【HMVインタビュー】kimonos 向井秀徳 page2
Thursday, November 11th 2010

- --- その「Soundtrack To Murder」では、ベースにZAZEN BOYSの吉田一郎さんと、ドラムにDeerhoofのグレッグ・ソーニアを迎えていますが、それ以外の曲でも、生で演奏しているかのようなサウンドが印象的だったんですが、こだわった部分はありますか。
音の構成、配置は、シンプルであればあるほどいいとは思っているんですが、今回もそうしましたね。ZAZEN BOYSでやる時も、バンドサウンドなんで聴こえ方は違うんだけれども、音の配置的な部分に関しては、あんまり色々なものを重ねずに、シンプルな並べ方をしてるとは思うんですけども。
ZAZEN BOYSと違うのは、例えば、パーカッション。ZAZEN BOYSにはパーカッショニストはいないけれど、今回はパーカッションのビートも投入できるし、それをいかに有機的に展開するかという努力はしました。プログラミングなんだけれど、フィジカルなものにしたいっていうのはありましたね。- --- ディレイについてはいかがですか。
ディレイは、好きなサウンドなんです。
なぜ好きかと言うと、サウンドが繰り返し続けるということは、現実世界には存在しないわけですよ。現実の時間とはちがう時間軸を作ってしまうっていうかね、その、ある種SF的な世界はすごく興味深くて、好きですね。だからディレイはよく使いますね。- --- 細野晴臣さんの「Sports Men」をカバーされていますが、この曲は『フィルハーモニー』という、ある意味実験的なアルバムに入っている曲ですが、実験的なところや、細野さんに対するシンパシーは感じていらっしゃいますか。
作曲家としてものすごく普遍的な、いい曲を作る一方、実験を重ねて前に進んでいく感じというのは80年代には特にあったろうし、日本の中ではとても重要な位置を占める音楽家の方だと思います。
『フィルハーモニー』はサンプリングとシーケンサーをはじめて使い倒したアルバムで、テクノロジーの黎明期ですから、雑なところもあるわけですけれども、それが今聴くとまた、非常にプリミティブでかっこいいなと思うんですね。
そして、『フィルハーモニー』の中に「Sports Men」という非常にキャッチーな曲が入っているっていう意味がね、かっこいいなと思います。- --- 厳選された10曲だと感じましたが、収録されなかった新曲というのはたくさんあったのですか。
これら以外に録音した曲というのは何曲かありますね。
曲そのものはいいんだけど、この並びにこいつがいるだけで場を乱す、みたいなね、そういう存在の曲は入れなかったですね。 ZAZEN BOYSのアルバムを作る時もよくあることですね。
残念ながら今回は見送りですって言ってそのままどっかへ消えていってしまうっていう。もったいないっちゃもったいない。- --- 曲そのものはいいのにアルバムに入れられないというのは、切り捨てる勇気というのが・・・
いや、勇気でもなんでもないです。客観的に考えているだけであって。
- --- 曲順も相当考えたものなのでしょうか。
-
このアルバムに関しては、曲順はそんなに悩みはしなかったですね。
10曲ありますけど、非常に個性的な曲ばかりなので、言ってみれば、どこにいてもいいと思ってすんなりと決まりました。 - --- 向井さんの音楽にはいつも驚かされるのですが、毎回新曲を聴くたびに、その驚きを超えていくというか、更新されていく感じがします。
今回のKIMONOSに関して言えば、人々に対して驚きを与えようという野心みたいなのは少なかったですね。 LEO今井と自分が作ったら、面白いものが生まれるという確信はあったし、それを目指して作っていったんですけども、いい意味で肩の力を抜いてリラックスしてやれました。 それが結果的に良くなったと思うんですよね。
- --- 続いて、『厚岸のおかず』について伺いたいのですが、色々な要素が詰まった、かなり珍しい書籍だと思います。初著作ということですが、いかがですか。
私は作家になりたいと思ったことはありませんし、作家になったつもりもないんですけれども、こうやって本にしたいという話をいただいて、結果的に面白いものになったとは思います。 私の頭の中にあるものを取り出して文章にしたらこうなりましたっていうものになりましたね。
- --- ウェブ連載が元になっていて、そこに書き加えていったものだそうですが、発想の膨らみ方や飛躍のしかたがすごいなと思ったんですが、音楽を作るのと文章を作るのとでは、似ている部分はあるんですか。
文章ですからね、楽曲を制作するのとはちょっと違うかもしれないですね。 歌詞を書くのと似ていることは似ていますね。
ただ、歌詞の場合は、イメージの言葉を羅列するっていうことのほうが多いんだけども、それで音楽と重なりあってある種のムードを生み出して、そこで自分のしたい表現をするっていうことなんですけども、『厚岸のおかず』の場合は、より具体的にしていかないといけなかったですね。
お題を出されて、私が思いつきでインプロヴィゼーションでしゃべって、それをハシモト(橋本倫史・雑誌HB編集人)という編集者がまとめて、具体的にしていったという工程ですね。間に人が入ることによってうまくいった部分はありますね。- --- 発想がどんどん膨らんでいくインプロヴィゼーション感は、文章からも感じました。 発想がどんどん出てくる感じというのは普段からありますか。
私は、寝る前に、布団に入ってから目を閉じて眠りに入る、その少しの間にけっこう色々なことを考えるわけですね。 昔から映画を作りたくて、映画のストーリーとか、シーンをそういうときによく考えるんです。
考えるだけだったら予算もかからないですから。
そこで色々な想像をするわけです。壮大な想像だったり、具体的な場面のカット割りだったり。
そういうことに今回のインプロビゼーションはちょっと近いですね。- --- そういった発想がまとまって、いずれ映画にするということは考えていらっしゃいますか。
『厚岸のおかず』には、 映画やドラマのネタになりえるようなアイデアがたくさんあると思うので、映像化したい場合は是非ともヨロシク。
- --- 「サークル・シャッフル」というストーリーでは、色々な人がジャムで音楽を作るというトランス感が溢れていてすごく面白かったのでが、ご自身の音楽でもインプロヴィゼーションで生まれるものが多いのかなと思ったのですが。
そうですね、多いですね。ひとつの発想からどんどん展開していって、最終的にひとつの形になるっていう、そのスリリングな感じっていうのは気持ちいいですよね。
- --- 最後に、HMVONLINEをご覧のみなさんにメッセージをお願いします。
ZAZENBOYSの作品がご無沙汰なので、次はそれに取り掛かりたいと思っています。
- --- 楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。
- 新刊 厚岸のおかず / 向井秀徳
- 「今夜もBIRI-BIRI」「林長明 焼肉事件」「おならごっこ」など、インパクトのあるタイトルの数々にまずはニヤリ。そして、いったいどんな妄想物語が紡がれているのだろうという期待を裏切らない向井節が炸裂。
出されたお題から即興で語り、物語にしたものもあれば、書き下ろしもありの全23の掌編を収録。向井秀徳が作り出した物語世界は、氏の生み出す音楽と同様に、唯一のものを味わうことができる。
kimonos/kimonos 2010年11月17日発売
kimonosと名付けられたユニット。これは向井秀徳とLEO今井による新プロジェクトだ。少し意外な組み合わせと思われる方もいるかもしれないが、かつて向井秀徳日記には、「LEO今井の「Tokyo Lights」は名曲である」との記述があったり、08年にはLEO今井のシングル「Metro」を向井秀徳がプロデュースするなど、なにかとシンパシーを感じあっている二人である。ジャケットの美人画に象徴される独特な世界観、二人に共通する「東京に対するまなざし」を中心に描かれる"最新の浮世音楽"10曲。
2010年の日本でしか鳴り得ない音楽が鳴り響く。
2010年11月1日発売
「向井秀徳とLEO今井がメトロポリス東京で展開する、時空を超えたオルタナティブ・サウンド 」。kimonosが『LOUD』の表紙に登場!

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向井 秀徳 mukai shutoku
1973年生まれ、佐賀県出身。
1995年、NUMBER GIRL結成。99年、「透明少女」でメジャー・デビュー。2002年解散後、ZAZEN BOYSを結成。自身の持つスタジオ「MATSURI STUDIO」を拠点に、国内外で精力的にライブを行い、現在まで4枚のアルバムをリリースしている。
また、向井秀徳アコースティック&エレクトリックとしても活動。
2009年、映画『少年メリケンサック』の音楽制作を手がけ、第33回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。
2010年11月、LEO今井との新プロジェクトkimonosを結成。アルバム『kimonos』と、初の著作となる『厚岸のおかず』を発表。
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