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【対談】中島ノブユキ×畠山美由紀 pt.3

Tuesday, October 5th 2010

interview

それにこだわりすぎると失っちゃうモノもある気がして



-- ご自身のソロ作品と、サントラやプロデュース作品などとの明確な境界線みたいなモノはありますか?

中島 ん〜、難しい質問ですね。どっちとも言えないんだよなぁ…。違うとも言えるし繋がってるとも言えるし。さっきも話に出た『人間失格』で作ろうと思ってた曲が今回の作品に入ったりとか、っていうこともあるし、その「忘れかけた面影」となった曲を『人間失格』の時に完成させていたら、また別のモノになっただろし。 そういうことを考えると、繋がっているようでいてどっかで自分の中で線を引いている、ってことはあるのかもしれないですね。
あとは細かいことで言うと、曲間とか曲順までを頭の中でイメージしながらの作業っていうのがソロアルバムでは出来るから、その辺の微妙な判断っていうのは、作品に影響してるかもしれない。

-- 今回のアルバムで、その曲順などでこだわった部分というのはありますか?

中島 これがね、今言ったことと矛盾しちゃうんだけど、制作中は自分の頭の中では曲順まで含めて考えてる、っていうことは確かにあるんだけど、マスタリングの時、曲順を確定する時には意外と無頓着。 意外と人の意見で「お、それイイね」って言うことがよくある。

畠山 なんかイイですね。その作品が関わった人全員のモノになっている、とも言えるというか。

中島 結構その辺の考え方って、映画監督に近いかもね。スタンリー・キューブリックとかでさえ自分の作品を一般公開する前に、スニーク・プレビューだっけ?ゲリラ的に上映して、その時のお客さんの反応で「あの部分を切ろう」とか判断して再編集したりする、っていう。そういうのを知ってから「ああ、そういうのもアリなんだな」と思いだしたの。何でもかんでも自分の思ったとおりのカタチにするのは、必ずしもその作品を幸せにはしない、っていうか。
『エテパルマ』の時だったかな?ラフ・ミックスの段階でアシスタントの人が入れてくれた曲順がかなり最終的な曲順に反映されてたりとか、曲をタイトルのアルファベット順でならべてみるとかね、試しに。

-- それはもう完全に偶然ですね。

中島 そうそう偶然。感情的な影響や作為が一切ない、思いもかけない曲の並びの中に発見があって。

畠山 生真面目に考えるとさ、そんなことしちゃいけないんじゃないかって思いがちだけど、 そういう偶然性っていうのは、“何か大きなところ”からのメッセージなんじゃない?とも思うよね。

-- 今回のアルバムでは、畠山さんとの曲が一番最後になっていますが。

中島 実は自分の中では、この曲が最後に入るのは途中まで「ん〜?」と思ってたの。 4曲目ぐらいにくるのもアリかな〜なんて言ってたんだけど、スタッフから「最後に入れるのが絶対いい!」という主張があって。

畠山 私も意外だったな〜。

中島 映画で言えばタイトルバックみたいな、全てを受け止める世界観というか。でも結果的にそういう感じが出てうまく行ったと思っている。

-- ちなみに、アルバム冒頭の「Overture」はレコーディングの一番最後に録音されたそうですね。

中島 そうそう。大体いつもそうなんですよ。レコーディング中は限られた時間の中でやってるから、 自分のピアノソロの録音って最後になっちゃうんだよね、どうしても。しわ寄せががね、最後に来る(笑)。

-- 全てやり終えて、出し切って最後に来るモノが詰め込めれている、と。

中島 そうなんですよね、まさに。

-- 今回のアルバムに収まりきらなかった曲とかもありました?

中島 選曲している段階で外れたモノが結構あるんだよね。ドビュッシーの「夢」っていう曲があって、この曲をアレンジし直して入れるっていうのが1番最初のアイデアの1つだったのね。で、その曲を中心にしてアルバムの出来上がりを考えていたんだけど、段々その他の曲が決まっていくと、この「夢」がどこにも入らなくなってしまって。
だからさっきの話の続きになるかもしれないけど、「これを入れよう」とか「これをこうしよう」とか… もちろん最初にはそういう気持ちがなければ作れないと思うんだけど、それにこだわりすぎると失っちゃうモノもある気がして。

-- 「忘れかけた面影」とちょうど逆の立場になりますね。

畠山 絶対変わっていくよね。歌詞書いててもそう思うなぁ。考えてくうちに「あれっ?全然違うところに来てしまったな」みたいな。留まれないよね、同じモノとして留まれないと思う。

中島 選曲の話だと今回入ってる「In A Mist」っていう曲は、『人間失格』を作ってる時、舞台が戦前のお話だったので、そのぐらいの時代の音楽をあらためていろいろ聴いてたんだけど、その中の1曲だったのね。 この曲を初めて聴いたのはライ・クーダの『ジャズ』ってアルバム。
「シーベック・シーモア」って曲は、高田漣君のサポートをやった時に演奏していたんだけど、 その曲があまりにも良くて漣君に「次のアルバムに入れさせてくれない?」って言って。

-- 畠山さんはそういった曲はありますか?

畠山 あると思うけど、今ぱっと出てこないなぁ〜。

中島 「Estate(夏のうた)」とかそうじゃない?ジョアンが歌った。

畠山 「Estate」ね。それは何で知ったんだろう…?

中島 あれは僕が、ほら…(笑)。

畠山 ああそうだ!完全に忘れてた(笑)。中島さんのおうちに遊びに行った時に「愛してやまない曲があるんだよね」って言って教えてくれたのがその曲だ(笑)。
でもホント、膨大な数の名曲が世の中にはあるじゃない?だから大事ですよ、めぐり合うか合わないかっていうのは。

中島 大事大事。

畠山 鳥取にLiveで呼んで下さった方がCDのセレクトショップをやっていて、そこでヴィニシウスとトッキーニョのアルバムを知ったんだけど、もうめちゃめちゃ素晴らしくて。ホテルの部屋で号泣しながら聴いて(笑)。そしたらさ、不思議なことに曲が浮かんできてね。

中島 パクった(笑)?

畠山 違うよー(笑)!パクってなーい(笑)。でも一瞬「あれ?この曲もしかしたらあのCDの中の曲に似てるのかな?」と思ったけど全然似てなかった(笑)。

中島 良かったね〜(笑)。でも触発されてっていうのはあるね。

-- (笑)。では最後にお聞きしたいのですが、例えば今後お2人で作品を作るとして、どのような作品を作りたいですか?

中島 そうですね、今回やれなかった曲たちを音にしてみたい…ような気持ちはありますね。

畠山 あと、中島さんオーケストラのアレンジも素晴らしいから、そういう試みもイイなぁ。

中島 おぉ、畠山美由紀 with オーケストラ!それやりたいね!

-- それは是非聴きたいですね!では次回作はオーケストラということで。

畠山 言うと結構実現するからね(笑)。

中島 言っとこう!じゃあ、そこ字を大きくしといて下さい(笑)。

-- わかりました(笑)。それでは、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします!

中島 そうですね、『メランコリア』って“憂鬱”とか“鬱”ってニュアンスがあるんだけど、 アルバム全体がそういう世界観に支配されてるわけでは決してなくて、アルバムの頭から最後まで 1つの流れのある作品に出来上がったなと思ってますので、ある種の充実感を聴きとっていただけたら幸せだな、と思います。

畠山 私はどちらかっていうとリスナーの方に近いのかもしれないけど、私が感じたのは、 主に自分の過去の出来事に対する見方とか感じ方が、この作品によって変わったような気がして。 自分の人生がより意義のあるモノになる…、愛しくなる、そういう力がある作品だと思います。

中島 なるほど〜。もっと言って(笑)。



新譜 中島ノブユキ 『メランコリア』
1st『エテパルマ 〜夏の印象〜』(06) 、2nd『パッサカイユ』(07)の2枚のソロ・アルバムや、幾多のアーティストに提供してきたアレンジ・ワークスで、幅広いファン層はもとより音楽関係者からも高い評価を獲得。映画《人間失格》の音楽を担当した事で、更にその動向に注目が集まるピアニスト / 作編曲家、中島ノブユキの待望の3rdアルバム。多岐にわたる音楽的造詣に根ざしたオリジナル楽曲に加え、クラシック、ボサノヴァ、アイリッシュ・トラッド、オールド・スタイルなジャズなど、多彩な名曲の数々を独自の視点で取り上げ、彼の音楽に共鳴する豪華なゲスト陣(畠山美由紀、伊藤ゴロー、高田漣、北村聡など)と共に、エレガントなアレンジメントとアンサンブルにより、情感溢れる美しい世界を描き出している。






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     中島ノブユキ / メランコリア
    2010年10月06日発売

    1st『エテパルマ 〜夏の印象〜』(06) 、2nd『パッサカイユ』(07)の2枚のソロ・アルバムや、幾多のアーティストに提供してきたアレンジ・ワークスで、幅広いファン層はもとより音楽関係者からも高い評価を獲得。映画《人間失格》の音楽を担当した事で、更にその動向に注目が集まるピアニスト / 作編曲家、中島ノブユキの待望の3rdアルバム。多岐にわたる音楽的造詣に根ざしたオリジナル楽曲に加え、クラシック、ボサノヴァ、アイリッシュ・トラッド、オールド・スタイルなジャズなど、多彩な名曲の数々を独自の視点で取り上げ、彼の音楽に共鳴する豪華なゲスト陣(畠山美由紀、伊藤ゴロー、高田漣、北村聡など)と共に、エレガントなアレンジメントとアンサンブルにより、情感溢れる美しい世界を描き出している。
profile



中島ノブユキ [Nobuyuki Nakajima]

東京とパリで作曲法 / 管弦楽法を学ぶ。ピアニストとしては勿論の事、時に作・編曲家として多種多様な音楽的造詣に根ざしたエレガントかつスリリングなアンサンブルを構築。菊地成孔 諸作品に作/編曲、ゴンチチ、高木正勝、畠山美由紀、沖仁らの作品に編曲等で携わる。ソロアルバムとしては『エテパルマ〜夏の印象〜』(06)『パッサカイユ』(07)をEWEより発表。また2010年2月公開の映画「人間失格」の音楽を担当した。2010年8月にはタップダンサー熊谷和徳氏と東京フィルハーモニー交響楽団が共演する「REVOLUCION」へ音楽監修/編曲/ピアニストとして参加。また3年振りにして3作目のソロアルバムとなる『メランコリア』を10月6日、SPIRAL RECORDSよりリリース。

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畠山美由紀 [Miyuki Hatakeyama]

“Port of Notes”や “Double Famous”のヴォーカリストとして活躍する中、’01年、シングル「輝く月が照らす夜」でソロ・デビュー。唯一無二の透明感溢れる歌声と圧倒的な存在感は、音楽シーンの中で確固たる地位を築いている。ヴォーカリストとして、他アーティストの作品、トリビュート・アルバム、映画音楽等の参加や、ジャズアルバムの選曲も行う。‘09年、長澤まさみ主演映画「群青 青が沈んだ海の色」にて、主題歌を担当。同年6月、初のソロ・ベスト・アルバム『CHRONICLE 2001-2009』(主題歌「星が咲いたよ」収録)を発売。その後、Port of Notesの活動を本格始動。11月には、全曲NY録音、ジェシー・ハリスプロデュースによる約5年振りのオリジナル・アルバム『Luminous Halo 〜燦然と輝く光彩〜』を発売し、全国ツアーを開催する。‘10年は、畠山美由紀、Port of Notesのライブを、全国各地にてゆるやかに遂行中。





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