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どこまでも透明で美しい響き! 『聖トマス・モア受難曲』

Sunday, September 7th 2003

インド風ハルモニウムの心地よい響き!
『聖トマス・モア受難曲』

映画『わが命つきるとも』の題材ともなった英国の史実、「トマス・モアとヘンリー8世の確執」にまつわるストーリーを、アメリカの作曲家、ギャレット・フィッシャーが、ユニークで美しい受難曲に仕立てた注目作。

【作品の背景について】
 トマス・モア[1478-1535]は、ユートピア思想の提唱者で、深い学識を持った人文学者でした。社会的には、ロンドンの司政官補、治安判事、下院議員を務め、最終的には大法官にまで登りつめたキャリアの持ち主ですが、信仰深いキリスト教徒としての側面が失われることはありませんでした。

 モアとヘンリー8世との確執、というよりもヘンリー8世によるモアの処刑は以下の経緯により断行されます。

 ヘンリー8世は18歳のときに、亡き兄の妻だったキャサリン・オブ・アラゴンと結婚しましたが、キャサリンには男子が生まれなかったため、当時見初めていたアン・ブーリン(映画『1000日のアン』でも有名)と結婚するためにキャサリンと離婚しようとします。
 しかし教皇クレメンス7世は、キャサリンが神聖ローマ帝国皇帝カール5世の伯母に当たることから承認を引き延ばし、最終的に拒絶してしまいます。
 そのため、この件の責任者であった大法官ウルジー枢機縁は失脚し、大法官職はトマス・モアによって引き継がれるのですが、ヘンリー8世の離婚騒動は、モアにとっては許し難い行為であり、大法官としての職務を遂行することもなく最終的にはその地位を辞任。 その間、実際の政務は枢密顧問官のトマス・クロムウェルがとりおこない、「上訴禁止法」によってイギリスにおけるローマ教皇権のすべてを取り除くことが可能となったため、離婚問題の決着が図られることになりました。
 モアはその後も王の離婚に賛同せず、ヘンリー8世とアン・ブーリンとの結婚式にも欠席、さらに、ヘンリー8世を英国国教会の長とする「首長令」にも異議を唱えます。
 そのため、彼は反逆者として査問委員会に呼び出されますが、査問委員会の場でもモアは信念を決して曲げようとしなかったため、ロンドン塔に幽閉され、やがて公開の場で斬首刑に処されたのです。ロンドン・ブリッジに晒されたモアの首は、長女マーガレットが引き取り、遺骸をパーキング教会に埋葬します。

 ちなみに、ヘンリー8世は、問題の王妃アン・ブーリン(エリザベス1世の母)についても、モア処刑の翌年に姦通罪という名目で処刑し、10日後にジェーン・シーモアと結婚、彼女の病死後は、アン・オブ・クレイヴスと結婚するもののこちらは半年で離婚、すぐに30歳年下のキャサリン・ハワード(アン・ブーリンの従姉妹)を迎えますが、今度も姦通罪で処刑、3年後に6番目の王妃キャサリン・パーと結婚。ほかにエリザベス・ブラントや、メアリー・ブーリン(アン・ブーリンの姉)などを情婦としていたようです。
 なお、キャサリン・オブ・アラゴンは離婚後は幽閉されており、ヘンリー8世がジェーン・シーモアに心変わりしてほどなく、名目上は病気で亡くなっていたため、アン・ブーリンとの離婚の障壁となることはありませんでした。また、アン・ブーリンとの離婚問題を解決した枢密顧問官のクロムウェルについても、ルター主義をめぐって争い、1540年に処刑しています。


【音楽について】
 フィッシャー自身のリブレットによる『聖トマス・モア受難曲(the passion of Saint Thomas More) 』は、ヘンリー8世に屈することなく死を選ぶ敬虔なトマス・モアの処刑の日を描いたもので、登場人物はトマス・モアとヘンリー8世のほか、モアの娘のマーガレットに、堕天使3人というユニークなものになっています。

 作品のスタイルは徹底してスタティックなもので、63分ほどの全編にわたってひたすら美しく穏やかで澄んだ音楽が鳴り続けますが、ユニークなのは、メインの役割を果たすこととなるフィッシャー自身の奏でる「インド風ハルモニウム」の響きでしょう。

 この楽器は名前の通り、インド風のハルモニウムという体裁のもので、ヨーロッパからインドに伝来したハルモニウムが改良され、現在でも使われているという小型のリード・オルガンです。
 演奏に当たっては、片手で背面のふいごを動かし、もう一方の手で鍵盤を弾き、音色・音量調節用のストップやドローン用のストップを操作します。

 このインド風ハルモニウムとコーラングレのもの悲しい響きを背景に、“象徴化”された登場人物たちが澄んだ美声によってあらわされるのですが、曲頭と曲尾にはノルウェー民謡が使われるなど、凝った構成はなかなかのもの。

 心に残る大変に美しい音楽だといえるでしょう。録音も優秀です。


【作曲者について】
ギャレット・フィッシャーは1970年にミシガンの生まれ。幼い頃からイスタンブールやロンドン、パリなどで過ごした彼は、異文化に対する興味を強く持っており、オバーリン音楽院で作曲とピアノを学んでからも、インドの古典的な唱法やタブラの研究をおこない、また、シアトルの日本館のために能にインスパイアされた作品“Moon in the Bucket”を書き上げるなど、ユニークな活動で知られています。
 なお、『聖トマス・モア受難曲』については、すでに16Visionsレーベルから1999年2月に作曲者によるCDがリリースされているため、BIS盤は2度目のレコーディングということになります。
 演奏者はインディアン・ハルモニウムの作曲者と、コーラングレのタイナ・カーのみ同じでほかは異なります。演奏時間も再録音盤のほうがよりメリハリのついた形となっているようです。


【曲目】
ギャレット・フィッシャー[1970- アメリカ]
『聖トマス・モア受難曲(the passion of Saint Thomas More) 』

・前奏曲(ノルウェー民謡) 1:45
・前奏曲(器楽) 3:54
・献呈 2:56
・第1幕(第1景・第2景・第3景) 18:25
・マスク(器楽) 3:54
・第2幕(第1景・第2景・第3景・第4景・第5景) 29:53
・エピローグ 1:29
・後奏曲(ノルウェー民謡) 1:18


【演奏者】
トマス・モア、堕天使2:アンナ・ヴィンテン=ユーハンセン(ソプラノ)
マーガレット(モアの娘)、堕天使1:クリスティーナ・ホーグマン(ソプラノ)
ヘンリー8世、堕天使3:ウッレ・ペーション(バリトン)

イングリッシュ・ホルン(コーラングレ):タイナ・カー
ギター:スヴェン・オーベリ
打楽器:ヨーラン・モンソン
インド風ハルモニウム:ギャレット・フィッシャー


【録音】
2000年7月、スウェーデン、ランナ教会でのデジタル録音
使用機材:ノイマン製マイクロフォン、スチューダー製ミキサー、ジェネックスGX8000MODレコーダー、スタックス・ヘッドフォン

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The Passion Of St.thomas More: Fisher(Indian Harmonium)mansson(Perc), Et

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The Passion Of St.thomas More: Fisher(Indian Harmonium)mansson(Perc), Et

Fisher , Garrett *cl*

User Review :4 points (1 reviews) ★★★★☆

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Release Date:30/August/2003

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