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『監督失格』 平野勝之監督 インタビュー

Thursday, March 22nd 2012

interview
平野勝之


平野勝之監督の11年ぶりの最新作『監督失格』、Blu-ray&DVDでリリース決定!につき、公開時のインタビューをもう一度!本作は庵野秀明氏が初の実写プロデュースをした作品ということでも話題になったが、2005年、35歳の誕生日(6月27日)前日に自宅で急逝された林由美香さんと由美香ママ、そして、平野監督との関係性やそれぞれの想いが『由美香』を再編集した素材もふんだんに使用され、1本の映画になっている。生とは?死とは?愛とは?家族とは?幸せとは?・・・普遍的で当たり前にあるように思われるこのテーマを観た人の心に突き付けてくる本作についてお話を伺った。さらに矢野顕子氏が書き下ろした主題歌「しあわせなバカタレ」を含むサウンドトラック(庵野氏プロデュースによる同曲のPVを収録した特典DVD付き!)がHMV・ローソンで限定販売中! INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美


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この映画は「葬式」だと思ってるんですよ。自分で5年かけて林由美香の葬式をやった気分なんですね。


--- 11年ぶりの最新作の完成おめでとうございます。

平野勝之(以下、平野) ありがとうございます。(『由美香』後、『流れ者図鑑』を経て)『白 THE WHITE』は公開が1999年から2000年にかけてなのでそうですね、11年ぶりですね。

--- 改めて、本作を完成された心境はいかがでしょうか?

平野 ああいう内容なので「やっと仕上げられた」という感じですかね。

--- 本作は庵野秀明さんが初の実写プロデュース作品でもありますが、庵野さんに『由美香』を薦めたという本作の企画・製作の甘木モリオさんの意見からスタートされたんですか?

平野 そうですね。

庵野秀明 1960年生まれ。山口県出身。株式会社カラー代表取締役。1988年、OVA『トップをねらえ!』でアニメ監督デビュー。1995年にTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛け、1997年の『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版』とともに一大ブームを巻き起こす。1998年、村上龍原作の『ラブ&ポップ』で実写映画を初監督。実写映画2作目となる岩井俊二主演の『式日』では、東京国際映画祭にて優秀芸術貢献賞を受賞。最新作であるアニメーション映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版: 破』では、企画・原作・脚本・総監督に加え、エグゼクティブ・プロデューサーを務める。同作は興行収入40億円、Blu-ray、DVDは出荷本数100万本を記録している。


監督失格


--- 庵野さんからの意見というのは厳しいものだったのでしょうか?

平野 それは甘木さんも同じなんですけど、厳しいというか、「こんなのはダメだ」とかそういうことはなくて、迷っていた方向性を指示してもらうっていう形で誘導されていったんです。今まで自分がAVをずっと作ってきて、そういうやり取りはあんまりなかったのでとてもありがたかったですね。

--- お2人の意見が入ることによって、完成までにより時間がかかったりというようなことではなかったですか?

平野 普通だったら、脚本があってスケジュールがあって撮影を終わらせて、何月何日までに編集みたいな形なんですけど、『監督失格』に関してはちょっと特殊で編集と撮影が同時進行だったのと、時間的なおおよそのケツはありましたけど、ある程度のゆとりがあったのでそこはすごくありがたかったんですよね。だから、編集した段階で見えてきたものから撮影していくっていうスタイルを取ってました。その場合、「何をどの方向で行くのか」っていうことを試写を繰り返して上がった段階で、甘木さんや庵野さんに「こうした方がいいんじゃない?」とかあるいは「こういう方向の方がいいんじゃないの?」っていうようなことをよく言われてましたね。

--- 何故今、由美香さんが亡くなったあの日の映像が解禁になったのでしょうか?(由美香さんは35歳の誕生日(6月27日)前日に自宅で急逝された)

平野 封印されて自分の中でずっと引っかかっていたのは事実で。このタイミングというよりも亡くなってあの映像が残って確認した段階でもう10年後くらいに映画にしようと、考えてたんですよね、実を言うと。とてもあの時期に数年ではやる気にならないし、冗談でやれるネタではないので、「相当な覚悟がいるな」と。だから、ぼんやりとね、10年後、20年後・・・もちろん、はっきり10年後って決めてるわけじゃないですけど、そのくらいでいろんなものが「もういけるかな」って思った時に林由美香の一生の物語というかね、母と娘の話っていうことで考えてたんですよ。だから、とにかく彼女が生まれてからのありとあらゆる素材を取材して来て作るっていうのはぼんやり考えてました。その場合、あの映像は絶対にいるだろうと。ところが由美香が亡くなって今年で6年目ですけど、制作に着手した5年目くらいに、まあ、いろんなことが重なったんですよね(笑)。仕事はないし・・・まあ、あるにはあったけど非常に不安定だったし、どんどん自分の生活がヤバくなってることもあるし、映画が撮れなくなってるってこともあった。気持ち的には本当にいろいろ最悪で。でも、ずっとこの素材が引っかかってた。で、別件というか、「自転車3部作」の4作目って話を甘木さんにしたところ、甘木さんが興味があるのは林由美香と僕との関係だけ。それがもうとにかく頭にくるんですけど(笑)、「由美香にしか興味がない」みたいなことを言われて。でも、由美香が亡くなるちょっと前に甘木さんの仕事を飛ばしちゃったこともあって、それが自分の中でまた引っかかってたのもあったので、「まずそれをどうしようか」っていうことから始まって。由美香のことにしか興味がなく、「林由美香のものだったら作る。僕はプロデュースする自信はある」って言うことをはっきり言われたので、これはもうこのタイミングを逃さないでやっちゃった方がいいなと。出来上がることが先決だって考え直しました。だから、覚悟が決まらないまま始まってるんですよ、『監督失格』は。とりあえず上げてしまう、作っていく過程で何とか固まっていくかもしれないみたいな感じで。

林由美香 1970年生まれ。東京都出身。映画出演が200本を超える伝説的女優。2004年に主演したピンク映画『たまもの』(いまおかしんじ監督)では、年下の彼氏に熱を上げる熟女を好演。「ユーロスペース」で一般公開されるに至り、DVDも発売。圧倒的な投票数により、2004年第17回ピンク大賞の女優賞を受賞、さらにドイツのライプツィヒ国際映画祭にも招待されるなど、自身の代表作となった。2009年、松江哲明による『あんにょん由美香』が大ヒットする。


監督失格


--- 覚悟が決まらないまま制作されて、その過程はいかがでしたか?

平野 まあ、とんでもない状態でしたね。とにかくどういう形であれを完成させるのかってことだけを目標にしてましたね。

--- そのような心境や状況で完成された今、今までの様々な想いに多少なりともケリは付いている状態でしょうか?

平野 この映画は「葬式」だと思ってるんですよ。自分で5年かけて葬式をやった気分なんですね。由美香が亡くなった6年前っていうのはそういうのがまだ自分の中に全然なかったんですよね。だから、例えばね、人が亡くなって葬式は儀式ですけれども、「一応ちゃんとやりました」ということで、その後は別にその存在が心から抜けるものじゃないじゃないですか?だから、今はそれと同じ感じですね。やっぱり年月はかかるんじゃないでしょうかね。

--- 「母と娘」という構想からも、本作では由美香ママ(小栗冨美代さん・ラーメン店「野方ホープ」の女社長)がたくさん出演されていますが、あの日の映像を解禁することや本作を撮ることに関しても、とても多くの時間を由美香ママと共有されていると思うのですが、関係性はいかがでしょうか?

平野 あの映像を封印して判を押した段階でママの方が若干ね、気持ちが落ち着いたのかな。気持ちのやり場がなかったですからね、ママはね。もうとにかくめちゃくちゃな状態だったんです。僕もそれに巻き込まれてそうなっていたし。あの時期は僕だけじゃなくて、『監督失格』のHPに由美香の弟さん(小栗栄行)の書いた文章を読んで頂ければたぶん分かると思うんですけれども、とにかくみんながぐちゃぐちゃな状態。僕はその映像に関して判を押して封印した段階でママの気持ちが落ち着いて来て、その後、ママから相談の電話を受けたんです、逆にね。で、今度は敵が僕じゃなくてしばらくは他のところに行くんですけど(笑)。夜中に突然電話がかかって来て、「こんな夜中に電話するの、あんたしかいなかったからかけたんだよ」みたいに言われて、ママの愚痴や相談ごとを延々するんですけど、それも必死に聞いて来ました。そういう感じが何年か続いたんですけど、ママは何かあると必ず僕のところに電話をかけて来ましたね。で、後に普通に話せるようになったんですけどね。おもしろかったのがあの素材に関して僕は何にも言ってないのに向こうから、「あのね、あのテープ、もう使っていいんだからな」って言うんですよ(笑)。「いや、ママ、あのテープはね、そうそう使えないですよ」って言って。だからね、だいぶ前の段階からあれを封印したってこと自体、ママはもう自分がいろんなものに惑わされてたっていうことが分かっていたので、「自分がおかしかったんだ」っていう自覚があったってことだと思うんですけどね。だから、この企画を持って行った時にはすんなりとOKしてくれましたね。


監督失格


--- ものすごい存在感ですよね。緊張感も走りますし。

平野 やっぱりね、血を感じますよねえ(笑)。堂々っぷりというかね。普通のお母さんと違いますからね、明らかに。

--- 平野さんはあの日、第一発見者がご自身じゃなければよかったと思われましたよね?

平野 それは大いにありますね。「実に面倒臭いものを残してくれた」っていう感じで。

--- あの発見が平野さんじゃなければ、平野さんの人生はまた全然違うものになっていたかもしれませんよね?

平野 違ってたでしょうね、やっぱりね。

--- 松江哲明監督が2009年に『あんにょん由美香』を撮られた際に一緒に北海道旅行に行かれますよね?今そのようなお話を伺うと、当時は全く乗り気ではなかったのではないかと思うのですが。

平野 いや、あれは僕から話したんですよ。松江が「林由美香のネタをやる」ってことは聞いていたので、由美香のネタがどうのこうのっていうよりもね、飛行機代とか交通費も結構かかるし、ついでに制作費も出るし・・・ちょっと北海道を旅したいし(笑)っていうような非常に身勝手な軽い感じがあったんですよね。だから、「じゃあ、一緒にやるか?あそこに連れてってやろうか?」みたいな話でしたよね。で、「おもしろいので撮りましょう!」って話になって実現したと。

--- そこに重い気持ちがあったわけではなかったんですね。

平野 そうですね。僕の場合は当事者なのでね、『あんにょん由美香』の中でも言ってますけど、「やるんだったらちゃんとやれよ!」みたいなところはありましたけどね。

--- 『由美香』には平野さんの奥様も出演されていますが、平野さんが由美香さんと不倫関係にあったことも含めて、ご自身のプライベートを晒しながら作品を撮られていますが、現在の奥様とのご関係というのは?

平野 今でも普通に付き合いはあります。それは当然ですよね。

--- 奥様は平野さんのされていることなども理解されていますか?

平野 どうだろうなあ。今は別れてますけど、別れてても普通に電話したりしてますからね。理解されてなかったらこういう関係も続いてないのかなって思いますけどね。でも、この間ね、「『監督失格』、いつになったら観に来るんだよ」って怒ったりしたんですけどね。こういうどうしようもない男なのでね、非常に気は使いますね。『由美香』の時の「不倫旅行」にしてもそうですし。だから、あの当時はとりあえずの大前提で仕事だっていう一応の建前で進んでいったので。それは単なる女遊びっていうことじゃなくて、「映画を作りたい」という気持ちから。例えばね、映画っていうのは別にAVでも当時はレンタルの時代だったので、300円出して、『ターミネーター』を借りようがAVを借りようが別に同じじゃないですか?だから、「そういうものと同じレベルのものを・・・」って考えていたのでその意気込みっていうのは多分分かってくれてたと思うんですね。だから、そういうことの1つの必要悪って言ったらちょっと違うかもしれないですけれども、その辺を僕は言い出したら聞かないので、「じゃあ、こっちの感情だってあるから約束しましょう」ってなって、いろんな約束をお互いに立ててそれを守ったりっていうことはありましたけどね。


監督失格


--- この映画のラストで平野さんはぎっくり腰になりながらも、あの日に自転車で走りながらあのラストになりますが、どうしてもあの日でなければいけなかったんですか?由美香さんの何か特別な日ということだったのでしょうか?

平野 特別な日という事ではないです。あの日に気付いただけで。あの時にね。だから、出て来た以上、もうあの場で絶対撮らないとダメだと思った。例えば、あれを後日撮ろうと思ってもたぶん撮れないだろうと。カメラもある、でも腰は動かない・・・だけど、近場に知り合いがいるので電話したらたまたまいて、「自転車、下に降ろしてくれる?」ってお願いしたら、「いいよ」って言ってくれたから、「もう撮るしかない」って思いましたね。腰が壊れてももう何でもいいと思って。泣いてる時はまだね、そのシーンを撮ろうっていう発想はなかったんですよね。その直前まで病院まで運んでくれた甘木プロデューサーと打ち合わせをしてて、「どうするの?」っていう話をしてたところだったんですよ。スケジュールの件も含めて、「腰やられちゃってどのくらいで治るか分かんない」って言ったら、プロデューサーは僕の腰なんかどうでもよくてスケジュールのことだけを常に気にしてましたから。「とりあえず、腰が治るまでラストシーンをどうするかはちょっと保留にしておこう」っていう話をした直後だったんですよね。

--- この映画にとってすごく大事なシーンなので、どうしてあの日なのかがすごく気になっていました。

平野 特別な意味のある日ということではないです。由美香の何かとかそういうのとは全く関係なく、自分の中の気持ちですね。

--- 庵野さんは、平野さんには今後、「今まで全てを一人でやって来た彼に別のやり方で新しい場所に行って欲しい、変わって欲しいという気持ちがある」と公言されていますが、平野さんは今後をどのようにお考えですか?

平野 具体的にはまだないですけどその予定ではいます。「これ作っちゃったらもう作れないんじゃないの?」って言う人もいるけれど、「そんなにヤワじゃないですから」っていう気持ちですかね。本当は弱いんですけどね(笑)・・・本当は引退したいんですけど、ここまでやって来れた仲間のことを想って辞められないなっていう風に思ってます。「しょうがないからやります、すいません」って感じですかね(笑)。

--- 自転車に関係することなどはもう?

平野 いやあー、もういいでしょう、自転車は(笑)。旅とかね、本とか文章とか写真は好きなのでライフワークとして一生続けていくと思いますけどね、映画としてのネタはもういいです(笑)。そのためにこの映画で葬ったようなものなんで。全然違うのをやりたいですね。今は題材探しをしてる感じなのでまだちょっと時間がかかるかもしれないし、それは分からないですね。もしかしたら大失敗するかもしれないですけどそれはそれでいいかな。もちろん大失敗する気はないですけどね。


監督失格


--- 改めて、由美香さんはどんな女性でしたか?

平野 えー、ただの酔っ払いじゃないですか?(笑)。いい飲み仲間を失くしてちょっと寂しいっていうのはありますけどね。

--- 『監督失格』に見られる30歳を過ぎた由美香さんは恋愛至上主義といいますか、男性に対しての想いが強過ぎるくらいありましたよね?

平野 由美香は恋愛至上主義でも何でもないですよ!「王子様願望」が強いと僕は思いますね。だからね、男性に対して完璧を求めるんですよね、常に。最後の最後までそうでしたね。後期の最後の数年っていうのはおそらく、僕の見る限りは「王子様願望」、男に対する「完全主義」。要するに許せないことの方がちょっとしたことで全部強くなっちゃってすぐに別れちゃったりするわけですよね?それはたぶん、「相手が悪いんじゃなくて自分が悪いんだ」っていうことに体で気付いていながらもやっぱり、「幸せな家庭願望」があったわけで、それに向かってとにかく焦ってたっていう感じがありましたよね。だから、お弁当作ってみたりとかね。で、やり過ぎて、それに男性が応えてくれないともう大騒ぎになって、僕のところに電話かかって来たりとかね。

--- 『監督失格』のシーンの中に年下の男性を好きになって、結婚を意識して、携帯も常にチェックしたり・・・というようなちょっと過剰な部分もありましたよね?

平野 特に最後の方なんて異常でしたからね。人と会えばその話しかしませんでしたから。あとはあの由美香のマンションの8階から荷物を放り投げたりとかね、そういういろいろ大変な素晴らしく笑える事件がいっぱいありましたけどね。

--- 他のAV女優さんと比べて、由美香さんはちょっと違いましたか?

平野 他のAV女優っていうよりは、他の女優と一番違う特徴はたぶん「徹底した女優」って言うんですかね。「生まれながらの女優」というか。そこがもしかしたら、色気がない、男性からしたら「冗談じゃない!」って思われる部分かもしれませんけども、僕と共通してたのはあくまで作品至上主義で自分を晒すことに抵抗がない非常に制作側の人間だったっていうことがありますよね、一番簡単に言ってしまうと。だから、AV女優で面白いのは男優とデキちゃう奴とかいろんな人がいるんですけど、由美香は絶対、制作側とデキるんですよ。監督とかカメラマンとか。それが面白かったですよね。だから、由美香は作り手に近い立場の女優さんだったのかなって。だからある意味楽なんですけど、由美香に関しては僕はそれが気に食わなかった。何か逆にね、僕が女々しい気分になるというか。「もっと人間らしいところを見せろ」って感じだったわけじゃないですか?だから、「プロなんてクソかもしれない」っていうようなテロップを入れてみたりとかしたんですけど。だって、ゲロ吐いて目回してぶっ倒れてるのを撮影されて、それを後から自分で観て喜ぶ女優さんってなかなかいないと思うし。

--- 作り手に沿った考え方なんですね。

平野 本当にそうですね。だから、制作側のみんなに可愛がられたんじゃないでしょうかね。まあ、それは良しに付け悪しきに付けですけどね。

--- 由美香さんは、「最後の女優」という風に言われていたくらいですもんね?

平野 やっぱり、なかなかそこまで出来ないですよね。あるいはそういう女優さんはもしかしたらいるかもしれないですけど、例えばね、有名になってくると周りがよくないんですよ。事務所の問題だったりでガードが固くなる。本当はやりたいのに、「これは売りがあるからやめましょう」とかね、そういう話に普通はなるんですよね。でも、『由美香』を撮ってた時期はそういうのがなかったし、お互いにそういう人間だったから(笑)、もう行き着くまで行ってしまうという。だから、それを「下品だ」、「嫌だ」っていう人もいますけど、「それ、出来るんだったらやった方がいいじゃないですか?」って話ですよね。「撮れるんであれば徹底的に撮りましょう」って。で、撮れない時が1回あったから由美香に僕は怒られたわけですよね?でも、「冗談じゃないよ!」って思いますよ。

--- 監督に対して、「監督失格ね」なんて、普通におっしゃるんですもんね?(笑)。

平野 そうですよ!「あんた、ハメ撮り監督でしょ?」って言われますからね、恋してる人間に対して。「フザケんな!」って思いますよね。こうやって映画になると面白おかしくみんな言うんですけど、普通の日常で考えてみて下さいよ。そんな奴、最低でしょ?言われてみて下さいよ(笑)。

--- そうですよね・・・。

平野 そうですよ。だからね、確かにプロでやっていたし、由美香の言うことも分かるけれども、こっちの感情だって気持ちだってあるんだから、「もっと優しくしてくれよ!」っていうのはありますよね、やっぱりね。

--- 『由美香』の中でも平野さんは由美香さんに対してすごく優しかったです(笑)。

平野 本当にそうですよ、本当に(笑)。

--- お互いが好きな気持ちで一緒に来ているということもあるのに・・・(笑)。

平野 でしょ?(笑)。可愛いからいいけどさあ。だってあれね、2人でやってて、僕は写真撮って、ADやって、監督やって、出演やって、1日50キロ自転車こいで、テント立てて。で、由美香に指令したのは昼と夜の飯の用意だけですからね。「飯のことまでやってられるか!」っていうのがありますよね。

--- 監督と女優さんということに加えて、プライベートな感情もあり、その他の部分では生意気で手のかかる生徒を面倒見る先生というような関係性も伺えた気がしますが・・・。

平野 僕も子供なんでね、あんまりそういう感じではなかったと思いますけど(笑)、ただ、由美香に関しては弱みがあったんだと思いますよね。愛情というかね、すごく好きだったから。あまりにもプロっぽいところがガクっとやられてみたりとか。だから、その証拠に僕の『流れ者図鑑』はそういう意味では徹底してるので(笑)、そうするとまあね、嫌ーなものになるんですよね、これが(笑)。僕は『由美香』に対しては弱みっていうのかな、現場にしても結局ね、そういう映画になっちゃったので。「そこがいい」って言ってくれる人もいますけどね。


監督失格


--- 『監督失格』が9月3日(土)から、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて独占先行ロードショーされます。最後にこれからご覧になる方に一言お願い出来ますでしょうか?

平野 この映画に関して言えば、「大事な人にはなるべく早くちゃんと気持ちを伝えておいた方がいいですよ。後で思い知らされますよ」っていうことは言いたいかな。もしこの映画を観て何か感じることがあったらっていうのはありますかね。

--- いつ亡くなってしまうかもしれないということでもありますし。

平野 そういうことも含めてですよね。だからね、ママとか弟さんの気持ちを考えると・・・僕もそうでしたし、やれることはやれる時になるべく早くやった方がいいなってそういう風に思ってくれたらうれしいですし、実際、そういうことだと取って頂ければ。大したことじゃなくていいんです。まあ、それは自分にも言えることなんですけどね(笑)。

--- さらなる新作も楽しみにしております。本日はありがとうございました。

平野 ありがとうございました。

(おわり)




『監督失格』 Blu-ray&DVDで2012年3月23日発売決定!


『監督失格 Blu-ray(特典DVD付2枚組)』

★「監督失格」のすべてが分かる!ここでしか観ることができない新収録映像をはじめとする豪華映像特典!

【映像特典】(93分)
◆由美香ママ(平野勝之監督による新作ドキュメンタリー)
◆完成披露試写会・会見映像
◆しあわせなバカタレPV
◆山形国際ドキュメンタリー映画祭
◆平野勝之 8mm初期作品集 SUPER SHORT REMIX
(平野勝之監督、聞き手:小野さやかによるオーディオコメンタリー付き)
◆WEB限定特報、WEB限定予告
◆特報、予告編

【封入特典】
豪華ブックレット※豪華外箱付き ここでしか掲載されない秘蔵写真満載!


『監督失格 DVD2枚組』

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【映像特典】(93分)
◆由美香ママ(平野勝之監督による新作ドキュメンタリー)
◆完成披露試写会・会見映像
◆しあわせなバカタレPV
◆山形国際ドキュメンタリー映画祭
◆平野勝之 8mm初期作品集 SUPER SHORT REMIX
(平野勝之監督、聞き手:小野さやかによるオーディオコメンタリー付き)
◆WEB限定特報、WEB限定予告
◆特報、予告編

【封入特典】
豪華ブックレット※豪華外箱付き ここでしか掲載されない秘蔵写真満載!


監督/平野勝之
出演/林由美香 小栗冨美代(由美香ママ) カンパニー松尾
プロデュース/庵野秀明
音楽/矢野顕子 主題歌「しあわせなバカタレ」 (ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
青山学院高等部在学中よりジャズクラブ等で演奏、1972年頃よりティンパン・アレイ系のセッションメンバーとして活動を始め、ニューミュージック黎明期の欠かせない顔となる。1976年にアルバム「JAPANESE GIRL」でデビュー以来、YMOとの共演、ピアノ弾き語りの「出前コンサート」をはじめ、レイ・ハラカミとのユニット「yanokami」、森山良子とのユニット「やもり」など、幅広く活動している。2010年、約10年振りとなる弾き語りアルバム「音楽堂」をリリース。本作のために主題歌「しあわせなバカタレ」を書きおろした。

配給/東宝映像事業部
製作/カラー、コイノボリピクチャーズ
宣伝/轟木一騎、ミラクルヴォイス

© 「監督失格」 製作委員会
COLOR/1.85:1/111min./STEREO/映倫区分


矢野顕子による『監督失格』サントラがHMV・ローソンで限定販売中!


『監督失格』 サウンドトラック

矢野顕子書き下ろしによる主題歌「しあわせなバカタレ」他、サウンドトラック5曲を含む全6曲。庵野英明プロデュースによる同曲のPVを収録した特典DVD付き。

■収録楽曲

CD
1.しあわせなバカタレ(piano version)
2.はじまりの旅
3.Wheels Turning
4.Deep Down
5.しあわせなバカタレ
6.終わらない旅

DVD
1.しあわせなバカタレ MUSIC VIDEO

profile

平野勝之 (ひらのかつゆき)

1964年生まれ。静岡県出身。AV、映画監督。アマチュア時代より8mmを中心とした映像作品を撮り続け、PFF等で高く評価される。プロデビュー作はAV『由美香の発情期』。その後、『水戸拷問』、『ザ・タブー』といった、ヌケないがひたすらに面白い傑作AVを数多く監督する。1997年にAV女優・林由美香との北海道自転車旅行を記録した『由美香』が劇場公開され大ヒットする。その後も自転車旅行を題材とした「自転車三部作」を作り、厳冬期の北海道を自ら走って撮影した『白 THE WHITE』をベルリン国際映画祭に出品している。

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