【新創刊】双子の総合カルチャー誌『ニニフニ』編集長 山崎なし インタビュー

【新創刊】双子の総合カルチャー誌『ニニフニ』編集長 山崎なし インタビュー
「双子の総合カルチャー誌」と銘打たれた雑誌、『ニニフニ』が創刊された。有名雑誌休刊のニュースが定期的に届くような逆風の中にあって、「雑誌でおもしろいことはまだまだできる!」と豪語する山崎なし氏が編集長を務めるいままでにない雑誌だ。
『ニニフニ』の大きな特徴として、特殊製本によりふたつの冊子が繋がれている事があげられる。言葉では伝わりにくいかもしれないが、上部のイメージを見れば分かって頂けるだろう。たたんだ状態ではよく見かけるA4判の大きさながら、最大に展開すると横幅84cm、雑誌史上最大級の大判ビジュアルが現れる。上の真野恵里菜の写真も他誌ではあり得ないような、ポスター大のサイズで楽しめる。
創刊号のコンテンツは、表紙を飾る真野恵里菜のグラビア&インタビュー、町田康インタビュー、そして特集「ぼくの好きな音楽」では青葉市子、山本精一、見汐麻衣(埋火)、tofubeats、oono yuukiらがフィーチャーされている。それぞれ大判写真とロングインタビューで構成されており、丁寧にひとりの人間に迫った記事が読める。
『ニニフニ』には「双子の総合カルチャー誌」とももに「創造的自律都誌」というキャッチコピーがつけられている。この造語からなにを感じとるかは人それぞれだが、なにかピンときたあなたは一度手にとって見ることを強くおすすめする。最近雑誌を読んでいない、あるいはそもそも雑誌なんてほとんど買ったことがない、そんなあなたも試してみてはいかがだろうか。あなたが欲しい雑誌が、ここにあるかもしれない。
今回は『ニニフニ』の編集長、そしてデザイナーである山崎なしにいくつかの質問をぶつけてみた。この時代になぜ雑誌をつくろうと思ったのか? なぜこんな形をしているのか?『ニニフニ』でやろうとしていることとは?

--- ニニフニ創刊おめでとうございます!プレスリリースの一言目に「雑誌でおもしろいことはまだまだできる!」と言っているのが印象的でした。多くのカルチャー誌が休刊に追い込まれる現状の中、雑誌を創刊しようと思った理由を教えて下さい。

「多くのカルチャー誌が休刊に追い込まれる」のは、大きな体になりすぎたからだ。何万部も売らなきゃいけない広告まみれのマスな媒体としての雑誌はみんなも考えているようにじきに終わりがくるだろう。ただ個人・あるいは小さなグループで中規模の雑誌をつくろうと考えた場合、むしろ動きやすい状況になっていると思う。パソコンのソフトや印刷代も安くなっているし、情報も個人で発信しやすくなっている。あとなにしろ、「捏造されたシーン」のようなものにはみんな嫌気が差しているからね。「雑誌は死んだ」というのはあくまで「大きな儲けが出なくなった」「大きなシーンをつくることができなくなった」というような意味にすぎなくて、雑誌という媒体が持つ魅力がたとえばインターネットの登場やポストモダンの風潮の中で完全に失われたといかいう訳ではまったくない。だから逆風というよりはむしろ追い風だと思っている。
「小商い」という言葉も流行っているけれど小商い(1〜1千)とマス(2、3万〜)のあいだの、中規模なものがたくさん生まれてつながると、しなやかで暮らしやすい社会になるんじゃないかな。これは谷田浩さん(STOF)がインタビューの中で言っていることでもある。

--- 「ニニフニ」という雑誌のタイトルに含めた思いは?

「而二不二(ニニフニ)」というのは真言宗の言葉で、「而二」というのは1つのものを2つの面から見ること、「不二」とは2つの面があっても、その本質は1つであるということを意味している。仏教の大きなテーマのひとつに「我執を取り去る」ということがあって、たとえば紙には表と裏があるけれど、「表」と「裏」と区別しているのは自分のこだわり=勘違いにすぎないから、そんなものは捨ててしまうべきだ、というような意味だと思う。なにかと単純な二項対立に引きずり込まれてしまう昨今には有用な考え方だよ。ただこれは後付けみたいなもので、ニニフニという言葉の響きがかわいかったからというのと、2つの冊子がくっついて1つの雑誌になっているから、というのが理由といえば理由かな。ぼくは仏教徒ではないし、誌名でメッセージを打ち出そうとも思ってない。

--- 「ニニフニ」は双子の総合カルチャー誌。冊子がふたつに分かれた今までにない雑誌です。このようにした理由はなぜでしょう?

かっこよくて、あまり見たことがないから。6月生まれのふたご座だから。そして持ちにくくして、iPhoneを手放させたかったから。

--- “ふたつの冊子をつなげる”という発想に代表されるように、デザインと編集に偏執的なこだわりをもっていると思うのですが、いかがでしょう?

「創刊によせて」でも書いたけれど、「雑誌はデザイン」だと思う。デザインとは、単にテキストや写真のレイアウトのみをさすのではなくて、紙質や、雑誌の大きさももちろん含んでいる。内容だけではなく、そういうテクスチャーも絶対に物語の一部だし、そういうイメージの積み重ねが全体をつくっているんだよ。そうしてできた全体がモノとして、こちらの感情や姿勢を映し出してくれる。そんなものは本=雑誌しかない。だから「偏執的なこだわり」というけれど、「当然の配慮」くらいにしか思ってないかな。

--- 通常の雑誌の価値観では考えられない文字サイズや、背景写真と文字の関係。読み手に、明確に“読む”という意思を求める雑誌だと思うのですが、その辺りに対する山崎編集長の考え方を教えて下さい。

これは一部の“難解な”映画やデザイナーの松本弦人さんがつくったものから学んだことだけれど、いわゆる読みやすい=可読性の高いテキストのデザインが一番頭に入ってくるのかと言ったらもちろんそうじゃなくて、読者がテキストに対して前のめりになっているときがもっとも内容の本質に近づいている。それはなんのストレスもなく長文が読める「空気のような」デザインであることもあるけれど、可読性の低いデザインによって読者をそう導くこともできる。つまり、小さな声で話す人のほうが一生懸命聞いてもらえることも多いってことさ。アナウンサーとお笑い芸人と稲川淳二では話せる内容が違うよね? 書き言葉にも「話すテンポ」や「声質」があって、そしてそれはないがしろにされていることも多いけど、それを自由にデザインできるなんてこんな楽しいことはないよ。

--- 特集が「ぼくの好きな音楽」であるように、隅々まで山崎編集長の“好き”が染みていると思います。山崎編集長の“好き”のツボはどのようなところにありますか?

むきだしで、かつデザインされたもの。そしていままでに見たことがないようなもの。矛盾することのようだけど、奇跡的なバランスでそれを見せてくれる人がいるから、生きていられる。

--- 山崎編集長はwebフリーペーパー「メランコフ」の編集もされていると思いますが、違いはどのようなところにありますか?

「メランコフ」はA4サイズのPDFファイルがHPから無料でダウンロードできて、パソコンやiPhoneでそのまま読めるし、家庭用プリンタで印刷してホッチキスで綴じれば自分でフリーペーパーがつくれるというもの。「メランコフ」はMySpaceやSoundCloudみたいなもんで、webでフリー、好きなことが好きなときにできる。ただ、好きに読まれてしまうんだ。「前のめり」になってもらうのがとてもむずかしい。一方「ニニフニ」はLPレコードのフルアルバム。扱いもちょっとめんどくさいけど、まずお金を払うことも含め、読まれ方もある程度デザインできる。自由の質と量が違うかな。

--- 「ニニフニ」が、どのような人に、どのように読まれると嬉しいですか?

あまり考えたこともなかったけど……。多くの人に、フラットに読んでもらえたらいいかな。

--- 今後の「ニニフニ」について教えて下さい。

1年以内に2号目を出して、将来的には季刊で出していくよ。内容ももっと混沌としたものにしたい。それをあいかわらず散らかった部屋で、ほとんどひとりでつくっていくんだと思う。

--- 有難う御座いました。

なぜか外国人インタビュー翻訳みたいな口調でしゃべってしまいました。ありがとうございました。


山崎なし プロフィール

やまざき・なし。
1985年東京生まれ。独学の編集者、デザイナー、雑誌作家。ニニフニ、メランコフ編集長。ひとり出版社nasis主宰。
2010年4月、自分でつくるフリーペーパー「メランコフ」を創刊。A4サイズのPDFファイルをホームページから無料ダウンロード→デバイスでそのまま読むこともできる→プリントアウトして二つ折り、ホッチキスで綴じれば自分でフリーペーパーをつくることもできる、という新しい雑誌の形が話題に。現在8号まで配布中(+増刊2号)。
2013年8月に双子の総合カルチャー誌「ニニフニ」を創刊。企画・取材・編集・デザイン・仕上げ製本・営業まで大部分をひとりで行う。

 www.nini-funi.com
 www.melankov.com


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※ 特典は無くなり次第終了となります。ご購入前に必ず商品ページにて特典の有無をご確認下さい。
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※表示のポイント倍率は、ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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