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『ミリキタニの猫』 舞台挨拶より

Thursday, April 17th 2008

ミリキタニの猫 THE CATS OF MIRIKITANI 舞台挨拶より


ミリキタニの猫 THE CATS OF MIRIKITANI』 本編上映後、 リンダ・ハッテンドーフ監督による、舞台挨拶があり、試写会にお見えになった観客の方との、Q&Aが行なわれました。

その時のお話が、どれも本当に素晴らしく、心に迫る内容でしたので、 ここに、全内容を掲載させて頂きたいと思います。





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ミリキタニの猫 THE CATS OF MIRIKITANI





司会:  リンダ・ハッテンドーフ監督:  質問をされた方:


:それでは、リンダ監督、本日はこのイベントのために、NYからお越し下さいまして、ありがとうございます。
まずは、本日ご来場のみなさまに一言、ご挨拶をお願いします。

:みなさんこんにちは。来て頂いて、ありがとうございます。 本日ここに来れて、非常にうれしく思っております。

:東京国際映画祭に続きまして、今回は2回目の来日と伺っておりますが、 本日もすごく暑いですが、この暑い日本をどう思われますか?

:日本に来れて、非常にうれしく思っております。すごく素晴らしいチャンスを与えて頂いて、ありがたく思っているのですが、
確かに、お天気が非常に暑いので、また今度は秋に来て、紅葉をたのしみたいと思います。

:日本にいらっしゃって、ジミーさんと、ジミーさんの故郷、広島に行ったと 伺ったのですが、どちらに行かれましたか?

:広島の平和の式典に参加したんですけれども、非常に力強く、感銘を受けました。





:それではですね、そろそろ会場のみなさまからの質問をお受けしようと思うのですが、 その前に、実は今日はですね、1990年頃に、
ジミーさんとNYでホームレスの仲間だったという方から、 一通の手紙を頂きました。そして、なんと今日はその方が、この会場に
いらっしゃっています。映画の感想をお伺いしたいと思っているのですが、映画はいかがでしたでしょうか?

:はじめまして。僕がホームレスをやっていたのは、1999年頃だったのですが、 約4ヶ月くらいだったのですが、いつも朝、
ジミーさんと一緒にお話しながら、他愛のない会話をしていました。

:映画をご覧になって、いかがでしたか?

:当時のミリキタニさんは、80近い方だったので、そこから7、8年経っているので、 年齢的にも、こんなに元気なミリキタニさんを
スクリーンで観れたということに、驚いておりますし、うれしく思っております。

:あなたも、お元気でよかったです。(笑)

会場は、やさしい笑いに包まれる。





:それでは、次の質問です。

:映画の中で、ジミーさんがまるでお父さんのように、「もうこんな時間じゃないか」と、言っていたシーンがあったのですが、
リンダ監督にとって、ジミーさんはどんな存在ですか?

:ジミーは、私のおじいさんみたいな人です。実際今も毎週、ジミーを 訪問しているんですけれども、ホームに行きますと、
「この女の人は、誰?」って聞かれるんですね。 そうするとジミーは、「これは、わたしの孫娘だよ」っていう風に紹介してくれます。
私は、生れる前におじいさんが2人、亡くなっているのですが、今は、日本人のおじいさんがいます。(笑)





:それでは、次の質問です。

:私もアメリカにしばらく住んでいたことがあったのですが、リンダさんにとってみたら、ジミーさんは全くの垢の他人で、ある意味では、 あまり家に入れたくないタイプの方だった可能性があったかもしれませんが(笑)、リンダさんがジミーさんを自分の家に入れるというのは、特に日本のような家庭では、考えがたいことだと思うんですね。 その、ホスピタリティーやオープンマインドネスというのは、一体どこから来ているのかなあと思いまして。それは、ジミーさんに特別だったのか、それとももし、同じような境遇の方が、 ジミーさん以外でいらっしゃったとしても、同じようにされていましたか?

:人間の中には、いいことをするキャパシティー、許容量というのがあると思います。 9.11が起こる前に、私はほぼ毎日、路上にいたジミーを訪ねていて、 9ヶ月経っていたんですね。9.11を境に、全てが変わってしまいました。 戦争や恐怖、憎悪など、そういうものばかりを目の当たりにしていて、 私自身何かもっと、ポジティブなことをしたいと思っていたんですね。 人間の精神や魂が、もっといいことができるということを、見せたかった。 そういう意味でも、ジミーが私一緒に住んでいたということは、 私にとっても、すごく助けになりました。 そして、まだ世界には、いいことがあるという風に、思えた気がしました。





:それでは、次の質問です。

:映画の中で、ジミーさんは、アメリカの政府から社会保障を受けることをすごく 拒絶していたという風に思うのですが、
それでもリンダさんがあきらめずに、トライし続けるというのは、どんな思いだったのでしょうか?

:ジミーは私のことを、「タフな女だ」というのですが、 たぶん彼は正しいのかもしれません。(笑)それから、物事には時間のかかることもありますので、 そういう意味では私は、忍耐強いところもあるのかもしれません。 60年という長い時間の間になされた修復をしなければいけなかったので、 不信感というものを信頼に変えるのは、かなり時間のいることだったと思います。





:それでは、次の質問です。

:そもそも、どうして、この映画を撮ろうと思ったのですか?

:この映画というのは、非常にオーガニックな、有機的な形で出来上がった映画です。私が最初にジミーに会ったのは、2001年の冬、すごく寒い日でした。 ジミーは外で、猫の絵を描いていました。私はそれに、非常に興味を持ったし、それから、大丈夫かなと心配もしました。あと彼が、猫の絵を描いていたので、話しかけました。そして、彼は絵をくれて、「明日写真を撮ってくれ」と、私に頼んだので、私は次の日、カメラではなくて、ビデオを持って、彼の元に訪問しました。そして、「これはカメラではなくて、しゃべる写真だから、何かこの絵についてのお話をして下さい」と彼がいろいろお話をし始めたので、毎日ビデオを持って、彼のところに訪ねに行ったんですね。 ビデオがあると、彼はお話をしてくれたんです。なので、初めはカメラというのは、「この人は、一体誰なんだろう?」とか、「一体、何が起こっているのか」というのを、知るための道具だったわけです。

それから、9.11が起こって、全てが変わっていくわけなのですが、私はもともと、自分が登場人物としては、考えていなかったんですが、物事というのは、どんどん変化して、思いもよらない方向に進んでいくことがあるものです。

それからまた、ジミーの平和とアートについての貢献度について、非常に関心しました。それから彼がまた、アメリカのメインストリームには出てこない歴史というものを、目に見える形で残したいという気持ちに、非常に心を動かされました。ですので、私のこの映画というのが、彼がその部分の歴史を残したいという、彼の気持ちの延長になればいいなと思っています。





:それでは、最後の質問です。

:私は、何年か前に、サンフランシスコに、2ヶ月くらい滞在していた時があって、たまたま、日系人のおじいさんに会って、彼が毎日サンフランシスコを案内してくれました。彼の周囲の人から、「彼は収容所育ちで、彼のお父さんは、収容所の中で自殺をされた」というお話を聞いたのですが、最終的には、彼とその話をする機会がなく、今も時々思い出すのですが、そういうことを話すというのは、時間のかかる人や積極的に話していかなければならない、という方もいらっしゃると思うのですが、ジミーさんの場合はどうやって、そういうことを語り始めたのですか?

:ジミーの強制収容所での話しの仕方というのは、絵を描くということで、話しをしていたわけです。映画の中にも出てきますが、自分の描いた絵を見せてくれて、「これが20歳だった時の僕だよ」という風に教えてくれて、そこで私は初めて、 そのような状況を知りました。ジミーは今87歳で、映画に出てきたアパートと同じところに住んでいます。そして今は、自分の猫を飼っています。彼のバースデイパーティーは、 毎年だんだん大きくなっていまして、6月15日なんですけれども、来年もやります。





Q&Aは終了し、いよいよここで、ジミー・ミリキタニさんの登場

会場は、大きな、歓迎の拍手に包まれます。

ツールレイク収容所で4ヶ月を共にしたという、 荒貞夫という歌手の歌「男は泣かず」を、2番まで歌って下さいました。

映画の中でも、ジミーさんは、はっきりした力強い声で歌を歌われていますが、 今日のこの場で、ジミーさんの生歌をお聴きすることが出来て、感激しました。声というのは、 心が出ると言いますが、お歳を疑ってしまう程の歌声でしたので、ジミーさんの全てを物語っているような気がしました。

花束贈呈に続き、真っ赤なジャケットに、真っ赤なベレー帽を被った、小さいけれど大きいジミーさんは、ご自分で描かれた猫の絵を胸の前に、リンダ監督と一緒に掲げ、 フォトセッションに、応えて下さいました。

「右の方に、真ん中の方に、左の方に」と、カメラに目線を合わせてくれて、 笑顔で、声を出して笑っているジミーさんと監督のお姿を拝見していて、 こちらもすごく、うれしくなってしまうほど、しあわせな光景でした。





ミリキタニの猫 THE CATS OF MIRIKITANI 舞台挨拶より 舞台を離れる、ジミーさんの真っ赤な後ろ姿を見つめながら、 この映画の断片が、ふーっと次々に浮かんできて、本当に素晴らしい映画だったなあと、 改めて思いました。

この映画のリンダ監督とジミーさんの出会いのように、誰かとの出会いによって、人生が大きく変わり得るということ。世界にはもっと、この映画のように、豊かなことが起こり得るということ。何事においても、希望を持つということ。そんな、ポジティブな強い力を信じられるような映画だと思います。

ジミーさんの誕生日に、あの部屋をたくさんの縁のある人が訪れると、以前は真っ白だった壁に、隙間なく、ジミーさんの作品が貼られていて、部屋がより一層の彩りや温かみを帯びていました。その光景は、あまりにも大きな愛に包まれていて、まるで自分のことのように、心からうれしくなりました。

死ぬまで、一生絵を描き続ける」という志を持ち、それをどのような境遇になっていても、体現していたジミーさんの強さに、深く感銘を受けました。

お気に入りのシーンは、ジミーさんは過去、料理人だったということもあり、監督に「これは、こうやって切るんだ」と言いながら、ズッキーニを切っているシーン、新しく家を持つことができた部屋では、一人キッチンに向かう姿があったり・・・の、料理のシーンです。

また、監督と一緒に、"サムライムービー"を観ていたシーン、帰りが遅くなった監督を、ジミーさんが怒るシーンは、思わずくすっとしてしまうユーモアがありました。

ヨコハマメリー』という映画がお好みの方でしたら、同じように、心に響く、本当に素晴らしい作品だと思いますので。






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