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Review List of うーつん 

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     2022/02/11

     オルガン、チェンバロ、クラヴィコードを愉しみ、バッハの音楽の幅広さを感じられる3枚組だ。

      1枚目はオルガン。誰もが知る「トッカータ ニ短調 BWV565」から壮大かつ華麗に始まるのが心憎い。演奏は早めで、音を伸ばして引きずらずサクッと楽想や音を変化させていく。あまり大げさに響かせず明るくのびのびとしたオルガンと感じた。刺激的なトッカータBWV565から始まり、コラール前奏曲で歌い、トッカータとフーガBWV540の壮大なドラマで幕を閉じて聴き応えは十分。

      2枚目はチェンバロ。第5集の主要演目であるトッカータを中心に軽やかに弾き進んでいく。トッカータは今まであまり聴いてこなかったがこうしてまとまった量で聴くと楽想のきらびやかさと即興的技術の冴えが問われる作品なのだろうか。現代のジャズにも通じそうなスリルと愉しさを満喫できる。

      そして3枚目はクラヴィコード。アルバム全体として大きく壮麗な音からディスクを替えるたびにミニマムで室内楽的に落ち着いてくるのも面白い。クラヴィコードでの演奏をCDで聴くのは初めて。なるほどチェンバロとも違う音色と空気感が面白い。どことなく、チェンバロにリュートとツィンバロンのテイストを加えて3で割ったような朴訥な音色がするものと知ることができた。楽器の音はかなりこじんまりしているということだが、CDで聴いているので楽器のすぐ傍で聴かせてもらっているようなごく私的な室内楽を愉しむ感覚だ。セバスティアン・バッハも仕事が終わって自室でリュートやクラヴィコードなどを愉しんでいたのだろうか。

      一つだけ注文としてあげたいのは解説書の中身。せっかく初登場の楽器もあるのだからもう少し楽器の写真の撮り方や量を工夫してもらいたい。解説書にはクラヴィコードの鍵盤部分アップが数枚のみ。楽器全体が写ったものや演奏中の写真などがそろっていたらよかったのにと思った。このシリーズは様々な楽器を使い分けていくのでも画期的なのだからオルガンでもチェンバロでも収録場所全体が目で楽しめるような写真が入ってくれたら嬉しいです。

      挑戦的な作品、壮麗な作品、即興的な作品、ひとりでつま弾くような作品を楽器を替えつつ広く聴けるのでお薦めしたい。 

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     2022/01/30

     必聴かつ必読のディスクとしてお奨めしたい。
     作品の性格ゆえか人を寄せ付けないような厳しさをイメージして入手した。しかし、実際に聴いてみると音は温かく明晰で丸みもあり、少なくとも「隔絶の感」というイメージはない。判り易く言うと「聴きやすい」のだ。音列の変化と派生・発展が美しい調和をもって響きかけてくる気がするのだ。詳しい評価は耳の良い他の方々のレビューを待ちたいところ。おそらくこの作品に初めて取りかかる方にも聴き込んでいる方にもそれぞれ評価されるような演奏ではないだろうか。

      どうしても「フーガの技法」というとバッハ最晩年の作曲技法の極北と構えて作品に挑むパターンになるように思う。もちろん、それだけの覚悟をもって対峙しないと取り組めない作品なのだろう。ところが渡邊順生(と崎川晶子)両氏の手によって聴き応えと「聴く愉しみ」も兼ね備えたディスクに仕上がっていると思う。

      そして解説書のボリュームと質の高さがすばらしい。渡邊順生氏の丁寧な説明文は「買ってよかった」と思える充実した内容なので学ぶ価値の高いディスクとしても薦めていきたい。「初期稿(自筆稿)」と「印刷稿」別の聴く順番やCDトラックのプログラム指南まで添えてある位なのだ。どの順番で聴こうとその価値に違いが出るわけではない、むしろいろいろな聴き方をすることで作品へのアプローチも感想も増えてくることだろう。

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     2022/01/09

    幾分禁欲的で、カチッと硬めのチェンバロの音色(と私は感じた)が心地よい。 演奏ペースは中庸とゆったりの中間位だろうか。少なくとも聴いていてせわしなくなる感じはない。複雑なテクスチュアのうつろいを愉しむのにちょうどよい塩梅の演奏と思う。

     鈴木雅明によるパルティータやフランス組曲などの演奏は聴いていないが、当盤の曲目と楽器の相性は良いように感じた。今となっては指揮者・鈴木雅明の方が通りが良いが、やはり氏のチェンバロ(またはオルガン)演奏を聴くのもまた愉しい。チェンバロ演奏は今までも聴いてはきたものの、ここ最近、特にはまっておりこのディスクもことあるごとに聴かせてもらっている。

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     2022/01/09

    チェロを愛し、チェロに愛された音楽家・ビルスマの生の声が楽しく、分かりやすく入ってくる。打ち解けた間柄である聞き手(渡邊順生氏)との対談だからこそ率直な、そしてユーモアも交えた内容が引き出され、読む方も自然に惹きこまれるかのようだ。音楽の書(でもあるわけだが)としてよりも豊かな人生を歩いた音楽家の道のりを振り返る書として読む方が適切なのかもしれない。

      ビルスマのディスクで私が好きなのはブラームスのソナタ、六重奏曲、シューベルトのピアノ・トリオ、アルペジオーネ・ソナタ&「ます」五重奏曲にバッハの無伴奏とボッケリーニの五重奏曲など。聴いていて目(耳?)が覚めるような鮮烈さと同時にホッとできるようなあたたかさも持ち合わせているのが特徴かな…と考えていた。実際にこの本を読んでみて「演奏がその人となりを表しているのだ」と納得することができた。特にボッケリーニについては昔、なんの前情報もなく購入し時々日曜日などに聴くことがあった。曲自体は音楽の山も谷もないが、だからこそ心に穏やかに入ってくるような気がしたものだ。ようするに、聴いていて「ほっこり」できるのだ。本書を読んでみてボッケリーニへの愛情を知り、「このような演奏家だからこのディスクでほっこりできるのか」と思ったこと(「ほっこり聴けた」ことが氏の理想かどうかは定かではないが…)も書き添えておきたい。

      チェロを通して音楽と人生を謳歌したビルスマ。彼の音楽を愛する方はぜひ手元に置いていただきたい。バッハの無伴奏6曲についての興味深い解説もあるので無伴奏チェロ組曲が好きな方、チェロ演奏を、更にバッハや古楽をもっと知りたい方にも手を伸ばしていただきたい。おすすめです。

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     2022/01/06

    「初期作品」と侮るなかれ、若かりしバッハの意気軒昂ぶりがシュタイアーの演奏で再現されているのがすばらしい。もっと名曲やもっと後の作品を混ぜてもよさそうなところ、あえてのこのようなプログラミング。「バッハは初期でもバッハの魅力にあふれている」というシュタイアーのメッセージなのだろうか。実際、ここに収められている作品のフレッシュさ、元気と才気のほとばしりは尋常ではない。高いテンションで突き進む演奏と、粒立ちがはっきりしながら豪華なチェンバロの音響は「初期作品」という言葉を忘れさせてくれる。おすすめです。

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     2022/01/05

    16世紀の古い音楽が新鮮な響きで教会の空間を満たすことを聴ける喜び。バッハのマタイ受難曲への興味から派生してこちらのディスクに手が伸びた次第だが、サヴァールのこの曲集への愛情、そして研究により創り出された美しく崇高な演奏に聴き惚れてしまった。

     浅学ゆえ詳細な解説はできないが、キリスト教における音楽の貢献と発展の1ページを開いた気がする。グレゴリオ聖歌の頃のシンプルながら想いのこもった歌唱、受難曲などでの朗誦などの技法は今だからこそ新鮮にしみこんでくるような気がする。この曲集より後代にはバッハなどが精緻かつ複雑な受難曲を生むことになるが、当盤に聴ける質素で簡潔な内容にキリスト者でない私もなにやら心が洗われるような気がする。今でこそ、ディスクで何度も聴けるわけだが、この当時にこれらの作品を聴けたのはそこにいたほんの一握りの人々のみ、何度でも聴ける代物ではないし、「再演」や「ツアー」というシステムもなかなかないだろうからみな一期一会の気持ちで真摯に音楽と向き合っていたのだろう…。そして教会を満たす響きに身を浸すからこそ「神の御業」に想いを馳せることもできたのであろう。

     このような歴史的な価値を有するすばらしいディスクなのだからこそ日本語訳や解説をきちんと入れてほしかった。そうすることで(元々キリスト教に詳しいとは言えない)我々日本人にその価値を理解してもらえると思うので、ぜひ輸入元さんには検討してもらいたい。その点について★をひとつ減らしたいところだが、それでは演奏者に失礼と思い減らさず★5つのままで投稿しようと思う。

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     2021/12/31

    J.S.バッハの生涯の足跡とそこに残された作品の概要が丹念にまとめられている。筆者はJ.S.バッハの息子C.P.E.バッハの研究を主とされているとのこと。どうしてもJ.S.バッハのみに焦点が定められてしまい「J.S.バッハとそれ以外のバッハ」とみられてしまうのが一般的と思われるが、ここではかのセバスティアンが「バッハ一族の血脈の中で醸成されて出てきた最高の成果」としてあらわれた者であることが理解できる。著書の中でJ.S.バッハは「バッハ」でなく「セバスティアン」として紹介されている点からも明白だ。セバスティアンの生涯とそこで生み出された作品、さらに家族関係や師弟・交友関係、職場の同僚関係なども描かれバッハの人間像の一端に触れることもできることも勉強になる。書籍のサイズがあと1サイズ大きく文字の大きさや表の見易さが改良されればいいな…と思う点もあるが、各ジャンル別に作品紹介も網羅され、年表(生活や活動と作品の連関)も入っており、セバスティアンを知りたい方、知っているがもっと広いレンジで俯瞰したい方ともにおすすめです。

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     2021/12/21

    ヴィオラとピアノによるなんと優しく、懐かしい歌。ブラームスの最晩年の作品だがその中に仄かに青年のような憧れや愛情をも感じてしまった。ヴィオラ(1672年製ストラディヴァリウス)がたゆたうように歌えば、ピアノ(1899年製ベヒシュタイン)が包み込むような響きで応える。タメスティとディベルギアンのデュオによる演奏で、私がブラームスのヴィオラ・ソナタでイメージしていた「セピア色に近い白黒」だけでなく、ほんのりとやわらかい彩りもふわっとのせられたような感覚を感じさせてもらうことができた。

     やわらかくしなやかに歌うヴィオラの歌は強弱という単純なものさしで測るのではなく「歌」として自由に感情と言葉を表出してくれていると考えた方がしっくりくる。ピアノもまるみを帯びたあたたかい響きで歌を支えてくれている。ヴィオラ・ソナタの周りを囲っている曲たちも魅力的。当盤全体の想いとしてはヴィオラ・ソナタがメインなのではなく、ブラームスが表した「歌」のアルバムなのではないだろうか。聴いていて心の奥底がじんわりと温まるようなアルバム。おすすめです。

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     2021/12/18

    第1番BWV870 冒頭の煌びやかな開始からしてグイっと惹きこまれてしまった。バッハのチェンバロ作品演奏の大本命・シュタイアーによる平均律は第2巻から開始された(解説書の中には「第1巻2022年リリース予定」の予告も…)。
      第1巻ならまだしも渋めの第2巻で前奏曲とフーガの繰り返し…、正直最後の方は疲れてしまうところだが当盤では一気に聴きとおすだけの推進力があったと思う。音の表現効果も多彩で聴いていて「音響の万華鏡だな」と感じてしまった。そのおかげもあって「次はどんな仕掛けで愉しませてくれるのだろう」と聴き進めてしまうのだ。どんな仕掛けかは聴いていただければ一聴瞭然。
    前奏曲の自由さと、フーガの声部を描き分ける構成力とファンタジーのアイディア、または創意(inventionとでも呼べばいいのだろうか?)が至る所にちりばめられ聴くたびに「こんな音や響きがあったのか」と発見することが実に愉しい。24曲に凝縮された晦渋かつ複雑なミクロコスモスの世界をシュタイアーの舵取りで旅することができるディスク。お薦めです。

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     2021/11/27

     曲目の多彩さ、音のパレットの色彩の多さがうまく融合した作品だ。東京オペラシティ コンサートホールで当プログラムを聴かせてもらったが、小菅優の腕前はもちろんとして「これだけ豊かな曲の構成を考え実行できるのが凄いな」と感じたものだ。実演で聴いてしまったがゆえにその実感や迫力をCDでは追いきれないので★をひとつ落としておくが、実演に接しなかった方には★五つ分の聴きごたえがあると確信する。

      今回のテーマは「風」。その「風」は軽く気持ち程度に吹くものでなく実に質感豊かに吹いてくる。小菅の奏でる風はどれも存在感があった。単なるイメージで消えてしまうことなく、風を頬で感じるもの(ダカンやクープラン、ラモーなど)、身体で受けとめて感じるようなもの(西村朗、ベートーヴェンなど)など様々。今回のシリーズ4部作はおそらく彼女のディスコグラフィの一里塚となるように思う。今後のさらなる活動拡大を期待しつつ、皆さんにもお勧めしたい。

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     2021/11/08

    過去の銘盤と一線を画す、流麗かつフレッシュな全集だ。ヴァイオリンもピアノも音の線は細目だが痩せた感覚はない。筋肉質とも違う。きめ細やかな配慮もあるし、柔らかく変化することもでき、かと思うと舌鋒鋭く攻め込んでくる変幻自在なこのコンビならではのベートーヴェンだ。鮮やかにさらっと弾きこなしつつ理知的な解釈とさりげない即興的な閃きを併せ持ったヴァイオリン・ソナタを愉しむことができる。

      全集中の目玉でもあるクロイツェル・ソナタでは前のレビュワー氏も指摘された即興的な掛け合いもあり、「他の演奏と同じことはしない」といったアイディアは一聴に値すると思う。しかもそれがアイディア倒れにならないところがこのコンビの凄いところ。クレーメル&アルゲリッチ盤(DG)のテンションの高さや音の強さはないが、もともと指向する方向が違うのだからそれは比較するべきではないのかもしれない。ベートーヴェンの楽譜をもとにヴァイオリンとピアノのキャッチボールを全体的には冷静に、しかし時に変化球も投げ合いながら室内楽を愉しむ二人の姿を想像してしまう。

    個人的には、ファウストとメルニコフの演奏(コンビであれソロであれ)はものによっては上手すぎて興ざめするときもある。がこの盤ではそれは感じず、さりげなくここまでハイレベルな技の応酬ができることに驚いてしまった。「理性的な感興、醒めた熱狂」とでも表現したくなるような面白い演奏を満喫できる。今後、新しい「ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ」像の一つの指針として使われることになるような気がする。

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     2021/11/06

     独特な音空間に誘われる面白いディスクだ。前のレビュワー氏も伝える通り幻想的(または神秘的)な雰囲気が最大の特長。モヤっとした音の粒、どことなく郷愁を呼び起こすような響き…。

      アップライトピアノの演奏ときいて「グランドピアノでないならCD買う必要ない」と思う方にこそお薦めしてみたい。実をいうと私自身、先述の意見で入手を考えなかったが、このレーベルのフォルテピアノによるディスクを入手する過程で「こんな演奏もアリかも…」と考え直したクチ。もっと音質の良いディスクはあるだろう。しかし、それにしても「ショパン自身が演奏したであろう」楽器でショパンが弾いたかもしれない他作曲家の作品を取り混ぜての演奏は鬼才リュビモフならでは。こんな企画、リュビモフ以外なら目もくれないのではないだろうか。バッハやモーツァルト、ベートーヴェンも曲の開始では分かっているはずなのに「ん、ショパン? あぁ、バッハ(モーツァルト、ベートーヴェン)だった」と気付くような不思議な感覚になる。そんな感覚におちいるのもアップライトピアノならでは、なのだろう。

      おそらくこのディスクの楽しみ方としては演奏技術や録音技術、曲の解釈を考えるのは違うような気がする。「ショパンがそこにいたのだ…」という音空間に身を浸すのが最も適切な楽しみ方ではないかと思う。

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     2021/11/02

    優しいけど芯のあるフォルテピアノの響きが美しいディスクだ。ベートーヴェンの「最後の3つのソナタ」というとどうしても「構造」とか「精神」とか難しく考えてしまうが、当盤で奏されるソナタは「歌」が充溢しているのが特徴だと考える。構造がないわけではない。精神の充実はいうまでもない。そこを考えた上で、その上に輝いているのは「歌」。交響曲・弦楽四重奏曲・ピアノ・ソナタを大きな三つの山と仮定してみよう。ベートーヴェンの人生が到達したひとつの山頂はこの3曲の如き晴朗で澄みきった歌の境地なのだろう。彼が遺した歌を、リュビモフが歌う為に選んだ楽器はアロイス・グラーフによる1828年製のもの。モダンピアノでなく、あえて選んだのは正解だったと思う。ロシア出身のピアニストは一癖も二癖もある人物が多い気がするが、みんなそれぞれ固有の「歌声」を両手で表現しているような気がする。
    (私個人の印象だが)澄んだ空に溶け込むような爽やかな歌を聴いてみたい方にお薦めしたい。

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     2021/10/31

     甘く優しいテノールの発声は時に「今ここで起きていることは夢だったのではないだろうか」と錯覚するかのようにうつろい響く。全体にドラマを進行させている感は少なく、歌として扱っているからこそ「歌として扱うことで、その痛みを忘れ去ってしまいたい」という痛みや苦しみを私は感じる。その背後にフォルテピアノの(響きがキツイというわけではなく、はっきり存在感を持っているという意味で)生々しく影法師のように響いていく。そこで起きていることは夢でなく、現実に若者に覆いかぶさっていることを強調するかのように。
     「夢と現実の狭間」を実感させる独特な冬の旅。おすすめです。

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     2021/10/25

     絢爛たる6巻のバロック絵巻を愉しく鑑賞した気分。メーカーの紹介ではスピード感とか超絶技巧と煽り文句が並ぶが聴いていてそんな感じはしなかった。むしろ自家薬籠中の物を仲間と愉しみながら生き生きと活写しているような印象。聴いていて、京都は高山寺にある「鳥獣人物戯画」をふと思い出してしまった。時代も地域も背景も違うが芸術の神髄というか、根っこにあるのは同じものが存在するような気がする。

     ファウストやタメスティが参加とあっても毅然としたソリストというよりゲストとしてともに演奏してみた、という感じを持った。ともに音を出し、音を聴き合うという自然なことを相当高度なレベルでやっているという印象だ。

     音も尖っておらず、とても柔らか。各楽器の豊かな音色が絡み合い、うなずき合い、共に歌いあう。ともに演奏する、という意味での「協奏曲」を理想的なスタイルと演奏と録音で収めた「スナップショット」としておすすめしたい。数多い同曲の録音の中に在っても埋もれることなく、光を発し続けそうなディスクだと思う。

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