Bach, Johann Sebastian (1685-1750)
Comp.organ Works: Foccroulle
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mimi | 兵庫県 | 不明 | 18/September/2023
Bernard FoccroulleがRicercareにて完成させたJ.S.Bach/オルガン作品全集。実は数年以上前に購入済みだったのですが、仕事の忙しさでなかなかまとめて聴く機会を作れず、今回初めて全曲を聞き通しました。この盤、録音時期は1982~2008年と26年に亘ってますが、その大半は1980年代から1990年代はじめ、Foccroulleの20代後半から40歳前半の比較的若い時代に録音されています。この全集の最大の特徴は他の評者も述べられてますが、現時点でおそらく最多の収録曲数(フーガの技法未収録ながら300曲ほど、昔のWalchaらの2倍以上)を近年のBach研究の成果に基づき、成立年代順に収録したことでしょう。ちょっとでもBachの作品の歩みに関心のある方なら、よくご存知と思いますが、Bach作品はたとえBWV番号を与えられてる作品であっても真贋がはっきりしてないものが多数あり、それは特にオルガン作品において最も顕著で(特にコラール!)、完全にBachの真作と確定したものはかなり数が減ります。そこらへん、どこまでを収録するかが常に課題になると思うのですが、この全集の基本姿勢は一曲一曲を歴史的・音楽学的根拠を検証した上で、BWV番号があっても現在すでに他人の作品であることが学術的に確定したものを完全に排除し、Bach真作確定作品と、疑いはあるが真作の可能性も残っている作品を(原則として)ほぼすべて演奏しています。従って、近年の新発見であるノイマイスター写本や2008年の新発見曲であるファンタジアBWV1128、さらには未だBWV番号が与えられていないがBach作の可能性がある曲も積極的に収録しており、資料的価値としては現在望みうる最上の全集と言えるのではないでしょうか(なぜかBWV1121が収録されてませんが...)。FoccroulleのDiscの常として、自らかなり詳細な解説を執筆されており(これだけの大全集なのに!)、いつもながらその学識と誠実な姿勢には本当に頭がさがります。全集内容ですが、そもそもBachの作品で成立年代がある程度確定しているものは実は少数で、大半は成立年代が未確定、よくって大体この頃、くらいなので、こういった成立年代順に構成していく作業はどこまでいっても完全な満足は望めません。正直、なぜこの作品がここに、っていう曲は複数ありますが、それでもFoccroulleと制作チームができる限り最新の研究成果に沿おうとした結果であるのは痛いほどよく解りますので、全集構成に関して大きな不満はありません。むしろ問題なのはBachのごく若い時代、それも真贋のはっきりしていない作品群を含めて成立年代順に曲を並べることで、全体の印象が玉石混交の茫漠としたものになりかねないことで、これは最近進行中のBenjamin Alardの鍵盤音楽全集でも全く同じ印象を持ちました。このFoccroulleの全集でも全体の1/3以上を占める若い時代の作品群を扱う盤ではそういった聞き終えて全体の印象が残りづらい憾みが否定できず、こういった構成が演奏そのものに対する否定的な評価につながりかねないと思えました。あの奇跡的なフーガの技法をFoccroulleが録音したのは60歳近く、この全集の大半はそれより20年前の録音なので、Foccroulleのオルガニストとしての技量もこの当時はまだまだ発展途上にあったはず、部分部分で演奏自体に満足できない印象も否定できませんが、この全集構成自体がその印象にやや拍車をかけることになったかもしれないと(他の評者の「下手」という評価をみて)思いました。ただ冷静に一曲一曲を取り出して聴けば、この若い時代のFoccroulleが若手オルガニストの水準を遥に超える名手であることは感じ取れ、たとえHelmut Walchaの前人未到の透徹した名演奏には遠く及んでいなくても歴史的、資料的、音楽的に十分に一級品の価値を有することは認められます(余談ですが、逆にフーガの技法に関して言えば、Walchaといえど2010年のFoccroulleの名演には全く及んでいません)。細部でいえば、これを超える演奏は複数あると思いますが、それでも全体的にみて現在最も価値の高いBach/オルガン作品全集の一つであることは疑いないと思います。2 people agree with this review
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六里庵 | 岡山県 | 不明 | 25/June/2011
このバッハオルガン作品全集の最大の特長は、全曲をほぼ作曲年代順に配列したことだろう。バッハのキャリアを通じて、後年のスタイルや楽想がどのように生まれ発展してきたかを俯瞰できるという大きなメリットがある。このアンソロジーから、20歳前後のバッハが実はバリバリの実験音楽家であって、コラールとトッカータの結合や、強烈な不協和音や半音階の連続など、新奇な手法を繰り返し試みていたことがわかる。音楽芸術としては忍耐を強いられる面もあるが、バッハらしく光るものは存分にある。20代前半には既に同時代に遥かに抜きん出た巨匠の腕を見せた後、イタリア協奏曲に触れてからは北方様式や古様式、各地の新様式との統合によるオルガン芸術の深化に終生取り組んだという眺望が見渡せる。これは20歳の若気の試みの深化拡大に他ならないだろう。BWV順の機械的な配列や、まして無意味なランダム配列(退屈防止?盤枚数削減?)では、このような展望を味わうことは全く不可能だ。作曲年代が確定できない作品も多くあり、編集上の都合で一部の作品群が作曲年代の異なる部分に配置されていることもあるが、全体的にはほぼ納得できる配列といっていいだろう。敢えて困難に挑んだ試みに拍手を送りたい。フォクルールの演奏は、ヴィルトゥオーゾのというよりは深い考察に基づいた確実な手腕によるゆるぎのない名演といえるものだ。ヨーロッパ各地の個性的な歴史的オルガンが使用され、音響の驚くべきバラエティが楽しめる一面もある。最近の研究により偽作と判断された作品はかなり厳密に削除されている一方、新発見曲が網羅されている点も注目に値する。現在最も完成度の高いバッハオルガン全集といえるのではないだろうか。また、従来はチェンバロ用の作品とされていながらも明確な楽器指定のないBWV904を筆頭とした数曲(BWV800番台、900番台)が取り上げられているのも注目点だろう。大部冊の解説論文はそれだけで読み応え十分だが、誤植が多い(英独仏のうち英文部分だが)。また収録位置検索のために曲名順の索引が付けてあるが、あまり役に立たない。BWV順索引の方が実用的だろう。12 people agree with this review
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