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注目俳優!第1弾 “成河” 密着取材@
2015年05月23日 (土) 00:00
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稽古場レポートを始め、作品への想い・演じることへの想いを熱く、そして楽しく語ってくれる成河さんのインタビューをお届けします。
この春上演されたウィリアム・シェイクスピア作品『十二夜』ではフェステ(道化)を熱演。演技はもちろん、自らアコースティックギターを奏で歌う場面ではまさに観客を魅了し高い評価を得る。続く6月3日からはKAAT 神奈川芸術劇場にて主演舞台『アドルフに告ぐ』が幕を開け、後8月15日からはミュージカル『100万回生きたねこ』の主演が決定。
第1回「静寂」に魅了されてしまったあの時から僕の役者人生が始まった
――前作『十二夜』のフェステ役もかなり高い評価を得て反響がスゴかったと思いますが、ご自身での手応えはいかがでしたか?
成河 自分の評価というより、あれだけのスタッフ・キャストが揃って作り上げることができたからこそ本当に上質な作品になったんだと思います。シェイクスピア作品は言葉が何よりも大切ですし、言葉のひとつひとつにどういう意味があって、誰に向かって伝えるものか1行1行を紐解いていく作業が必要でした。僕が演じたフェステ(道化)は舞台上の誰かと関わる以上に客席と舞台との間をつなぐ存在でしたから、特にそれが求められる役だと思いました。僕だけでなくキャストは演出のジョンと一緒に、翻訳された日本語をその都度熟考してはどう表現するのがいいか、翻訳の松岡和子さんと相談して工夫して作っていきました。探り探りだったとはいえ『十二夜』という舞台はジョン・ケアードという超一流の演出家がいたからこそ、作品も自分の役もあそこまでできたんだと思います。彼の力は本当にスゴいと思いました。
――とても軽妙でナチュラルに演じておられたように見えましたが、フェステという役を形にするまで相当苦労があったということですか?
成河 初日の幕が開くまで「これでいいのだろうか」とずっと自信がなかったですね。たぶん僕に限らずキャストの皆さんもそうだったと思いますが、大丈夫かな・・・って本当に心配していました。演技というよりも、とめどなく溢れ出てくる言葉たちがちゃんと観客の皆さんに伝わってくれるんだろうかという不安でしたね。発している言葉が自分の動きのどの部分にかかっていてるのか、そこに何の意味があるのか、未だに謎な部分もあるくらいですがそれを分析していくのが本当に大変な作業でした。僕は“役を形にする”という考え方はしないんですが、とにかく理解しようと必死でした(笑)。言葉と格闘している時はそれはもうかなり追い込まれましたが、初日の幕が開いて、お客様の前に出て初めて理解できることもありました。「やっと答えあわせができた」とホッとしたり、またそこから修正をしていったり。苦労ではありませんが、大変だったのは間違いないです。
――以前お話を伺った『THE BIG FELLAH〜ビッグ・フェラー』の時にも”本当に勉強が大変で”とおっしゃっていました。成河さんは役作り=“勉強をする”という印象があります。
成河 確かにあの時は民族紛争や歴史、言語、方言、とにかく自分になかった時代背景を勉強しましたね。あれも大変だった〜(笑)。でもいつもそう、というわけではないですよ。毎回必死なだけです(笑)。
――今の成河さんのスタイルといいますか、役者として確立していったルーツを辿ってみたいのですが、「芝居をやってみよう」と最初に思ったのはいつ頃でしたか?
成河 久しぶりに聞かれる質問ですね(笑)。僕は高校3年生なんです。高校の頃はバンドを組んで、いろんな曲のコピーをやったりしてましたね〜、懐かしいなあ(笑)。その当時、男子校で演劇部なんてなかったんですが、演劇が好きな文学青年の親友がいて彼が文化祭で演劇をやろうっていったんです。忘れもしない、清水邦夫さんが早稲田大学在学中に最初に書いた『署名人』という作品を持ってきたんですよね。牢獄の中の3人だけの密室劇なんですけども、演劇なんて何も知らないし清水邦夫さんなんて全くわからない、バンドでガンガン音楽をやっていた高校生がその作品をやることになったんです。
――清水邦夫さんといえば、1960 年、70年代から活躍され蜷川幸雄さんと劇結社「櫻社」を結成したり、日本を代表する劇作家ですが、当時の高校3年生としてはかなりマニアなチョイスですね。
成河 実際の発表の時に観に来てくれたのも同級生と、あとは学校の先生とか父兄という身内だけの状況でしたけども、演技なんてしたことがない、演出なんてしたことがない高校生がただひたすら一生懸命練習して文化祭に臨んだんです。そこでちょっとした見せ場がありまして。脱走を企てる2人の間に僕が割って入って制止する、という設定なんですがそこで親友の彼がいい演出をつけてくれたんです。台詞ではなく、動きだけでバンッと歌舞伎の見栄を切るような動作で2人の動きを止めるんです。その時バンッという足音だけが響いて、1秒くらいなんでしょうけどもシーンという静寂がその場を包んだんです。ただ誰もしゃべっていない、という空間じゃなく“静寂”を体感してしまったんです。
――バンドでロックをやっている人からしてみると真逆の世界ですね。
成河 そうなんです。ビックリしちゃいました。それまでバンドではどれだけ大きな音量でガンガン鳴らしても、ものたりなくて “もっともっと” って音を大きくしていた。極限まで音を大きくしたその先にまさかの静寂の世界があるとは(笑)。あの一瞬の静寂に魅了されてしまったといっても過言ではないですね。いま舞台に立っていて思いますけども、そういう瞬間がやっぱり舞台にはあるんです。何年に1度も経験できないくらいですけども、客席に1000人いても2000人いてもある一瞬にシーンと待ち針一本が落ちる音が聞こえるんじゃないか、というくらいの静寂の瞬間、音のない空間が生まれるんです。以前、歌舞伎役者さんがそういうことをおっしゃっているのを読んだことがあるんですが、同じように僕は高校3年のときにその経験をして以来、どれだけ騒がしい舞台だったとしても、コメディでガチャガチャ盛り上がっていたとしても、ある瞬間訪れる静寂のために、その瞬間をまた経験したくて舞台に立っているといっても過言ではないですね。
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