Wozzeck : Homoki, Luisi / Zurich Opera, Gerhaher, Barkmin, Jovanovich, etc (2015 Stereo)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 22/January/2017
ドイツ文学業界では原作戯曲『ヴォイツェック』は悲劇的であると同時に喜劇的な作品とされ、グロテスクな悲喜劇と評されることが多いが、そうした現代の解釈の動向に敏感に対応した演出。舞台は長方形の枠を幾重にも重ね、結果としてひな壇のようになったもので、演技者たちは自由に移動できず、その動きは大きく制約されるが、それはまさに身動きの取れぬ主人公たちの状況にふさわしい。新国立で上演されたクリーゲンベルク演出では大尉、医者、鼓手長ら固有名を持たぬ者たちが戯画化された姿で描かれていたが、ここでは全員が白塗り、戯画化は全登場人物に及んでいる。この演出ではヴォツェックとマリーの子供は人形だが(最終場のみ「声」担当の子供が登場する)、すべての人物が半ば人形化されているので、ごく自然に受け入れることができる。ヴォツェックがマリーを問い詰める全曲のちょうど真ん中、第2幕第3場から第5場にかけてや第3幕第2場、マリーの殺害から第4場、ヴォツェックの溺死にかけては、まさしく悪夢のような見事な舞台。 ゲルハーエルの題名役が実に素晴らしい。この人物の悲惨と狂気を体現したような迫真の役作りで、これまでに私が見てきたヴォツェックの中でも間違いなく最高と断言できる。バークミンのマリーは普通に見れば「人間味が足りない」と言われかねないが、半ば人間半ば人形という演出コンセプトに沿った演唱だろう。その他、端役に至るまで適材適所の配役。もともと表現主義的な演奏を信条とするルイージにとって、これほどうってつけのオペラもない。最終場前の間奏曲など凄まじい盛り上がりだが、一方、このオペラの凝った構造にも細かく目配りした指揮なのにも感心させられる。日本語字幕にケチをつけるのは、いいかげんやめたいのだが、第1幕第4場のpissen(小便する)がいまだに「咳をする」なのは、どうしたわけか。1 people agree with this review
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好事家 | 千葉県 | 不明 | 23/August/2016
スタートして最初に気付くのは画質・音質の素晴らしさです。私がこれまでに見たBlu-rayの中でも最高といえます。ホモキの演出はシンプルな装置を基本にした読み替えが多く、新国の『フィガロの結婚』のように段ボールを積み上げただけのチープな舞台に失望することもありますが、この『ヴォツェック』は狂気と不条理の世界が遺憾なく表現されています。 それに加えてルイージの指揮が素晴らしい出来栄えで、彼はイタリア・オペラよりもドイツ系のオペラの方が相性が良いのではと思えるほど、彫りが深く鋭いサウンドをオーケストラから引き出しています。 声楽陣も意欲に満ちた歌唱を聴かせこの上演に花を添えています。子供の演出が大変興味深いですが、観てのお楽しみにしておきます。4 people agree with this review
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