ヒンデミットのヴィオラ協奏曲「Der Schwanendreher」は、直訳すると「白鳥を回す人」となりますが、意訳されて「白鳥を焼く男」として知られています。しかしヒンデミットが楽譜冒頭に置いた文章では、「陽気な一座に加わった吟遊詩人が、異国から持ち帰った歌を披露する。真面目な歌もあればふざけた歌もあり、舞曲も含まれている。真の音楽家である彼は、メロディーを拡張して装飾し、前奏もつけて即興で演奏する。こうした中世の情景が、この作品の着想の源となった」といった意味のことが書かれていて、さらにヒンデミットが引用した、フランツ・ベーメの「ドイツ古謡集」(約660曲収録して1877年に出版)の説明文では、この曲は17世紀初頭頃の舞曲、あるいは一種の冗談歌であったとされているのです。
17世紀の絵などでは、羽をむしられた白鳥にそっくりのハーディガーディもよく見かけますし、ハーディガーディは白鳥の首のような部分を回して音を出す楽器なので、「白鳥を回す人」は、旅回りの一座に居たであろうハーディガーディ(ドイツ語でDrehleier)奏者のことを指していると考えるのが妥当でしょう。ちなみに古謡のテキストは以下のような内容です。
あなたは白鳥を回す人ではないのですか。
あなたはその人ではないのですか?
では、この白鳥を私のために回してください。
私はそう信じているのです。
あなたは私のために白鳥を回さないのですか?
あなたは白鳥を回す人ではないのですか?
私のために白鳥を回してください。
このテキストからは、楽師に向かって、早くハンドルを回して楽器の音を聴かせてくれとねだっている人の様子が伝わってくるように思えます。
ブックレット (英語、イタリア語・12ページ)には、音楽史と理論の教授で、オルガン奏者、チェンバロ奏者でもあるアルベルト・マンマレッラによる解説などが掲載。
詳細は商品ページをご覧ください。