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片倉真由子新作でさらなる飛躍!

2010年9月24日 (金)


片倉真由子

 
FAITH
 
 片倉真由子 / Faith
 M&I  MYCJ30578 2010年9月29日発売予定
 
 2006年に「セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション」に出場し、日本人ピアニストとしては初のセミ・ファイナリストに選ばれ、鳴り物入りで2009年にアルバム『インスピレーション』でデビュー。スイングジャーナル・ジャズ・ディスク大賞の「ニュースター賞」を受賞。その実力はすぐに浸透。また、今年2010年3月に行われたブランフォード・マルサリスの来日公演では、小曽根真とともに客演を果たすという今最も忙しいピアニストのひとりとなった片倉真由子。そんな彼女の1年ぶりとなる2ndリーダー・アルバムが登場。ベースにロドニー・ウィテカー、ドラムにカール・アレンを迎え、モンクの「リフレクションズ」、リー・コニッツの「サブコンシャス・リー」他、エリック・ドルフィー、ハロルド・アーレン、サド・ジョーンズの楽曲に加え5曲のオリジナルも収録。


「Faith」 収録曲

01. Mrs. Parker Of KC ミセス・パーカー・オブ KC -Jaki Byard-
02. Blue Sonny ブルー・ソニー -Mayuko Katakura-
03. Anywhere But Here エニホェア・バット・ヒア -Mayuko Katakura-
04. Monk's Walking モンクス・ウォーキング -Mayuko Katakura-
05. I've Got The World On A String アイヴ・ゴット・ザ・ワールド・オン・ア・ストリング -H.Arlen,T.Koehler-
06. Subconscious Lee サブコンシャス・リー -Lee Konitz-
07. Yours And Mine ユアーズ・アンド・マイン -Thad Jones-
08. Dancer's Melancholy ダンサーズ・メランコリー -Mayuko Katakura-
09. Reflections リフレクションズ -Thelonious Monk-
10. Two Roads トゥー・ローズ -Mayuko Katakura-



片倉真由子piano
ロドニー・ウィテカーbass
カール・アレンdrums


2010年、”2年目のジンクス” とは無縁だった

 「セロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティション」。 セロニアス・モンクの従兄弟アート・モンクを代表とした非営利のジャズ教育・振興団体「セロニアス・モンク・インスティテュート・オブ・ジャズ」が主催し、1987年から多くの優秀なジャズ・アーティストを世に輩出している、所謂若手の「登竜門」とも言える世界的権威のあるコンペだ。2005年の同コンペ「作曲部門(セロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンポーザーズ・コンペティション)」では、東洋人としてまた女性として初めてピアニストの守屋純子がその栄冠に輝いていることはご存知のところであるだろう。

 そんな由緒あるコンクールで、2006年日本人初のセミ・ファイナリスト進出という偉業を成し遂げたピアニスト、片倉真由子。ちなみにこのコンクールは、毎年「対象楽器」が異なり、ピアノは6〜7年に一度。つまり「世界中の7年分のジャズ・ピアニストたちの頂点」に座ろうか、という快挙だったのだ。また、同年には「メアリー・ルー・ウィリアムス・ジャズ・コンペティション」で優勝も果たしている。諸々の輝かしい経歴を引っさげて ”ドライチ” でメジャー・レコード・ディールを交わし、満を持してのデビューとなったのが、2009年の記念すべき初リーダー・アルバム『インスピレーション』だった。  


片倉真由子
 冒頭、マッコイ・タイナーに捧げるオリジナル曲「Blues For Tyner」で、そのドライブ感溢れるピアノ演奏、抜群の感性を誇るアドリブ、タイナー節を昇華したリフとメロディの構成力に顕著な類稀なる作曲能力に圧倒されたジャズ・ファンは多かったのではないだろうか? マイルス・デイヴィス「No Blues」セロニアス・モンク「Ruby, My Dear」といったレパートリーに交え、緩急自在にスイングするオリジナル曲を、ジュリアード大の先輩・中村恭士(b)、師・カール・アレン(ds)とのトリオ編成で快活に届けてくれた『インスピレーション』。たちまち女流若手ピアニストの新ミューズとして、数々の話題をふりまき、スイングジャーナル・ジャズ・ディスク大賞の「ニュースター賞」を獲得するなど、 ”下馬評どおり” の華々しい活躍を見せてくれた。

 そして、その活躍が ”フロックか否か”、あらためてその真価が問われるメジャー2年目の今年2010年、片倉真由子は、前年から自身の活動と並行していた多田誠司率いるthe MOSTとの初レコーディングに挑んだ。この8月にリリースされたニュー・アルバム『Luminescence』。この中で「B's Dance」という美しくも幻想的なオリジナル曲を早速書き上げ、前任ピアニスト石井彰に負けず劣らずの特異な存在感をアピールしている。さらに、今年3月にはブランフォード・マルサリス・カルテットのBlue Note Tokyo来日公演で急遽「トラ」を務める(レギュラー・ピアニストのジョーイ・カルデラッツォの来日が遅れたため)というハプニングも。15分しかリハーサルを行うことが出来なかったそうだが、スタンダード・ナンバーを交えながら、ブランフォードのオリジナル曲にもしっかり食らいついてきた姿には、観客一同感嘆の声を隠せなかったとか。ほか、オランダの女性サックス奏者ティネカ・ポスマの来日ツアーの伴奏をはじめ、TOKU伊藤君子といったトップ・ヴォーカリストとの競演伴奏、市原ひかりとのデュオ・ライヴ、鈴木良雄(b)+セシル・モンロー(ds)とのピアノトリオ・ライヴなど、活動の裾野を広げながら、着実に、というよりむしろかなりの速度を持って成長し進化する姿をファンに見せてくれている。

 そうした2010年進化の過程を「ひとつの記録として残した」、そう言っても過言ではない2ndリーダー・アルバムが、この『Faith』だ。ベースにロドニー・ウィテカー、前作にも参加したドラムのカール・アレンという屈指のリズム・コンビを迎えたニューヨーク録音。ドルフィーの名演でもおなじみのジャッキー・バイアードの「Mrs. Parker Of KC」から、三者三様に凄みすら憶えるアドリブを展開。しなやかなスイングに身体を揺らしながら、バラードの「Blue Sonny」、そして、「Anywhere But Here」、「Monk's Walking」といったオリジナル曲に突入する。中・後者ともにタイプの異なる2曲だが、いずれも片倉の「男性的」とも評される力強く気風のいいタッチが、百戦錬磨の知的リズム隊を煽る煽る。リー・コニッツ「Subconscious Lee」もかなりイマジネイションに富んだプレイで天晴れ。一方で幽玄としたムードで哀愁を誘う「A Dancer's Melancholy」。こちらもオリジナルで、その繊細で儚げな旋律に心酔する。ほか、アレンジはもとより、サド・ジョーンズの「Yours And Mine」、セロニアス・モンク「Reflections」といった選曲そのものにもセンスを感じさせる。才能以下、情熱・感性・知性すべてのスピリットとエネルギーが迸っている、まさに快作。 ”2年目のジンクス”というような謂わば凡百向けの戯言とは、まったく無縁だったということ。

 「Faith」。「信頼」「信用」「信念」「信仰」あるいは「確信」といった意味を持つこのタイトルに込められた想いは、おそらく彼女のみが感じ得る至極内に根差したものであるはずと邪推はするが、少なくともそこには、前作発表以降現在までに至る、この1年間の活動でモノにした揺るぎない自信に満ちた響きがあるように思える。そして、まだまだ途方もない進化を遂げるであろうことを十二分に予感させるアルバムが届いたことを、まずはご報告したい。




片倉真由子 「Faith」 発売記念ライヴ


9月25日 (土) 片倉真由子トリオ @国分寺T's
          片倉真由子(p)/佐藤”ハチ”恭彦(b)/二本松義史(ds)

10月5日 (火) 片倉真由子トリオ @神保町Adirondack Cafe
          片倉真由子(p)/佐藤”ハチ”恭彦(b)/二本松義史(ds)

10月13日 (水) 片倉真由子トリオ @南青山Body & Soul
          片倉真由子(p)/佐藤”ハチ”恭彦(b)/二本松義史(ds)

11月18日 (木) 片倉真由子トリオ @六本木Alfie
          片倉真由子(p)/佐藤”ハチ”恭彦(b)/二本松義史(ds)

2011年
1月16日 (日) 片倉真由子トリオ @名古屋Jazz inn Lovely
          片倉真由子(p)/佐藤”ハチ”恭彦(b)/二本松義史(ds)

1月17日 (月) 片倉真由子トリオ @大坂Mr. Kelly's
          片倉真由子(p)/佐藤”ハチ”恭彦(b)/二本松義史(ds)

1月18日 (火) 片倉真由子トリオ @静岡Life Time
          片倉真由子(p)/佐藤”ハチ”恭彦(b)/二本松義史(ds)




 











 ボストンのバークリー音楽大学とNYのジュリアード音楽院卒のエリートにして、2006年メアリー・ルー・ウィリアムス・ジャズ・コンペティション優勝、同年セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション、ファイナリストに選出という輝かしい功績を持つピアニストが満を持してのがデビュー。パーソネル:片倉真由子(p)、中村恭士(b)、カール・アレン(ds) 




 1980年、宮城県仙台市出身。幼少よりクラシックピアノを始める。

 洗足学園短期大学入学と同時にジャズピアノに転向、ピアノを今泉正明氏に師事。同大学を首席で卒業後、2002年、Berklee College Of Musicより奨学金を受け、入学する。

 在学中より、ボストン市内のライブハウスで、Christian Scott、Dave Santoroらと演奏を重ねる。

 2004年、「piano achievement award」を受理し、卒業する。

 卒業後は、Dick Oatts、Jerry Bergonziらと演奏を重ね、また、2004年8月に行われた「Litchfield Jazz Festival」に、Dave Santoro trioのピアニストとして出演する。

  2005年9月、The Juilliard School入学。ピアノをKenny Barronに、アンサンブルをCarl Allen、Ben Wolfeに師事。

 在学中より、Hank Jones、Donald Harrison、Carl Allen、Ben Wolfe、Eddie Henderson、Victor Goines、Dominick Farrinacciらと共演する。

 2006年、「Mary Lou Williams Women In Jazz Piano Competition」で優勝し、翌年5月に、同ジャズ・フェスティバルに自己のトリオを率いて出演する。

 また、2006年9月に開催された「Thelonious Monk International Jazz Piano Competition」のセミ・ファイナリストに選ばれる。

 現在、東京都内を中心に活動中。