Die Meistersinger von Nurnberg : K.Wagner, Weigle / Bayreuther Festspiele, Hawlata, Kaune, K.F.Vogt, etc (2008 Stereo)(2DVD)
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蟹缶 | 東京都 | 不明 | 11/August/2011
バイロイトに新風を吹き込んだカタリナ・ワーグナー新総裁自身の新演出である。賛否両論というより実はほぼ否定一色だった訳だが私の評価はほぼ最大級の絶賛である。これほど衝撃的で説得力のある演出というのもは滅多にないと思う。マイスターや徒弟達の世界を美術学校に置き換えるというのは現代演出としてはむしろ普通であり何も驚くにはあたらない。驚かされるのはその表現だ。3幕においてそれまでマイスター達から浮いている存在だった前衛主義者のハンス・ザックスが急に保守反動に立場を翻し、1幕で体制に楯突きペンキを塗りたくって暴れていた怒れる若者ヴァルターも牙を抜かれてすっかり大人しくなり体制に取り込まれてしまう。終幕のザックスはさらに独善的な巨匠と成り果ててしまうシニカルな幕切れ。思うにこの演出が非常な批判を浴びたのは典型的な芸術家の堕落の構図を非常に説得力のある(しかもあけすけに)見せた為ではないかと思う。若い頃は斬新な作品を生み出していた天才芸術家が年をとると芸壇の権力者に成る例は洋の東西で枚挙にいとまない。ハンス・ザックスとヴァルターがたった一日で革新から保守へと鞍替えする節操のなさには苦笑する他ない。特に見事なのはあの美しい五重唱を歌う二組のカップルに額ぶちが降りてきて「家族の肖像」が出来上がるくだりだ。この秀逸な発想を思いついただけでもカタリナは天才的な演出家と言っていいと思う。ただし、絶賛しつつもこれこそ最高の演出とまで思えないのは芸術家の堕落でない真の芸術家の道を指し示す事までは出来ていない点だ。形式主義者のベックメッサーも駄目、保守化するザックスも駄目・・・では結局はただのニヒリズムでしかない。「マイスタージンガー」という作品が表現する芸術家の理想像は表現出来ないからだ。それに意地悪く見ればワーグナーのひ孫でバイロイト音楽祭の総裁という権力側の人間のカタリナが作品の中で反動主義者を糾弾してみせるのは自らを大衆の味方に見せようとするアリバイ作りのポーズと思えなくもない。・・・とはいえこの演出が与えた衝撃のお陰でこの作品を見て今後ハンス・ザックスを素晴らしい人物と見る事は不可能であろう。カタリナの父のヴォルフガングの奇を衒わない演出はこの作品においては気に入っていたのだが、ひとたび娘の演出を見てしまってからはただの凡庸な演出にしか思えなくなってしまった。とにかく良かれ悪しかれ衝撃的な演出であるのは間違いないのでワーグナーに関心のある人間は一度は観るべき映像である。腹を立てる人も多いとは思うが。 音楽的にはかなり理想的なキャストというべきだろう。特にクラウス・フロリアン・フォークトのシルキーな美声には終始魅惑される。フランツ・ハウラタはやや癖があるがパワフルな声でこの演出には相応しい。フォレは非常に伸びやかな声でザックス以上に素晴らしい。付け加えればダヴィットのノルベルト・エルンストも大器の片鱗を感じさせる。ヴァイクレの音楽作りはワーグナーの淀みや粘着力とは無縁でまるでオペレッタでも指揮するように軽やかである。演出に合ってるともいえるし演出面に劣らず音楽面も斬新さを感じる。9 people agree with this review
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