Quiet Corner クワイエット・コーナー Vol.5

Quiet Corner クワイエット・コーナー

音楽の循環、再び古典の中へ

「新しい音楽はもはや生まれない」という言説を耳にするようになって久しいが、音楽は新生しなくとも幾度となく再生する。ふとした時に、エリザベス・ミッチェルの『Sunny Day』を聴き返しこんな言葉が思い浮かんだ。“子どものために”ということをテーマに童謡や伝統歌をカヴァーしたこの作品は、過去の音楽が現在・未来を通過して再び過去へと向かうような循環していく音楽の姿を鮮明に映し出している。ここでは時間軸を一直線上に捉えて、何が新しくて何が古いのかと気にかけるような感覚は皆無だ。そして、同じくローラ・ヴェイアーズのチルドレン・ソング集『Bumble Bee』からもタイムレスな響きを感じとれる。彼女たちは、小手先だけの新しさを追うのではなく、古典の中から未知のモチーフを探る作業を続けているのではないだろうか。つまり、同時代の音楽よりもエリザベス・コットンのような古典の中にこそ発見があるという姿勢である。このようなアティチュードは、何もフォークに限ったことではない。南北戦争時代の楽曲に焦点を当てたピアノ作品『All Will Prosper』を発表したゴールドムンドにも通低した感覚があると言えるだろう。そう考えると、大衆音楽の原風景を提示するレーベル、ミシシッピ・レコーズが熱心なマニアや優れたクリエイター達から熱い視線を浴びていることも頷ける。“古典”と“循環”が音楽を未来へと導くキーワードなのかもしれない。
文●清水久靖(Reconquista)

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