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ヘイリー・ロレン・インタビュー

Thursday, October 14th 2010

ヘイリー・ロレン・インタビュー

“ナチュラル・ボーン・ディーヴァ”と呼ぶにふさわしい逸材が、またひとりジャズ・シーンに現れました。引きが強い声質とミステリアスなルックスをもつヘイリー・ロレン(26歳)。
日本でのデビュー・アルバム前作『青い影』は<ベスト・ジャズ・ヴォーカル>アルバムに選ばれ、ソーシャルスターダムに駆け上がった話題騒然の歌姫です。
この秋は、新作『アフター・ダーク』のリリースに続き、初来日公演となる「ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2010」への出演を控える。才能のつぼみが一気に開花した感の強い彼女が、新作に込めた想いや自身のライフスタイルを、歌うように語ってくれました。

--- 新作『アフター・ダーク』をBGMにしていると、「この声、誰?」という反応がとても多いんです。耳をもっていかれる魅力的なアルバムですね。
ヘイリー・ロレン(以下HL) 嬉しいわ! 今回、明確なビジョンをもってレコーディングに臨めたことが大きいですね。長年信頼関係にあるワーキング・メンバーに加え、ゲストミュージシャン(チェロ/サックス/フルートetc)を迎えたことで、新しいアイディアがどんどん沸いてきたの。ハッピーモードに溢れ、風通しのいいアルバムに仕上がったと思います。
レコーディングの季節というのも、私には重要なファクターなのだけど、今回は夏だったので、自然とラテンビートやボサノヴァにも挑戦したくなって。私の中にある様々な感情やエナジー、意外な一面を表現できたという手ごたえがあります。
--- ジョニ・ミッチェルやスティーヴィー・ワンダー、ボサノヴァにシャンソン・・・・・・。カラフルなサウンド・コラージュを楽しめるのも本作の魅力です。選曲の基準は?
HL やはり、その曲を心底好きでなくては。そこから、メロディーラインと私の声の組み合わせを徹底的に分析するの。強調されたフレーズが、歌詞のストーリーラインとどうやったら効果的に絡み合えるかをいつも考えているわ。私の音楽の聴き方は、ちょっと半端なくて(笑)。曲が持つフィーリングみたいなものを拾うテクニックは、自然に身についたと思う。
--- 2年前、貴女が24歳の時にレコーディングした前作『THEY OUGHTA WRITE A SONG 邦題:青い影』は、見事、<ベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム>に選ばれました。現在26歳を迎えられて、大きく変化したことは?
HL 「経験値が人を育てる」「自信は人を自由にする」ということを、こんなにも強く実感した日々はないですね。私は15歳からライブパフォーマンスを続けていますが、特にこの2年間は、夏場は週4,5本、冬場は週2,3本という、今まで経験したことのないハイペースでライブをこなしてきました。自分の経験値が上がるにつれて、ステージ上でも「あ、もっと自由に表現していいんだ!」という独特の感覚を掴めるようになってきたんです。
何より、ここ数年で自分の音楽が海を渡り、こうして日本でも紹介されたことが最高に幸せ。歌うことがとにかく好きで、歌い続けてきたことを評価されるというグレイトな体験に心から感謝しています。
--- 独特の声質や天性のリズム感。どんな風に音楽と向き合い、音をキャッチしているのか知りたくなります。
HL 耳に全てを頼っています。私は正式な音楽教育を受けたわけでもなく、譜面も読めないんですね。もしかすると“perfect pitch=絶対音感”と関係するのかもしれないけれど、耳から入ってきた音や言葉の響きを、自分の中で昇華する方法が知らず知らずにできあがっているの。
唯一のトレーニングといえば、才能あるヴォーカリストの歌を何度も聴いて、自分の中でやき直すこと。最初は真似から入り、序々に自分のものにしていく。大好きなカントリー歌手パッツィー・クラインの物マネは得意よ(笑)。ナット・キング・コールは、男性ヴォーカリストだけど、彼のフレージングやトーンは、いつ聴いても発見があるわ。ティーンエージャーの頃はエタ・ジェームズやダイアナ・クラールに夢中に。実は、歌を始めた15歳の頃は、ダイアナ・クラールと同じくらい声域が低かった。何度も彼女の楽曲を聴いて、自分のバージョンにしようと練習を重ねたわ。
--- ソングライターとしての才能も高く評価されています。新作に収録されているオリジナル曲「サースティ」は、哀愁ボッサ系の名曲で、心に響きました。
HL ピアノの前に座った瞬間に、インスピレーションが降りてくる曲もあれば、何ヶ月も何年もかかって書ける曲もある。「サースティ」は後者タイプで、元々は17歳の時に書いた曲。今の曲想とは対照的なカラっとしたカントリー・ポップソングだったの(笑)。メロディーラインがしっくりこなくて、しばらくペンディングにしていたのだけど、今自分がパフォーマンスしているジャンルに当てはめられないかなと思って。旧い曲からやき直してできた新しいこの曲は、ラテンフレーヴァーでとても気に入ってるわ。
--- メロディーもそうですが、貴女の書く詩の世界観もリアリティがあって、女性にとっては共感ポイントが多くあります。
HL ありがとう!前作でのオリジナル曲も含め、全ての歌詞が個人的な経験からきているわけではないんですけど・・・・・・。 これは私の長所であり短所でもあるんですけど、ティーンエイジャーの頃から、同世代より上の人が好む音楽を聴き続けてきたせいか、自分がまだ体験してないことも言葉で表現するクセがついてるんですね。その後、実際に追体験をして歌詞が深まる場合も多いです。そのバランスをとっていくことは、今後の楽しい課題です(笑)。
--- 貴女のライフスタイルを知りたがっている日本のファンも多くいます。プライベートはどんな風に過ごしていますか?
HL 生活の中心に音楽があるので、常に頭のどこかで音楽のことを考えています。そうですね・・・・・・。私はアラスカ・シトカ島出身なので、自然豊かな場所に行くと一番自分らしくいられるかな。こう見えてハイクやキャンプ、カヤックなどアウトドアスポーツも大好き。料理もリフレッシュできるのでよくします。そうそう、先月プロモーション来日した際、食事が美味しくて感動しました。普段はベジタリアンなのだけど、日本ではフレッシュなお魚をいっぱい食べました(笑)。
基本、シンプルな生活が好きですね。パーティーとかはあまり得意じゃないかも(笑)。 ショービジネスの世界にいるので、プライベートでは、気のおけない友人や家族とごくごく普通の生活を大切にしています。
--- ちなみに、ご家族やご友人たちからは、貴女はどんなタイプと言われますか?
HL “イージー・ゴーイング”とよく言われるわ(笑)。フフ、冗談やバカげたことを言うのが好きなので。その反面、音楽という自分のクリエイティブな表現に関してはストイックなまでに追求するので、センシティブ過ぎると指摘されることもあるわ。自分のプロジェクトに関しては、納得がいくまで長い時間をかけるので、ある意味完璧主義者。でも、ミュージシャンというストーリーテラー的観点からいえば、センシティブであることは、むしろイイことだと思うの。経験していないことも感じとることができるから。
--- お話をうかがっていると、“ブレない基軸”のようなものを感じます。
HL 今何をするべきか、何が不足しているのか、ということが客観的に見れるようになってからは、方向性がブレなくなりました。なぜそんなことができるのか?というと、私の場合、歌うことで自分の中に沸いてくる感情を全て出し切ることができているので、自然と心が浄化されて、フラットでいられるんですね。
歌うことは、私にとってカタルシス的な、ある種セラピーのような効用をもたらしてくれるんです。
--- さて、来月11月には、ファン待望、初の来日公演(ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2010への出演)が行われますね!
HL 今から楽しみでライブのイメージを思い描いてます。新作『アフター・ダーク』からの楽曲を中心に、もちろん過去の曲も織り交ぜて・・・・・・。新しいものと旧いものとが折衷した、カラフルな音楽世界になりそう。それから、私の性格上欠かせないのは、ステージ上でのサプライズ(笑)。意外な選曲や演出もお楽しみに!
--- 最後に、日本のファンへのメッセージもお願いします。
HL ファンの方々のサポートがなければ、私はこうして大好きな音楽活動は続けられていない。ものすごく大切な存在で「感謝」の一言に尽きます。今回の公演では、一人でも多くのファンにお会いして、私の音楽を皆さんと分かち合いたいです。
11月に逢いましょう! >>fin

Profile

  • ヘイリー・ロレン

アラスカで生まれ、幼年期にジャズ・シンガーのエッタ・ジョーンズ、ナット・キング・コール、エラ・フィッツジェラルドやカントリー歌手のパッツィー・クラインを好んで聴き、10歳の頃にアラスカの<シトカ・ファイン・アーツ・キャンプ>で歌い喝采を浴びる。多くの少女がポップ・ミュージックに傾倒する11-12歳頃にダイアナ・クラールに深く影響を受ける。13歳の頃にアラスカをからオレゴンに移り、ポップ・ミュージックのアーティストを聴く様になり、シンガー・ソング・ライターのサラ・マクラクラン、アニー・レノックスに影響を受け、旧いジャズの魅力と新しいポップ要素を取り入れた彼女のオリジナル・スタイルの基となる。15歳でプロとして歌い始め、16歳の頃からビルボード・インターナショナル・ジョンレノン・ソング・ライティングなど様々な作曲賞を受賞する。2006年、21歳の時でオリジナル・ソングを纏めたデビュー・アルバムを発表。2008年に発表した『THEY OUGHTA WRITE A SONG 邦題:青い影』が<Just Plain Folks Music Awards 2009>に於いて163カ国から発表された42,000タイトルのインディペント・アルバムの中から<ベスト・ヴォーカル・ジャズ・アルバム>に選ばれる。第6回ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2010(11月1日山野楽器JAM SPOT)出演。

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