3月のドススメ! matsui編
 『月見草子』 / Candle
【先着特典】 CD (月見草子 demos & unreleased)
01 魅惑のくだもの / 02 迷宮組曲 feat. Meiso / 03 枕詞 / 04 銀の燭台 / 05 ブレイン情報バグ / 06 月と接吻 feat. CHIYORI / 07 もっと満たして! / 08 あみだくじ feat. Amida / 09 都市の迷彩 / 10 ら組 feat. Shing02 & Amida / 11 数寄間 / 12 本音サルベージ / 13 蝋燭讃歌 / 14 残り香
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"夜"というのは不思議なもので、日中とは全く別の思考が湧き出てくる事がある。思考は思考を呼び、考えは無限に広がっていく。時に内向的にひたすら自分と向き合う事もあれば、支離滅裂に発想が飛び火して答えのない迷路に迷い込むこともしばしば。「夜に書いた恋文を朝見返すと・・・」などと良く言われる話もあるが、それは正に日中と夜における思考が別種である事に他ならない。では"夜"に思考を巡らす事は無駄だろうか?答えは否。答えが出ないと知りつつも思いを巡らし、自分を見つめる"夜"の思考はすなわち己との戦い。そこから見出したもの、思考の過程が、自分の大切な部分を形成しているのではなかろうか。
そんな"夜"が放つ独特の静けさと激しさを鋭く描いた作品がリリースされた。
それが今回、僕が「3月のドススメ」に選出した、Candle『月見草子』だ。
EVISBEATSのビートに乗せて綴られるCandleの言葉には、"夜"と徹底的に向き合い抉り出された凄みがある。毎夜繰返した戦いの記録。それこそが『月見草子』に感じられてならない。
これはHMVのインタビューにおけるCandleの返答からの抜粋だが、"夜"に関してこんな事も言っている。
「日々の出来事は夜に振り返ります。太陽の下では明る過ぎて見えなかった微妙な光も、淡い月明かりの下では光り輝いて見える事もしばしば。」
なるほど。同じ事でも、見方を変えると見える部分も違ってくる。物事の微細な変化や反応。それすらも見逃さないCandleの観察眼も作品には良く表れている。見てきたものや経験、それに独特の洒落やユーモアを交えラップで畳み掛けてくるのだから、ますます痛快な作品だ。
また、アルバムや楽曲のタイトルからも感じられる通り、Candleの語感はある種、独特なものだ。それはリリックも同様で、日本語が持つ文学的な美しさが際立ち、幻想的とも言える世界観を作り出している。
幻想的と言えば、収録曲「月と接吻」「枕詞」の2曲に参加したCHIYORIのコーラス、ヴォーカルが、その世界観に色を添えた事は言うまでも無い。
このアルバムには、前述のCHIYORIの他にAmida、Shing02、Meiso、前田和彦(ピアノ)が参加している。これに関してはインタビュー内でCandleが参加アーティストについて語ってくれている部分があるのでそちらを参照して欲しい。
人々の需要を満たすだけでは飽き足らず、本来無い需要までをも創出する時代。与えられ過ぎの世の中で、劣化していく想像力や思考能力。そんな世の中を、知性とユーモア、そしてアイデアを詰め込んでシニカルに描いたCandleリリックは痛快な事この上ない。
【HMVインタビュー】 Candle コチラも是非!
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