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「和ジャズ」を読みながら

Tuesday, September 8th 2009

Japanese Jazz 1950s-1980s

昭和ジャズの魔力を読み解く。

 20世紀日本の元号の一つ、「昭和」という言葉の響きに惹かれる感覚。この前時代に生み落とされたり、沸き起こった作品や事象などには、当時を知らない年代層をハッとさせる一種の魔力や覚醒力が宿っているのではないだろうか。音楽、音楽鑑賞の分野においてもそれは例外ではなく、歌謡曲、演歌、GS、ニューロック、そして、ジャズと・・・第二次世界大戦後の昭和中期以降、特に、テレビ放送開始、東京タワー竣工、東京オリンピックの開催等に顕著なめざましい高度経済成長を遂げる最中、共に豊潤な土壌を開墾し育んできた我が国の大衆音楽の風景は、その年代層をして、旧世紀カルチャーのエポックメイキングにしてハイライトであると考察され、ミステリアスでぼんやりしながらも非常に魅力的なその実像・虚像なりが、彼らの手によって確実に紐解かれつつある。

 アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの初来日公演を契機に、本場米国のモダン・ジャズが1961年に舶来してから50年弱。ジャズに深く携わる一部の見識家たちは、この当時日本に根付き始めたモダン・ジャズの熱気とその後の進化にあらためて注目し研究を進めている。近頃、「和ジャズ」と呼ばれ活発にCD化が進められている作品群がその大いなる成果だ。  

 「昭和のジャズ」をおおよその総称で造語化した「和ジャズ」は、今からほんの4年ほど前に生まれた言葉であると、この度発刊された『和ジャズ・ディスク・ガイド Japanese Jazz 1950s-1980s』の監修者であり、THINK! RECORDSの「昭和ジャズ復刻シリーズ」等をディレクションする塙耕記氏は述べている。ナショナリズムとまではいかなくとも、過熱し続ける洋楽嗜好の現場に対し「もっと近くにいいものはある」とばかりに”メイド・イン・ジャパン”を提案する部分で、「和ジャズ」という図らずも広義化された造語は実にキレのよいものと言えそうだ。

 すでに1990年代、つまり平成初期の事物までもが古典化されつつある昨今、それを上回る歴史的重量を有する昭和のアナクロニズムやモノクロニズムは、現代においてどのような説得力を持つか、この『和ジャズ・ディスク・ガイド』に目を通し、さらには、その時代の音源を耳にし是非確認してほしい。

 塙氏のインタビューに加えて、現在HMVオンライン上で購入できる主要な和ジャズ作品約250タイトルを掲載中。