Women In Music Pt.3
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どん | 東京都 | 不明 | 01/March/2021
ねぇ、この世の中に、オリジナルなんてあると思う? ライトグレーのざっくりとしたニットの袖、 わずかに第二関節から覗いた指先で、 どこから持ってきたのか、鶏の玉子より少し小さな、 滑らかな丸い石を弄んでいる。 爪は、雪かき型ではなく、土を掘るスコップの先のような放物線を描き、 臙脂より少し明るい色に隙なく染められている。 にっ、と口角が上がった口元にはもっと鮮やかな赤のリップが乗せられていて、 残りの肉体は空気中に消え失せてしまうかのようだ。 いや、だからさ、一聴したら誰でも、ジョニ・ミッチェルやプリンス、 ルー・リードの感じがさ、といいながら電車を見送る。 今、立っている橋の下、切り通しの中をシンコペーションを刻みながら、 銀色と萌黄色の車体が通り過ぎていく。 彼女は、汚い金網により掛かかって、相変わらず石に夢中のようだ。 あぁ、またやっちまったんだな、と思いながら、だから、いいんだよね、 とにじり寄ろうものなら、とたんに彼女の反撃が始まる。 おじさん、「だから」ってなに。 なんでも、おじさんの知っている範疇に引き付けないでよ、 なんにもわかってないくせに。 うちらは、いいものはいいっていってるだけじゃない。 何かに似てるからいいとかって、まじで意味わかんないし、 それって、おじさんたちが、 うちらみたいな若い子に対して優位に立ちたいだけじゃん。 いわれてるほうはかえって遠いっていうか、響かないし、 正直、うざい。 あ、まあ、うん、そうだね。 モゴモゴいいながら、でもなにかいわねばと言葉を探すも、 結局はなにもいう必要がないことに気づく。 そこにあるのは、曇りの日の夕焼け色のネイルと、 その少し前の春の午後のような口唇。 そこからはじき出されてくるのは、拒絶のワード。 生きている長さが、無意味になっていく事象の特異点が、 なんてことない跨線橋の上で展開される。 金網にこびりついた、何かの告知ポスターの残骸が、 夕方の海へ吹く風に震えている。 あ、終わりなんだという顔で、視線だけこちらに貼り付けながら、 娘は南へ体をひねる。 鼻梁を西陽が茜色に染める。 次の電車が来た。 ニットの肘が伸びて、目の高さまで石を掲げる。 先ほど投げつけてきた言葉の激しさとは無縁で、 慈しむような淡い笑みさえ浮かべている。 たたったたっ、という乾いたマシンガンのような音に包まれて、 時間と空間が寸断され、彼女だけの世界に佇んでいるかのようだ。 それって、なにか思い出がある石なの? 我ながら気の利いた場面転換だと思いながら聞いたところだった。 意外と長く木霊したレール音のせいで、 問いが聞こえたのかどうか確信が持てずに、待つ。 と、さらさらと石の表面をなぞっていた指先が、動きを止める。 ゆっくりと振り向いた娘が笑う。 チェシーキャットのようにきれいな歯並びが、今にも宙空へ飛び出しそうだ。 そして、その口はこういった。 ねぇ、この世の中に、オリジナルなんてあると思う?0 people agree with this review
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Riq | 神奈川県 | 不明 | 25/February/2021
今回も「HAIMらしさ」前面に押し出してくれた。 Women In Music Pt IIIはイカしたロックってこういうことかと思わせてくれる一枚。0 people agree with this review
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