバー間でデビュー作が発売初週で何枚売れるかで賭けをしていた、というから驚いた。デビュー前から彼らが“すでに大物”だったことを物語るエピソードだ(笑)。当時、チェスター・ベニントン(vo)は楽しそうにこう語っていた。
「発売初週でどれだけ売れるか賭けたんだ。発売当日の枚数なんて少ないのが普通だけど、実際は違ってさ、すごい勢いで人々がオレたちの音楽に反応してくれた。ビックリしたね、マジで(笑)。で、賭けはオレが一番多く予想していて8,000枚。それだって、作品を1枚も出してない上に人々が楽曲も聴いたことがないバンドにとってはすごい数字さ。ほかのメンバーの予想は5,000枚〜7,000枚。だけどフタを開けてみたら50,000枚以上売れ、チャートに初登場16位で入った。それからもずっと同等のセールスをキープしていた。あまりに驚異的で、ただただすごいことさ」
ボクとLINKIN PARK
90年代中盤以降、あまりアメリカのハードロックに興味を持ってなかった。そんなボクに、再びアメリカのバンドに興味を持つきっかけとなったのがLINKIN PARKで、サウンドも新鮮だったし、エレクトロな部分とヒップホップとロックとの融合が刺激的だった。fadeの2ndミニ・アルバムの『A Moment Of Truth』(2005年)にはその影響が出てるかも。『A THOUDAND SUNS』の“Waiting for the End”などはすごく好き。これからも進化し続けてくるであろう、彼らのサウンドに期待したい!それに対し、ブラッド・デルソン(g)は2001年5月の初来日時の取材でこう言っていた。
「チェスターはいつも少々大げさでね(笑)。オレが言った数字は覚えてないけど、正直心んなかじゃ10枚くらいは確実に売れるという自信はあったよ(笑)。オレの両親が8枚は買ってくれるからそれ以上にはなるかな、と(笑)。本当は一体どのくらい売れるかなんて見当もつかなかった。実際に数字を聞いた時はさすがに腰が抜けるくらい驚いたね。新人バンドのデビュー作としてはWarner Brothers Records史上最高のセールスを記録したんだ」
これはあまり知られてないことだ。日本だけじゃなく、イギリスもヨーロッパも当初はLINKIN PARKに“静観の構え”だった。デビュー作のオリジナル発売日と、日本盤発売日の間には4ヵ月弱の“時差”がある。実はこれでも本国以外の国で一番早くデビュー作を発売したのが日本だった。極めて私的なことではあるのだけど、あえて書こう。発売から数ヵ月前、デビュー作の音源を手にしていた。そして、もちろんいい意味でだけど“Papercut”“One Step Closer”で十分、第一聴時から早くもヤラれ、トバされ、身体を激しく突き動かされた。グワ〜ッとこみ上げ、たぎるものすら感じた。めちゃセンスがよく、新鮮なサウンド・メイキングもさることながら、2分台、3分台という非常にコンパクトななかに“メロディのうまみ”と“楽曲の匠さ”をギュウ詰めにしたようなソング・ライティング能力も絶品の一言につきた。それからはもう、日々、所属の日本のレコード会社の人たちと寄れば集えば「リンキンの作品、早く日本盤出してよ」と繰り返し言い続け、しまいには上層部の人に電話し、「1日も早く出してください」と直談判した、なんていうことまでしでかした(笑)。今となってはイイ思い出だけど、自分にここまで信じさせ、ひたすら走らせるバンドにはもう2度と巡り会えないような気がする。それだけLINKIN PARKとの出会いは衝撃的で、自分に“なにかを決めさせた瞬間”だったように思う。
「ファンたちからの反響がすさまじいんだ。“え、そこまで?”とこっちが驚くくらいでさ。オレたちのヘアスタイルやファッションをマネする人たちが後を絶たないから、ちょっと面白がって“どう、コレできる?”って感じで頭を丸刈りにしてみたんだ。これで何人頭を丸刈りにするか、楽しみだよ(笑)」
と、デビュー作発売からしばらくして短期間頭を丸刈りにしてたマイク・シノダ(vo,g,key)。
日本でも騒ぎになると、よく“喧騒”という言葉が使われる。が、しかし、日本で言う“喧騒”と、アメリカのそれとではもう、桁もスケール感も違い、ときにそれを目の当たりにし、あまりのすごさに尻込みさせられてしまうほどだ。デビュー作が発売された頃、自分は頻繁にアメリカを出張で訪れていた。ラジオをつければ日に何度もLINKIN PARKが流れていた。MTVを観れば、1日に何回も“One Step Closer”のPVがオンエアされていた。外を歩けば、至るところにデビュー作の発売告知ポスターが貼られ、店先でLINKIN PARKの音楽が鳴っていた。彼らから逃れようにも逃れられないような状況、環境が、あの頃確かにアメリカのあちこちにあった。当然ライヴはどこでやろうがなんだろうが即ソールドアウトに。マイクが言った、ファンたちがまるで彼らをアイドル視したような行動に出てたことにも十分納得がいった。日本では上記した、全公演ソールドアウトになった初来日公演を機に、彼らの知名度、人気度は一気に高まり、ファン層も広がり、確かな独り歩きを始めたのだった。ブラッドが言う。
「“なんかオレたちすごいことになってるよな”って思う一方で、この成功についてあまり考えないようにしているんだ。成功したからってオレたちは変わってないし…イヤ、確かに変化はあったか(笑)。うん、成功でたくさんの変化があり、生活もいい方向へ変わった。だけどそうなっても昔の価値観や家族や友達との関係を維持していくことは大事だよ。ファンたちが俺たちの音楽を気に入ってくれて、こうして日本に呼んでくれたことにとても感謝してるよ。今回の初来日はバンドにとって新しい経験をさせてくれるものであり、新しい国を見せ文化を教え友達を増やしてくれるチャンスとなるんだからね」
なお、ご存知のとおり、ライヴではブラッドはずっとヘッドフォンをしている。「なにを聴いているの?」と訊いたところ、このような答えが返ってきた。
「なにを聴いているかは秘密(笑)。オレのトレードマークのようになっているけど、なんのためなのかはみんな知らないのさ。人にはいつもロサンゼルス・レイカーズの試合中継を聞いているって言ってるよ(笑)」
とのことだ(笑)。この後、LINKIN PARKはデビュー作に続いて、同作のリミックス盤『REANIMATION』(2002年)を発売する…。
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■■■ 有島博志プロフィール ■■■
80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
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同時連載中の「あの日、あの時」シリーズ & GrindHouse × HMV
Grindhouse Magazine Vol.71 の激押しタイトル! LOSTPROPHETS / 『WEAPONS』
5枚目の新作。前作『THE BERAYED』(2010年)はもちろん1枚の作品としてのクオリティは高く、“ロスプロらしさ”もあったけど、と同時にディープさを味わうなどの“混沌性”も感じられた。バンドが向かいたい方向と、ファンが彼らに望み、期待したそれとの間に“違い”“開き”があったのは事実だ。で、今作はまるで“原点回帰”を意図したように“混沌性”などは一掃され、実にわかりやい作風に仕上がった。ヘヴィ性とキャッチネスの共存共栄っぷりは見事で、印象度の高いメロディ、曲があふれ出てくるさまも説得力大だ。
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