"Lohengrin : Neuenfels, Nelsons / Bayreuther Festspielhaus, K.F.Vogt, Dasch, Zeppenfeld, etc (2011 Stereo)(2DVD)"
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 05/September/2012
賛否両論になるのは当然かと思うが、改めて見直してみて老匠ノイエンフェルスの(スキャンダルメーカーとしての)名声に恥じぬ見事な舞台に感服した。発売からだいぶ時間が経ったので、ネタばらしを含めて解説してしまっても構うまい。オペラの背景をなすハインリヒ王の募兵活動については、近年の演出ではまず肯定的に描かれることはない。「祖国防衛」をうたってはいても結局、他国を侵略することになったのは歴史の教える通りだからだ。その他、ヒトラーがとりわけ好んだオペラだったというような「ファシズム的」側面を、演出は密閉された実験室内での心理劇に還元することによって極力、切り捨ててしまった。付和雷同的な民衆が実験動物、ネズミにたとえられるのは分かりやすい比喩。だから第1幕でローエングリンがエルザに「禁問の誓い」をさせる場面では、合唱団や他の面々は退場し、この二人だけになる。そこにオルトルートだけが忍び入ってくるのは秀逸。なぜなら、彼女はエルザのアルター・エゴ(もう一人の自分)だから。第2幕、教会に向かうエルザの前にホワイトスワン対ブラックスワンという様相で現われたオルトルートは最後にエルザにキスをするが、これはここでエルザ+オルトルートが合体して「一人」になることを的確に表現している。最終場では黒服のエルザに対し、オルトルートは王冠をかぶった白服で現われ、二人の関係は逆転してしまう。最後のぞっとするようなゴットフリートはノイエンフェルスの得意技ではあるが、もちろん彼の帰還で幕切れの悲劇的印象が相殺されないようにするための仕掛けだ。 ネルソンスの指揮はスケール大きく、抑えるところと表現主義的な強調の切り換えも老練で、実に素晴らしい。フォークトの特殊な声は、超人ゆえ人間界では拒まれざるをえない悲劇のヒーローに最適だし、ダッシュも歌+演技力の総合点では高水準のエルザだ。ツェッペンフェルトは神経症患者のような、おびえた王という演出の特異なキャラクター付けにうまく対応している。人の良さそうなラシライネンも単なるオルトルートの操り人形という、この演出コンセプトなら悪くない。この優れた上演の唯一の弱点はオルトルート。ヴァルトラウト・マイアー以下、強烈なオルトルートを何人も見てしまったので、これでは満足できない。1 people agree with this review
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蟹缶 | 東京都 | 不明 | 11/May/2012
待ちに待った映像がやっとBlu-Ray&DVDで発売された! 去年のNHKBSのバイロイト中継で見たが、このプロダクションはバイロイトのみなずオペラ上演として近年まれなる成功作だと思う。 音楽面はいうに及ばず何といっても舞台が素晴らしい。プレミエの時の写真だけ見た時はなんて酷いデタラメな演出か?!と腹立たしさすら覚えたのだが、実際に中継映像で舞台を見ると予想とは全く違う魅惑的な舞台だった。 これほど斬新かつ挑発的でありながら観客のイマジネーションを刺激する説得力のある演出は本当に稀だろう。 個人的にはゲッツ・フリードリヒのトンネル・リングやタルコフスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」に匹敵する名演出だと思う。 バイロイトではカタリナ・ワーグナーの「マイスタージンガー」も非常に面白い舞台だった。 ただカタリナ演出の場合は若い演出家の経験不足ゆえのアイデア倒れや混乱も無きにしも非ずだった。 その点ノイエンフェルス演出は見事にプロフェッショナルだ。 これほどにパロディ、引用、異化効果、メタファーによる多層的な意味やイメージの洪水で過剰過ぎる情報量でありながら、見た目はあくまでシンプルであり一つの美意識で統一されている。 この演出の場合予備知識を与えず見た方が良いので細部についてはあえて書かないが、最後の<胎児>についてネット上でも議論を呼んでいるので一言。 これははじめてみた時は自分もネガティブな感想を持ったが、何度か見直すと演出家が言わんとする事が理解できたような気がする。 原作のゴットフリートは少年だが少年に率いられるブラバントの国や軍隊など未熟な胎児が統率するるのと一緒だ、とブラバントの暗い未来を暗示しているのであろう。 音楽面も舞台に劣らず高レベルである。 タイトルロールのクラウス・フローリアン・フォークトは2010年のプレミエ初日で降りたヨナス・カウフマンに代わり「マイスタージンガー」と掛け持ちで残りの舞台を勤め以後も出演している。 カウフマンのワイルドなルックスと硬質な声に比べるとフォークトは長身の優男で中性的な優美な声は半神のローエングリンにうってつけである。 アネッテ・ダッシュも美人で華もあり声も綺麗だし演技も上手い。 このオペラの場合主役二人が見た目も良いと舞台が映える。 ペトラ・ラングは見た目が小柄なのは残念だが声はパワフル。 ラジライネン、ツェッペンフェルトと脇役も揃っている。 指揮は今一番乗りに乗ってる指揮者の一人のアンドリス・ネルソンス。 まだ若手と言われる歳ながらまるで巨匠指揮者のような老獪な指揮ぶりであり抜群の安定感である。 ティーレマン等に比べるとネルソンスのワーグナーはドイツ的な響きがやや希薄だがこのオペラの場合は必ずしもマイナスではないだろう。 ただ正直この演出は初心者(や頭の悪い人間)には全く向かない。 伝統的な「ローエングリン」を求める向きにはアバドのDVDかペーター・シュナイダー指揮のヘルツォーク演出のバイロイト盤あたりが良いと思う。 とはいえ音楽的にも素晴らしいので映像を消して音だけ聴いても十分楽しめるとは思うが。8 people agree with this review
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