ピーター・ブルック『バトルフィールド』来日公演直前プレイベント

2015年11月05日 (木) 21:30

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 1985年から30年を経た今、90歳を迎えたピーター・ブルックが再び挑んだ大叙事詩『マハーバーラタ』。その超話題作『バトルフィールド−戦い終わった戦場でー』の来日公演を記念して、初演の『マハーバーラタ』から音楽を手掛けている土取利行さんによる公演直前プレイベントが10月31日(土)にパルコ劇場で開催された。

 イベントでは、演劇ジャーナリストの伊達なつめさんが司会進行する中、1975年のピーター・ブルックとの出逢いから約40年にわたる舞台創作の秘話から『バトルフィールド』に至る創作の過程まで、ウェットに富んだ語り口で色々な逸話を語った。

 中でも、伝説の舞台『マハーバーラタ』について、研究調査の為に数年をかけてアジア諸国を巡り、特にインドにはピーター・ブルックと共に何度も足を運んだ話や、実はこの長大作は、「マハーバーラタ」(世界3大叙事詩のひとつ)から一部のお話を抜き出して上演する予定が、あまりにも興味深い話が盛り込まれており、急遽全編上演することとなった話、上演時間9時間という長時間上演中、土取さんが30以上の楽器を一人で演奏し、7曲の歌も歌うという、この舞台に関する全ての音楽を請負うことになったエピソードが語られた。


 また、今回の『バトルフィールド』では稽古当初、7つの楽器を使い、舞台装置も通常の舞台のように色々と置かれていたが、ワーク・イン・プログレスとしてパリの演劇学校で『バトルフィールド』を行なう機会(新作の時はこのように初日前にワーク・イン・プログレスを行いながら作っていくそうで)があり、装置も衣裳もなにも持たず、楽器はジャンベ(アフリカの太鼓)だけで上演したところ、役者達が生き生きとストーリーを伝え始めたことで、ピーター・ブルックが「今回はストレートに語りをやりたい。4人の役者と土取さんの太鼓だけで、一人の語り部をやるんだ」と話されたそうだ。

 それは、インドで「マハーバーラタ」を伝える色んな形式があるが、一人が踊ったり、歌いながら語っていくという語りの原点があり、そこまで突き詰めてやってみようということなのだろう、それまで稽古で使用していた舞台装置や衣裳、楽器もその翌日には最低限のものだけになっていたという。


 この作品は、90歳にしてピーター・ブルックが出来る正に人生の究極だと土取さんは言う。そして今回舞台ではジャンベのみを使用。初演『マハーバーラタ』は少ない楽器で演奏しようと思っていたら、色んな音が欲しいということで楽器が次々増えていったそうだが、今回はジャンベという打楽器のみで舞台を進行する。土取さん曰く、「初演『マハーバーラタ』で演奏した楽器や歌は僕の中に全部ありますから、一つの太鼓を叩いてもそれが全部入っているんですよ。」と、流石の回答。

 「作品は深い話で、初演は9時間という長さでしたが、実は時間の長さを感じなかったんですよ。時間の長短って規制概念と演劇の時間は違う。特に充実した公演の時、お客様とシェアリング(共有)出来た時の時間は質がついてきますから、長さは全く問題ではないように感じます。是非劇場で体感して欲しいですね。」とトークを締めくくり、最後に、映画『マハーバーラタ』のテーマ曲をエスラージ(インドのベンガル地方で使われる擦弦楽器)で演奏、更にアカペラで歌声を聴かせた。

『BATTLEFIELD−戦い終わった戦場で−』日本公演概要


【脚本】ピーター・ブルック
    ジャン=クロード・カリエール
    マリー=エレーヌ・エティエンヌ
【演出】ピーター・ブルック
    マリー=エレーヌ・エティエンヌ
【音楽・演奏】土取利行
【公演日程】2015年11月25日(水)〜29日(日)
【会場】新国立劇場中劇場
【料金】7,000円/U-25チケット 3,500円(全席指定)

土取利行(つちとり としゆき)プロフィール
1950年、香川県に生まれ。1970年から前衛ジャズドラマーとして近藤等則、坂本龍一等と活動、75年に渡米、渡欧。ミルフォード・グレイブス、ステーヴ・レイシー、デレク・ベイリーといった演奏家たちと共演。76年よりピーター・ブルックの劇団で演奏家・音楽監督として活躍。主な作品には、『鳥の会議』『マハーバーラタ』『テンペスト』『驚愕の谷』がある。また、世界中で民族音楽を学び、日本の古来の音楽の調査を行ない、その成果を演奏として発表。日本有史以前の音楽を録音した『銅鐸』『磬石(サヌカイト)』『縄文鼓』の三枚のアルバムをリリースしている。

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