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0 people agree with this review 2020/10/20
2019年1月にウィーンへ渡航し、学友協会大ホールでトーマス氏とウィーンフィルによるマーラー9番を生で聴く機会に恵まれ、この指揮者のマーラー演奏の素晴らしさに気付かされた。 特に第四楽章では、じっと目を閉じ目の前で響いているこの世のものと思えないほど美しい弦の響きに身体が震えるほど感動し、思わず涙が止まらなくなってしまった。学生時代にクラシック音楽にはまって以来40年が経ったが、ここまで深く感銘を受けた演奏は無かった。 当日は午前中のゲネプロから鑑賞することができた。 第1から第3楽章まではほとんど演奏を止めることなくスムーズにゲネプロが進行したのだが、第4楽章では冒頭直後から何度も演奏を止めて楽団やコンサートマスターに念入りに指示を 出していたのが印象的だった。 その晩の本番コンサートで演奏された第4楽章の素晴らしさは 前述した通り。 詳しい専門的な説明は自分には出来ないが、弦に余計なビブラートや旋律への色付けの類いを極力排除し、あたかもマーラーが意図した響きはこう…と諭されているかのような自然体で緻密な響き。演奏中に目を閉じると、この世のものとは思えない壮大な景色が音の洪水と共に押し寄せてきて、胸がいっぱいになる貴重な経験を味あわせてもらった。 帰国したその脚で御茶ノ水へ向かい、このサンフランシスコ響との演奏CDを手に入れ帰宅した次第。 このサンフランシスコ響との演奏も大変素晴らしく、ウィーンで生で聴いたあの時の響きと記憶の中ではっきりと重なる感覚を覚える。 マーラー9番の有名な演奏は数多くあり、色々な指揮者で聴いてはみたが、あの時感じた深い感動を呼び起こしてくれるのは このサンフランシスコ響とトーマス氏になる演奏のみ…という結論。 他の演奏では、どうしても指揮者の作為的に聴こえる演奏のちょっとした部分の表現が邪魔をし、この曲の響きにイマイチ没入しきれない感覚を覚えてしまう。逆に言えば、それほどにトーマス氏による曲の解釈、表現が自然で巧みなのだと感じる。 ウィーンフィルとのゲネプロで観たあの第4楽章での念入りな指示はきっとそういう演奏表現をマーラー演奏では百戦錬磨、 本家本元の楽団員らに自らの意図を徹底させるために必要な作業だったのだと思っている。 もし知人にマーラー9番のオススメを尋ねられたら、迷わずこのCDを進めたい。
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