[シリーズ名盤] 山下達郎 編
「山下達郎を知っていますか?」仮にそんな街頭インタビューがあったとしたら、ほぼ100%の人が「もちろん知っている」と答えるでしょう。場合によっては「何でそんな当たり前の事聞くんだ?」と叱られてしまうかもしれません。それ程までに、山下達郎の楽曲は、多くの人を魅了し、愛されているわけです。「大衆」を満足させる音楽というのは、往々にして「特殊な嗜好性を持った人」には満足出来ない音楽。逆に言うと「特殊な嗜好性を持った人」を満足させる音楽は、「大衆」には理解出来ない音楽である場合が多いのが常ですが、山下達郎の音楽は違うようです。そのどちらをも満足させる不思議な魔法。山下達郎という人は「大衆性」と「音楽のコアな魅力」を両方兼ね備えた、他に例を見ない存在なのだと思います。
山下達郎のラジオプログラム「サンデーソングブック」でも垣間見れる通り、山下達郎はミュージシャンである以前に、「一人の音楽好き」「異常に耳の肥えたリスナー」であって、それに基づく妥協のない音楽制作が、あのメロディーを生み出し、特殊な嗜好を持った音楽ファンをも魅了するのでしょう。
1975年にシュガーベイブとしてデビュー以来、13枚のソロ名義オリジナルアルバム、そして編集盤や企画盤をリリースしており、そのどれもが衰える事のない鮮度で輝き続けています。
その中で「どれが名盤なのか?」なんて考えるのも、憚られる程の素晴らしい作品ばかり。山下達郎に関しては、全ての作品を聴いて頂きたいと思っているわけですが、「一度にオリジナルアルバムを全て買い揃えて、じっくり聴く」というのも体力が要りますし、現実的ではないような気がしますので、ここで少しづつ紹介しようと思います。購入の一つの指針にして下されば幸いでございます。
何はともあれ、まずは新作をチェック!
 『Ray Of Hope』 / 山下達郎
[2011年08月10日 発売]
山下達郎はいつだって最新作が名盤なんです!2005年に発売された「SONORITE」から数えて6年ぶり!スタジオ録音のオリジナル・アルバムとしては、通算13作目のオリジナル・ニュー・アルバム!今回は全体的にストレートにポジティブなメッセージが届く作品になっています。「解り易い」と表現するとコアな達郎ファンは若干の難色を示すのかも知れませんが、決してそういったレベルではないのでご安心を。また、「俺の空」なる久々のヘヴィーファンクチューンが収録されている事にもファンのニヤつきは止まらない事でしょう!さらに初回限定盤ボーナス・ディスク「JOY 1.5」がヨダレモノ!!
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ベタですが、BEST作品から聴くって言うのが常套です。
山下達郎作品をとりあえず聴いてみたいという事でしたら、まずはBEST盤をご紹介します。あ、ベタですか?すいません。でも山下達郎のBEST作品は、凡百のBEST作品とは違い、正に本人公認。本人によるライナーノーツ、曲目解説も入っており、アルバム未収録のシングルバージョンなども収録されています。つまり、オリジナルアルバムを全て所有してもなお楽しめる、非常に価値のある作品なので、絶対に持っていて損はないんですね。是非!
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 『TREASURES』
山下達郎
一方こちらはムーンレーベル移籍後(83年〜95年)のベストアルバム。冬の定盤曲「クリスマス・イブ」から、名曲「蒼氓」...選りすぐりの涙のラインナップ全16曲!
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それでは山下達郎の歴史を追って行きましょう。まずはNiagara時代。(1975)
1972年、山下達郎が19才の時に友人達と自主制作した作品『ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY』(これは
オフィシャルサイトの通販で現在も購入可能です)。この作品を耳にした大瀧詠一との運命的な出会い。これにより大瀧詠一のレーベルNiagaraの第一弾新譜として、1975年シュガーベイブの『SONGS』がリリースされることに。そのアルバムが当時の日本の音楽シーンに産み落とされた衝撃は、私のような後追いの世代にとって知る由も無いのですが、それから35年以上が過ぎようとしている2011年においても、その作品が放つ輝き、鮮度が一向に衰える事がない事は紛れもない事実ですよね。大瀧詠一と山下達郎、そのポップスマニアの二人の交友は今でも続いていて、山下達郎のラジオプログラム「サンデーソングブック」で、毎年年明けに大瀧詠一を招いて放送される「新春放談」は恒例行事になっています。
 『SONGS』
シュガーベイブ
大貫妙子のデモテープ作りに山下達郎が協力したのをきっかけに結成されたシュガーベイブ。あまりにも短い活動期間に深く記された1枚のアルバム。それは日本のPOPS史上、最も輝く1枚!
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続いてRCA/AIR時代。(1976-1982)
シュガーベイブ解散後、ソロとしての歩みをスタートしたRCA/AIR時代。ファンクやソウルといった山下達郎サウンドの根底にある要素が色濃く反映されていて、この時代をフェイバリットにあげるコアな達郎ファン多数。1stから6thまで、オリジナルアルバムを紹介します。
そしてMOON/WARNER時代。(1983-現在)
ソロデビュー以来7年間在籍したRCA/AIRを辞め、設立されたばかりのムーンレコードに役員も兼ねて移籍。音と言葉のより私的な表現を追及し、作詞まで自身で手掛けるようになります。よりシンガー・ソングライター的な側面が強調されていきます。涙を誘う名曲バラードのイメージはこの頃からなのでしょう。7thから前作12thまでのオリジナルアルバムの紹介です。
山下達郎作品を聴く上で外せないLIVE音源!
最新作『Ray Of Hope』の初回限定盤に、ボーナスディスク「Joy1.5」(秘蔵ライヴテイク集)が付いてくるというのが話題になっている通り、山下達郎作品を聴く上で外せないLIVE音源です。ライブでも音に対するこだわりは尋常ではなく、一度聴くと病みつき。山下達郎のライブチケットが毎度、あっという間に完売してしまうのも納得です。今回の「Joy1.5」に収録される楽曲はシングルのカップリング曲として発表されたライヴ・トラック7曲を、今回、新たにリマスタリングして収録したものです。かく言う私は、このカップリングのライブ音源欲しさに、当時8cmシングルを欠かさず買っていたようなトコロもある程です!ここに紹介するライブ盤を聴きながら、来るべき『JOY2』のリリースを待ちましょう!
季節の定番!この2枚は外せない!
アカペラ、一人多重録音、コーラスワークと言ったキーワードは山下達郎作品に欠かせません。そのキーワードにスポットを当てて作られた企画盤の中でも、この2作品は外せないでしょう。もちろん
『ON THE STREET CORNER』という重要なひとりアカペラ3部作もありますが、まずはここから。毎年その季節がやってくる度にCD棚から取り出して聴く、大切な作品になるはずです。
 『Big Wave』
山下達郎
サーフ映画のサウンドトラックとして制作された本作。オリジナルとビーチ・ボーイズのカヴァー(一人多重録音)で構成された、全曲英語詞による独創的アルバム!夏はコレで決まりでしょ!
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それではゆっくりと達郎サウンドをお楽しみ下さい!
さて、21枚の山下達郎の名盤(殆ど全部)を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?いきなりこんなに紹介されても疲れますかね?でも大丈夫。ここ最近の山下達郎のリリースペースを考えてみてください。91年『Artisan』リリースから98年『COZY』リリースまで「セヴンイヤーズチョビット」(当時こんなキャッチフレーズだったような)。そして05年『SONORITE』を、またまた7年ぶりにリリースし、今回の『Ray Of Hope』は6年ぶり。その間にゆっくりと音を楽しみながら買い揃えていったら良いんです!あなたの人生のお供に山下達郎サウンドを。少し豊かな気持ちで毎日がおくれるはずですよ。