【訃報】　Rick James

Monday, August 9th 2004

数々のヒットを放ってきたファンクマスター、Rick Jamesが8月6日朝ロサンゼルスの自宅で死亡しているのが見つかりました。56歳。詳しい死因は不明ですが自然死とみられています。Jamesは長い間糖尿病と心臓を患い、ペースメーカーをつけていたそうです。

Rick Jamesは1948年2月1日ニューヨーク・バッファロー生まれ。母親が無類のジャズ好きだったことから、幼少の頃からジャズのライヴハウスに連れて行かれたり、自宅ではジャズのレコードに触れながら育ち、まもなくミュージシャンになることを夢見るようになり、音楽活動を開始。60年代後期には、ヴェトナム戦争に行くことを避けるためにカナダに放浪の旅に出て、現地で当時はまだ無名だったNeil YoungらとともにMynah Birdsというグループでバンド活動をしていたこともあります。このバンドはモータウンと契約し、アルバムも録音しましたが結局発売されることのないまま（！）解散してしまいました。

70年代に入り、ロスアンジェルスに来て、Stone City Band（後にリックのお抱えバンドになる）を結成。そしてソングライターとしてモータウン傘下の音楽出版社ジョベッタ・ミュージック入り。ここで作品などを書いていましたが、78年、自らがレコーディングしたファンキーな作品で当時の妻のことを歌った"You & I"でアーティストとしてデビュー。これがいきなり大ヒットとなり、以降モータウン唯一のファンク・アーティストとして人気を博するようになります。しかし、品行方正なモータウンのレーベル・イメージとは180度逆を行くJamesは、、 ステージでマリファナを吸い、観客にも勧めるなどし、彼のライヴは、会場中マリファナの煙が立ち込めていることでも話題になったそう。"You & I"に続くヒット曲"Mary Jane"もマリワナ讃歌で、プロモーションの時、自らラジオ局のDJ達にマリワナを配布していたという逸話もあるほどでした。

またJamesはアーティストとしてだけでなく、当時恋人だったTeena Marie、Mary Jane Girlsなどのプロデュースも手がけヒット曲を量産。外部でもEddie Murphyの"Party All The time"、Smokey Robinsonとのデュエット"Ebony Eyes"、Temptationsとの"Standing On The Top"などのヒットも飛ばしました。ところが、唯一のグレイテイスト・ヒッツ・アルバムをリリースした後の「Glow」あたりから方向性を見失い、当時最大のライバルとされていたPrinceやMichael Jacksonの台頭により、明らかにJamesは焦りを感じ徐々にその輝きを失って行きます。

90年にはラッパ−のMC HammerがJamesの"Super Freak"を使った"You Can't Touch This"をリリースし、世界的な大ヒットを記録、Jamesに再び注目が集まったことは記憶に新しいことでしょう。しかし 近年は麻薬中毒に苦しみ、93年コカイン使用時の暴行事件などで有罪判決を受けて服役。97年にはコンサート中に発作を起こし入院するなど健康問題を抱えていました。

モータウンという自分のカラーに決して合わなかったレーベルを選んだこと、Princeなどライバルの出現、一発屋となってしまったMC Hammerのイメージと重なるなど、悲運のスターであったJamesでしたが、彼はテーマとして一環して性と麻薬と気ままなストリート魂を取り上げ、"You & I"や"Mary Jane"、"Bustin' Out"、"High On Your Love Suite"、"Love Gun"、"Give It To Me Babyといった名曲を生み、後の黒人音楽の新しいスタイルを切り開いたのは確かです。特に"Mr Policeman"という曲は、友人が警察に撃たれた悲しみを歌った歌で、いわゆるギャングスタ・ラッパーに先駆けた一曲でした。

謹んでご冥福をお祈りいたします。