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ジャズ定盤入門 =第八回=

Friday, July 23rd 2010

  「またジョン・コルトレーンに志す」 〜 ジャズはジャズ屋
john coltrane

 紹介するからにはそれなりの責任がある。この連載の中で紹介したCDは必ず全部聴く、というのが私なりの仁義である。その仁義を貫き通すため、お題にするのは今回で三度目となるが、またコルトレーンに登場願った。いよいよ『至上の愛(A Love Supreme)』を聴いたのだ。

 『至上の愛』は、コルトレーンの記念碑的最高傑作との呼び声も高い64年の作品。ここでコルトレーンの言う「至上の愛」とは・・・「神」である。個人的には、もうこの時点で腰が引ける。

 どこで誰の逆鱗に触れるか分からないから「政治」や「宗教」の話は迂闊にしないことにしているし(似たような理由で、実は音楽の話もあまりしたくない)、そもそも他人が何を信奉しているかなどということには微塵も興味がない。しかし「背景」を理解しないと本質を理解できない作品に出くわす場合も少なくない。

 本気でパンクやロックの反骨を語るならその国の政治も知る必要がある。また、日本では普通に流行っているロック・バンドがアメリカでは「クリスチャン・ロック」というくくりにカテゴライズされていたりする場合も珍しくない。近年日本でもかなりメジャーになった「ゴスペル」に至っては、そもそもは教会音楽である。そういった作品の良さをそれぞれの背景も含めて理解できるのか?ともし問われれば、すみません、わかりません、と謝るしかないのが正直なところである。

 しかし、『至上の愛』は、すみませんでは済まされそうにない。収録されている4曲のタイトルは「承認」「決意」「追求」「賛美」・・・。どう考えても、迷える子羊が狭き門に至るまでを描いた一大コンセプト・アルバムである。私にわかるだろうか?

John Coltrane/A Love Supreme 正直に言って一度目に聴いたときはさっぱりわからず、日を置いて二度目に聴いたとき、やっと多少余裕を持って聴くことができた。1曲目の6分あたりに入る「ア、ラーヴスプリーム」という念仏のような声に違和感があるものの、1曲目と2曲目はまだわかりやすい。私にとって難関だったのは、3曲目の7分半あたりから曲の終わりまで3分間ほど続くボロンボロンというベースの音のみの部分で、ここで飽きて聴くのを止めてしまった。で、また日を置いていたら、原稿の締切日が来てしまったので再挑戦してみた。三度目の正直である。今回は3曲目の終盤部分も特に飽きることなく聴き終え、4曲目に突入。しかし、壮大なイントロ部分が延々と続くなぁ、と思いつつ辛抱して7分ほど聴いていたら、そのまま曲が終わってしまった・・・。結局良くわかっていないのである。

 おそらく、このアルバムを「コルトレーンの最高傑作」と評価する人にとっては、この3曲目と4曲目がキモなのであろうという気がする。何を見てもそんなことは書いてないので見当違いだったら恥ずかしいが、これはジャズ上級者向け、というか、コルトレーン上級者向けだろう。いつもおススメのアルバムを選んでくれるジャズ担当者が、あえて私に薦めなかった理由が良く判った。コルトレーンの歴史や作品を知り尽くせばきっと本質的な良さが分かるのだろうが、素人が手を出すにはハードルが高過ぎた。

 しかし、このままでは終われない。というか、実はまだ手元に2枚、未聴のコルトレーンのアルバムが残っている。『バラード』と『ジャイアント・ステップス』である。

John Coltrane/Ballads まずは『バラード』。今作も最高傑作に挙げられることの多い有名盤である。『至上の愛』から遡ること3年、61年の作品。『至上の愛』を聴いたあとだけに、かなりの覚悟をして聴くと・・・甘い。

 てっきり、また「神に捧げるバラード」かなんかを演っているのかと思ったら、いわゆるスタンダード・ナンバーをシンプルなアレンジで演奏した本当のラブ・バラード集だった。非常に聴きやすい。聴きやすいにもほどがある。オシャレですらある。普通の入門者にはコレをおススメすればまず間違いないだろう。

Jackie Mclean/Swing Swang Swingin Sonny Rollins/Saxophone Colossus ちなみに2曲目の「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」は以前聴いた『サキソフォン・コロッサス』でソニー・ロリンズも、また6曲目の「ホワッツ・ニュー」はこれも以前聴いた『スイング・スワング・スインギン』でジャッキー・マクリーンも、それぞれ演奏しているので、聴き比べてみるのも楽しい。

John Coltrane/Impressions そして3枚目に聴いたのが『ジャイアント・ステップス』。これはさらに遡って59年の作品。曲もいいし、ノリもよく、コルトレーンの速吹きも堪能できる。音楽理論やジャズの流れを知っていれば、さらにその意義深さが判る演奏が詰まったアルバムらしいが、難しいことが判らなくても十分聴き応えがある。今回聴いた3枚の中で、唯一ジャズ担当者が選んでくれたアルバムであり(あとの2枚は私が独断で聴いてみた)、結局、今回聴いた中では、このアルバムが一番(というか断然)好きであった。やはり専門家の意見には従っておいたほうがいい、というのが今回の教訓だ。餅は餅屋である。

 さて、連載開始時は4回くらいで終わらせようと思っていた「サックス編」だが、結局8回も続けてしまった。それでも、まだまだ紹介するべき定盤はゴマンとあるだろうと思うのだが、キリがないので一旦今回でひと区切りとし、次回からは別の楽器をテーマにさせていただくことにしたい。

 もし「もっといろんなサックス・プレイヤーを聴いてみたい」という方がいらっしゃれば、HMV ONLINEには「ジャズ・インデックス」という便利機能があり、「アルト・サックス」や「バリトン・サックス」など演奏楽器別でアーティスト検索ができるので、そちらも是非参考にしていただければと思う。また、もし1年くらい経ってもこの連載が続いているようであれば、またサックスをお題にしたいと思ってはいるので、くれぐれも期待せずにお待ちいただきたい。

「ジャズ定番入門」連載記事一覧

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JAZZ INDEX
* Point ratios listed below are the case
for Bronze / Gold / Platinum Stage.  

今回の主役の「定盤」

A Love Supreme

SHM-CD

A Love Supreme

John Coltrane

User Review :4 points (7 reviews) ★★★★☆

Price (tax incl.): ¥1,885
Member Price
(tax incl.): ¥1,735

Multi Buy Price
(tax incl.): ¥1,602

Release Date:22/June/2011

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こちらも「定盤」

Ballads

SHM-CD

Ballads

John Coltrane

User Review :4 points (19 reviews) ★★★★☆

Price (tax incl.): ¥1,885
Member Price
(tax incl.): ¥1,735

Release Date:22/June/2011

  • Deleted

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さらにこちらも「定盤」

Impressions

CD Import

Impressions

John Coltrane

User Review :5 points (3 reviews) ★★★★★

Price (tax incl.): ¥1,870
Member Price
(tax incl.): ¥1,627

Release Date:13/June/2008

  • Deleted

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聴き比べてみても面白い