Shostakovich, Dmitri (1906-1975)
Piano Quintet, String Quartet No.3 : Piotr Anderszewski(P)Belcea Quartet
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 21/August/2018
アンデルジェフスキと共演したピアノ五重奏曲ももちろん堂々たる名演。特にバロック的なプレリュードとフーガ(第1〜2楽章)に対して第3楽章スケルツォの異化(パロディ)効果を尖鋭に打ち出しているのは目新しいところだ。しかし、弦楽四重奏曲第3番はそれ以上の驚異的な名演。直前に書かれた交響曲第8番、第9番に通ずる劇的なプログラムを持ち、全15曲の弦楽四重奏曲中でも屈指の人気曲だが、ベルチャSQならではの表現主義的な解釈が生きている。「ハイドン風」とも評される一見、能天気な第1楽章からして、微妙な緩急の変化と不協和な響きの強調で早くも不穏な予感を漂わせる。ピアニッシモとスタッカートを徹底させた第2楽章中間部も出色。来るべきカタストローフにおびえる繊細な心の震えを余すところなく描き出している。そしてついに第3楽章では凄まじい暴虐の到来。悲嘆に暮れる第4楽章を経て、第5楽章はちょうど第8交響曲終楽章のような、諸手を上げて喜びは歌えないけれど、とりあえず痛みを抑え込んで終結を迎えようという音楽。第1楽章の楽想が戻ってこようとするが、第4楽章の悲歌に打ち消されてしまう。ベルチャSQはかつてなく遅いテンポをとって、デリケートな音楽の襞を丁寧に描いている。パシフィカSQの清新かつ鮮麗な全集の登場で、さすがに晩年の諸作(第12番以降)では「深み」が足りないものの、それ以外の曲については、もう他の演奏の出番はあるまいと思われたショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲だったが、まだまだ新たな解釈の余地があることを見せてくれた。3 people agree with this review
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