ピエラヌンツィ ニュートリオ第2弾『Stories』到着しました!!
Tuesday, May 20th 2014
強烈な感動の瞬間に出会うまでの長い旅路を”ストーリー”として記録
エンリコ・ピエラヌンツィ・ニュートリオ待望の第2弾!
スコット・コリー(b)、アントニオ・サンチェス(ds)との本トリオは2009年に始動。長きにわたったマーク・ジョンソン、ジョーイ・バロンとのトリオが一旦解消されたとのニュースは往年のファンを驚かせたが、新リズムセクションと組んだ『Permutation』では、ピエラヌンツィの抒情性と奥底に秘めたパッションが、美しさはそのままに鮮烈に炸裂。まさしくピエラヌンツィのネクスト・ステージを見せたもので、新たなる期待を押し広げてくれたものだったと言えるだろう。そして届けられた第2弾『Stories』・・・
昨年9月、およそ9年振りの来日を果たしたエンリコ・ピエラヌンツィ。ラリー・グレナディア(b)、ジェフ・バラード(ds)という、メルドー・トリオやフライなどですっかりおなじみの名コンビと共に、連日連夜、『Permutation』とはまた異なるトリオとしての輝きを放ち、多くの聴衆が彼らの三位一体のサウンドに酔いしれた。
また、昨春リリースされた『Live At The Village Vanguard』は、2010年念願のヴィレッジ・ヴァンガード出演を果たした際のライヴ録。マーク・ジョンソン(b)、ポール・モチアン(ds)という、こちらもピエラヌンツィの音楽キャリアを語る上で欠かすことのできない最高のサイドメンとの一幕に、巨匠自らのみならず、ジャズ・ファン誰もがかつてない高揚感を憶えたのは記憶に新しいところ。
と、ピエラヌンツィ、あるいはその音楽的な表現史を包括的にでも語る際、少なくともやはり、“トリオ”という関係性の本質がキーになっていることは想像に難くない。ソロピアノの世界が、内省的な自己探求→自己完結を主なテーマにしているのだとすれば、互いのシナジーの高まりや、互いにインスパイアされることに大きな意味を持たせる“パーティ・プレイ”の本分は、まさしくその道すがらにある過程、つまり悲喜こもごもの“ストーリー”にこそあると。
ピエラヌンツィは、往々にして、こうした喧々諤々のトライアングルの共振・共鳴の中で自身のピアニズムや演奏力を研磨してきた、いわばトリオ表現において絶対的なコミュ力と摩擦係数の高さを持った演奏家なのである。
「道すがら」という意味でも、グレナディア&バラード・コンビとのトライアングル以上に気になるのは、やはり件の、コリー&サンチェスとのレギュラー・トリオにおける現在地点。ゆえに、2年ぶりの新作となったこの『Stories』は、当トリオのステイタス・アップデートを報告する上でもきわめて重要なプロダクトになると言っても大げさではない。2011年2月の録音からリリースまでの期間に多少のブランクこそあるが、そこにはまぎれもなくトリオ・フォーマットとしてのジャズの探究に身を焦がし、またその進化に冥利を憶えるピエラヌンツィの今を窺うことができる。
『Stories』 収録曲
- 01. No Improper Use
- 02. Detras Mas Alla
- 03. Blue Waltz
- 04. The Slow Gene
- 05. Which Way Is Up
- 06. Where Stories Are
- 07. Flowering Stones
- 08. The Real You
Enrico Pieranunzi (p) / Scott Colley (b) / Antonio Sanchez (ds)
Recorded in New York on 22, 23 February 2011 at Avatar Studio
冒頭の「No Improper Use」では、アタックの強いリズム・アクセントが印象的なテーマから、かなり自由度の高い展開を挟みながら、ギアを緩めず瞬く間に空間を駆け抜ける三者。互いの距離感を再確認するが如くの、インプロヴィゼーションの妙に意識を置いたと思しき実に興味深い1曲とも言えそうだ。
つづく「Detras Mas Alla」では、ピエラヌンツィ特有のメロディアスで凛とした旋律を存分に生かすべき、大胆且つ綿密なトリオ・アンサンブルが形成される。本作のハイライトのひとつとも言える快演だ。十八番の哀愁ラテン・フレーズがふんだんに盛り込まれたワルツ・チューン「Blue Waltz」にしても同様、アグレッシヴに攻め込む主役ピアノをなおも焚き付けるかのようなリズム陣の躍動が、個人の裁量を越えたトリオ・ミュージックの何たるかを物語っているかのよう。
前作収録の「Distance From Departure」と双璧を成すスコット・コリーのペンによるリリカル・バラード「The Slow Gene」。あるいは本作のキー曲となり得る、こちらも美しいバラード「Where Stories Are」。無味乾燥な“ワンマン”バラードが我が物顔で世を跋扈する昨今において、トリオの絶妙な表現力によってここまでコクと深みのあるものに仕上げられたバラードに出会う機会というのはそうそうないのではなかろうか。スコット・コリーのベース、アントニオ・サンチェスのブラシワーク、その一音一音が物語を編み込む上でなくてはならない役割を果たしていることを改めて強く印象付ける。怪しげなかがり火のようなモーダル・ワルツ「Flowering Stones」にしても、三者トライアングルの関係が生んだ一瞬の閃光をそこかしこに感じさせてならない。
アルバムは、厳かなゴスペリック・ムードをたずさえた「The Real You」で静寂を共にしながら締められる。どこか達観したかのようなトリオの表情(ムード)は、おそらく次なるステージを同時に見据えた無我、あるいは梵我一如としての至福と捉えるか・・・
いずれにしても、このトリオ、互いが強烈な感動の瞬間に出会うまでの長い旅路を“ストーリー”として記録し、また僕らに記憶させていくことが宿命付けられている気がする。まだまだ“道すがら”、ゴールはずっとこの先にあるのだ。
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