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『気づかいルーシー』ノゾエ征爾×山中崇インタビュー
2015年08月13日 (木) 23:00
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―そもそもこの『気づかいルーシー』をノゾエさんが脚本・演出となった経緯を教えてください。
ノゾエ この『気づかいルーシー』を舞台化するという企画があがって、その話を東京芸術劇場が松尾スズキさんに持って行った時に、光栄にも指名していただいたという形ですね。
―そのお話を聞いた時はいかがでした?
ノゾエ それはもう本当にうれしかったです。
―この原作絵本の存在は知っていたんですか?
ノゾエ 知らなかったんです。お話いただいてから読ませてもらったんですけど、絵本自体は楽しく読ませてもらって、その作品が「すごく面白い」っていうのと、松尾さんに指名されて「うれしい」っていうのだけで「やりたい」って思いました。実際どうやって表現しようかっていうのは、その時は全然イメージなかったですね。
―音楽劇にするというアイデアは?
ノゾエ 子供向けということもあるし、唄ったり踊ったりしたいなと。それで、以前「はえぎわ」の公演でもご一緒してる田中馨(ショピン・元SAKEROCK)くんに声かけて、音楽劇化が現実味を帯びていったんです。
―山中さんをはじめ、岸井ゆきのさん、栗原類さんなど個性的なキャスティングですね。
ノゾエ 岸井さんは、過去に何度か出演作を観ていて、ビジュアル的にもルーシーにぴったりだと思いました。栗原さんは、初めてご一緒するのですが、王子という役柄と彼の持つ雰囲気がすごくしっくりきましたね。山中さんは、プライベートでも仲がいいんですが、過去に何度かオファーしていたんですけど、断られ続けていて(笑)
山中 過去に一度、ノゾエさん演出のリーディング公演に出演させてもらったことがあって、その時も楽しかったんですけど、稽古が3日くらいしかなかったんです。またご一緒したいなってずっと思っていたのうれしかったです。今回は舞台作品で1か月みっちり一緒にやれますしね。松尾スズキさんの作品にも出演してみたいと思っていたので、その点もうれしかったです。自分が役にはまるかどうかという不安な点もあるんですけど、その分やりがいもあると思っています。
―山中さん、今回は音楽劇ですが歌の方はいかがですか?
山中 僕、今年の初めに「いやおうなしに」という舞台に出させてもらって、その作品で初めて歌があったんですけど、あの、、その、、、その時はすごい音痴で(笑)
ノゾエ 本番を録音したやつを聞かせてもらったんですけど、それまではプライベートでカラオケ行ったりしても、歌が上手いってイメージだったんですけど、それはなかなかでした(笑)
山中 僕、音楽劇だって聞いたの途中からなんですよ!プロデューサーから突然「歌、歌えるでしょ?」って聞かれて、「いや歌えないですよ!」って言って(笑)致命的なのが、自分で音を外しているのがわからないんですよ。「今日は良かった」と思っていても、「お前今日ボロボロだったよ」って指摘されたりして(笑)
ノゾエ 今回の稽古では、そんな様子は全然無かったんですけど、昨日若干その片鱗が見えて…。
山中 いやー不安ですよ(笑)頑張ります!
―絵本を舞台化するという点でいうと、原作は“絵本”なのでビジュアルが中心に物語が進みます。そのビジュアル以外のセリフなどをノゾエさんが膨らませる形ですか?
ノゾエ そうですね。絵本はやはり、絵もあるしポンポン進んでいくんですけど、舞台化するにあたり、登場人物のキャラクターのリアリティというか、“立体感”を膨らませていく作業をしました。

子供が背伸びして楽しめる世界
―そのキャラクターを膨らませる上で、やはり「子供向け」というのは意識をされますか?
ノゾエ その部分はいろいろと考え続けています。今、思っているのは「子供が背伸びして、大人が楽しんでいる世界を楽しめるか」という点です。かと言って完全に「子供向け」にしないわけではなくて、どう「子供に向けるか」。そのバランスの部分を探し続けている状況ですね。
―でも、この原作絵本が子供向けかというと…(笑)
ノゾエ 読んで欲しいですけどね、勧めない親もいるでしょうね(笑)。そこを視覚的にもそうだし、音楽を使ったり、絵本とはまた違ったアプローチができるかというのがポイントかなって思っています。
―ノゾエさんは劇団はえぎわの主宰として、公演を行っていますが、プロデュース公演に起用されることも多いですよね。作品を創る上で、アプローチなどは違ったりするものなんですか?
ノゾエ やっぱり違います。劇団だと長い間一緒にやっているのもあって、お互いのクセや好みや、何よりもペースが大体分かるというのがありますね。プロデュース公演はそういうのがない状態で始まるので、まずは、出演する俳優たちが何を面白いと思うのか、というのを探す作業をしますね。
―山中さん的に、演出家ノゾエさんの印象は?
山中 最初、稽古を「自由にやってみて」って感じだったんです。ここ最近から、ちょっとずついろいろと指示が入ってきているんですけど、この人やっぱりちょっと変だなって気はしています(笑)共演の小野寺修二さんの顔を「なめまわしてみましょうか」って急に言い出したりして。この冷静なトーンで言うから、本気なのかなって(笑)
ノゾエ 僕自身の演出が、俳優たちから出てくるアイデアや、何を面白いと思うか、そして、この座組みでは“何を面白いこととしていこうか”というのを探す時間がすごく大事で。今回の稽古では、それをしばらく見ていたので、これからちょっとずつ具体化していこうかなっていう時期ですね。
―最後に見どころを。
ノゾエ 子供たちにはたくさん来て欲しいなと思っています。普通のとはちょっと違う?こういう音楽劇が、演劇があるっていうのを感じてもらいたいですし、何よりも演じる側もお客さんも、みんな同じ空間にいて生まれる、ここにしかない楽しいエネルギーに触れにきてもらいたいです。
山中 絵本って子供にやさしいというか、親切に書かれていると思うんですけど、これは舞台だし、絵本が持っている“親切心”はないと思っているんです。でも、劇場という空間に来て「何か変なもの見ちゃったなと」(笑)とか、何でもいいんですけど、夏の絵日記に思わず書いてしまうような、体験をしてくれたらいいなと思います。
ノゾエ そうですね。語弊がありますが「いい悪夢」を届けられたらなって(笑)
芸劇がこどもと大人に贈る、こわかわいいおとぎ話!
原作:松尾スズキ(千倉書房「気づかいルーシー」)
脚本・演出:ノゾエ征爾
演奏:田中 馨、森 ゆに
出演:
岸井ゆきの、栗原 類、川上友里(はえぎわ)、山口航太(はえぎわ)、
山中 崇、小野寺修二
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