HMVインタビュー:Faith Evans

2010年10月15日 (金)

interview

Faith Evans

1995年に発表されたデビュー・アルバム『Faith』がいきなりのミリオン・ヒットとなり、並居る女性R&Bシーンの中で一気にその頂点に立ったクィーン・オブ・R&B“フェイス・エヴァンス”が、実に5年ぶりの新作を発表。 アーティストとして、シンガーとしてこだわりを持ちながら活動を続ける彼女に注目のインタビュー。

質問・文  二木崇(D-ST.ENT)
通訳  林美和

キャピトルでの日々は、BiggieやPuffの助けがなくても、自分の力で自分の作品をプロデュースして、自分がやりたいことをちゃんと形にして、間違いないものを作って、ファンを満足させることができるアーティストだっていうことを作品を通して証明できたから素晴らしい体験だったわ。

--- Prolific Music Group(Faith Evansが設立したレーベル)について教えてください。

まず、このProlific Musicの今のところの主要な目的としては自分の音楽をリリースすることで、そのためにこのレーベルを作ったの。そして最終的には...今回のアルバムがきちんと成功を収めて、このレーベルがちゃんと落ち着いてきて地に足をつけた活動をできるようになったら、他のアーティストにも門戸を広げていきたいと思ってるわ。新しいアーティストや作曲家、プロデューサーといった人たちにね。そして私自身もまた新しい本を出す準備をしてるわ。私はつねに新しいことに挑戦していたいのよ。アーティストという肩書だけではなく、アーティスト/作家とかって形でいろんなことにね。

--- キャピトル時代を振り返ってどうですか?

キャピトルでの日々は私にとって素晴らしい経験だったと思うわ。 自分のキャリア的な部分で...自分がアーティストとしてまだちゃんと素晴らしい作品を作れるんだっていうことを証明できたっていう意味でも、すごくよかったと思ってる。 つまり、BiggieやPuffの助けがなくても、まぁ、それは彼らが私の人生においてどれほどの存在かっていうこととはまた別の話なんだけれど、 自分の力で自分の作品をプロデュースして、自分がやりたいことをちゃんと形にして、間違いないものを作ってファンを満足させることができるアーティストだっていうことを作品を通して証明できたからね。私のようなアーバン・ミュージックのジャンルのアーティストと契約するということは、キャピトルにとって多分それまでなかったことだと思うんだけどね。でもキャピトルでの経験は私にとって意味のあることだったの。だから決して後悔することはないと思うわ。そしてキャピトルを離れることになった時も...単に、もうそこは私の居場所じゃないって気づいたってだけなのよ。

キャピトルは買収されてしまって、全く新しい経営陣に取って代わられていたのよね。私が契約したときのスタッフ、彼らが私のキャピトルでのキャリアをサポートしてくれてきたんだけど、そういったスタッフはすべていなくなってしまったのよ。でも、結局はタイミングの問題だったと思ってるわ。いろんな変化があの会社でも起こって...今は当時よりも状況はいいかもしれないしね。でも少なくとも当時はポップスやカタログ偏重なシフトになっていたのよね。でも細かい話でいうと、自分のカタログの権利は取り戻せたし(←キャピトル時代の作品の版権を今自分が持っているという意味かと?)、キャピトルと契約して、その前のBad Boyとのいろんな状況から抜け出すこともできたしね。そういう意味でも私にとってはいいことだったと思ってるわ。

--- また、クリスマス・アルバム以降は、どんな制作プランがあったのですか?可能な限り、そのブランクの間の出来事について語ってください。

あのクリスマス・アルバムのあとにキャピトル側としてはもう一枚アルバムをリリースしてほしいと思ってたの。でもいろんな状況を考慮して私は決断をしなくちゃいけなかった...つまり、例えばそのころ私にはもう一人子供が生まれて、自分の人生をすべて音楽活動に捧げることができる状況でもなかったっていうのもあるし...あとはやっぱりキャピトルにいるスタッフが全然知らない人に代わってしまっていたっていうのもあったのね。だから、私は様子を見ることにしたの。とりあえず待ってみたのよ。そしたらレーベルを去っていいよって話になったわけ(笑)。それこそ、もっとお金を積むからとかってことなら別な話になってたかもしれないけどね(笑)。まぁでも結局は約7カ月待って、そしたらすべてが解決したってわけね。 4人目の子供を産んだ後は『A Memoir』という自伝本を書いて出版したわ。2008年に出したの。それからいろんなTV番組の仕事もしたわね。そしてここ1年半くらいのあいだは、新しいアルバムの制作にフォーカスしてたわ。

--- これまでの5枚のアルバムについて、今の心境で一言づつコメントして下さい。

『Faith』
このアルバムは、自分としてはまだ全然クラシックな作品とは思ってなくて。だから「このアルバムを聴いて育ちました」なんて言われると「あなた一体いくつよ?」ってなっちゃうんだけど(笑)。この作品は当時のサウンドがいっぱいつまったアルバム。特にMary J. BligeやBad Boyサウンドとかっていったサウンドね。このジェネレーションのサウンドが詰まってる。だからそういったサウンドがシーンに登場した時のことをこのアルバムを聴けば思い出せるような作品になってるわね。個人的にもそういうパワフルな音楽的歴史の一部に自分が存在できたってことはすごくうれしく思ってるわ。今でも自分でときどきこのアルバムを聴いたりするんだけど、自分の声を聴くと「あぁ!喉に玉子がつまってるみたいな声!」って思うんだけどね(苦笑)。

『Keep the Faith』
このアルバムも素晴らしいアルバムね。素晴らしいシングルがいっぱい入ったアルバムで、シングルのチョイスもよかった。ちょうどこのころToddと出会って、最終的には彼と結婚することになるんだけどね。このアルバムを作った時はすごく大変だったんだけど、でも結果的にグラミーにもノミネートされたしね。すごくいいシングルが入ったいいアルバムだと思うわ。自分にとって大事なアルバムよ。

『Faithfully』
このアルバムは本当にすごくいいアルバムよ。精神的にも肉体的にもすごく油が乗ってる状態で作れた作品ね。今までよりもさらに私らしい作品になったと思うわ。そしてアルバムが完成してリリースされた時には、きっとすべてがうまく動いていくと思ってたの。売上的にも成功して、グラミーにもノミネートされて...ってね。でも実際には、ちょうどそのころシーンが変換点を迎えていたんだと思うのよね。今振り返って考えればね。で、その結果、今後このレーベルでやっていくのかそれとも別のレーベルに行くのかっていうことも考えだして、まぁ結果的にはキャピトルを去ることになるんだけどね。でも、このアルバム自体は本当に素晴らしいアルバムだと思ってる。レコーディングはマイアミでやったんだけど、アルバムの制作も本当に楽しかったしね。

『The First Lady』
このアルバムを作った時もすごくいい状態で。さっきも言ったように、自分の力で作品を作り上げられるっていうことを証明できた作品ね。自分自身のコネクションを使って、今まで自分が一緒に仕事をしてきた人たちや、ずっと一緒にやりたかった人たちとともに作ることのできたアルバム。Bad Boyを離れても、自分の足で立ってやっていけるって証明できた作品ね。

『A Faithful Christmas』
私自身クリスマスが毎年来るのがすごくうれしい人で(笑)、だからこのアルバムを作れて本当によかったと思ってるの。自分自身すごく好きなアルバムよ。5年後のクリスマスにもこのアルバムがまだ入手できる状態で、クリスマス用にってことでみんなに買ってもらえてると嬉しいわね。

--- 自伝『Keep The Faith』についてもコメントしてください。

基本的には私の人生について書いた本で、私の自伝ね。私の人生に起こったいろいろなことの詳細について語ってるわ。いろいろと誤解されてることもあったりするけど、そういう部分も自分の言葉で本当のところを語ってる。そして、みんなにFaith Evansはまだちゃんと活動してて、まだちゃんと音楽を作ってるし、その音楽で自分の足跡を残そうとしてるっていうことを伝えてる本よ。少なくとも、この本は自分の子供たちにとっては素晴らしい遺産になったと思ってるわ。 評判もすごくよくて、この本はAfrican American Literary Awardから2009年のBest Biography/Memoirを受賞したのよ。

--- 新曲「Way You Move」は、聴いた瞬間フェイス・エヴァンスとわかる独特の優雅さを持った1曲で、それだけに「待ってました!」という貴女のファンの喜びの声が多かったと思うのですが、自分でも手応えはありましたか?

ありがとう。あのシングルはいわゆるバズ・シングルで、正式な1stシングルはこれからリリースするの。もうすぐ出るわ。来週出るのよ。もともとはあのシングル(「Way You Move」)を1stシングルとしてリリースする予定だったんだけど、アルバム発売するまでにできるだけ勢いをつけたいっていう思いがあったのよね。だからまず一曲出して、バズを起して、そして次のシングルをさらに出すことにしたの。次のシングルは「Gone Already」っていう曲でバラードよ。これが正式な1stシングルになるわ。PVもすぐに撮影する予定なの。 アルバムの出来に関してはすごく満足いってるわ。だからどういう反応が返ってくるか、すごく楽しみにしてる。

--- また、スヌープとの共演はいかがでしたか?今もLAに住んでいるんですよね?

うまくいったわよ。スヌープは私の前のアルバムの曲を1曲リミックスしてくれたのよね。それからトリビュートでやった「We Are the World」の撮影のときにもスヌープに会ったの。で、そのときに今アルバムを作ってるんだけどって彼に打診してみたら、喜んで(参加する)って言ってくれたの。いっしょにやれてホントによかったわ。LAには今も住んでるわ。もう6年も住んでるわね。